絶版文庫書誌集成

河出文庫 【お】

大泉 黒石 (おおいずみこくせき)
「黄夫人の手 黒石怪奇物語集」
(ウォンふじんのて)


*カバーデザイン・シルシ(水上英子)
 カバー版画・吉田博「神楽坂通 雨後の夜」
 カバーフォーマット・佐々木暁
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*277頁 / 発行 2013年

*カバー文
アレキサンドル・ステパノヴィッチ・コクセーキ。大泉黒石のロシア名である。ロシア人の父に生まれ、国際的な無頼派ぶりで、混血文学の先駆者として大正文壇の寵児となる。そして ―― 。死んだ女の手がさまざまな怪奇事件を起こす「黄夫人の手」他、人間の魂の不思議を描く、黒石の怪奇小説傑作選。

*目次
戯談(幽鬼楼)
曾呂利新左衛門
弥次郎兵衛と喜多八
不死身
眼を捜して歩く男
尼になる尼
青白き屍
黄夫人の手
 大泉黒石掌伝 由良君美
 解説 無為の饒舌 ―― 大泉黒石素描 由良君美


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「疑惑 推理小説傑作選」
(ぎわく)


*カバーデザイン・山元伸子
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*205頁 / 発行 2009年

*カバー文
その執拗なまでの観察眼で対象に肉迫する作家・大岡昇平の散文精神は、愛好した推理小説を実践する際にも、その威力を遺憾なく発揮した。ここに収めた初期ミステリの代表作九篇も安易な解決を望むことなく犯人を追う。海外で実際に起きた事件や題材も採り入れながら大胆に展開される。本格的な傑作選。

*目次
春の夜の出来事 / 真昼の歩行者 / 疑惑 / 雪の上の呼び声 / 緑の自転車 / 夢 / 夕照 / シェイクスピア・ミステリ / あなた / 文庫解説 推理作家としての魅力 長谷部史親


大鹿 卓 (おおしかたく)
「渡良瀬川 田中正造と直訴事件」
(わたらせがわ)


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*480頁 / 発行 2013年
*カバーデザイン・辻聡 / カバー装画・栗津潔

*カバー文
民を殺すは国家を殺すなり ── 足尾事件で闘いの先頭に立った男は命がけで政府を糾弾した! 鉱毒に気づいてから敢然と立ち向かい、ついに天皇直訴に至るまでの、被害住民と正造の迫真に迫る苦闘の闘いを描いた名作。戦後、日本の公害運動の原点として、正造を全国区の人物として再認識させるきっかけともなった。

*解説頁・小松裕


大庭 みな子 (おおばみなこ)
「寂兮寥兮」
 (かたちもなく)


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*212頁
*発行 1989年
*カバー題字・著者

*カバー文
夢と現実(うつつ)、太古と現代の境いを超えて、幽冥の宇宙をただよいさ迷う女と男……
寄る返ない悲しみを抱えながら、いまを生きる女の半生の性を「古事記」「老子」の世界を通して、生きとし生けるものの根源的な寂寥に重ね映す著者の代表作。
純文学ポルノグラフィーの絶品文庫化!
河野多恵子氏=大庭氏の数々のすぐれた作品のなかでも、この「寂兮寥兮」は、最高の傑作ではないかと思う ―― 朝日新聞

*巻末・著者ノートにかえて 何が私を動かしているか


大濱 徹也 (おおはまてつや)
「明治の墓標 ― 庶民のみた日清・日露戦争」 (めいじのぼひょう)


*カバー図版・日露戦争で日本軍占領後の遼陽市街。「風俗画報」より。 / カバーデザイン・広瀬郁
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*270頁 / 発行 1990年

*カバー文
「栄光の明治」の象徴として語りつがれた日清・日露戦争。しかし、その勝利の陰に忘れさられた庶民の生活を見きわめず
に、この「戦争の時代」を把えることはできない。傷ついた兵士の手紙、当時の新聞・雑誌記事などから、「愛国」の重荷
を負った人々の怨念の世界を解き明かし、翳ある「一等国」大日本帝国の実像をえぐる。本書は、こうした民衆の記録から
この時代を描く画期となった試みである。

*目次
日清戦争
 一 「小国」の焦慮 / 二 「義戦」の構造 / 三 軍国の狂躁
「臥薪嘗胆」
 一 栄華と悲惨 / 二 尚武と煩悶 / 三 北清の屍
日露戦争
 一 諜者の群 / 二 開戦の渦 / 三 兵士の相貌
「愛国」の重荷
 一 ああ増税 / 二 戦時下の村 / 三 深まる亀裂
明治の秋
 一 勝利の悲哀 / 二 病める「一等国」 / 三 荒廃の淵で
主な参考文献 / 関連年表 / あとがき


