絶版文庫書誌集成

角川文庫 【わ】

ワイルド著 田部重治訳 (Oscar Wilde・たなべじゅうじ)
「獄中記」 
(ごくちゅうき/De Profundis)


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*117頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和26年
*カバー画像・平成元年発行「リバイバル・コレクション」版

*カバー文
イギリス世紀末のデカダンとダンディズムの指導者だったワイルドが、同性愛的性癖がもとで、投獄され書き記した懺悔録。芸術と実生活で唯美主義を実践した著者の“深淵より”語られる内省と思索。


和歌森 太郎 (わかもり たろう)
「花と日本人」
 (はなとにほんじん)


*カバー・伊藤鑛治
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*294頁 / 発行 昭和57年

*カバー文
 咲き誇る花の色は、昔も今もかわらない。かつて花は、霊力を持つものとして、人々の生活を、さらにその一生をも支配した。
 日本人と花とのこまやかな交流のなかに、独自の思想と文化を生みだす要因が隠されている。四季おりおりに咲き乱れる花の、その一つ一つに深い意味を感じ取り、自らの生活に取り込んできた感覚と感情は、生活様式がいかにかわろうと、今日の我々を形造る太い流れをなしている。

*目次
第一章 花には活霊がこもる
第二章 万葉人と仏事の花
第三章 平安京と春の花
第四章 花の来世とうつし世と
第五章 花道を生みだす母胎
第六章 花道の成立
第七章 心の花・新春の花
第八章 椿と桃の呪性
第九章 大和心と桜の花
第十章 夏の到来を告げる花々
第十一章 人の世のはかなさ ― 百合と朝顔
第十一章 妖艶と不死の秋の花 ― 彼岸花と菊
第十一章 美術の展開とともに
第十一章 人生と芸術の心に
 あとがき


渡辺 保 (わたなべたもつ)
「能のドラマツルギー 友枝喜久夫仕舞百番日記」
 (のうのどらまつるぎー ともえだきくおしまいひゃくばんにっき)
角川ソフィア文庫


*装丁 / 菊池信義
 カバー写真 / 吉越立雄
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*291頁 / 発行 2002年

*カバー文
観る者を幻想の世界に誘う「能」。観客はその優れた様式美に目を奪われがちであるが、能の本質は巧みに構成された戯曲に基づく演劇性にある。そして、演じられているのは人生の究極のドラマだ。名人・友枝喜久夫の稽古舞台での「仕舞」を観る機会を得た著者は、眼前で行われる繊細な動きに目をとめ、そこに込められた意味を解き明かしていく。素顔で、装束をつけずに舞う仕舞だからこそ発見できる面白さに次々と出会いながら、舞台上のわずかな所作に秘められたドラマと、ひとりの名人の姿をリアルに描き出す、刺激的な能楽案内。

*目次
序章
 仕舞という作品世界
祈りの言葉
 言葉の森  ── 翁
宿命の血
 無限の愛  ── 海人
 都鳥の扇  ── 隅田川
 狂女の道行  ── 蝉丸
 優美さと野生と  ── 天鼓
 さやけき秋の月  ── 三井寺
 暗い故郷への旅  ── 弱法師
恋の女
 釆女の謎  ── 釆女(クセ)
 悪妻か、良妻か  ── 砧
 李夫人の画像  ── 花筐(クセ)
 捨てられた女の呪詛  ── 花筐(クルイ)
 筐の女御  ── 花筐(キリ)
 月光に輝く浜辺  ── 松風(ロンギ)
 人間の絶望について  ── 松風(キリ)
 能のエロティシズム  ── 三輪(クセ)
 暗闇の女の影  ── 夕顔
戦さの風景
 運命の音  ── 熊坂
 殺人者の顔  ── 実盛
 テロリストの絶望  ── 景清(独吟)
 SF戦争映画  ── 田村(キリ)
 氷の刃のきらめき  ── 藤戸
 文治元年十一月六日  ── 船弁慶
 戦争の幻影  ── 頼政
漂泊の人生
 巌頭に立つ男  ── 杜若(クセ)
 かきつばたの庭  ── 杜若(キリ)
 女曲舞の芸人  ── 百万(クセ)
生の幻影
 地獄の風景  ── 阿漕
 水面に散る桜  ── 桜川
 人生の秋  ── 芭蕉
 人間は柳の精になれるか  ── 遊行柳
 深窓の少女  ── 楊貴妃
来世の予感
 黄金の林  ── 江口(クセ)
 地上の菩薩  ── 江口(キリ)
 唯心の浄土  ── 誓願寺
 石の怨念  ── 殺生石(キリ)
 天女変相  ── 羽衣
 山姥の謎  ── 山姥(クセ)
 四季の屏風  ── 山姥(キリ)

 あとがき


和田 誠 (わだまこと)
「きなきな族からの脱出」
(きなきなぞくからのだっしゅつ)


*表カバー・黒田征太郎
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*裏カバー・落田洋子

*255頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
 あなたはどんなタイプの小説がお好みだろうか。ここにあるのは、S・F、ハード・ボイルド、幻想、青春、芸能秘話、ミステリー、時代物、世話物、ラブ・ロマンス、冒険、怪談、ナンセンス、旅……など22種類のタイプの小説である。
 しかも、それぞれの小説はいきなり「終章」から始まる。つまり、「終章」だけの小説集なのである。その前のストーリーは、あなたが勝手に想像してくれればいい。終わり方は、充分考えられ、工夫されている。
 何の想像もせずに、いきなり読んでもらっても一つ一つが実に味わいが深い。
 これはもう、何ともいえないコクのある、うれしい試みなのである。

*目次
十二宮 / 家路 / 吃水線 / サファイア・ボールルームまたは回転物体に捧ぐ / 夏の旅 / ヴィンテージ / 梯子時代 / 弾道 / 花粉時計 / アイリス・アウト / 「泳刀譜」より / 向う側 / 足ながおじさんず / 窓と扉 / 名探偵ちゃんぽんと怪盗皿うどん / 銀杏 / 四百五十光年 / エンジェル・キッス / 奇妙な客たち / 祭 / 足跡 / きなきな族からの脱出 / 解説 村松友視