絶版文庫書誌集成

角川文庫 【ま】

マイアーフェルスター著 番匠谷 英一訳 (ばんしょうやえいいち)
「小説 アルト・ハイデルベルク」


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*150頁 / 発行 1954年
*カバー・青木和代

*カバー文
 ハイデルベルクはドイツでは一番美しい町であり、そこにはドイツ最古の大学がある。若い皇太子が慣習に従ってその由緒ある大学に一年間の学生生活を送るべくハイデルベルクをおとずれて、やがてケーティーという純情可憐な乙女と相知って恋をする。ドイツ演劇のおはこ「アルト・ハイデルベルク」の原作である。

*解説頁・青春について 小宮曠三


マイカル・ハウエル+ピーター・フォード / 本戸 淳子訳 (ほんとじゅんこ)
「エレファント・マン その真実の記録」


 
*カバー写真・東宝東和
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*281頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
 鼻と唇の突起、著しく変形した額の奇観が象を思わせるところから“エレファント・マン”と呼ばれた一青年の、出生から死までを、医師と記者の二人が医学的にも歴史的にも、完璧に追跡した。 ―
 彼、ジョーゼフ・メリックは、1862年8月5日、イギリスの片田舎レスターに生まれ、三人兄妹の長男。出生時には、何の異常も認められていない。母メアリーが初めて異常の徴候に気づいたのは、生後21ヶ月の頃、メリック自身の記憶では、5歳位と記録されている。次第に奇形がすすむが、それでも12歳までは公立学校に通う、猛烈に読書好きの少年だった。10歳で母と死別。その後の、父の再婚。葉巻工場への就職、解雇。行商。救貧院での生活。興行師トム・ノーマンとの出会い。ベルギー巡業。ロンドン病院での死。
 空前のブームを巻き起こした映画“エレファント・マン”では描ききれなかった真実を、豊富な写真と資料で詳細に伝える、待望のドキュメント。

*目次
1 “半人半象! 世にも恐ろしい生きもの”
2 功名への門口に立って
3 生きている標本
4 象の行進と不幸の始まり
5 教区の慈悲
6 銀貨の王様
7 旅まわりの日々
8 安住の家
9 穏やかな、優しいひと、可哀そうに!
10 ジョーゼフ・メリックに何が起こったか?
11 重荷は降ろされた
12 時の過ぎゆくままに
 付録1 ジョーゼフ・ケアリー・メリックの自伝
 付録2 サー・フレデリック・トリーヴスによる『エレファント・マン』


マキノ 雅裕 (まきのまさひろ)
「映画渡世 ― マキノ雅裕自伝・地の巻」 (えいがとせい)


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*497頁
*発行 1984年
*カバー・黒田征太郎K2

*カバー文
 親が生んでくれたから、生きていかなければならないと ― ただもうそれだけで、働き続け、あれもやった、これもやった、こうしてもうけた、ああして損したと、思えばはかなく、やるせない活動屋マキノ。
 映画人生をひたすらに生きた著者が懐しの名優や、今、人気絶頂のタレント達との、丁々発止の交友を、爆笑とほろ苦い涙でつづる傑作自叙伝。
 怒涛の青春を語る〈天の巻〉に続く戦中・戦後の混乱期から、新しい映像を追い求める現在までの風雲を語る。

*天の巻・地の巻全二冊


松谷みよ子 瀬川拓男 辺見じゅん (まつたにみよこ・せがわたくお・へんみじゅん)
「日本の民話〈1〉動物の世界」 (にほんのみんわ1 どうぶつのせかい)


*カバーイラスト・丸木俊
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*307頁 / 発行 昭和55年

*カバー文
 「むかし、むかし、……」「むかし、あったとさ。……」「とんとむかし。……」と、やさしい、郷愁にも似た語り口を生かして、再現された動物の世界。
 サル、カニ、キツネ、タヌキなど、かつて自然が豊かであったころ、人間の身辺にいた動物たちの姿に託して夢を、愛を、哀しみを語った「かちかち山」「猿蟹」「舌切りすずめ」「鶴の嫁さま」など、誰もが知っている動物おとぎ話や、きつね物語52篇を収録。
 〈私の民話論〉 畑正憲

