絶版文庫書誌集成

角川文庫 【き】

菊地 章太 (きくちのりたか)
「魔女とほうきと黒い猫」
(まじょとほうきとくろいねこ)
角川ソフィア文庫


*カバー画
 WITCHES&FAMILIARS
 (16世紀、イギリス、作者不明)
*画像協力・ユニフォトプレス
*カバーデザイン・國枝達也
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*217頁 / 発行 2014年

*カバー文
黒猫をお供に、ほうきにまたがって空を飛ぶ ―― わたしたちが共通して持つ魔女のイメージはいつできあがったのか。そもそも人々が思い描いていた魔女とはどんな姿だったのか。ヨーロッパにおける古代の女神崇拝やグリム、メルヘンなどの伝承からその実像を掘り起こし、中世のキリスト教文化の中で弾圧の対象となってしまった過程をたどる。人々の暮らしや心情を映し、変容し続けてきた「身近な存在」を読み解く、新しい魔女論!

*目次
プロローグ ―― 十三歳でひとり立ち
第1章 魔女はメルヘンから
 (1) よい魔女か、悪い魔女か
  まずはよい話から / 心配しないで / 水浴びをする乙女 / 朝ねぼうの娘がいたら / 亡霊どもの行列に / 女神もいつしか魔女 / 二極分化する童話の世界 / ひどく年をとったおばあさん / こわい魔女きわめつけ / 恋人をもどらせる薬 / 魔女よりもっと残酷な
 (2) ヨーロッパ中魔女だらけ
  ロシアの魔女は狂暴だった / ほうきであとを消しながら / やっぱり家事が得意 / バーバのおかけで / 死神のなれのはて / 日々の仕事につながっている / 生活を象徴するほうき / 魔女もすっかり西欧風 / 牛乳どろぼうの正体は?
第2章 妖精から魔女へ
 (1) 森にひそむ妖精たち
  ヨーロッパをおおう森 / 木々のあいだにひそむもの / 「私たちは影なのです」 / アカデミー詩人の童話集 / オオカミに食べられたまま / 眠れる森の物語から / バリエーションがひろがる / すぐにキレる妖精たち / 小犬もかまどの火も / さらなるロマンス / 妖精はやはり魔女か / おしまいにお説教
 (2) おばあさんが魔法使いに
  ウェヌスの住む山へ / 詩人のルサンチマン / 夜の墓場で踊る娘たち / 悲恋のゆくえ / 死後も楽しませて / 夢の世界の妖精とともに / 魔女のイメージどおり / 孫娘まで魔女のよう / 川のほとりに住む老婆 / 鬼火がついてくる / この火は熱くない / まじないの治療か / 魔法でなんでもできる
第3章 ほうきと黒猫の受難
 (1) 魔女狩りの時代
  「彼女の家」へむかう人々 / 時代に逆行する魔女像 / 夜中に空をひとっ飛び / 異端にほかならない / それは迫害の理由づけか / 理性の時代のできごとだった / 魔女裁判マニュアル / 暖炉の悪魔がささやく / へりくだる心はどこへ / なんという甘美は復讐 / 誰もがあの女だった / 人知れず裁かれていく社会
 (2) ほうきの民俗学、黒猫の神話学
  ヴァルブルギスの夜に / ほうきを飛びこえる / 穂先も欠くべからず / エクスタシーのはてに / フクロウにも猫にも変身 / 牝山羊はなにより色好み / ときどき猫に、ときどき女に / 夜の魔女がやすらう / アダムは女性の敵だ / 悪魔の方がフェミニスト / 「罪は女からはじまった」 / フェミニズムのシンボルへ / 猫がひく車に乗って / 女神も魔女とともに / 猫の大量虐殺事件 / 拷問も火あぶりもそっくり / 黒猫まじないのききめ
エピローグ ―― 魔女はふつうの女の子
あとがき ―― あちら側の世界から
引用文献


岸田 今日子 (きしだきょうこ)
「一人乗り紙ひこうき」
 (ひとりのりかみひこうき)


