絶版文庫書誌集成

福武文庫 【か行】
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【か】
葛西善蔵著 阿部昭編 (かさいぜんぞう・あべあきら)
「葛西善蔵随想集」
(かさいぜんぞうずいそうしゅう)


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*286頁
*発行 1986年

*目録文
酒と芸術と貧窮に呻吟輾転しつつ、苛烈な文学精神に生きた稀代の詩人作家・葛西善蔵の不覊奔放の名随筆30編! 解説・阿部昭

*葛西善蔵略年譜付き


加藤 治子 (かとうはるこ)
「ひとりのおんな」


*カバー装丁・鈴木正道
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*177頁
*発行 1995年

*カバー文
「今いる人もいなくなった人も、全部ひっくるめて自分のまわりの人たちだと思うし、手を伸ばせば届くところに、何十年前の日々があるっていうのが人生だと思うんです。頭が忘れるっていうことはあっても、心が忘れるっていうことはないんです」(本文より)。私生児としての出自、夫・加藤道夫の縊死、向田邦子との交流など、女優・加藤治子がその半生を語る久世光彦とのたおやかな対話。

*目次
第一章 孤りにはなれているわ
第二章 私を残していった人たち
第三章 恭々しき女優
第四章 向田邦子さんの遺してくれたもの
第五章 昔のこと今のこと
第六章 文学座で教わったこと
あとがき
 インタビュー・構成 久世光彦


金井 美恵子 (かないみえこ)
「あかるい部屋のなかで」
(あかるいへやのなかで)


*写真協力・広瀬プロダクション
 「映画というささやかな商売の栄華と衰退」
 ジャン=リュック・ゴダール
 カバー装丁・金井久美子
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*212頁 / 発行 1995年

*カバー文
「自分の小説のある部分を、自分が書いたのだということをすっかり忘れ果て、うっとり読んでします瞬間をもってしまう程なのだが、そういう鼻持ちならないタイプの作者には、読者など本質的に必要ないのだろう、と考えるのは早計というものであり、書かれた作品が何を欲望しているのかといえば、読まれること以外のなにものでもない」 ―― ゆらめく光のような日常を、言葉の音楽が奏でる短篇小説集。

*目次
あかるい部屋のなかで
 あかるい部屋のなかで
 あおじろい炎
 *
砂の粒

家族アルバム
静かな日々
マティーニの注文の仕方
 *
鎮静剤
向う側
ゆるやかな午後
 *
 単行本あとがき、あるいは〈うぬぼれ〉について
  快楽と倦怠

 解説 芳川泰久


上垣外 憲一 (かみがいとけんいち)
「天孫降臨の道」
(てんそんこうりんのみち)


*装丁・菊地信義
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*333頁 / 発行 1990年

*カバー文
日本の古代王朝を考察する上で欠くことのできない、朝鮮半島からの人の渡来の様相は、いまだに深い謎に満ちている。古代人が“歴史”として伝承してきた神話群が、象徴的に語っている史実とは? 日本の古代史を朝鮮半島との関係の中で融合し、記紀・三国史記などの記述から、秘められた交渉の歴史を読み解く。

*目次
はじめに
一 稲と鉄の道
 沖の島の女神 / 稲の道 / 楽浪に向う海上の道 / 鉄の道、青銅器の道 / 日本神話と朝鮮半島 / 加羅国の天降り神話 / 高天原神話と朝鮮半島 / 神武東征と鉄 / 出雲の繁栄と玉交易 / 脱解王の神話
 
二 巨大古墳と征服者の世紀
 ツヌガアラシト伝説と崇神天皇 / 崇神天皇の治世 ── 古墳・戸籍 / 膨張志向の精神 / イツツヒコ・イソタケル・イタテ / 下関の新羅系王朝 / 「延鳥郎と細鳥女」と天之日矛 / 二人の景行天皇 / 神功皇后とイツツヒコ王国の滅亡 / 古代船の構造 / 外交紛争事始 / 「仲哀紀」・「神巧紀」の記述 / 三種の神器 / 神木とタカミムスビ神

三 戦略と外交の世紀
 倭 ── 百済同盟の成立 / 近肖古王の同盟戦略 / 七枝刀 / “新羅征伐”の失敗 / 応神天皇 / 再び半島へ / 新羅の親高句羅策 / 馬の導入 / 服飾革命 / 王仁博士とウジノワキイラツコ / 二人の仁徳天皇

倭人と韓人 ── むすびに代えて / 再版へのあとがき / 引用文献表 / 文献注 / 解説 井上秀雄


柄谷 行人 (からたに こうじん)
「批評とポスト・モダン」
 (ひひょうとぽすともだん)


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*323頁 / 発行 1989年

*カバー文
ポスト・モダンの嵐は批評に何をもたらしたのか――閉ざされたシステムあるいは言説空間から《外部》に出るために、絶えずトポロジカルに移動し反転しつづける著者の批評活動を集成した注目の評論集。