*目次
動物の世界
 動物の始まり
  その1 太陽とからす / その2 太陽を射るもぐら / その3 山の鯨・海のいのしし / その4 蛇とみみず / その5 小さな虫のむかし
 動物の競争
  その1 きつねとたにし / その2 鯨となまこ / その3 うさぎ・亀・ふくろう
 きつねとかわうそ
 動物の共同耕作
  その1 猿と蝦蟇の寄り合い田 / その2 いたちとねずみの粟畑 / その3 きつねと熊の山畑
 小鳥たちのむかし
  その1 ふくろうの染め物屋 / その2 すずめとつばめ / その3 ひばりとお日さま / その4 呼子鳥 / その5 山鳩
 鳥の王はだれか
 鳥と獣の戦争
 獅子頭の祭礼
 すずめの仇討ち
 もぐらの嫁入り
 動物のさすらい
  その1 あてのない旅 / その2 くらげ骨なし
 動物の笑い話
  その1 むかでのお使い / その2 からすとたにし / その3 かえるの京参り / その4 大鳥と蝦と亀
きつね物語
 きつね女房の田植え
 きつねの嫁取り
 きつねのお礼
 きつねの味噌煮鍋
 木やりを歌うきつね
 きつねの飛脚
 広島のおさんぎつね
 桔梗原のきつね
動物おとぎ話
 かちかち山
 猿蟹
 舌切りすずめ
 ねずみのすもう
 猿地蔵
 灰まき爺さん
 古屋のもり
 鶴の嫁さま
動物と人間
 白鳥の関
 猿の婿どの
 人間無情
 犬と猫と蛇の玉
 うぐいす姫
 めっこだぬき
 さだ六としろ
 生駒姫と月毛の駒

 私の民話論 ― 民話の中の動物たち 畑正憲 


松谷 みよ子 瀬川 拓男 辺見 じゅん (まつたにみよこ・せがわたくお・へんみじゅん)
「日本の民話〈3〉神々の物語」 (にほんのみんわ3かみがみのものがたり)


*カバーイラスト・丸木俊
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*307頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
 古代の日本人は、暮らしのなかで生じた善悪・吉凶、自然現象にいたるすべてを神のなせるわざと信じ、さまざまな神を創りだし、その物語を伝承してきた ― 。畏怖され崇められた神、ロマンスをささやかれた美貌の女神、借金に苦しんだ塞(さえ)の神さま、白蛇に変身して遊び相手になった子供の好きな神さま。
 壮大で神秘的な世界と、ゆたかな牧歌的風景が不思議に調和した、神々の物語53篇を収録。

*目次
創世の神
 この世の始まり
  その1 天と地と海 / その2 大地と地震 / その3 天使の鳥
 人間の創造
  その1 どろと植物からの誕生 / その2 神と人間 / その3 近親相姦
 悪霊の誕生
  その1 神の忘れ物 / その2 淫乱の神
 エゾイタチの女神
 雷神と女神
 伊豆の国焼き
 神さまの年定め
  その1 人間の年六十 / その2 十二支の始まり
神あらそい
 日の女神の救う
 赤神と黒神と十和田の女神
 山になった鯨
 白うさぎとオオナムジ
 椿の湖
 戦場が原の神いくさ
 異国の神アメノヒボコ
 神さまの鬼退治
 小さなオキクルミ
 早太郎と人身御供
さすらいの神
 風の神と子ども
 山の神とおこぜ
 はなたれ小僧さま
 天人の嫁さま
 アイヌの疱瘡神
 疫病神
 竜神が授けた妙薬
 蚤の神さん
  その1 蚤神と馬 / その2 蚤の由来 / その3 犬頭糸
 稲穂の神さま
  その1 稲の種 / その2 稲作の女神
 貧乏神と福の神
 お正月さんござった
  その1 さすらいの年神さま / その2 正月の七福神
土俗の神
 火の神さま
  その1 火の神と蛇 / その2 火の神の出産 / その3 火の神の火玉
 塞の神さまの借金
 山の神と童子
 竜神と釣り縄
 二十三夜さま
 片目の神さま
 神さまとこぶ取り爺
 子どもの好きな神さま
 信濃には神無月がない
 コロポックルの神さま
 竜になった三郎
 秋田の三吉さん
 一夜の菜種

