絶版文庫書誌集成

文春文庫
【も】


森 まゆみ (もりまゆみ)
「円朝ざんまい」
(えんちょうざんまい)


*装画・鏑木清方「三遊亭円朝像」
 1930年(東京国立美術館所蔵)
 デザイン・大久保明子
(画像はクリックで拡大します)

*364頁 / 発行 2011年

*カバー文
江戸末期から明治にかけて三遊亭円朝の高座や速記本は大人気で、坪内逍遙や二葉亭四迷ら多くの文人に影響を与えた。噺家で、かつ取材のために大旅行家であった「落語の神様」の足跡を、作家・森まゆみが辿る。江戸下町、上州、甲斐、北海道と創作の舞台を、ふんだんに織り込まれた円朝の言葉と共にゆく。

*目次
一 闇夜の梅 ―― 円朝、来し方の秘話〈谷中・上野〉
二 士族の商法・華族の医者・世辞屋 ―― “開化”を斬新に描く
三 指物師名人長二 ―― 江戸屈指の男ぶり〈本所・湯河原・谷中〉
四 怪談牡丹灯篭 ―― 足のある幽霊〈根津・谷中・栗橋・宇都宮〉
五 心眼・明治の地獄 ―― 夢からさめた話
六 熱海土産温泉利書 ―― 健脚娘、恋の仇討ち〈三島・熱海〉
七 文七元結 ―― 江戸っ子の見栄もほころぶ親子の情〈吉原・本所〉
八 七福神 ―― 不況もどこ吹く、見事なのんき〈谷中〉
九 怪談乳房榎 ―― 不良息子の面影〈高田・新宿十二社・板橋〉
十 業平文治漂流奇談 ―― きわめつき、すっきりしたいい男〈本所・柳橋〉
十一 真景累ヶ淵 ―― こりゃ因果の巡りすぎ〈根津・小石川・水海道〉
十二 鰍沢 ―― 女はこわい〈甲州・鰍沢〉
十三 霧陰伊香保湯煙 ―― 昔なつかし温泉道〈上州伊香保・四方〉
十四 塩原多助一代記・上野下野道の記 ―― 「誠実・勤倹・正直」の人を追いかけて
十五 蝦夷錦古郷之家土産・椿説蝦夷なまり ―― 落ちのびた上野彰義隊士
 あとがき / 文庫版あとがき / 関連年譜
 解説 円朝の前に円朝なく円朝の後に円朝なし 半藤一利



森 まゆみ (もりまゆみ)
「断髪のモダンガール 42人の大正快女伝」
(だんぱつのもだんがーる)


*デザイン・大久保明子
 写真・NPO 現代女性文化研究所
(画像はクリックで拡大します)

*373頁 / 発行 2010年

*カバー文
大正時代、黒々と伸ばした髪を切ることは、女をやめるに等しい大胆な行為だった。男性社会を力強く生きると高らかに宣言したモダンガールたちは、次々と洋行したり、恋の炎に身を焦がしたり……。望月百合子、ささきふさ、武林文子、野溝七生子ら42人の強欲な「快女」たちの生きかた、愛しかた。

*目次
第一章 洋行したモダンガール
 望月百合子 大正八年の断髪 / ささきふさ 都市の高等遊民として / 武林文子 目立ちたがりやの一生 / 与謝野晶子 愛しつづける苦しみ / 深尾須磨子 詩とフルートと性科学と
第二章 だれかのミューズ
 佐々木兼代 夢二、晴雨、武二のモデル / 山田順子 芸術への近くて遠い道 / 長谷川泰子 グレた・ガルボに似た女 / 波多野秋子 編集者という仕事 / 芥川文 幼き妻から強い母へ / 野溝七生子 「山梔」の作者、辻潤の女神
第三章 「青鞜」と妻の座
 平塚らいてう 愛したのは年下ばかり / 江口章子 ミューズの悲惨な最期 / 生田花世 年下の美男子、春月と / 伊藤野枝 見知らぬ読者の求愛 / 遠藤清子 霊が勝つか、肉が勝つか / 西川文子 はばたき切れなかった女たち / 三ヶ島葭子 書かずにはいられない / 物集和子 おだやかな掃苔の日々
第四章 女しか愛せなかった?
 尾竹紅吉 類いまれなるプロデューサー / 田村俊子 上海の路上に死す / 山原鶴 「見ている人」の生涯 / 中條百合子 生きぬく! 書きぬく! / 吉屋信子 自立と友情を求めて
第五章 芸で立つ
 川上貞奴 数奇な運命の女優 / 飯塚くに ぽん太、須磨子、センの背中 / 小野アンナ ロシアから来たヴァイオリニスト / ワルワーラ・ブブノワ 強くてやさしいロシア人画家 / 岡田八千代 芸術家の夫をもった苦闘
第六章 女人芸術からアナキズムへ
 長谷川時雨 さらりと江戸の女 / 尾崎翠 シスターフッドの感覚世界 / 宮崎麗子 迷いすぎる男を夫に選んだ / 八木秋子 感受性は年をとらない / 平林たい子 体あたりで人生の波瀾をゆく / 近藤真柄 やさしくすなおなマーガレット
第七章 独歩の人
 斎藤百合 光に向かって闘った先駆者 / 知里幸恵 私は涙を知っている / 金子文子 越境の歌人 / 石垣綾子 ニューヨークで反戦活動 / 宇野千代 桜吹雪のような人生 / 野上彌生子 生涯現役作家
 女が髪を切るとき ―― あとがきにかえて
 解説 ―― 断髪のモダンガールとギャルソンヌ 深井晃子
 年表 / 人物相関図 / この本から広がる読書案内


森崎 和江 (もりさきかずえ)
「悲しすぎて笑う ― 女座長 筑紫美主子の半生」
 (かなしすぎてわらう)


(画像はクリックで拡大します)

*311頁
*発行 1988年
*装幀・中島かほる / カバー写真・北井一夫

*カバー文
佐賀にわかは、佐賀弁と即興で演じられる笑劇だ。村々の掛舞台で演者は客に語りかけ、客もまた大声で応じながら爆笑し、泣く。その道化た人気役者・筑紫美主子が捨て子同然の混血児であったとは舞台からは窺い知れない。時代と社会の理不尽に翻弄され、選択の余地のない道を生きた女性が掴んだ強さを描く。

*解説頁・渡辺美佐子


森田 誠吾 (もりたせいご)
「いろはかるたの本」



(画像はクリックで拡大します)

*414頁
*発行 1983年
*カバー・長尾みのる

*カバー文
犬も歩けば棒にあたる……。おなじみ『いろはかるた』は日本人の知恵の結晶であり、不滅のロングセラーである。短くて教訓的な上方かるた。長くて文芸的な江戸かるた。東西両かるたの各句を味わいつつ上方と江戸の心をさぐる本書は、学術的にも価値の高い資料篇も備え、まさに『いろはかるた』読本の決定版! 解説・佐藤要人


森田 誠吾 (もりたせいご)
「中島敦」
 (なかじまあつし)


(画像はクリックで拡大します)

*190頁
*発行 1995年
*カバー・安野光雅

*カバー文
わずか三十三年の短い生涯に「李陵」「山月記」等、珠玉の短篇小説を残し、世を去った永遠不朽の作家は、一代の蕩児でもあった。尽きることのない文学への野望、無頼な生活への憧れ……。丹念な取材と資料探査で従来の聖人像をくつがえし、知られざる実像に迫るスリリングにして惜愛の情あふれる快作。

*解説頁・佐伯彰一