絶版文庫書誌集成

角川文庫 【く】

久保田 淳 (くぼたじゅん)
「富士山の文学」
(ふじさんのぶんがく)
角川ソフィア文庫


*カバー写真・竹内トキ子(アイノア)
 カバーデザイン・芦澤泰偉
(画像はクリックで拡大します)

*285頁 / 発行 2013年

*カバー文
日本人は富士山に何を感じ、どう心を動かされ、表現してきたのか。文学と自然との関わりに心を寄せる中世文学の泰斗が、『万葉集』『竹取物語』から、松尾芭蕉や小林一茶の俳句、夏目漱石や太宰治などの現代文学まで50作品余を解説する。想像の世界でその美しさを感じることのできた古えの人々と、文明の恩恵によって富士山を見られるようになった現代人。それぞれの心にある「富士山」にふれる、富士山文学鑑賞の決定版。

*目次
第一章 古人の信仰と想い
 一 『常陸国風土記』「聖徳太子伝説」「役行者伝説」 伝説の誕生
 二 『万葉集』 歌い継がれる国の鎮め
 三 都良香の「富士山記」 火山活動の情報
 四 『古今和歌集』 燃ゆる思いは噴火の海
 五 『伊勢物語』 時知らぬ山
 六 『竹取物語』 帝のとどかぬ想い
 七 『更級日記』 地元の信仰と奇譚
 八 藤原俊成 鳴沢論議
 九 西行 風になびく富士の煙
第二章 動乱の中世
 一 『平家物語』・頼朝と曾我兄弟・『吾妻鏡』『富士の人穴』 富士の裾野物語
 二 実朝・後鳥羽院・定家と『新古今和歌集』『金槐和歌集』他 夏富士・雪富士
 三 『海道記』『東関紀行』と雅経の歌 旅の富士
 四 阿仏尼・後深草院二条と『十六夜日記』『とはずがたり』他 煙の絶えた峰
 五 宗良親王『李花集』 富士のねの煙
 六 能「富士山」「羽衣」 天女の舞う山
 七 足利義教の富士遊覧 将軍の眺めた雪の峰
 八 万里集九『梅花無尽蔵』・紹巴『紹巴富士見道記』 富士山大旅行の時代
第三章 江戸と紀行
 一 林羅山『丙辰紀行』 富士山の漢詩選
 二 仮名草子『竹斎』『東海道名所記』 灸のつぼの富士三里
 三 芭蕉・蕪村・一茶 深川・浅草の富士
 四 『仮名手本忠臣蔵』悲恋の女たちの道行
 五 『帰家日記』『庚子道の記』 富士を見る才女たち
 六 賀茂真淵・江戸派歌人と『岡部日記』『悠然院様御詠草』他 隅田の富士
 七 本居宣長『鈴屋集』・香川景樹『中空の日記』 孤独な旅の慰め
第四章 近代日本を映す
 一 正岡子規『竹乃里歌』『寒山落木』他 富士見る旅は羨まし
 二 夏目漱石『虞美人草』『三四郎』 近代日本の文明批評
 三 徳冨蘆花・泉鏡花と『富士』『婦系図』他 逗子の海辺より
 四 北原白秋『雲母集』『観相の秋』他 妻と見た夜明けの富士
 五 斎藤茂吉『赤光』他 宮益坂の富士
 六 若山牧水『海の声』『山桜の歌』他 涙はてなし 汝を仰ぎて
 七 近代詩 草野心平『富士山』・小野十三郎『重油富士』
 八 太宰治『富嶽百景』 月見草がよく似合ふ
 九 武田泰淳『富士』と、百合子の『富士日記』
あとがき


久保田 二郎 (くぼたじろう)
「鎌倉幕府のビッグ・ウェンズデー」
 (かまくらばくふのびっぐうぇんずでー)


*カバー・堀内誠一
(画像はクリックで拡大します)


*304頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
 近代サーフィンの祖、ハワイの英雄デューク・カハナモクの足跡を求めてホノルルに飛んだ「僕」は、そこで意外なものを発見した。それは、板の上に腹ばいになった男が描かれた日本の古巻物だった……700年前、押し寄せる蒙古の軍船に、波乗りの技術をもって立ち向かった3人の若者を描く表題作ほか、珍味フォアグラにまつわる怪奇、少年漫画の主人公冒険ダン吉の末路、それにオリンピック秘話を、それぞれ奇想天外な物語にしたて上げた、著者初の小説集!