*目次
1
批評とポスト・モダン / 無作為の権力 / モダニティの骨格
2
今ここへ ― 中上健次 / 物語のエイズ / 場所についての三章 / 根底の不在 ― 尹興吉『長雨』について / 梶井基次郎と『資本論』 / 仏教について ― 武田泰淳の評論 / 森敦の『意味の変容』 / 交通について / 文体について / 私と小林秀雄 / 懐疑的に語られた「夢」 / 『門』について / 『草枕』について / 安吾はわれわれの「ふるさと」である / 唐十郎の劇と小説
3
感じることと考えること / 反動的文学者 / 街の眺め / 占星学のこと / 断章 / 「反核アピールについて」再論 / ブタに生れかわる話 / 凡庸化するための方法 / 文科系の数学 / ポール・ド・マンの死 / テクノロジー
 解説 島田雅彦


木村 久邇典 (きむらくにのり)
「山本周五郎 ― 横浜時代」
 (やまもとしゅうごろう ― よこはまじだい)


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*392頁 / 発行 1990年

*カバー文
狷介孤高の姿勢を固守しつつ、己れの信じる道を一途に歩み続けた周五郎。―無名の文学青年時代から馬込文士村時代を経て、凄絶な晩年の苦闘を描く、三部作完結篇。

*目次
第一章 筋向かいの娘
第二章 うちのカミさん
第三章 カストリ焼酎時代
第四章 効きすぎた忠告
第五章 丘のうえの旅館
第六章 価値ある失敗作
第七章 夕日であれ朝日であれ
第八章 後半期のみち
第九章 みちのくの雨
第十章 青根秋色
第十一章 “岡場所”遍歴
第十二章 落葉の音も
第十三章 去年よりことし
第十四章 曲軒先生家出
第十五章 去るひと来るひと
第十六章 二段構えの灰皿
第十七章 体系への歩み
第十八章 終りの独白
第十九章 ブーム再来
第二十章 読点からの出発
山本周五郎略年譜 ― 横浜時代
解説 岡田正富


清岡 卓行 (きよおかたくゆき)
「大連港で」
(だいれんこうで)


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*369頁 / 発行 1995年
*カバー装丁・菊地信義 / カバー画・川久保悦子

*カバー文
アカシヤの大連の歴史、地理、風俗へ、自由に拡散してやまない連想が、そこで送った生活の哀歓と交錯しつつ、大連への愛という、運命的な一点に向かって求心する長篇小説。

*目次
序章 / 三十四年ぶりに / 大連市の範囲 / 大連ガラス製品工場 / 沙周路で / 青泥窪の川と橋 / 寺児溝 / 『鉄路の闘い』 / 中山広場から港湾橋 / 大連湾という町 / 「だいれん」か「たいれん」か / ある炎 / 庭の土 海辺の小石 / ダーリニの幻影 1 / ダーリニの幻影 2 / 野球という市民の夢 / 小銃とサーベル / 黄海の水平線のかなた / 大和尚山 / 単行本あとがき / 解説 武藤康史



【く】【け】

【こ】

コクトー著 
(Jean Cocteau)・澁澤 龍彦訳 (しぶさわたつひこ)
「大胯びらき」
 
(Le Grand ´Ecart / おおまたびらき)


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*217頁
*発行 1989年
*カバー写真・瀬尾明男

*カバー文
「愛し、愛される、これが理想である。ただし、同一人物について、という条件が必要だろう。」 ― 淡い光と影のなかを揺れまどう若者たちの姿を描いたみずみずしい青春小説。原題のLe Grand ´Ecartとはバレー用語で「両脚を広げて床にぴたりとつけること」であるが、幼い少年が一人の青年へと成長していく暗喩にもなっている。

*解説頁・「澁澤龍彦の翻訳について」出口裕弘


小松 和彦 (こまつかずひこ)
「神々の精神史」
(かみがみのせいしんし)


*カバー写真・翁面(丹生神社蔵)
 提供=国立能楽堂
 カバー装丁・菊池信義
*タイトルは金文字です。
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*378頁 / 発行 1992年

*カバー文
〈カミ〉を語ること ―― それは日本人の精神の歴史を語ることである。神話・伝説・昔話の構造分析を手がかりに日本文化の深層を明らかにし、柳田・折口以後の民俗学に鋭く問い直しを迫る記念碑的著作。

*目次
序 神々の棲む村
T 民話的想像力について
  民話的想像力とその背景 ――『江刺(えさし)郡昔話』の世界を探る
  神霊(かみ)の変装(やつし)と人間(ひと)の変装(やつし) ―― 昔話の構造論的素描
  怪物退治と異類婚姻 ―― 『御伽草子(おとぎぞうし)』の構造分析
  最後に笑う者 ―― 「物くさ太郎」にみる笑いとユーモア
U 民衆の思想について
  根元神としての翁 ―― 猿楽の翁と稲荷の翁を中心に
  世捨てと山中他界 ―― 山岳空間の認識論的構造
  海上他界の思想 ―― 「うつぼ舟」を中心に
  屍愛(しあい)譚をめぐって ―― 伊弉諾(いざなき)・伊弉冉(いざなみ)二神の冥界譚を中心に
  国占めと国譲りをめぐって ―― 日本神話における占有儀礼
V 筑土鈴寛の世界
  筑土鈴寛(つくどれいかん)の民俗学 ―― 異端のフォークロア
  日本的記述の方法 ―― 筑土鈴寛論拾遺
  筑土鈴寛と超世の霊童 ―― 筑土鈴寛論拾補

  旧版あとがき
  増補新版あとがき
  文庫版あとがき
  解説 ―― 歴史 / 民俗学 / 方法 赤坂憲雄