絶版文庫書誌集成

河出文庫 【し】

塩見 鮮一郎 (しおみせんいちろう)
「貧民に墜ちた武士 乞胸(ごうむね)という辻芸人」
(ひんみんにおちたぶし)


*カバーデザイン・市川衣梨
(画像はクリックで拡大します)

*240頁 / 発行 2013年

*カバー文
江戸初期、天下平定とともに、失職した武士たちは同じ境遇の長嶋礒右衛門のもとに集められ、乞食に身分を落とし、大道芸をなりわいとして生きた。浅草弾左衛門、車善七の支配を受け、以前からその存在を知られながらもその実態がよくわかっていなかった彼らの生態を、豊富な図版とともにまざまざと活写する。

*目次
はじめに
一章 芸人のいる街道
 1 にぎわい / 2 街道の記録 / 3 こじきの国
二章 東くだりの浪人
 1 リストラされた武士たち / 2 江戸の浪人 / 3 浪人たちの乱
三章 かぶく者と日本橋北
 1 かぶく時代 / 2 かぶく土地 / 3 弾左衛門支配の座
四章 縄張りと和解
 1 やぐら銭 / 2 車善七の不満 / 3 乞胸頭の誕生
五章 家業の十二種
 1 身分は町人 / 2 公称の家業 / 3 辻勧進と願人
六章 宮芝居禁止
 1 なぜ乞胸 / 2 復興と繁栄 / 3 つのる圧迫
七章 下谷山崎町へ
 1 山本仁太夫誕生 / 2 下谷山崎町 / 3 虚無僧と帯刀禁止
八章 香具師の見世物
 1 乞胸頭の経済 / 2 見世物興行 / 3 香具師の立場
九章 見世物と盛り場
 1 勧進と愛敬 / 2 奥山見世物 / 3 寄席の流行
十章 天保の改革
 1 仁太夫書上 / 2 堂前へ移住 / 3 ぐれ宿
十一章 維新の暗部
 1 両国広小路 / 2 幕末の乞胸 / 3 明治のこじき
十二章 文明と見世物
 1 解放令まで / 2 文明の欺瞞 / 3 野外演技の終末
 資料 / 乞胸関係の年表 / おわりに / 文庫版あとがき


芝木 好子 (しばきよしこ)
「日本の伝統美を訪ねて」 (にほんのでんとうびをたずねて)


*カバー写真・加藤悦二
(画像はクリックで拡大します)

*223頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
華麗で優美で香りゆかしい京都・西陣織、きびしい風土の中で作られる堅牢で気品あふれる輪島塗、白くふんわりとした肌ざわりが人の心を和ませる志野焼、篝火と神々たちの舞が神話の世界に誘う高千穂の夜神楽。長い年月をかけていくつしみ育まれてきた日本の伝統文化――"ほんもの"だけが持つ重さ、美しさを各地に訪ねて、芸術派の作家芝木好子が味わい深い筆致で綴る珠玉のエッセイ。

*目次
京都西陣織の町 / 輪島塗 / 徳島の木偶人形 / 金沢の和菓子 / 沖縄の紅型 / 和紙を漉く町 / 花の旅・紅花 / 志野焼の里 / 能面 / 長良川の鵜飼 / 高千穂の夜神楽 / 江戸火消 / 山陰・浜絣 / 江戸小紋の美 / 備前焼の人

*その他
口絵写真(カラー、8頁)・加藤悦二
親本・昭和49年5月 日本交通公社出版事業局
雑誌『旅』に一年間連載したものに三篇を加える。


澁澤 龍彦 (しぶざわたつひこ)
「胡桃の中の世界」
(くるみのなかのせかい)


(画像はクリックで拡大します)

*271頁 / 発行 1984年

*目録文
「夢の宇宙誌」の主題をさらに発展させた形象思考をめぐる十三篇のエッセイ集

*目次
石の夢 / プラトン立体 / 螺旋について / 『ポリュフィルス狂恋夢』 / 幾何学とエロス / 宇宙卵について / 動物誌への愛 / 紋章について / ギリシアの独楽 / 怪物について / ユートピアとしての時計 / 東西庭園譚 / 胡桃の中の世界