大森 望 (おおもりのぞみ)
「新編 SF翻訳講座」
(しんぺんえすえふほんやくこうざ)


*カバーデザイン・岩郷重力(WONDER WORk7。)
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*322頁 / 発行 2012年

*カバー文
翻訳家になる方法、訳文の磨き方、悪文を見抜くコツなど実践的な翻訳指南から、翻訳書が出版されるまでの実態、翻訳家の日常生活、SF業界の裏話までを軽妙に披露する名エッセイ集。SFマガジン誌上を飾った伝説の連載、新編集版。「その血さえ流れていれば、人は勝手にSF翻訳者になってしまう」

*目次
序にかえて ── 本書使用上の注意
一の巻 翻訳入門
二の巻 実践的SF翻訳講座・裏ワザ篇
三の巻 SF翻訳者の生活と意見
おまけの巻
「訳者」あとがき
文庫版への追記


大類 信編 (おおるいまこと)
「ヌード 1900‐1960」


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*頁数(ノンブル)無し・カバー文無し・目次無し
*発行 1993年
*cover design:MAKOTO OORUI / cover format:KIYOSHI AWAZU


岡本 綺堂翻訳 (おかもときどう)
「世界怪談名作集 上」
 (せかいかいだんめいさくしゅう)


*カバーデザイン・菊地信義
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*300頁 / 発行 1987年

*カバー文
「半七捕物帳」で知られる捕物帳の創始者岡本綺堂は、古今の怪奇小説に造詣が深く、怪談の名手でもあった。本書はその巨匠が主に西洋の怪奇譚をみずから厳選訳出した珍しいアンソロジーで、昭和四年に改造社より「世界大衆文学全集」の一冊として刊行され大好評を博した。大作家の玄妙かつ味わい深い好短篇を集めた傑作集である。上巻にはプーシキン、ディッケンズ、ホーソーンらの七篇を収録

*目次
貸家 … リットン
スペードの女王 … プーシキン
妖物〔ダムドシング〕 … ビヤース
クラリモンド … ゴーチェ
信号手 … ディッケンズ
ヴィール夫人の亡霊 … デフォー
ラッパチーニの娘 … ホーソーン
 解題/木村毅


岡本 綺堂編・訳 (おかもときどう)
「世界怪談名作集 下」
(せかいかいだんめいさくしゅう)


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*338頁
*発行 2002年新装版
*「横浜英吉利西商館繁栄図」(一寫ヨ芳幾)
 カバーデザイン・中島かほる

*カバー文
堪能な英語力により世界の怪談を自家薬籠中のものとし、名作を渉猟した綺堂の怪談傑作選。[収録作]北極星号の船長(ドイル) / 廃宅(ホフマン) / 聖餐祭(フランス) / 幻の人力車(キップリング) / 上床(クラウフォード) / ラザルス(アンドレーフ) / 幽霊(モーパッサン) / 鏡中の美女(マクドナルド) / 幽霊の移転(ストックトン) / 牡丹燈記(瞿宗吉)


岡本 綺堂 (おかもときどう)
「綺堂随筆 江戸っ子の身の上」
(きどうずいひつえどっこのみのうえ)


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*343頁
*発行 2003年
*カバーデザイン・中島かほる
 カバー装画・小林清親「江戸名所図 両国花火之図」より

*カバー文
江戸っ子の代表の意外な出自を語った「助六の身の上話」。曾我物、忠臣蔵など、江戸に隆盛した「かたき討の芝居」のこと。明治の東京の正月の思い出。東京が様変わりした日清戦争の記憶、従軍記者として赴いた日露戦争での満洲の体験。中国の探偵小説や幽霊譚……
『半七捕物帳』の作者が確かな江戸の知識のもとに語る情趣あふれる随筆選。


