絶版文庫書誌集成

文春文庫
【ま】


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「形影 ― 菊池寛と佐佐木茂索」
 (けいえい)


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*232頁
*発行 1987年
*カバー・坂田政則

*カバー文
「私はさせる才能無くして文名を成し一生を大過なく暮しました。多幸だつたと思ひます。……」と書き残した文壇の大御所・菊池寛。「皆仲よくくらせ、特に社の人々のそれを心より願ふ」と遺書の一行に記した文人社長・佐佐木茂索。文藝春秋を創り育てた絶妙のコンビ。作家であり出版人であった両者の人と作品を捉え直す待望の書。


丸谷 才一・山崎 正和 (まるやさいいち・やまざきまさかず)
「日本の町」
(にほんのまち)


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*283頁
*発行 1994年
*カバー・安野光雅

*カバー文
前田利家はなぜ隻眼の肖像を描かせなかったか? 笹かまぼことてんぷらの関係。京都人が瀬戸内の魚を食べないわけ ―― 。金沢、小樽、宇和島、長崎、弘前……。日本の八つの町を選び、その町をその町たらしめているものは何かを、風土、歴史、文学から探る。座談の名手二人がおくる、造詣深いオシャベリ都市論。

*目次
金沢 ―― 江戸よりも江戸的な
 前田利家の両目 / 内治政策としての文化 / 「江戸」が生きている / 大国のゆたかさ / ゴリをめぐる考察 / すごみのある底力

小樽 ―― 「近代」への郷愁
 哀しい響きのある地名 / 三つの双生児都市 / 近代百年の博物館 / 運河問題を考える / 「廃墟の美」について / 小樽が生きぬくために

宇和島 ―― 海のエネルギー
 海に面した城下町 / 不思議な豊かさ / 仙台的なものとの関係 / 残躯な天の赦す所 / 御霊信仰と山家清兵衛 / 一言居士の血筋 / 「理想の国家」の風景

長崎 ―― エトランジェの坂道
 歌謡曲がよんだ長崎の雨 / グラバーの大きな賭け / 人工性の強い港町 / ミツブシの城下町 / 遊んでいてもいい世界 / 長崎生まれの人びと / 甘味が重要な料理の要素 / 唐寺めぐりの楽しさ

西宮 芦屋 ―― 女たちがつくった町
 消えた葱畑 / 商品としての地方主義 / 野崎観音のCMソング / ハイカラということ / 影が薄い男たち / イメージの伝統を売る / 文化産業の町 / 「阪神文化」と「阪急文化」 / “漫画球団”タイガース / ブルジョアジーの化石

弘前 ―― 東北的なもの
 明るさとのびやかさ / 宮廷の文化が残っている / 雅びでやさしい言葉 / 相撲・ねぶた・棟方志巧 / 一種の宇宙感覚がある / 「寡黙な東北人」は間違い / 地域文化の真の姿 / 文化が重層的であるということ

松江 ―― 「出雲」論
 審美的な風景美 / 浄土真宗と出雲 / 感動的な神魂神社 / 大国主命と山中鹿之介 / 大和朝廷からみた出雲 / 塩谷判官伝説の運命 / 文学者の出にくい土壌 / 女性によって立つ国 / 懐しさを誘う地形 / 西洋人に理解されぬ人間像 / 書かれなかった航海日誌 / 日本の散文は小説家が作った / 日本の国酒は清酒か? / 繊細な明治建築、興雲閣

東京 ―― 富士の見える町
 富士山を中心にしてできた町 / 古代呪術と農村封建制の共存 / 「でこぼこ」のもつ意味 / 火事は江戸を浄めた / 村が複合した都市 / なぜ水を捨ててしまったのか / 統一感を獲得できるか / 東京人の慎みとエネルギー

解説 川本三郎


丸谷 才一・著 和田 誠・絵 (まるやさいいち・わだまこと)
「猫のつもりが虎」
(ねこのつもりがとら)


*カバー・和田 誠
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*156頁
*発行 2009年

*カバー文
ベルトとズボンの歴史的背景に思いを馳せ、テニスのラヴとloveの関係を研究する。また、グレタ・ガルボの足の大きさについて考えたり、夏目漱石の原稿をもらった編集者は何と言ってほめただろうかを推察。さらに、日本美を「単純美」と「ゴチヤゴチヤ美」に分けて論じてみたり、どこにでも食指を動かす知的好奇心。

*目次
ベルトの研究 / 男のスカート / 冬のアイス・クリーム / 絵を買ふ / 提案三つ / 批評の必要 / 驢馬の耳 / ある日のこと / あの大阪の運転手 / ガルボ伝説 / 故郷の味 / 四十八手 / ポルトガルの米料理 / 歴史的叙情 / 夜中の喝采 / エジプトの女王 / 日本デザイン論序説 / 解説 藤森照信