渋澤 龍彦 (しぶさわたつひこ)
「スクリーンの夢魔」
(すくりーんのむま)


*カバー 「アンダルシアの犬」より
 (フランス映画社・提供)
カバーデザイン 菊池信義
(画像はクリックで拡大します)

*171頁 / 発行 1988年

*カバー文
偏愛する映画作家、ブニュエル、ベルイマンなどの諸作品をめぐって印象批評をくりひろげ、女優カトリーヌ・ドヌーブの妖しい魅力を分析し、はたまたお得意のドラキュラ物をはじめとする怪奇・恐怖映画の数々をとりあげながら、そのおもしろさについて蘊蓄を傾ける、独特の批評眼が随所に光る映画エッセイ集。「書斎派ダンディ」として知られた著者がまとめた唯一の映画の本!!

*目次
『恐るべき子供たち』を見て
『エクソシスト』あるいは映画憑きと映画祓い
「マラー/サド」劇について
現代の寓話 パゾリーニ『テオレマ』を見て
ナチスをめぐる相反感情(アンビヴァレンツ)
『バーバレラ』あるいは末来像の逆説
『昼顔』あるいは黒眼鏡の効用について
ルイス・ブニュエルの汎性欲主義
非社会的映画のすすめ W・ワイラー『コレクター』を見て
ベルイマン、この禁欲的精神
カリガリ博士あるいは精神分析のイロニー
サド映画私見
映画におけるエロティック・シンボリズムについて
恐怖映画への誘い
怪奇映画の季節 ドラキュラの夢よ、いまいずこ
ショックについて
ドラキュラはなぜこわい? 恐怖についての試論
カトリーヌ・ドヌーヴ その不思議な魅力
愛の形而上学と死刑 大島渚『絞死刑』について
階段闘争か生物学主義か 大島渚『忍者武芸帳』を見て
黒い血の衝撃 三島由紀夫『憂国』を見て
デパートのなかの夢魔 『白日夢』のノスタルジアについて
エロス的風俗に関する対話
初版あとがき


澁澤 龍彦 (しぶざわたつひこ)
「夢の宇宙誌」
(ゆめのうちゅうし)


(画像はクリックで拡大します)

*273頁
*発行 1984年

*目録文
玩具、天使、アンドロギュヌスなどをめぐる多様なイメージの集積から考察される転形期の精神


澁澤 龍彦 (しぶさわたつひこ)
「私のプリニウス」
(わたしのぷりにうす)


(画像はクリックで拡大します)

*216頁 / 発行 1996年
*カバーのイラスト・「世界年代記」より / カバーデザイン・菊池信義

*カバー文
約二千年前、古代ローマの博物学者プリニウスが、世界最大級の自然誌事典『博物誌』全三十七巻を著した。古今東西の文献や当時の思想を総動員して編まれたこの『博物誌』は、天文地理から動植物、鉱物、薬物、人間文化に及ぶ一大奇書であった。この大著に魅せられて渉猟する渋沢龍彦は、プリニウス独特の奇想天外な想像力を楽しみつつ、怪物や迷宮や畸形など幻想と想像の異世界へと読者を誘う。

*目次
迷宮と日時計 / エティオピアの怪獣 / セックスと横隔膜 / 海ウサギと海の動物たち / 薬草と毒草 / カメレオンとサラマンドラ / 琥珀 / 畸形人間 / 鏡 / 世界の不思議 / 磁石 / 鳥と風卵 / アネモネとサフラン / 頭足類 / スカラベと蝉 / 宝石 / 誕生と死 / 地球と星 / 天変地異 / 真珠と珊瑚 / 香料 / 象 / あとがき


澁澤 龍彦 矢牧 健太郎 (しぶさわたつひこ・やまきけんたろう)
「新版・遊びの百科全書C玩具館」 (しんぱん・あそびのひゃっけぜんしょ・がんぐかん)