お染風(本書収録)
 この春はインフルエンザが流行した。
 日本で初めて此の病いがはやり出したのは明治二十三年の冬で、二十四年の春に至ってますます猖獗(しょうけつ)になった。我々はその時初めてインフルエンザという病いを知って、これは仏蘭西(フランス)の船から横浜に輸入されたものだと云う噂を聞いた。しかし其の当時はインフルエンザと呼ばずに普通はお染風(そめかぜ)と云っていた。何故お染という可愛らしい名を冠(かぶ)らせたかと詮議(せんぎ)すると、江戸時代にも矢張これに能(よ)く似た感冒が非常に流行して、その時に誰かがお染という名を付けてしまった。今度の流行性感冒もそれから縁を引いてお染と呼ぶようになったのだろうと、或(ある)老人が説明して呉れた。
 そこで、お染という名を与えた昔の人の料簡(りょうけん)は、おそらく恋風と云うような意味で、お染が久松(ひさまつ)に惚れたように、直(す)ぐに感染するという謎であるらしく思われた。それならばお染に限らない。お夏(なつ)でもお俊(しゅん)でも小春(こはる)でも梅川(うめがわ)でも可(い)い訳であるが、お染という名が一番可憐(かれん)らしく婀娜気(あどけ)なく聞える。猛烈な流行性をもって往々に人を斃(たお)すような此の怖るべき病いに対して、特にお染という最も可愛らしい名を与えたのは頗(すこぶ)るおもしろい対照である、流石(さすが)に江戸児(えどっこ)らしい所がある。しかし、例の大虎列刺(おおコレラ)が流行した時には、江戸児もこれには辟易(へきえき)したと見えて、小春とも梅川とも名付親になる者がなかったらしい。ころりと死ぬからコロリだなどと智慧のない名を付けてしまった。
 既にその病いがお染と名乗る以上は、これに憑着(とりつ)かれる患者は久松でなければならない。そこで、お染の闖入(ちんにゅう)を防ぐには「久松留守」という貼札をするが可(い)いと云うことになった。新聞にもそんなことを書いた。勿論(もちろん)、新聞ではそれを奨励した訳ではなく、単に一種の記事として、昨今こんなことが流行すると報道したのであるが、それが愈(いよい)よ一般の迷信を煽(あお)って、明治二十三、四年頃の東京には「久松留守」と書いた紙札を軒に貼付けることが流行した。中には露骨に「お染御免」と書いたのもあった。
 二十四年の二月、私は叔父と一緒に向島(むこうじま)の梅屋敷へ行った。風の無い暖い日であった。三囲(みめぐり)の堤下(どてした)を歩いていると、一軒の農家の前に十七、八の若い娘が白い手拭(てぬぐい)をかぶって、今書いたばかりの「久松るす」という女文字の紙札を軒に貼っているのを見た。軒の傍(そば)には白い梅が咲いていた。その風情(ふぜい)は今も眼に残っている。
 その後にもインフルエンザは幾度(いくたび)も流行を繰返したが、お染風の名は第一回限りで絶えてしまった。ハイカラの久松に憑着(とりつ)くには、やはり片仮名のインフルエンザの方が似合うらしいと、私の父は笑っていた。そうして、その父も明治三十五年にやはりインフルエンザで死んだ。

お染・久松
浄瑠璃,歌舞伎に登場する人物。1710年大坂の油屋の娘お染が丁稚の久松と心中した事件は,歌祭文
(うたざいもん)にうたわれて評判となり,浄瑠璃《お染久松袂の白しぼり》においてその定型を確立した。近松半二の《新版歌祭文》,菅専助の《染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)》,鶴屋南北の《お染久松色読販(うきなのよみうり)》などが有名。(デジタル版 日本人名大辞典+Plusより)


岡本 綺堂 (おかもときどう)
「綺堂随筆 江戸の思い出」
(きどうずいひつえどのおもいで)


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*358頁
*発行 2002年
*カバー・「江戸名所図 駿河町雪」小林清親 / カバーデザイン・中島かほる

*カバー文
日清戦争、関東大震災により東京はほとんど江戸との架け橋を失ってしまった。江戸歌舞伎の夢を懐かしむ「島原の夢」。徳川家に愛でられた江戸佃島の名産「白魚物語」。維新の変化に取り残された人々を活写する「西郷星」、「ゆず湯」。江戸東京の懐かしい風景、明治の少年時代の記憶、関東大震災の体験、中国の志怪・江戸の怪談話……綺堂の魅力を集めた随筆選。

*解説頁・額田六福


岡本 綺堂 (おかもときどう)
「綺堂随筆 江戸のことば」
(きどうずいひつ えどのことば)


*カバー・「東京名所図 浅草夜見店」
 カバーデザイン・中島かほる
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*324頁 / 発行 2003年

*カバー文
江戸の人は芝居をシバヤと読み、ついこの間までシバイと読むとお国はどちらと訊かれたものだ。江戸に限らず、都会人は言葉の使い分けを心得ていて、落語の熊さん八さんも、鼠小僧も、いざとなれば今日の紳士以上に礼儀正しい言葉を使ったものだ。江戸東京の言葉の移り変り。黙阿弥の思い出。明治の寄席と芝居。半七捕物帳の誕生譚……。情趣あふれる綺堂の名随筆選。

