絶版文庫書誌集成

文春文庫
【さ】


斎藤 真一 (さいとうしんいち)
「吉原炎上」
 (よしわらえんじょう)


(画像はクリックで拡大します)

*187頁
*発行 1987年
*カバー装画・斎藤真一

*カバー文
明治20年、18歳で東京の吉原遊廓に身売りした、岡山の没落士族の娘・内田久野。前の年に別れた恋人・勇吉との再会だけを心のよすがに、遊女としての哀しい運命に耐えてひたむきに生きた、その姿を、開化期の廓風景の中に鮮やかに再現する。久野の義理の孫でもある画壇の鬼才が、10年の歳月をかけた鎮魂のドキュメント画文集。


斎藤 美奈子 (さいとうみなこ)
「モダンガール論」
(もだんがーるろん)


*カバー・大久保明子
(画像はクリックで拡大します)

*329頁 / 発行 2003年

*カバー文
女の子には出世の道が二つある! 社長になるか社長夫人になるか、キャリアウーマンか専業主婦か ―― 。職業的な達成と家庭的な幸福の間で揺れ動いた明治・大正・昭和の「モダンガール」たちは、20世紀の百年をどう生きたのか。近代女性の生き方を欲望史観で読み解き、21世紀に向けた女の子の生き方を探る。

*目次
 はじめに モダンガールの野望について
第一章 将来の夢、みつけた
  女学校に行かせて! / お嬢さんは職業婦人 / 主婦ほど素敵な商売はない
第二章 貧乏なんて大嫌い
  労働婦人ってなんだ / ネオンの街で生きぬく法 / みんな「働く主婦」だった
第三章 夢と現実のはざまで
  女性誌が教えてくれたこと / キレた彼女が立ち上がるとき / ああ、すばらしき軍国婦人
第四章 高度成長の逆襲
  めざせOL、女子大生 / あなたも私も専業主婦 / 翔んでる女がぶつかった壁
終章 バブルが消えて、日が暮れて

 もっと知りたい人のための文献案内 / あとがき / 文庫版のためのちょっとした補足 / 解説 浅井良夫


斎藤 隆介 (さいとうりゅうすけ)
「職人衆昔ばなし」 
(しょくにんしゅうむかしばなし)


(画像はクリックで拡大します)

*404頁
*発行 1979年
*カバー写真・高野松山作「乾漆魚紋盛器」

*カバー文
現代生活の忙しさにまぎれ、滅び去らんとする職人世界の伝統を守り続けて、腕と意地とを貫き通した27人の職人衆たちの燻し銀のように重厚な芸談集。現在は殆ど物故された名人たちだが、その体験談は未来にも通ずる貴重なものを含んでいる。口の重い名人気質の職人から、興味深い話を巧みに引出した聞書の傑作。

*目次
序・福田恆存
大寅(だいとら)道具ばなし / 仙太郎大工自慢ばなし / 地蔵の富さん聞き書抄 / 指物師恒造放談 / 九十に四年の指物師 / 勇みのめ組の組頭 / 思楽(しらく)老コテばなし / 畳屋恵さん昔話 / 茂作老瓦談義 / 石勝老人回顧談 / 庭師十基・秋の夜語り / ぬし屋名人・信太郎 / 「ハマのペンキ屋」磯崎老 / 竹の生きる尚月斎 / 家具木工の二郎さん / 国会演壇を彫った人 / ギヤマンの虹を大衆へ / 飾り職最後の人 / 人間国宝・松山蒔絵ばなし / 螺鈿師・華江(かこう)夜話 / 鶴心堂表具ばなし / 多聞堂(たもんどう)四代 / 台湾ホネ屋・陳乞朋(タンキチピュン) / 重さん理事長チン談義 / 首がついてた辰次郎 / 二代目源さん組子噺 / 売らない大工道具店
あとがき / 文庫版あとがき

親本

(画像はクリックで拡大します)

文藝春秋
*単行本
*382頁
*発行 1967年
*カバー題字・著者 / 函写真・高野松山作「乾漆魚紋盛器」

*帯文
人間国宝から市井の大工まで
亡びゆく伝統に人生をかけた
職人たち27人のなまの告白!
 序文・福田恆存


柴門 ふみ (さいもんふみ)
「ぶつぞう入門」
 (ぶつぞうにゅうもん)


(画像はクリックで拡大します)

*285頁 / 発行 2005年
*イラスト・柴門ふみ / デザイン・斎藤深雪

*カバー文
驚くほど贅沢な旅でした。京都、奈良、鎌倉、東北……と日本各地のお寺を訪ね歩いて、紅葉や桜を愛でつつ、名産品に舌鼓を打ち、拝み倒した仏像は数千体にも及びます。「松嶋菜々子やニコラス・ケイジに似てる!」と断じながら、聖徳太子や空海や運慶にも身近に触れて、まさに極楽気分。瀬戸内寂聴さんとの対談もお愉しみに。