*カバーデザイン・イエローバッグ
(画像はクリックで拡大します)


*221頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
遊びから新しい宇宙が生まれる
「世俗的な価値があろうとなかろうと、或る特定の対象物を玩具にすることにきめさえすれば、私たちは即座に、私たち自身に都合のよい一つのミクロ状況を再創造することができる。私たちはいとも容易に、そのミクロ状況のデミウルゴス(造物主)になり得るのだ。それが遊びというものであろう」(本書巻頭・澁澤龍彦「玩具のための玩具」より)
玩具が私たちをひきつけてやまないのは、なるほど私たちが容易に造物主になり得る、不思議な宇宙がくりひろげられるからのなのだ。この、めったに得られない貴重な体験を、私たちはもしかしたら、忘却のかなたに押しやっていないだろうか。

*目次
はじめに
04-100 玩具のための玩具 私の玩具論 澁澤龍彦 / 04-101 ぶりぶり / 04-102 遊ばれてこそ玩具 / 04-103 奇妙な遊びエボナイト / 04-104 遊びとメタモルフォーズ / 04-105 仮面 / 04-106 ごっこ、すなわち現実模倣 / 04-107 玩具のシンボル価値 / 04-108 玩具のパースペクティヴ / 04-109 玩具至上主義の玩具 / 04-110 回転する玩具 / 04-111 ミニチュールそして積木

04-200 玩具館事典 山牧健太郎 / 04-201 家具や台所用品、装飾品などのミニチュア付きドールズ・ハウス / 04-202 子供たちに家政学を教えるためのドールズ・ハウス / 04-203 箪笥の扉を開けるとミニチュア世界がとび出す / 04-204 世界中のモデル・トレインが同じスケールのレール上を走る / 04-205 帆船をボトルに入れてからマストを立てたボトル・シップ / 04-206 組上げ錦絵は元祖ペーパー・モデル / 04-207 小林礫斎の「繊巧芸術」超精密ミニチュア工芸 / 04-208 精緻な木工細工とからくりが合体した箱根細工 / 04-209 新素材プラスチックが組み立て玩具の世界を変えた / 04-210 人間の夢がたくされた凧は先端的実験器具でもあった / 04-211 空中に舞い上がる竹とんぼは回転する翼にほかならない / 04-212 回転する翼の変わり種ブーメランとフリスビー / 04-213 輪ゴムをエンジンにして坂ものぼる糸まき戦車 / 04-214 ゼンマイ技術の発達とともに性能アップしたゼンマイ自動車 / 04-215 ろうそくの炎を動力源として進むポンポン船 / 04-216 回転玩具のチャンピオンコマの不思議 / 04-217 「ジャイロ現象」で遊ぶスーパー科学玩具、宇宙ゴマ / 04-218 昭和初期にモダンな玩具としてフランスから再流入したヨーヨー / 04-219 弾丸を飛ばす鉄砲玩具と炸裂音を出す鉄砲玩具 / 04-220 手技の熟練度を競い合うけんだま遊び / 04-221 「慣性の法則」を玩具にしただるま落とし / 04-222 揺れ動きが目を奪うバランス名人のやじろべえ / 04-223 ろうそくの炎が像を写し炎の熱が像を動かすまわり灯籠 / 04-224 永久運動の体現者かと注目を集めた水のみ鳥 / 04-225 ひもにとりついた猿がひもを引っぱると昇る / 04-226 水中で花を咲かせる水中花は昔ながらの見る玩具 / 04-227 手品玩具の板がえしには単純にして絶妙な仕掛けがある / 04-228 難度の高さで大ヒットしたルービック・キューブ / 04-229 高性能コンピュータの機能をもつ超人気ゲーム機ファミコン / 04-230 オルゴールによって実現した自動演奏の夢

主要参考文献 / 著者略歴

編集制作・カルマ社 / 「遊びの百科全書」編集スタッフ  本文 カバーデザイン・イエローバッグ
撮影・乙悼一 / 立花義臣  イラスト・和久井昌幸 / 山田歩  撮影協力・グランパパ / バニボート


