絶版文庫書誌集成

角川文庫 【い】

イエーツ (William Butler Yeats) 松村みね子・訳
「鷹の井戸」 
(たかのいど)


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*95頁・旧仮名旧字体
*発行 1953年
*カバー画像・
「リバイバルコレクション」版カバー・平成元年刊

*カバー文
本書は、わが国の能舞台にヒントをえた作品として広く知られる。
古色ゆたかなアイルランドに生をえた薄明の詩人イエーツがケルト神話をもとに描いた幻想と神秘の物語。


池田 亀鑑 (いけだきかん)
「平安朝の生活と文学」
 (へいあんちょうのせいかつとぶんがく)


*カバー・栃折久美子
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*254頁 / 発行 昭和39年

*カバー文
平安朝文学の母胎となった後宮生活の実態は明らかでない部分が多い。本書は源氏物語・枕草子など当代作品をはじめ古記録を材料に、宮廷生活について具体的に概説したもの。当時の絵巻物から図版20数葉を選び、視覚の面から読者の理解を助けるよう留意した。物語・日記文学の読者・研究者の座右に欠かせぬ王朝文学研究必携。

*目次
第一章 平安京 / 第二章 後宮の制度 / 第三章 後宮の女性 / 第四章 後宮の殿舎 / 第五章 宮仕えの動機 / 第六章 宮廷の行事 / 第七章 公家の住宅 / 第八章 食事と食物 / 第九章 女性の一生 / 第十章 結婚の制度・風習 / 第十一章 懐妊と出産 / 第十二章 自然観照 / 第十三章 女性と服飾 / 第十四章 服飾美の表現 / 第十五章 女性美としての調度・車輿 / 第十六章 女性と容姿美 / 第十七章 整容の方法 / 第十八章 女性と教養 / 第十九章 生活と娯楽 / 第二十章 疾病と医療 / 第二十一章 葬送・服喪 / 第二十二章 女性と信仰 / 解説 石田穣二


池田 満寿夫画 / P・ヴェルレーヌ 詩 / 澁澤 龍彦 翻訳 (いけだますお / しぶさわたつひこ)
「詩画集 女と男」 (しがしゅうおんなとおとこ)


*カバー・山口昌弘
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*153頁 / 発行 1990年

*カバー文
だが何といっても、淫売よ
君らの尻とおめこにくらべたら
すべては物の数でない
その眺め、その味、その匂い
その手ざわりが
選ばれた者を君らの熱愛者たらしめる
破廉恥の神殿にして至聖所よ  (本文より)

私家本として秘密出版された発禁の書、赤裸々な性の享楽を描き、ヴェルレーヌとランボーのスキャンダラスな関係を告白した問題の書、隠語と符丁がちりばめられた宝石として輝やく情熱の詩集、幻のベストセラーの待望の文庫化。


池田 弥三郎 (いけだやさぶろう)
「日本故事物語」
(にほんこじものがたり)


*カバー・熊谷博人
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*318頁 / 発行 昭和48年

*カバー文
 長い間日本人の間に伝承されてきた故事・成句は、数限りなく多い。それは、短い言葉の中に盛られた庶民の知恵であり、人生の哲理をかぎ出す生活の哲学であった。たとえば、春秋の寒暑の季節感が、「厚さ寒さも彼岸まで」という成句を生み、ものごとに対するうかつなもの言いを、人々は、「口は禍の門」と戒めてきた。本書は、このような日常生活の中に脈搏つ故事・成句を、国文学の権威である著者が、その出典に溯り、「いわく因縁」を説き、「故事来歴」を書き記した興味尽きない好読物である。

