絶版文庫書誌集成

角川文庫 【し】

ジェームズ クネン (James Kunen) /青木 日出夫訳 (あおきひでお)
「いちご白書 ある大学革命家のノート」〈旧版〉
 (いちごはくしょ・The Strawberry Statement)


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*284頁
*発行 昭和46年

*カバー文
「人々はひとりぼっちではない。しかし、そのかわり孤独である。自分を知らず、自分のことなど気にもとめず、また気にかけてもらおうともしない群衆の真ん中でしか感じられないような孤独がここにある…ぼくたちはこれからも闘うだろう」六〇年代末、コロンビア大学の激しい闘争を背景に、悲しみと憤りを抱えた一学生が声をあげ、世界中でカリスマ的な支持を得た。自由を求める十九歳の奔放な感性を刻む、青春文学の名著。

繁田 信一 (しげたしんいち)
「殴り合う貴族たち」
(なぐりあうきぞくたち)
角川ソフィア文庫


*カバーデザイン・谷口広樹
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*294頁 / 発行 2008年

*カバー文
素行の悪い光源氏たち!? 光源氏のモデルの一人となった藤原道長は、官人採用試験の不正を強要、従者に命じて祗園御霊会を台なしにし、寺院建立のために平安京を壊した。これは道長だけの話ではない。優雅なはずの王朝貴族たちは、頻繁に暴行事件を起こす危ない人々でもあったのだ。「賢人右府」と呼ばれ、紫式部も尊敬した小野宮実資の日記を通して、『源氏物語』には描かれなかった王朝貴族たちの素顔を浮き彫りにした。

*目次
序 素行の悪い光源氏たち
1 中関白藤原道隆の孫、宮中で蔵人と取っ組み合う
2 粟田関白藤原道兼の子息、従者を殴り殺す
3 御堂関白藤原道長の子息、しばしば強姦に手を貸す
4 右大将藤原道綱、賀茂祭の見物に出て石を投げられる
5 内大臣藤原伊周、花山法皇の従者を殺して生首を持ち去る
6 法興院摂政藤原兼家の嫡流、平安京を破壊する
7 花山法皇、門前の通過を許さず
8 花山法皇の皇女、路上に屍骸を晒す
9 小一条院敦明親王、受領たちを袋叩きにする
10 式部卿宮敦明親王、拉致した受領に暴行を加える
11 三条天皇、宮中にて女房に殴られる
12 内裏女房、上東門院藤原彰子の従者と殴り合う
13 後冷泉天皇の乳母、前夫の後妻の家宅を襲撃する
結 光源氏はどこへ?
 王朝暴力事件年表 / あとがき / 文庫版あとがき


獅子 文六 (ししぶんろく)
「胡椒息子」
(こしょうむすこ)


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*252頁
*発行 昭和44年
*カバー・城山忠夫

*ちくま文庫版(2017年)紹介文
裕福な家に育つ腕白少年・昌二郎は自身の出生から母、兄姉に苛められる。しかし真っ直ぐな心と行動力は家族と周囲の人間を幸せに導く。

*解説頁・細川忠雄


獅子 文六 (ししぶんろく)
「コーヒーと恋愛(可否道)」 
(こーひーとれんあい・こーひーどう)


*昭和49年11版カバー
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*昭和52年17版カバー
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*366頁 / 発行 昭和44年
*カバー・赤祖父ユリ

*カバー文
 ホームドラマのテレビタレント坂井モエ子は43歳、若くてハンサムな舞台装置家のベンちゃんと同棲している。がある日突然、"生活革命"を宣言した彼に家出されてしまう。悲嘆に暮れた彼女は知人の菅貫一を訪れるが……。テレビや新劇の世界を背景に、彼女を中心にコーヒー愛好家グループなどが交錯して展開する軽妙な風刺劇。
(注 「風刺劇」とありますが戯曲ではありません。長編小説です。)

*解説頁・細川忠雄


獅子 文六 (ししぶんろく)
「青春怪談」 (せいしゅんかいだん)


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*395頁
*発行 昭和41年
*カバー・長野ひろ

*細川忠雄「解説」より
この「青春怪談」は、正直いって新聞連載当時、「自由学校」ほどは大受けしなかった。それだけに本格的な諷刺小説、あるいは文明批評小説としての厚味と奥行を持っている。


獅子 文六 (ししぶんろく)
「バナナ」


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*368頁
*発行 昭和37年

*ちくま文庫版紹介文
お金持ちの台湾華僑の息子、龍馬は車が欲しい大学生、そのガールフレンド、サキ子はシャンソン歌手としてデビューしたいが、青果仲買人の父の許しが得られない。そんな二人の夢を叶えるのはバナナ?ひょんなことからバナナの輸入で金儲けをすることになったのだが、そこへ周囲の思惑が絡み、物語は意外な方向へ! テンポの良い展開に目が離せないドタバタ青春物語。


子母沢 寛 (しもざわかん)
「逃げ水」
 (にげみず)