*目次
広隆寺、清水寺の御本尊 / 法隆寺と聖徳太子 / 大阪の秘仏たち / 興福寺国宝特別公開 / 東寺、三十三間堂 / 仏像のエロティシズム / 奈良飛鳥の古寺 / 鎌倉大仏を訪ねて / 若き運慶の傑作 / 快慶様式の骨太さ / 京都の隠れた名品 / 空海さんの偉業 / 高野山と道成寺 / 東北仏像の旅 / 東大寺のすべて / 究極の十一面観音 / 我が心のベストテン
瀬戸内寂聴さんに聞く / お寺案内


坂本 龍一・天童 荒太 (さかもとりゅういち・てんどうあらた)
「少年とアフリカ 音楽と物語、いのちと暴力をめぐる対話」
(しょうねんとあふりか)


*カバー写真・CORBIS CORE/amana images
 Learning about Africa
 デザイン・岩瀬聡
(画像はクリックで拡大します)

*285頁 / 発行 2004年

*カバー文
いま、私たちを取り巻く世界にあふれる暴力と無関心、そして若者たちの孤独……。ベストセラー『永遠の仔』をめぐって出会った二人の表現者が、それぞれの生い立ちや創作世界を通じて救いの在り処を探す、真摯な対話集。文庫化にあたり新たに一章を追加、9・11以降の世界の諸相を縦横に語り合った2004年バージョン。

*目次
癒さない音楽 坂本龍一
T 少年
U アフリカ
V イグノランス
見えない支え 天童荒太
文庫版あとがきにかえて 天童荒太


笹沢 左保 (ささざわさほ)
「雪に花散る奥州路」 (ゆきにはなちるおうしゅうじ)


(画像はクリックで拡大します)

*266頁
*発行 1982年
*カバー・熊谷博人

*カバー文
街道シリーズのうち「雪に花散る奥州路」「狂女が唄う信州路」「木ッ端が燃えた上州路」「峠に哭いた甲州路」の四作を収めた本篇にこそ時代小説界に旋風をまき起こした“笹沢股旅もの”の真骨頂がもっともよく現われている……ニヒルな渡世人を主人公に、推理的手法を駆使して物語を展開、非情な男の世界を描く。

*解説頁・武蔵野次郎


笹山 敬輔 (ささやまけいすけ)
「昭和芸人 七人の最期」
(しょうわげいにんしちにんのさいご)


*デザイン・城井文平
(画像はクリックで拡大します)

*249頁 / 発行 2016年

*カバー文
笑いの裏側にある悲哀の晩年。「同情されたらおしまい」が口癖のエノケン、浴びせられる悪口を日記に残すロッパ、選挙落選で人気も急落した石田一松、コンビ再結成を夢みたエンタツ……。先輩芸人の見事な最期を語った伊東四朗インタビューも収録。ただ消え去ることを許されなかった、七人の男たち。文庫書き下ろし傑作列伝。

*目次
 プロローグ
第一章 榎本健一・65歳没 片脚の宙返り
 喜劇王の戦後 / 笑いとスピード / 笑いと音楽 / 最初の躓き / 喜劇人は同情されたらおしまい / 晩年のエノケン / 最期の一年
第二章 古川ロッパ・57歳没 インテリ芸人の孤独
 ロッパとタモリ / エノケンを抜いた日 / ロッパの戦争 / 軽演劇の没落 / 運命の日 / 復讐を誓う日々 / しびれるような屈辱 / 最期の一年
第三章 横山エンタツ・74歳没 運命のコンビ解散
 たった四年のコンビ / 「漫才」の誕生 / 「キミ」と「ボク」 / コンビ解消の謎 / 敗戦後の大阪 / それぞれの戦後 / アチャコの生涯 / 最期の一年
第四章 石田一松・53歳没 自惚れた歌ネタ芸人
 「タレント議員」事始 / もう一つの「演歌」の系譜 / 演歌師としての一松 / 戦時下の芸人 / 政治家としての一松 / ヒロポン中毒 / 落選のあと / 最期の一年「」
第五章 清水金一・54歳没 主役しかできない人
 浅草の栄枯盛衰 / もう一人の「キンちゃん」 / 浅草に戻ってきた芸人 / 思い出の中の浅草 / 主役しかできない人 / 最期の一年
第六章 柳家金語楼・71歳没 元祖テレビ芸人の帰る家
 テレビ白痴論 / もう一人の「喜劇王」 / テレビの誕生 / 「リアクション芸人」第一号 / 金もなく家も無し / 最期の一年
第七章 トニー谷・69歳没 占領下が生んだコメディアン
 昭和の太陽が沈むそばで / 「植民地ニッポン」の芸人 / 戦後のドサクサに紛れて / 嫌われ芸人のパイオニア / 「トニーのおじさん、がんばって!」 / トニー谷と江戸 / 最期の一年
特別インタビュー 最後の喜劇人、芸人の最期を語る ── 伊東四朗
 エピローグ / あとがき / 参考文献&ブックガイド


佐野 眞一 (さのしんいち)
「巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀(上下)」
(きょかいでん)