志村 有弘 (しむらくにいろ)
「戦前の猟奇残虐事件簿」
(せんぜんのりょうきざんぎゃくじけんぼ)


*カバーデザイン・水上英子
(画像はクリックで拡大します)

*198頁 / 発行 2011年

*カバー文
明治維新後、日本は富国強兵・殖産興業、急速に西欧列強に追い着こうと無理に無理を重ね近代化を図った。当然、しわ寄せ、ひずみが、社会のそこかしこに現れる。ここに記述される八大猟奇残虐事件は、いずれも過またず近代日本の急速な欧化の悲鳴であり悲哀であり、陰画である。事実だけがもつ迫真が、その歴史の惨酷を暴く。

*目次
稲妻小僧 阪本慶二郎 / 記憶なき殺人 小林只四郎 / 小年臀肉切り取り殺人事件 野口男三郎? / まぼろし小僧 西田龍太郎 / 汚職殺人「鈴弁事件」 山田憲 / 淫殺魔 吹上佐太郎 / 説教強盗 妻本松吉 / 贋造紙幣殺人事件 高橋作之助ら / 解説並びにあとがき


シュミット村木 眞寿美 (しゅみっとむらきますみ)
「クーデンホーフ光子の手記」
(くーでんほーふみつこのしゅき)


*カバーデザイン・長谷川周平
(画像はクリックで拡大します)

*289頁 / 発行 2010年

*カバー文
明治二十五年、東京牛込の町娘光子はオーストリアの伯爵ハインリッヒ・クーデンホーフに見初められ結婚、欧州に渡る。夫の急死により三十二歳で寡婦になった光子は、女手ひとつで七人の子を育て上げ、“黒い瞳の伯爵夫人”と称せられる。本書は死の直前まで綴った手記で、編者により初めて日の目を見た貴重な記録である。

*目次
 プロローグ
一章 さよなら東京 東京〜ハイデラーバード
二章 パパの思い出
三章 ヨーロッパへ アデン〜ロンスペルク
 エピローグ
 文庫版に寄せて


城 市郎 (じょういちろう)
「性の発禁本」
(せいのはっきんぼん)


*カバー装幀・戸田ヒロ子
(画像はクリックで拡大します)

*288頁 / 発行 1993年

*カバー文
明治から昭和にかけて性表現が抑圧された時代に、表現の自由と性の解放をめざし、苛烈な弾圧に屈することなく、あの手この手で性表現を追求しつづけた人たちがいた。彼ら“活字のエロ事師たち”の果敢な生き方と仕事の内容を、発禁本蒐集の第一人者である著者が、集め得た資料を駆使し、初公開の文献からハイライトシーンをふんだんに引用しながら解きあかす。

*目次
『袖と袖』 … 伝・小栗風葉
『乱れ雲』 … 伝・佐藤紅緑
『四畳半襖の下張』 … 伝・永井荷風
『腕くらべ』贋作秘本 / 『続・腕くらべ』 … 永井荷風 / 荷風山人
『江戸城大奥秘蔵考』 … 足立直郎
『フロッシー』『バルカン戦争』 … 梅原北明
『ウイーンの裸体倶楽部』『イヴォンヌ』 … 西谷操
『蚤の自叙伝』『談性』ほか … 佐藤紅霞
『セックサス』 … 木屋太郎
『猥褻廃語辞彙』ほか … 宮武外骨
『人間研究』 … 砂山岳紅
『責の話』 … 伊藤晴雨
『凸』『凹』ほか … 久保盛丸
あとがき
[対談]消えなば消えん発禁本譚 … 吉行淳之介 / 城市郎
城市郎著書総目録


ジョルジュ・シムノン 榊原晃三訳 (Georges Simenon さかきばらこうぞう)
「メグレと消えた死体」
(めぐれときえたしたい)


(画像はクリックで拡大します)

*248頁
*発行 2000年

*目録文
金持の邸に忍びこんだ泥棒がそこに見つけたのは女の死体だった。だが死体に跡形もなく消えていた。

*解説頁・田中 博