*目次
 いわく因縁故事来歴 ―― 序にかえて
第一章 庶民の知恵
 爪に爪あり、爪に爪なし / なまりは国の手形 / 厚さ寒さも彼岸まで / 東男に京女 / 越後米搗き相模下女 / 京の着倒れ、大阪の食い倒れ / 桃栗三年柿八年 / 下り蜘蛛あれば人が来る / 朝焼けは雨、夕焼けは晴 / 男心と秋の空 / 親と月夜はいつもよい / 女やもめに花が咲く / 雀百まで踊り忘れず / 年は二八か二九からぬ / 鎮西八郎為朝の御宿 / くわばらくわばら
第二章 生活の哲学
 江戸っ子は五月の鯉の吹き流し / 月日の立つのは早いもの / 人生わずか五十年 / 金の切目が縁の切目 / 地獄の沙汰も金次第 / 悪女の深情 / 遠くて近きは男女の中 / 泣かぬ螢が身をこがす / 女房は灰小屋からもらえ / 律義者の子だくさん / 豆腐にかすがい / 灯台もと暗し / 負うた子に教えられて浅瀬を渡る / 芸は身を助ける / 栴檀は双葉よりかんばし / 弘法筆を択ばず / 花より団子 / 紺屋の白袴 / 柳は緑、花は紅
第三章 民間の知識
 牡丹に唐獅子竹に虎 / 東方朔は八千歳三浦の大介百六つ / 高い山から谷底見れば / いとこ同士は鴨の味 / 重ねておいて四つにする / まぶはひけ過ぎ / いすかのはしの食い違い / 鳶が鷹を生む / 二の舞を演ずる / 浜のまさご / あとの祭り / 岡目八目 / 洞が峠をきめこむ / 薩摩守 / 物臭太郎 / 土左衛門
第四章 大衆の教養
 内はほらほら、外はすぶすぶ / 阿漕が浦 / いざ鎌倉 / はらふくるるわざ / 飛鳥川の淵瀬 / ありのすさび / 子ゆえの闇 / 末の松山 / 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ / 濡れぬ先こそ露をもいとえ / 鐘に恨み / みんな主への心中立て / 義理の深えお兄さん / すまじきものは宮仕え / 三つ違いの兄さんと / 恋は曲者 / 忘れねばこと思い出さず候 / 枕のとが
第五章 言語の技術
 一ほめられて、二憎まれ / 一富士二鷹三茄子 / 一に俵をふんまえて / 怖れ入谷の鬼子母神 / 男は度胸で女は愛嬌 / 瓜売りが瓜売りに来て / 生麦生米生卵 / 弁慶がな、ぎなたを持って / 寿限無寿限無五却の摺切れ / いちが栄えた
あとがき / 文庫版あとがき


石井 桃子 (いしいももこ)
「ノンちゃん雲に乗る」
 (のんちゃんくもにのる)


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*302頁
*発行 昭和48年
*カバー装画・中川宗弥

*カバー文
 …せまい穴をむりにくぐりぬけるような感じがして……つぎの瞬間、ノンちゃんのからだは、ふわっと空中にうかんでいました。 (本文より)
 小学二年生の少女ノンちゃんの心の成長を、ある春の朝の出来事に織り込んで、爽やかに描く長編童話。戦後の児童文学で最も親しまれ、愛された書の待望の文庫化。第1回文部大臣賞受賞作品。


石川 淳 (いしかわじゅん)
「新釈雨月物語」 (しんしゃくうげつものがたり)


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*235頁
*発行 平成6年
*カバーイラスト・岡田嘉夫

*カバー文
欲望と執念が渦巻き、愛情と怨念が交錯する近世怪異文学の金字塔、上田秋成の『雨月物語』は、卓抜した発想・構成などあらゆる面で、近代文学のあり方を予告した作品でもあった。
巨匠石川淳が、奔放な想像力と流麗な文体を駆使し、この不朽の傑作を現代に蘇らせる。
〈この『新釈』は、作家石川氏の一つの作品と見るべきである〉(中村幸彦「解説」より)。
岡田嘉夫の妖艶にして絢爛たる描き下ろしイラストを満載した、待望の文庫版。

*解説頁・中村幸彦


石坂 洋次郎 (いしざかようじろう)
「雨の中に消えて」
 (あめのなかにきえて)


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*308頁
*発行 昭和40年
*カバー・上原正太郎

*紹介文
「作者の意図した主題は、それぞれの異なる個性をもった地方出身の三人の若い女性が、都会生活の激動のなかで大人の世界に目覚めてゆく過程を描いたものである。」平松幹夫解説より

*解説頁・平松幹夫


伊集院 静・選 / 日本ペンクラブ・編 (にほんぺんくらぶ / いじゅういんしずか)
「うなぎと日本人」
(うなぎとにほんじん)


*カバーイラスト・ヒロミチイト
 カバーデザイン・西村弘美
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*240頁 / 発行 2016年

*カバー文
幼い頃から通ったうなぎの名店と、そこで培った“うなぎの食い方”について池波正太郎がしみじみと綴る「鰻の食い方」をはじめ、うなぎを人に奢らせようとして失敗する、たいこもちの悲哀を描く落語の名作「鰻の幇間」、山口瞳が長年通ったお気に入りのうなぎ屋“八十八”での思い出を綴る「横浜住吉町八十八の鰻丼」など、食通たちがうなぎの美味しさと魅力を情感たっぷりに語り尽くす。思わずお腹の鳴る、珠玉の一冊。

