絶版文庫書誌集成

富士見書房・時代小説文庫 【わ】


鷲尾 雨工 (わしおうこう)
「続・織田信長」(全三巻)
 (ぞくおだのぶなが)

  
*カバー装画・柳澤達朗 カバーデザイン・熊谷博人 (画像はクリックで拡大します)

*一巻329頁・二巻297頁・三巻295頁
*発行 平成4年

*カバー文
一巻
「珠姫どの!」さずがに森乱丸は声がふるえた。「お聞きくださいませ、心のたけを!」嫋々と秋波を送る。(おう、これが男子か!) ― 信長の寵愛を受け輝かしい将来のある乱丸だが、明智光秀の末姫・珠姫にはたまらなくいやだった。
 竹中半兵衛、黒田官兵衛という知恵袋を家臣にした秀吉を、中国の毛利と対峙させた信長は、石山本願寺を攻めて、畿内一円を手中に治めたが…。
 NHK大河ドラマ・織田信長の波乱の後半生と魅力を描いた戦国絵巻。待望の続篇刊行スタート!

二巻
 駆ける、駆ける! ― 門閥を無視する事、格式を打破する事、あらゆる習慣を遠慮会釈なしにぶちこわすのが自分の時代精神であると感じていた信長は上御一人と己れを別にして皆平等と信じ、戦国の世を駆けぬける!
「わしは天下を信忠にゆずって大坂の新城に移ろう」「ほう、それはまたお早すぎるご隠居で?」と家康が言った。「いや、尾張から西は信忠に、東日本は貴殿に、大坂を根城にわしは秀吉を先鋒に勝家を中軍に光秀を殿軍にして大海原を越えようと思う」が、思わぬ敵がその刃を光らせていた……。

三巻
(もうこの辺で娑婆とさよならするかな?) ― 信長の心はすっかり澄み渡り、一抹の曇りもない。(いやもう少し ― )信長はなお射続けた。(俺がこれほど弓が巧いとは! この死際まで思わなかった。)が、次の瞬間(家康! 羽柴よ! 俺は今死ぬのだ!)
 明智光秀の謀反により不出世の英雄・織田信長は炎に包まれた本能寺でその波乱の生涯を閉じた。
 悲報を聞いた秀吉は中国の毛利と講和し、光秀を討つため全軍を姫路にかえした。又もや、世は乱れ、新たな覇者が誕生しようとしていた。 

*解説頁・塩浦林也(第三巻収録)


鷲尾 雨工 (わしおうこう)
「日本剣豪伝」 (にほんけんごうでん)


(画像はクリックで拡大します)

*376頁 / 発行 平成4年
*カバー装画・柳澤達朗 カバーデザイン・熊谷博人

*カバー文
 ピタリ! 鮮やかに鋩子尖が停まった。鼠を斬ろうとした北畠具教卿は斬るのを止めた。太刀先より速く心が動いて心機が一転したからだ。「お見事! その心!」襖口で微笑む塚原卜伝。「斬れば斬れるものを斬らぬ心 ―― それで御座るぞ!」「およそ一個の太刀にて ―― 一の位と申すは天の時 ―― 一つの太刀と申すは地の理 ―― 一つの太刀と申すは、即ち人物の巧に結びつく!」と秘義を伝授した。
 宮本武蔵、荒木又右衛門、柳生宗厳、上泉信綱ら剣聖、剣豪にまつわる秘話や剣法の起源、奥儀、秘法を描いた傑作列伝集。

*目次
塚原卜伝 / 伊藤一刀斎 / 神子上典膳 / 柳生宗厳 / 荒木又右衛門 / 諸岡一羽 / 上泉信綱 / 宮本武蔵 / 解説 武蔵野次郎


鷲尾 雨工 (わしおうこう)
「吉野朝太平記〈全五巻〉」
 (よしのちょうたいへいき)


(画像はクリックで拡大します)


〈一〉
*376頁 / 発行 平成2年
*カバー装画・中島千波

*カバー文
「美しゅうなったの」と会釈をすませた敷妙に虎夜叉(楠正儀)は言った。「そなたの苦労は察しておる…」
 正儀の愛人・敷妙は足利尊氏の庶子・直冬の愛妾となり、高師直と対立させ足利方の乱れを誘う。
 楠正成亡き後、南朝の中心となり戦う兄・正行とは性格を異にする正儀は変節漢で謎に包まれた人物。その正儀を中心に動乱うずまく南北朝を豊かな構想のもとに描いた歴史大作! 第2回直木賞受賞。

(画像はクリックで拡大します)

〈二〉
*372頁 / 発行 1990年
*カバー装画・中島千波 

*カバー文
高師直が引き寄せようとするのを敷妙は身をくねらせて拒んだ。四条畷の激戦で楠正行、正時兄弟の首を討ち取った師直は大和から吉野へと兵を進めていた。吉野朝廷が穴生へ御動座しているとも知らずに。もぬけの空の吉野山の炎があがった。東条城で正儀は敵陣の意表をつく策略をめぐらせていた。謎の町人唐土屋、楠八忍衆の変幻極りない活躍がいよいよ面白い第2巻。直木賞受賞作。

(画像はクリックで拡大します)

〈三〉
*398頁 / 発行 1991年
*カバー装画・中島千波 

*カバー文
高師直は死んだ。尊氏と直義の間は険悪になっていた。楠正儀の愛妄敷妙は再び九州の直冬のもとへ。中国の豪族・赤松則祐は南朝に降参した。直義はもはや直冬の援軍を望めなかった。尊氏は偽りの降参を南朝に乞い、直義討伐の勅命をうけ、鎌倉に下った直義を殺害した。尊氏の留守をねらう正儀。大政は南朝に還えり、京都奪還に成功したかに見えたが…。南北朝時代という歴史の空白期を描いた直木賞受賞の代表歴史大作、いよいよ佳境。

(画像はクリックで拡大します)

〈四〉
*324頁 / 発行 1991年
*カバー装画・中島千波 

*カバー文
京都を手中にした正儀であったが、北畠親房は病める身、頼みとする赤松側祐はいつ裏切るとも知れず、近江に落ちた足利義詮は5万の大軍をもって京都にせまっていた。正儀はついに京を捨て、北朝方の三上皇らと三種の神器を南朝方に連れ去った。一方、足利尊氏は病いに伏していた…。NHK大河ドラマ舞台・混迷をきわめる南北朝時代の戦いと愛を見事に描いた、直木賞受賞の大作。

(画像はクリックで拡大します)

〈五〉
*423頁 / 発行 1991年
*カバー装画・中島千波 

*カバー文

 後醍醐天皇、楠正成、正行、大塔宮、高師直、足利直義はすでに他界。北畠親房、そして足利尊氏も死を迎えようとしていた……。
 NHK大河ドラマの舞台・複雑な権力抗争がうずまいた南北朝! その時代を背景に、目的のため手段を選ばず、時には北朝方の武将と手を結び、時には愛人を敵方に送りこむ楠正儀の南北朝合一に命をかけた生涯を描いた直木賞受賞の歴史大作、遂に完結!

*巻末頁
鷲尾雨工年表 塩浦林也
解説 尾崎秀樹