*目次
江戸のことば
 戯曲と江戸の言葉 / 孝子貞女 / 劇の名称 / 言葉は正しく / 喜劇時代 / 春の寝言 / 新浮世風呂 / 日記の一節
 甲字楼夜話 髪切 / 昔の化け物 / 慶安の町触 / 僧侶の芝居 / 曲亭馬琴 / 篠塚稲荷 / 俳諧と和歌 / 兄坂弟坂 / 雪女 / 梅若の木像 / 蛇蛸 / 盲目の王 / 人相と手相
怪談奇譚
 夢のお七 / 鯉 / 深川の老漁夫 / 怪談一夜草紙
明治の寄席と芝居
 寄席と芝居と
  一 高坐の牡丹燈籠 / 二 舞台の牡丹燈籠 / 三 円朝の旅日記 / 四 塩原多助その他 / 五 団十郎の円朝物 / 六 柳桜と燕枝
 明治以後の黙阿弥翁 / 『三人吉三』雑感 / 竹本劇の人物研究
創作の思い出
 自作初演の思い出 / 「半七捕物帳」の思い出 / 半七紹介状 / はなしの話 / 目黒の寺
岡本綺堂年譜


岡本 綺堂 (おかもときどう)
「風俗江戸物語」
 (ふうぞくえどものがたり)


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*204頁 / 発行 昭和61年
*カバーデザイン・広瀬郁

*カバー文
徳川直参の御家人の家に生まれ、江戸生き残りの古老から昔語りを聞きとり、それをもとに『半七捕物帳』をはじめ、江戸情緒を伝えるかずかずの名作を残した岡本綺堂。その軽妙な語りで描き出す江戸の生活の実相。江戸城内の習慣、岡っ引の給料、牢内のしきたり、武士の試験、寄席の出し物、芝居見物の段取り、山王祭の意味、寺子屋での教え方など。長く世に出なかった「幻の本」、待望の復刻。

*目次
凡例 / 江戸の春 / 同心と岡っ引 / 聖堂と講武所 / 寄席 / 江戸の化物 / 両国 / 芝居 / 折助 / 時の鐘と太鼓 / 月見 / 山王祭 / 手習師匠 / 旅 / 江戸の火事 / 心中の処分 / 江戸の町人 / 註 / 解説 今井金吾


小川 国夫 (おがわくにお)
「温かな髪」 (あたたかなかみ)


*カバー装画・司修
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*236頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
―― わたしは自分の気持が、真一さんをしっかりと抱いているのを感じた ――
薄幸であるが故に互いの体温をさぐり求める女たちが紡ぎ出す愛のかたち。初期秀作「想う人」から、女性小説の代表作「悠蔵が残したこと」「影の部分」「違約」単行本未収録の「単車事故」「捨子」などを収めた、女主人公の語る十篇の物語。司修の描き下ろした肖像画八葉が、物語に新たな照明をあてるオリジナル文庫!

*目次
蛇王
捨子
悠蔵が残したこと ―― 丹羽正に
単車事故
違約
姉弟
影の部分
想う人
悲しみ ―― 立原正秋に
著者ノート
画家ノート 司修


沖浦 和光 (おきうらかずてる)
「旅芸人のいた風景 遍歴・流浪・渡世」
(たびげいにんのいたふうけい)


*カバーデザイン・山元伸子
 (江馬務『歴代風俗写真大観』より「春駒」)
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*228頁 / 発行 2016年

*カバー文
「物乞い、旅芸人、村に入るべからず」 ── 川端康成「伊豆の踊子」で、旅役者たちは忌避され、賎視される。放浪の被差別芸人がどうして生まれ、どう暮らしてきたか、実見を踏まえて細かく掘り下げる。被差別民が辿り着いた予祝芸の世界と、修験者の呪いから香具師の大道芸に到る芸能の起源を探る。