 私の民話論 ― 上野国の中世神話 角川源義
 解説 ― 神話的叙事詩の世界 瀬川拓男
 参考資料 大島広志
  口絵 さし絵 丸木位里・丸木俊


松谷みよ子 瀬川拓男 辺見じゅん (まつたにみよこ・せがわたくお・へんみじゅん)
「日本の民話〈6〉土着の信仰」 (にほんのみんわ6どちゃくのしんこう)


*カバーイラスト・丸木俊
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*305頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
 目に見えぬ生命の神秘に対するおそれ、死をも越える世界へのあこがれが、生への執着とあいまって、多種多様な民話を生みだした。
 「風の受胎」「ねずみ浄土」「雪のサンタ・マルヤ」など、日本古来の信仰だけでなく、仏教やキリスト教のような外来宗教も含めて、日本に根づき、土着性を帯びて民話化し、日常生活の奥深い部分に、四季折り折りの行事や祭礼に多大な影響を与えている話、64話を収録。

*目次
生命のふしぎ
 風の受胎
 ねずみになった狩人
 小さな魂
  その1 蟹の報恩 / その2 虫の歌
 成人への試練
 人間の寿命
  その1 身がわりの石びつ / その2 娘の寿命延ばし
 魂を取る亡者
 死者の魂
  その1 座頭の木 / その2 娘の骸骨 / その3 ことしも十九
幸福への道
 おおかみの信仰
  その1 おおかみのまゆ毛 / その2 爺さまとおおかみ
 鷲の育て子
 浄土の国
  その1 藤槇淵 / その2 ねずみ浄土
 観音さまのご利益
  その1 子どもの肝 / その2 太腹観音 / その3 観音さまとふたりの山伏
 地蔵さまの話
  その1 ものいう地蔵 / その2 田植え地蔵 / その3 鱶になった地蔵さん / その4 笠地蔵
 言霊の力
  その1 雄弁の力を授かる / その2 鳥のことば / その3 子もり歌の知らせ
 婚姻儀礼
  その1 玉のみの姫 / その2 ぼっこ食い姉コ / その3 歌よみ婿
 姥捨山
奇跡物語
 日高の津波
 動物の奇跡
  その1 猫檀家 / その2 たぬきの和尚さん
 大里峠の大蛇
 八百比丘尼
  その1 竜宮の人魚 / その2 長寿のほら貝
 さすらいの坊さま
  その1 三度栗 / その2 石芋 / その3 弘法さまの万年機
 お伊勢参りの旅人
  その1 猫の尼さん / その2 お杉とお柳
 熊野の権現さま
  その1 鯨ともぐらの報恩 / その2 権現さまを盗む
 閻魔さまの話
 雪のサンタ・マルヤ
四季の信仰
 正月の若水
  その1 若水の由来 / その2 若返りの水
 節句の由来
 三月の節句
  その1 桃の花酒 / その2 雛の夜
 五月の節句
  その1 人形とだんご / その2 節句のすすき餅
 お田植えさま
  その1 田植えの白ぎつね / その2 お田植え如来
 精霊さまの舟
 七夕さんの話
 雨ごい物語
  その1 竜王婆さま / その2 蛇になった猟師
 十五夜の月
 豊穣の秋
  その1 かがしの神さん / その2 井戸掘り長兵衛
 雪のみやげ
 大年の火

 私の民話論 ― 在所の黄昏時に 水上勉
 解説 ― 民族思想の原点 瀬川拓男
 参考資料 大島広志
  口絵 さし絵 丸木位里 丸木俊


松谷みよ子 瀬川拓男 辺見じゅん (まつたにみよこ・せがわたくお・へんみじゅん)
「日本の民話〈7〉妖怪と人間」 (にほんのみんわ7ようかいとにんげん)


*カバーイラスト・丸木俊
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*301頁 / 発行 1981年

*カバー文
 夜が明るくなり、にぎやかになるにつれ、都市から姿を消していったさまざまな妖怪たち ―― 動物の妖怪はもとより、鬼、山姥、天狗、河童など魑魅魍魎の類にいたるまで、かつて人間を震撼させ恐怖にかりたてたが、一方、幸をもたらすと信じられていた。
 「雉子娘」「山姥のにしき」「天狗さんの花祭り」など、日本人が持ち伝え、育んできた代表的な妖怪譚、49話を収録。

