絶版文庫書誌集成

文春文庫
【し】


塩田 潮 (しおたうしお)
「安岡正篤 ― 昭和の教祖」
 (やすおかまさひろ)


*カバー・小泉弘
(画像はクリックで拡大します)

*278頁 / 発行 1994年

*カバー文
安岡氏は1983年12月13日に死去した。それからすでに10年余の年月が経過しているが、いまだに世の安岡熱は衰えを知らない。その人気の秘密は、多くの人たちが、組織のなかで人の上に立ったり、ある世界でリーダーとなった場合に、安岡氏の教えのなかから出処進退の心得を学び取りたいと思っているからだ。

*目次
序章 「平成」の発案者
第一章 傍流・中曾根康弘
第二章 終戦の詔勅
第三章 「南朝の後裔」
第四章 右翼の源流
第五章 「白足袋の運動家」
第六章 「老師」と呼ばれた男
第七章 歴代総理の指南番
第八章 本流の守り札
終章 老いらくの恋
 文庫版のためのあとがき
 解説 岩見隆夫


獅子 文六 (ししぶんろく)
「食味歳時記」
 (しょくみさいじき)


*カバー写真・春内順一
 A,D・竹内和重

(画像はクリックで拡大します)

*248頁 / 発行 1979年年

*カバー文
日本ほど四季折り折りの“味”が微妙に変化する国はあるまい。演劇に文学に鋭いエスプリを有していた著者が、その批評眼を舌にうつして描いた文明論的味覚随筆。軽妙洒脱な文章で体験を語る各章は人生の世代、世代で異なる味覚の変化を見事に把えて、一種の老人学入門ともなり、もはやこの種随筆の古典である。解説・神吉拓郎

*目次
食味歳時記
 キントンその他 / 貧寒の月というけれど / 貝類なぞ / 春爛漫 / 美しき五月 / 涼しき味 / 議論 / 今朝の秋 / 実る / 熟す / 鍋
食味随筆
 米の味 / 魚の味 / 菊印のマッチ / 醤油 / 胡瓜 / 桃 / 心をこめたオカラ / 馬のウマさ / 馬肉 / 明治の京都 / 神戸と私 / 辻留讃 / 麩まんじゅう / 越後屋 / カルメラ / 名月とソバの会 / パーティー下手 / 愛茶弁 / ハイカラな人逝く / 中華街 / 白魚 / 大統領とコック / 鏡開き / サラダの水切り / あとがき / 解説 … 神吉拓郎


澁澤 龍彦 (しぶさわたつひこ)
「高丘親王航海記」
(たかおかしんのうこうかいき)


*カバー・菊池信義
(画像はクリックで拡大します)

*253頁
*発行 1990年

*カバー文
貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。幼時から父平城帝の寵姫藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病んで考えたことは……。遺作となった読売文学賞受賞作。

*解説頁・高橋克彦



澁澤 龍彦・巌谷 国士 (しぶさわたつひこ・いわやくにお)
「裸婦の中の裸婦」
(らふのなかのらふ)


*カバー写真・paul DELVAUX:La voix publique
 装丁・大久保明子
(画像はクリックで拡大します)

*190頁 / 発行 1997年

*カバー文
この『裸婦の中の裸婦』で、架空の対話者たちは、旧来の美術史にとらわれず、ときには現代人の心理分析、文明批評などをまじえつつ、気ままに気楽に作品を鑑賞している。遊び半分でいながら何か本質的なことに届いているような精妙な語り口に、晩年の澁澤龍彦の円熟ぶりが見えるといってもいいだろう。