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*196頁
*発行 昭和58年
*カバー画像・口絵・本文イラストレーション ― 落田洋子

*カバー文
 よい母親でありたいと思いながら、「子供にしてあげたお話」の可愛らしさ。少し悪い女でもありたいと思いながら書いた、「子供にしてあげなかったお話」にひそむ怖さ。
 奔放な夢想と繊細な感性で紡ぐ、愛と残酷のメルヘンに、役者としてのユニークな個性がひかるエッセー「女の子 ― 六歳」「わたしが違ったひと」を収録。

*解説頁・吉原幸子


北畠 八穂 (きたばたけやほ)
「ジロウ・ブーチン日記」
(じろうぶーちんにっき)


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*224頁
*発行 昭和51年
*カバー・梶山孝明

*カバー文
 友だち仲間での愛称は「サマルカンドノマルキゴヤ」。妹のブーチンことノブコにはことのほかやさしいジロウだ。イワキチじいさんも二人を守り、育てるのにやさしく心をくだく。
 雪深い東北地方の山村で、両親と兄の帰りを待ちわびながらも元気に暮らすジロウとブーチンのはつらつとした日々をユーモラスに力強く描いた感動の児童文学、名作長編。

*解説頁・網野菊


紀野 一義 (きのかずよし)
「名僧列伝(二) 禅者2」
(めいそうれつでん)


*カバー・下村良之介
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*268頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
 ここには、良寛、盤珪、正三、白隠という四人の禅者がとりあげられた。ことに力を入れて書いたのは良寛であって、それは私自身がこの人の生き方に深く共感するものを覚えるからである。良寛は私にとってたいへんなつかしい人である。
 なつかしいという感情は、どうにもならぬものであって、立派な人物でもなつかしいとは思えぬ人が大ぜいいる。なつかしいと思えぬと、その言行に強大な感銘を受けることがない。
 盤珪もまた私にとっては、なつかしい人である。この二人の禅者の、構えというもののない任運自在なありようは、なんともなつかしいし、心のひだの奥の方まで迫ってくるものを覚える。

*目次
良寛
盤珪
鈴木正三
白隠
 あとがき


ギョーム・アポリネール / 須賀 慣訳 (すがなれる)
「一万一千本の鞭」
 (いちまんいっせんぼんのむち)


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*238頁
*発行 昭和49年
*カバー ピエロ・ディ・コジモ「モネッタ・ヴェスプチ像」

*カバー文
“一万一千本の鞭”は好色本ではない、この本のいちばんの欠点といえば、まあそのくらいのことだろう。これは遊びであり、アポリネールという人間のおかげで、彼が手に染めたということが原因になって、この本が彼の詩集とはまったく関係が薄いというところから考えても、詩的なものすべてが、ここでは讃嘆すべきものになっている。 ― ルイ・アラゴン


これは大人の童話である。下品で残酷、豊満で優雅、奔放で澄明な、性の童話である。雲古、御叱呼、血、精液、あらゆる体液がわきたっているエクストラヴアガンツァであるが、淫らさがどこにもなく、爽快な哄笑があり、背後には痛烈な嘲罵の精神がある。 ― 開高 健


金田一 京助 (きんだいちきょうすけ)
「新訂版 石川啄木」
(いしかわたくぼく)


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*208頁 / 発行 1970年
*カバー画像・平成元年刊「リバイバル・コレクション」版カバー

*内容説明
貧困のうちに若くして世を去った明治の天才詩人石川啄木。本書は、常にその身辺にあって生涯の理解者であった著者が、多くは知られていない人間啄木の、波瀾に富む27年の生涯を浮き彫りにした定本である。

*目次
新訂版の序
切れ凧
例言
宿命 ― はしがき
生い立の記
あこがれ時代
流轉から再會へ
菊坂町時代の思い出から
蓋平館時代の思い出から その一
蓋平館時代の思い出から その二
弓町時代の思い出から
晩年の思想的展開
友人として觀た人間啄木
啄木の到達した心境