絶版文庫書誌集成

文春文庫
【ひ】


ピーター・D. ウォード著 垂水 雄二訳 (Peter D. Ward・たるみゆうじ)
「恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた」
(きょうりゅうはなぜとりにしんかしたのか)


*カバー写真・始祖鳥の化石
 INTERFOTO Pressebildagentur/Alamy
 デザイン・関口聖司
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*425頁 / 発行 2010年

*カバー文
なぜ、鳥はヒマラヤ山脈の上を苦もなく渡っていくのか? 答えは恐竜の生まれた時代の酸素濃度にある。地球誕生以来、大気の酸素濃度は一定ではなかった。高酸素時代に繁栄した生物も、低酸素時代には一掃される。最新の研究によってわかった過去6億年の酸素濃度の推移グラフによって、進化の謎を解き明かす。

*目次
はじめに
第1章 哺乳類の呼吸とボディ・プラン
 動物の多様な姿かたちはなぜ生まれたのか? それぞれの時代の酸素濃度の変動が生物の栄枯盛衰と進化の決定的な鍵を握っている。
第2章 地質年代における酸素濃度の変化
 現在の大気の酸素濃度は二一%だが、カンブリア紀のそれは一五%だった。最新の研究結果が示した六億年の推移グラフ
第3章 カンブリア紀大爆発はなぜ起こったのか
 体内の酸素を取り込む面積拡大のために、体節を繰り返す仕組みが生まれた。多様な生命が生まれたカンブリア紀大爆発。
第4章 オルドビス紀 ── カンブリア紀爆発の第二幕
 オウムガイが現れ、多様化・巨大化していったオルドビス紀の生物たちに、酸素濃度の低下によって訪れた種の滅亡。
第5章 シルル紀=デボン紀 ── 酸素量の急上昇が陸上進出を可能にした
 丸裸であった地上に植物がまず上陸する。それを追う動物たちの最初の試みは、肺呼吸の進化から始まった。
第6章 石炭紀=ペルム紀初期 ── 高酸素濃度・火事・巨大生物
 地球史上最高の酸素濃度の石炭紀。巨木の森林は発火し、煤煙に染まる空のもとで、動物たちはさらなる巨大化を遂げていた。
第7章 ペルム紀絶滅と内温性の進化
 超大陸パンゲアの完成と前後して九割の生物が死滅したベルム紀の大絶滅。酸素濃度の急暴落は、なぜ起きたのか。
第8章 三畳紀爆発
 人間よりも三割も効率的な肺である鳥類の「気嚢システム」。それは祖先である恐竜が低酸素時代を生き延びるために生まれた。
第9章 ジョラ紀 ── 低酸素世界における恐竜の覇権
 六五〇〇万年前の巨大隕石衝突で恐竜たちに突然死が訪れるまで、彼らの栄華は揺るがなかった。低酸素下の生物の姿。
第10章 白亜紀絶滅と大型哺乳類の台頭
 現在の哺乳類が繁殖できる限界は、標高二〇〇メートルの地点にある。その謎の答えは、ジュラ紀の酸素濃度にあった。
第11章 酸素の未来を危ぶむべきか?
 二億五〇〇〇万年の将来、再び超大陸は現れ、酸素濃度の大暴落も訪れよう。しかしそのとき、人類は生きているだろうか。
謝辞
訳者あとがき
解説 三中信宏(東京大学大学院教授)


平野 啓一郎 (ひらのけいいちろう)
「滴り落ちる時計たちの波紋」
(したたりおちるとけいたちのはもん)


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*346頁
*発行 2007年
*写真・滝浦哲 / デザイン・関口聖司

*カバー文
ネット展開するグレーゴル・ザムザ、引き篭もり世代の真情あふれる「最後の変身」から、ボルヘスの〈バベルの図書館〉を更新した「バベルのコンピューター」まで、現代文学の旗手による文字どおり文学の冒険。さまざまな主題をあらゆる技法で描きながら突き進むこの作品集は、文学の底知れぬ可能性を示している。

*目次
白昼 / 初七日 / 珍事 / 閉じ込められた少年 / 瀕死の午後と波打つ磯の幼い兄弟 / Les pepites passions / くしゃみ / 最後の変身 / 『バベルのコンピューター』 / 解説 苅部直