*目次
1.幼虫としての女
 バルチェス / スカーフを持つ裸婦
2.エレガントな女
 ルーカス・クラナッハ / ウェヌスとアモル
3.(ろう)たけた女
 ブロンツィーノ / 愛と時のアレゴリー
4.水浴する女
 フェリックス・ヴァロットン / 海と女
5.うしろ向きの女
 ベラスケス / 鏡を見るウェヌス
6.痩せっぽちの女
 百武兼行 / 裸婦
7.ロココの女
 ワットー / パリスの審判
8.デカダンな女
 ヘルムート・ニュートン / 裸婦
9.両性具有の女
 眠るヘルマフロディトス
10.夢のなかの女
 デルヴォー / 民衆の声
11.美少年としての女
 四谷シモン / 少女の人形
12.さまざまな女たち
 アングル / トルコ風呂
 あとがき / 文庫版解説
1.〜9.澁澤龍彦著 / 10.〜12.巌谷国士著


子母澤 寛 (しもざわかん)
「剣客物語」
 (けんかくものがたり)


*カバー・北沢知己
(画像はクリックで拡大します)

*265頁 / 発行 1988年

*カバー文
伊庭八郎、榊原鍵吉、本目縫之助。……近藤、土方も三舎を避ける腕をもちながら、落日の幕府と運命を倶にした剣士たち。藩主井伊直弼の墓守りをして一生を終え、死後、直弼の墓の隣りに葬られた井伊家の微臣。彰義隊遺聞等々、滅びゆくものに限りなき愛着と哀悼を寄せる彰義隊生き残りの孫たる著者の挽歌集。

*目次
雪の中の燕
今紫物語
おじ様お手が
奇女のぶ
彰義隊の丼
むかし小判の落葉
宵のしらたま
剣客物語
 西から来た男 / 他流試合 / 花と花 / 小稲のこと / 日本一のもの / 雲
落葉
謙道老師年譜
 解説 磯貝勝太郎


子母澤 寛 (しもざわかん)
「幕末奇談」
 (ばくまつきだん)


(画像はクリックで拡大します)

*344頁
*発行 1989年
*カバー・柴永文夫

*カバー文
新選組が大活躍した心はずむ話から、幕軍生き残りが官軍に追いたてられる哀話、また番町皿屋敷伝説の真実など、古老の話をひとつひとつ拾い集める。権力の側からの高みにたった発想や判断はかけらもなく、市井に生き抜く者の温かい心情や心の生命に対する強い共鳴に満ちあふれたヒューマンなエッセイ集。

*解説頁・松島栄一

新書本

(画像はクリックで拡大します)


桃源社新書
*311頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
 鎌倉幕府開府以来五百数十年続いた封建社会に終止符を打ち、近代社会へと脱皮するべく激動の波が渦巻く幕末期を芝居、映画、テレビ等々では潤色され、歪曲されて伝えられていつ……諸般、諸事を明らかにするため大政奉還前後の各藩の動向と、新徴組、新撰組、彰義隊をめぐる著者のいう小説のタネになりそうな逸事を、たくみな語り口で綴り、併せて稀覯書「露宿洞雑筆」を収録した幕末研究に欠かせぬ貴重な幕末研究エッセー。

*目次
第一部
幕末研究
第二部
〈露宿洞雑筆〉 / 小金井小次郎の臨終 / 十四歳の介錯人 / 桜下に人を斬る / 名君 / 小便 / 旅人 / 小笠原壱岐守 / 妓夫仁義 / 戸ケ崎熊太郎 / 大石進とちんばの孝吉 / 近藤周助邦武 / あたけ丸事件 / 皿屋舗弁疑録 / 権助、女中、行水 / のっぺらぼう / 小平次因果噺 / 小豆ばかり屋敷 / 貞女お岩 / 池田侯分家 / 甲斐屋敷の血糊餅 / 武兵衛家出 / 宇治の間 / 女中自害 / 武林唯七と蝦 / 頻霞荘雑記 / 古老ばなし / 新徴組雑事 / 佐久間象山の伜 / 南窓閑話 / 逃げる旗本の記
 記

子母澤 寛 (しもざわかん)
「脇役」
 (わきやく)


(画像はクリックで拡大します)