*目次
冒険歴史小説 鎌倉幕府のビッグ・ウェンズデー
怪奇美食小説 フォアグラの作り方、教えます
妄想愉快小説 冒険ダン吉君の腕時計
蘊蓄スポーツ小説 オリンピックは秘密が一杯 ― 新五輪之書(ネオ・ブック・オブ・オリンピアード)
 解説 田渕伸子
 本文イラスト 堀内誠一


久米 正雄 (くめまさお)
「学生時代」 
(がくせいじだい)


(画像はクリックで拡大します)

*288頁
*発行 昭和43年

*カバー装画・風間完

*カバー文
 青春讃歌である学生生活の感激と哀愁を、大正初期の時代風俗を背景に軽妙柔軟な筆致で描いた、万人の郷愁を誘う作品。漱石の没後、新理知派の若き旗手として芥川と雁行し、文壇生活に入った著者の代表作。 「受験生の手記」「母」「艶書」「選任」「文学会」「鉄拳制裁」「嫌疑」「競漕」「夜警」「密告者」「求婚者の話」「万年大学生」を収録。

*解説頁・江口渙 / 付注釈


倉田 百三 (くらたひゃくぞう)
「愛と認識との出発」
 (あいとにんしきとのしゅっぱつ)


*カバー・太田洋子
(画像はクリックで拡大します)

*326頁
*発行 昭和25年

*カバー文
苦悩と試練に充ちた青春の中から正しく生きゆく道を切り開いて人間の霊魂のまさに赴くべき方向を探求し、過去を通じて更に一層完きものに近づく知恵を獲得してゆく過程の記録である。大正、昭和初期に青春を迎え人生に思いをひそめた者の、本書をひもとかぬものはなかったといわれる程、万人に愛読される書。

*巻末頁
 解説 倉田百三―生涯と思想 紅野敏郎
 作品解説 藤原定
 父の思い出 倉田地三


倉田 百三 (くらたひゃくぞう)
「親鸞」
(しんらん)


(画像はクリックで拡大します)

*284頁
*発行 昭和27年
*カバーイラスト・ウラタダシ / カバーデザイン・館山一大(角川書店装丁室)=平成21年改版カバー

*カバー文
貴族の時代から武士の時代へと大転換期を迎えていた1173年、京都の名門日野家に生まれた親鸞は、生涯の師・法然と出会い、絶対他力の信仰世界へと導かれる。越後への流罪、法然との別れ、妻帯者としての苦悩の中で、ひたすら信仰を貫き、布教を続けた親鸞は、還暦を過ぎて、家族を稲田に残して帰洛する。
浄土真宗の開祖・親鸞の波瀾に満ちた90年の生涯を、『出家とその弟子』で知られる著者が描いた、人間味溢れる伝記小説。

*解説頁・倉田百三の親鸞を読む 武者小路実篤


倉田 百三 (くらたひゃくぞう)
「絶対の恋愛」
 (ぜったいのれんあい)


(画像はクリックで拡大します)

*228頁
*発行 昭和43年改版

*カバー文
「青春の息の痕」「愛と認識との出発」「出家とその弟子」において恋愛を通じて人生に踏みいった姿を認めた読者は、この書簡集において、晩年にいたるまで、恋愛を自己完成の重要な要素と考え、恋愛を信仰にまで高めた愛の人、真実のフェミニストの姿をここに遺憾なく見出すであろう。


栗谷川 虹 (くりやがわこう)
「宮沢賢治 異界を見た人」
(みやざわけんじいかいをみたひと)
角川文庫クラシックス


*装幀・杉浦康平
(画像はクリックで拡大します)

*289頁 / 発行 1997年

*カバー文
 たゞたしかに記録されたこれらのけしきは 記録されたそのとほりのこのけしきで(「春と修羅」より)
賢治が日常的に神秘を目にし、それを記録したものを「心象スケッチ」と呼んでいたことは有名である。しかし、合理主義を底流としたこれまでの批評姿勢では、賢治の「心象スケッチ」、その本質にある神秘に迫ることはほとんど不可能だった。本書は、賢治が疑いなく持っていた非凡な素質に迫り、賢治自らが生きていた「神秘」を初めて真摯に追求する。賢治研究史に新時代を開く最重要論考、ついに文庫版で登場!

*目次
 文庫版のための序
見者(ヴオワイヤン)の文学
気圏オペラ
 第一部 / 第二部
未来形の挽歌
 あとがき
 解説 山根道公
 年譜 中村稔