*目次
 はじめに 近世文化の残影を求めて
第一章 街道に生きる遊芸民
 一 遊行する渡世人
 二 乞食巡礼と御詠歌
 三 「辻芸能」としての大道芸
第二章 「物乞い、旅芸人、村に入るべからず」
 一 川端康成の『伊豆の踊子』
 二 宝塚歌劇、温泉、箕面の滝
 三 修験道の行場と西国三十三所巡礼
第三章 ドサ回りの一座と役者村
 一 芝居小屋と活動写真館
 二 最後の役者村・播州高室(たかむろ)
 三 村に旅の一座がやってきた
第四章 香具師は縁日の花形だった
 一 一晩で出現する祝祭空間
 二 舌先三寸の啖呵売(たんかばい)
 三 大道芸の王者「ガマの膏(あぶら)売り」
 四 ひとり旅の「フーテンの寅さん」
第五章 医薬業と呪術の世界
 一 香具師の本義は愛敬芸術
 二 市川団十郎のお家芸「外郎(ういろう)売り」
 三 大江戸の辻芸 ── 非人・乞胸(ごうむね)・願人坊主・香具師
第六章 遊芸民を抑圧した明治新政府
 一 近世の身分制と芸人
 二 香具師からテキヤへの「渡世替え」
 三 ヤブ医者・渡(わたり)医者・辻医師
まとめ 旅芸人の生きてきた世界
おわりに 「道々の者」への挽歌
文庫解説 共振・多情・不純の沖浦イズム 和賀正樹


オークシイ著 中田 耕治訳
「紅はこべ」
 (べにはこべ)


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*359頁
*発行 1989年
*カバー装画・岡野玲子 / カバー装幀・田沢司

*カバー文
いまやフランスの支配者は民衆! あの貴族のやつらは国家の叛逆者なのだ ― 。老若男女子供を問わず、ギロチンは連日犠牲者を追い求める……恐怖に駆られた貴族たちを救うべく、ドーヴァーの彼方イギリスから謎の秘密結社〈紅はこべ〉が神出鬼没の活動を展開する。果たして首領は何者? サスペンスとミステリー、恋と冒険と愛僧が渦まく、あの懐かしい古典ロマンの代表作。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「国技館 大相撲力士、土俵の内外」
(こくぎかん)


*カバーデザイン・山元伸子
 (写真提供・共同通信社)
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*211頁 / 発行 2015年

*カバー文
横綱審議委員を長く務め、大の相撲通だった『人生劇場』の作家の、相撲ノンフィクション小説代表作。力士や親方と深く交わった著者ならではの、交友と知見に裏打ちされた、戦前戦後三十年の角界黄金時代の見聞録。清水川、綾川、高砂、朝潮、若乃花……。「人生そのもの」の土俵の思い出を愛惜をこめて綴る。

*目次
第一章 丸天井の大鉄傘 返り新参・清水川
第二章 彼等いまいずくにありや 名寄岩の悲壮のことなど
第三章 櫓太鼓 綾川という苦節の人生
第四章 肚と眼 豪の高砂・柔の朝汐師弟
第五章 今日咲く花 朝汐の結婚と横綱昇進
第六章 消えてゆく横綱 双葉山、男女ノ川、東富士、そして
第七章 花咲く土俵 若乃花の横綱問題
 あとがき
 解説 古き良き相撲界への惜別の詩 大山眞人


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「私学校蜂起 ― 小説・西南戦争」
 (しがっこうほうき)


*カバー装画・坂下広吉
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*261頁 / 発行 1989年

*カバー文
西郷隆盛と大久保利通の宿命の対決 ― 。近代日本の行方を決定づけた西南戦争の蜂起は、しかしあまりに無造作であった。大西郷を慕い集まった私学校生徒たちや維新以来の幕僚・桐野利秋らの奮闘を、鹿児島県令・大山綱良の悲劇を軸に描く「私学校潰滅」から、その志を継いで決起する頭山満らの「波荒し玄洋社」まで、男たちのロマンを伝える雄渾な西南戦争叙事詩。あの『人生劇場』の著者の快作!

*目次
私学校潰滅
可愛嶽突破
桐野利秋
波荒し玄洋社
私学校潰滅の「あとがき」
巻末エッセイ 複眼の人間観 松本健一


長部 日出雄 (おさべひでお)
「ハードボイルド志願」 (はーどぼいるどしがん)


*カバー装幀・荒川じんべい
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*289頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
夜霧の波止場、異国情緒漂う外人墓地、映画の故郷・本牧、ファッションの元町、そしてグルメの中華街……港ヨコハマの魅力に取り憑かれた、三人の中年男たち ―― 三文小説家、失業したなんでも屋、地方新聞記者 ―― が、いつの間にか結成した素人探偵団。次々と湧いて出る事件の謎に振り回されながら、今日も横浜の街を駆ける……直木賞作家がユーモアと愛惜をこめて描く超異色ミステリー快作。

*目次
振り向けば、海
幽霊船が出た夜は……
あの駱駝を追え
ハードボイルド志願
蓬莱山に消えた……
ズームレンズの謎

巻末エッセイ 長部さんとの歳月 永井與史満