*カバー・大久保明子
(画像はクリックで拡大します)

*上 550頁・下 490頁 / 発行 2000年

*カバー文

九回裏、背番号3・長嶋の放ったサヨナラホームラン ── 昭和三十四年、昭和天皇を迎えた“天覧試合”の劇的な幕切れは、その時天皇の背後に座っていた一人の老人にとって過去の恥辱を雪ぐことを意味した。その男・正力松太郎。読売新聞、日本テレビ、巨人軍の上に君臨し、大衆の欲望を吸いつくした男を描く大河ノンフィクションの傑作。

のちの昭和天皇を狙ったテロリストの一発の銃弾によって警視庁を免官となった正力は、戦後、読売を部数日本一に押し上げ、日本プロ野球生みの親、民放テレビの始祖、原発のパイオニアとして華々しい復活を遂げる。だが輝かしい正力神話の裏には、決して顧みられることのなかった影武者たちの働きが常にあった。

*目次

プロローグ
第一章 暴圧と故郷 青白いガス燈の下、血だらけで立つ正力
第二章 虐殺と伝令 伊藤博文愛用のステッキから凶弾一発
第三章 美談と略奪 武者ぶるいして読売に乗り込む
第四章 社旗と伝説 新聞の生命はグロチックとエロテスク
第五章 疑獄と遭難 正力テロ事件、六十年目の真相
第六章 不倫と絹糸 サヨナラ・ホームランをみた摂政宮
第七章 転向と墓銘 笑顔よしの沢村から微笑が消えた
第八章 決起と入獄 共産党の手に渡るなら読売をつぶせ!
第九章 祝宴と嫉妬 笹川良一がハダカで正力に説いた「浴槽の美学」

第十章 復権と球場 シベリアの水源を救え
第十一章 国土と電影 “正力テレビ”が生んだ英雄・力道山
第十二章 原発と総裁 「核燃料」を「ガイ燃料」という“原発の父”
第十三章 発火と国策 ウラン爺さん、人形峠に踊る
第十四章 天皇と興行 読売巨人軍は男芸者か
第十五章 宿業と花輪 「もういい」と臨終の一言
第十六章 蓋棺と磁力 いまも大魔王が生きている
エピローグ


沢田 隆治 (さわだりゅうじ)
「上方芸能列伝」 (かみがたげいのうれつでん)


(画像はクリックで拡大します)

*315頁 / 発行 1996年

*カバー文
「てなもんや三度笠」「スチャラカ社員」「花王名人劇場」などなど、コメディ番組の演出二千本。数々のヒット番組を世に送り出した名プロデューサーが、大阪で活躍する芸人を通して上方芸能の真髄を探る体験的芸能史。日本中を笑いでつつんだ“笑売人”たちの、笑いながらも泣けてくる波瀾にみちた生涯 ― 血と涙の十一の秘話。

*目次
エンタツ・アチャコの黄金時代
名コンビダイマル・ラケットの復活
ミヤコ蝶々・南都雄二の『漫才学校』
“ぼやき漫才”の元祖・都家文雄
別格の二枚目俳優・高田浩吉
浪漫リズムの暁伸・ミスハワイ
不運なり! ルーキー新一
吉本興業の首領・林正之助
“どつき漫才”正司敏江・玲児
九十歳の喜劇役者・曽我廼家五郎八
毎度お騒がせ、やすし・きよし
  その一 日本一の漫才コンビ
  その二 横山やすし最後の漫才師
 あとがき
 文庫版のためのあとがき


澤地 久枝 (さわちひさえ)
「家計簿の中の昭和」
(かけいぼのなかのしょうわ)


*装丁・安野光雅
(画像はクリックで拡大します)

*251頁 / 発行 2009年

*カバー文
何十年もの間、著者は毎日の金銭の出入りを記録し続けてきた。旧満州からの引揚げの決算、戦後初めてかけたパーマ代、安保の年の結婚費用、向田邦子と旅した世界旅行の代金、石油危機の買溜め品、そして終の棲家の建築費 ── 。家計簿の中の数字を通して、昭和という時代を生き生きと描く珠玉のエッセイ集。

*目次
第一章 貧乏物語ではなく…… / 第二章 満州引揚げの決算 / 第三章 はじまりの五厘硬貨 / 第四章 パーマと「電髪」 / 第五章 大家になる / 第六章 作家の助手生活 / 第七章 きもの入門の記 / 第八章 祖母の弔い / 第九章 母との二人旅 / 第十章 平和還る / 第十一章 三度の心臓手術 / 第十二章 デビュー作のころ / 第十三章 都電今昔ものがたり / 第十四章 五味川さんの闘病 / 第十五章 安保の年の結婚式 / 第十六章 向田さんとの旅日記から / 第十七章 石油危機と買占めの日々 / 第十八章 一六銀行 / 第十九章 終の棲家を買う / 第二十章 借金完済の日 / あとがき / 文庫版あとがき / 解説 関川夏央