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*762頁
*発行 昭和45年
*カバー装画・熊谷博人

*カバー文
 天保6年2月17日、江戸小石川鷹匠町山岡市郎右衛門の屋敷に肩幅広い、一男子が出生した。幼名謙三郎、後の高橋伊勢守政晃である。幕末史伝物に独自の境地を開いた著者が、その高潔な人格に深い共感を寄せつつ、幕末三舟の一人槍の泥舟の、時流に阿ねず、徳川家への忠誠徹した生涯を克明に浮彫りした名作。

*解説・尾崎秀樹


子母沢 寛 (しもざわかん)
「昼の月」
 (ひるのつき)


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*428頁
*発行 昭和46年
*カバー・熊谷博人

*カバー文
 桜井金之助は、本所割下水に住む御家人である。すりや芸者と顔馴染みの市井の徒ながら、剣は心形刀流の使い手。その技を認められて、将軍御前で槍の高橋伊勢守と五分に立合い、講武所教授方を命じられるが、時の流れは徳川家凋落の兆を急速に露わにして……。著者独壇場の幕末秘話。敗残の江戸ッ子、“本所もん”の真骨頂を描く。

*解説頁・巌谷大四


島尾 敏雄 (しまおとしお)
「贋学生」 (にせがくせい)


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*256頁 / 発行 昭和54年
*カバー・斎藤義重

*カバー文
 文学部の学生である浜地己一郎の前に、医学部の学生で、高知でも指折りの財産家の跡取りと称する木乃伊之吉が姿を現わしたのは、大東亜戦争の最中であった。
 木乃は妙に人なつこく、開けっぴろげでエネルギッシュな行動と同時に、陰にこもった女性的ないやらしさを持つ、人間というよりは「紫のかたまり」みたいな捉えどころのない男だ。浜地は彼を嫌な奴だと思い、交際を敬遠しようとするが、いつの間にか彼の術中にはまり、その正体も次第に顕らかになっていく……。
 昭和二十五年の発表当初から「みごとな悪作」という世評を得、島尾文学の中でも特異な地位を占める長編小説。

*解説頁・小林崇利


島尾 敏雄 (しまおとしお)
「夢の中での日常」 (ゆめのなかでのにちじょう)


*カバー・斎藤義重
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*234頁
*発行 昭和48年

*カバー文
 《現代日本における最もユニークな前衛文学》と評価され、絶賛される島尾文学。日常的、私小説的風土に、象徴的スタイルをもって、一種怪奇な幻想の世界を現出させ、自己の内的真実を見事に表現する。本文庫は、存在の本質に迫って戦慄的ともいうべき、超現実主義の色濃い代表的傑作「夢の中での日常」をはじめ、「孤島夢」等の著者の“眼をつぶった”《夢》の系列より10篇を選んだ初期作品集である。

*目次
孤島夢 / 摩天楼 / 夢の中での日常 / アスファルトと蜘蛛の子ら / 鎮魂記 / 兆 / 鬼剥げ / むかで / 島へ / 夢にて / 解説 森内俊雄


志村 有弘 (しむらくにひろ)
「鬼人 役行者小角」
(きじんえんのぎょうじゃおづぬ)
角川ソフィア文庫


*カバー写真 / アイ・ビー・エス
 装幀 / 杉浦康平
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*264頁 / 発行 平成13年

*カバー文
稀代の陰陽師安倍晴明が誕生する約300年前、日本史上空前の神通力をもつ一人の修験者が大和で誕生した ── 。
役行者小角は鬼神を使役し、空中を自在に飛行したと伝えられる。その超人的な能力は、人々に畏敬される一方で、その力が彼を窮地に追い込んでしまう。母には野に捨てられ、人々からはその力を恐れられて流罪や死刑を命ぜられる……。修験道の祖でありながら、すべてが謎に包まれている役行者の生涯を、文献と伝承をもとにあきらかにする。

*目次
 はじめに
謎の誕生 ── 天皇の子か、生まれながらの聖人か
少年時代 ── 虫を踏まず、松の葉を食べる
山岳修行と神仙
吉野と大峯の神仙たち
 金峯山と蔵王 / 大峯の神仙たち / 天川、龍泉寺、弁財天 / 山上ヶ嶽 / 転生 ── 役行者第三生の骸骨
鬼神を使役する
 鬼神たちの群 / 前鬼と後鬼
龍樹菩薩と会う
木食の聖人
鬼と壬申の乱
呪術師役行者
役行者と東国
 羽黒及び東北地方へ行く / 秩父の三峯神社と今宮神社へ行く / 役行者の足跡 ── 東北と関東
葛城の長・一言主神
讒言(ざんげん)と流罪
処刑と富士明神
唐の国へ
役行者は死んだのか
菩薩の権化、聖徳太子の再誕