*目次
うなぎうなぎ 阿川弘之 / 雪見うなぎ 戸板康二 / 鰻 吉行淳之介 / 鰻 矢野誠一 / 鰻の幇間 桂文楽 / 大阪の鰻の佃煮 吉田健一 / 天才バカボン ウナギのイヌのカバやきなのだ 赤塚不二夫 / 鰻 鈴木晋一 / 鰻屋 三遊亭圓生 / もの忘れ 坪田譲治 / 鰻の食い方 蒲焼、鰻ざく 池波正太郎 / サザエさん 長谷川町子 / 後生鰻 橘家圓蔵 / 横浜住吉町 八十八の鰻丼 山口瞳 / うなぎ 坂東三津五郎 / うなぎ考 高田保 / 夕立鰻 内田百 / 逢坂閑談 三淵忠彦・宮川曼魚・内田百 / うなぎ 大井川流域のこと 小川国夫 / 鰻 森田たま / 鰻と梅干 出久根達郎 / 無敵艦隊 向田邦子 / 鰻 原石鼎 / 蒲焼(江戸小咄) / とうふ うなぎ(江戸小咄) / 薔薇と蒲焼 江國香織 / ウナギの魔法 林望 / 大食国物語の巻 佐藤垢石 / ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石(抄) 伊集院静 / うなぎ 林真理子 / 選者あとがき 伊集院静 / 著者略歴 / 初出・底本


泉 鏡花 (いずみきょうか)
「歌行燈」
 (うたあんどん)


表紙
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裏表紙

*96頁
*発行 昭和30年
*旧仮名旧字体
*カバー装画・小村雪岱

*解説頁・村松定孝


五輪 真弓 (いつわまゆみ)
「恋人よ」
 (こいびとよ)


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*218頁
*発行 昭和58年
*カバーデザイン・岡村元夫 / 写真撮影・久留幸子

*カバー文
 母親の大きな体のうしろにかくれてばかり、異常なほどに気が弱く、人見知りだった少女、真弓。
 内気で多感な少女期が過ぎ去った高校時代、父から買ってもらったギターを手にし、だれのものでもない自分だけの声音に目覚め、歌との闘いが始まる……。
 少女時代の思い出、デビュー時の話、敬愛するシンガーたち、歌が出来るまで、移りゆく季節、人生について ― 自分自身のすべてを綴った文庫版エッセイ集。


井上 靖 (いのうえやすし)
「風と雲と砦」
 (かぜとくもととりで)


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*338頁
*発行 昭和35年
*カバー・村沢朝子

*カバー文
群雄割拠した戦国の動乱の世も、やがて統一に向かおうとする時 ― 長篠城をめぐる武田方と徳川方の激しい攻防の戦は、三人の若い武士と三人の若い女たちの個性も信念も願いも愛も、すべてを木の葉のように無残に押し潰していく。巨大な歴史のなかに生き、そして運命づけられていく微小な人間を描く歴史小説。

*解説頁・杉森久英


井上 靖 (いのうえやすし)
「天目山の雲」 
(てんもくざんのくも)


*カバー・上村松篁
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*283頁 / 発行 昭和50年

*カバー文
 勝頼は天目山に入ろうとした。勝頼が最後に選んだ拠点であった。しかし、村人は一団となって、山上から鉄砲を放って、勝頼の入るのを拒んだ。勝頼は天目山で再起の機会を掴むつもりだったが、それも許されなかった。この時勝頼につき従う者は四十四人になっていた ― 。
 名将信玄亡きあと武田家を継ぎ、父の名声への対立心から進んで戦に挑んで敗北、天正10年春、ついに織田軍に追われ、甲州天目山付近で一族と共に自刃して果てる、悲運の人武田勝頼を描く表題作ほか、11編を収録。

*目次
桶狭間 / 平蜘蛛の釜 / 信康自刃 / 天正十年元旦 / 天目山の雲 / 利休の死 / 佐治与九郎覚書 / 漂流 / 塔二と弥三 / 明妃曲 / 異城の人 / 永泰公王の頸飾り / 解説 山本健吉


井伏 鱒二 (いぶせますじ)
「ジョン万次郎漂流記・本日休診」
 (じょんまんじろうひょうりゅうき・ほんじつきゅうしん)


*カバー・村上豊
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*312頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
 激しい暴風雨だった。漁船は吹きなぐる風に矢の様に速く押し流された。帆柱は倒れ、舵も帆布も波にさらわれた。力の尽き果てた若者たちは運を天に任せ、ただ神仏を祈りながら船板に身をうち伏せていた。万次郎15歳の正月初めのことである。……土佐沖での遭難の末、異人船に救助され、アメリカ本土に渡って新知識を身につけ、幕末日米交渉に活躍したジョン万次郎の数奇な生涯を描く名作。第6回直木賞受賞。ほかに、読売文学賞受賞の「本日休診」を併わせ収める。

*目次
ジョン万次郎漂流記
本日休診
珍品堂主人
 解説 沼田卓爾