*目次
再話 松谷みよ子 瀬川拓男 辺見じゅん
動物の妖怪
 大蛇のたたり
  その1 笑う娘 / その2 さらしもの / お菊の水
 ひひ猿の仇討ち
 蟹の湯治
 蜘蛛の妖怪
  その1 蜘蛛男 / その2 蜘蛛女
 雉子娘
 墓場の犬
 猫岳の猫
 牛鬼淵
 茂吉の猫
 山伏と小っこだぬき
鬼と山姥
 海に沈んだ鬼
 鬼の刀鍛冶
 大工と鬼
 地獄の鬼
 山姥のにしき
 焼棚山の山姥
 馬右衛門と山姥
 牛方と山姥
 食わず女房
 食べられた山姥
妖怪さまざま
 天狗さんの花祭り
 肥後のがわっぱ
 ケンムンとイッシャ
 旅人馬
 おぶさりてい
 不思議な話
  その1 田荒しの馬 / その2 あずきとぎ / その3 座敷わらし
 亡者の通る道
 狩人と山の怪
 船幽霊
化け物退治
 寝ざめの床の主
 狭斜山の鬼
 平之と与作
 鍛冶屋の婆
 鬼退治の姉弟
 化け物退治の兄弟
  その1 蛇女退治 / その2 美女を救う
 大蛇退治の姉妹
 一つ目一本足の山んじい
 化け物寺の怪
  その1 蟹坊主 / その2 踊る化け物 / その3 ほそごし
 トーツボテンの化け物
 宝刀物語
  その1 人食い刀 / その2 名刀とかげ丸
私の民話論 ― 妖怪との対話 ―  小松左京
解説 ― 再び妖怪談義を ―  瀬川拓男
参考資料 大島広志
口絵・さし絵 丸木位里・丸木俊


松永 伍一 (まつながごいち)
「日本の子守唄 ― 民俗学的アプローチ」
 (にほんのこもりうた)


*カバー・伊藤鑛治
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*236頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
 私は、松永伍一の『日本の子守唄』を読んだとき、はじめて生と死の同時性を愛の総和としてとらえる「母」の原像にふかくうたわれたのを、いまでも忘れない。同じ地獄を見るにしても、こうもやさしさにあふれた見方があるのかと、松永伍一のファンになってしまった……
 問題は、子守唄にあるのではない。子守唄自体は、ただの事実にすぎないからである。その「ただの事実」を再生させるときの松永伍一の独自の語り口が、思想の抒情化を果たしながら、あざやかな歴史の洞察者としての記述法を私たちに示してくれたのであった。  ―寺山修司

*目次
 はじめに
T 胸によみがえる旋律
  ギリヤークの子守唄 / 太宰治と子守のタケ / 中国地方の子守唄 / 母からきいた話
U 「眠らせ唄」と「遊ばせ唄」
  わらべうた / 眠らせ唄 / 遊ばせ唄
V 女の深淵から
  米良の鬼火 / 子を殺す唄 / 死児を呼ぶ声 / ヤマの子守唄 / 夫恋(つまご)いの唄
W 出稼ぎへの道
  農村の貧困 / 子守の位置 / 子守娘の嘆き / 薮入り / 衣と食 / 子守唄から女工唄へ
X 庶民の笑い
  俚謡のなかの子守 / 子守唄の笑い / エロスの渦
Y 諷刺という武器
  博多子守唄 / オヤとコ / 宇目の唄げんか
Z ふるさとへの慕情
  塩飽の子守唄 / 愛と憎しみ
[ 流浪の痛み
  五木の子守唄 / 流浪者の死 / 異説 / 官山と福連木の子守唄 / 日本女性史と子守唄
\ 人身売買の哀歌
  からゆきさん / 島原の子守唄

 参考資料 / あとがき


マルキ・ド・サド著 澁澤 龍彦訳 (Marquis de Sase しぶさわたつひこ)
「閨房哲学」
(La Philosophie dans le Boudoir けいぼうてつがく)


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*292頁
*発行 1976年
*カバー画像・平成元年刊「リバイバル・コレクション」版カバー

*カバー文
古典主義時代の終焉を体現した、18世紀バスティーユの遊蕩者は、今世紀に入りシュルレアリスト達の教父母として蘇った。本書は対話体で語られる論戦的な思想と、フランス大革命に寄せた辛辣な論文を収録。