*254頁 / 発行 1989年
*カバー・花村広

*カバー文
上野、箱館の戦いに敗れてのち二度と世に出ることを望まず、江戸の陋巷に身をひそめる者、遥か遠く酷寒の蝦夷地へまで流れて行く者、一生アイヌ部落で暮すことを選んだ者……江戸、徳川家、幕臣たち、滅びゆくものへの共感を、彰義隊士の生き残りを祖父にもつ著者が哀惜の思いで綴る珠玉の短篇集。

*目次
脇役 / 厚田日記 / 名月記 / 丁斎塾始末 / 南へ向いた丘 / 玉瘤 / 解説 磯貝勝太郎


庄野 潤三 (しょうのじゅんぞう)
「山田さんの鈴虫」
(やまださんのすずむし)


(画像はクリックで拡大します)

*287頁
*発行 2007年
*カバー画・成富小百合 / デザイン・大久保明子

*カバー文
今日も私は、庭の木に括りつけたかごの牛脂をつつきに来る四十雀を部屋の中から眺めている ── バラの花は例年のように蕾をつけ、鈴虫は「お帰りなさい」と夫婦を迎え、子や孫たちの便りがほほ笑みを運び込む。季節のめぐりのなかで変わらずに続く、老夫婦ふたりの静かで喜びに満ちた日々を描いた傑作長篇小説。解説・酒井順子


志ん朝一門 (しんちょういちもん)
「よって たかって古今亭志ん朝」
 (よってたかってここんていしんちょう)


*カバーデザイン・石崎健太郎
 カバー写真・丸山洋平

(画像はクリックで拡大します)


*296頁 / 発行 2008年

*カバー文
生前、他人にあまり自分の内面を見せることがなかった古今亭志ん朝。しかし一番身近にいた弟子たちがよってたかって師匠を語り尽くした結果、芸に厳しく、人間味豊かな名人の素顔が浮かび上がってきた!抱腹絶倒、ときにしんみり、師匠愛にあふれる男たちの酌めども尽きない語り口。

*目次
出会い
ただいま修業中
「師匠っ、稽古をお願いします」
しくじりもまた楽し
四つの落語会
一九七八年五月三遊協会旗揚げできず
突然の別れ
志ん朝がこだわったもの
 あとがき / 時代の区切り ― 文庫版あとがき / 主要演目一覧 / プロフィール


新藤 兼人 (しんどうかねと)
「小説 田中絹代」
(しょうせつたなかきぬよ)


*カバー・芝永文夫
(画像はクリックで拡大します)

*392頁 / 発行 1986年

*カバー文
日本映画女優史上、最高最大のスター、“銀幕の恋人”から円熟の演技派へ、女流監督第一号へと見事な変身をとげ、常に映画界の第1線にあったことの大女優は昭和52年春、67歳の生涯を終えた。看とる肉親とてない、孤独な最期だった。男性遍歴、肉親との確執を、感傷を排したリアリズムで赤裸々に描いた伝記文学の金字塔。

*目次
その死 / その愛 / その仕事 / その素顔 / 生い立ち / 松竹下加茂撮影所 / 松竹蒲田撮影所 / 恥しい夢 / 試験結婚 / 女優はシナリオが売り出す / 私はもう結婚いたしません / 絹代エロティシズム / サイレント映画には詩があった / お琴と佐助 / 絹代御殿 / 花も嵐もふみ越えて / 出会い / ムシ風呂の中の死闘 / フィルムがなくなった / 絹代はヤミ米で太った / 戦後がはじまった / 夜の女たち前後 / 老醜・田中絹代 / 絹代は貴婦人ではない / 老醜色気あり / 西鶴一代女と雨月物語 / ベニスの商人 / 絹代のアタマでは / 事件・月は上りぬ / 映画作家の死 / それでも生きなければ / たった一人になった / 栄光と孤独 / 女優の死
 あとがき / 参考資料 / 田中絹代年譜

*関連書(サイト内リンク)
古川薫 「花も嵐も ― 女優・田中絹代の生涯」 文春文庫