 役行者関連年表 / 役行者伝説主要関係文献抄 / 役行者及び周辺関係参考文献抄 / あとがき / 文庫版あとがき


志村 有弘編 (しむらありひろ)
「名作 日本の怪談 ― 四谷怪談・牡丹灯篭・皿屋敷・乳房榎」 (めいさくにほんのかいだん)
角川ソフィア文庫


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*222頁
*発行 2006年
*カバーデザイン/関原直子 装画 / 鮨崎英朋「蚊張の前の幽霊」全生庵所蔵

*カバー文
薄情な男、民谷伊右衛門に嫁いだお岩は、毒を盛られて顔を醜く変えられてしまう。夫に捨てられ、殺されるが……(「東海道四谷怪談」)。牡丹模様の提灯をもったお露は、夜な夜な恋人の新之丞のもとへ通う。お露の正体は……(「牡丹灯篭」)。
日本を代表する怪談の多くは、小説や映画などに形を変えながら現代に息づいている。私たちの心の深層を揺さぶり続ける物語の原点に返り、現代語訳のダイジェストで楽しむ傑作選!!


ジャン・コクトー著・河盛 好蔵訳 (Jean Cocteau・かわもりよしぞう)
「山師トマ」 (やましとま)


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*113頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和30年
*カバー画像・平成元年発行「リバイバル・コレクション」版 / カバー・デザイン…鈴木一誌

*カバー文
「死んだ真似をしなければ殺られてしまうぞ」と
自らの戦死すら虚構化してしまうトマは、
無邪気にふるまいだれにも疑われることがない。
モダニズムを代表する
コクトーが描く現代の神話。


ジャン‐ミシェル バスキア (Jean‐Michel Basquiat)
「バスキア」



*カバー Untitled(Skull) 1981
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*115頁
*発行 1997年

*カバー文
80年代のNYアート・シーンを疾走した天才画家ジャン・ミシェル・バスキア。
ストリート・アーティストから時代の寵児となりながら、二十七歳で夭折した無垢の魂が描き続けた絵を収録したポケット画集。

*序文・日比野克彦


徐 朝龍 (じょちょうりゅう)
「長江文明の発見 中国古代史の謎」
(ちょうこうぶんめいのはっけん)
角川ソフィア文庫


*写真 / 三星堆遺跡出土・青銅人頭像黄金マスク
 李家山遺跡
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*285頁 / 発行 2000年

*カバー文
古代文明が生まれる条件を備えていながら、その存在を認められていなかった、アジア最長の大河・長江。しかし、急展開する長江流域の考古学調査により、「長江文明」の存在が明らかになってきた。稲作の起源や都市文明の成立を物語る古代遺跡。高度な文化を示唆するダイナミックかつ繊細な出土品の数々。発掘成果は、驚異の巨大文明の姿を鮮やかに浮かび上がらせ、「黄河文明」=「中国文明」という伝統的な中国文明史観を揺さぶる。欺瞞と偏見に満ちた定説に勇敢に挑む、衝撃の一書。

*目次
 はじめに
序章 父なる大河 ── 長江
第一章 長江流域における稲作の起源
第二章 東方文明の曙:良渚文明の興亡
第三章 巨大城壁都市の登場
第四章 長江上流域の「都市文明」の曙
第五章 ?陽湖畔の青銅王国
第六章 洞庭湖一帯を支配した謎の王国
第七章 異彩を放つ三星堆文明
第八章 疾風怒濤の呉越文明
第九章 超大国楚の興亡
第十章 三峡に育まれた神秘な巴文化
第十一章 雲南高原に開花した金印王国
 あとがき / 主要参考文献 / 解説 安田喜憲


庄野 英二 (しょうのえいじ)
「雲の中のにじ」
 (くものなかのにじ)


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*212頁
*発行 昭和50年
*カバー装画・寺島竜一

*カバー文
 ベイルートからバグダッドまで、ローズ色のジープ「ラベル号」に乗ってシリア砂漠横断を決行する日本人農業技術者イネ、ドイツ戦車隊の生きのこりで右うでをなくした後、考古学者に転職したキャタピラ、若いフランス人画家キャメル。 ― 一行三人の遭難から救助までを描く。
 ヒューマニズムあふれる、たくみなユーモアとウイットがお互いの心を暖め、死と隣あわせの恐怖からとき放していく過程を、しみじみと、しかもダイナミックに謳いあげた長編児童文学。

*解説頁・戸塚恵三


庄野 英二 (しょうのえいじ)
「星の牧場」
 (ほしのまきば)


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*301頁
*発行 1976年
*カバー画像・平成8年刊角川文庫クラッシック版

*解説文
悲惨な戦争のなかで受けたショックとマラリヤの高熱の後遺症でほとんどの記憶を失った牧童モミイチ。ただ従軍の時の愛馬ツキスミのことだけは鮮明に覚えていた。敗戦になって山の牧場に引き揚げてきてから出会った不思議なジプシーたち。オーケストラを組んで音楽を楽しむ彼らとのやさしい交流のなかで、モミイチは初めてやすらぎ、ツキスミのことを語る―日本児童文学者協会賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞など、数々の賞を受賞した戦後児童文学の屈指の名作。