絶版文庫書誌集成

河出文庫 【た】
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太平洋戦争研究会編・森山 康平 (たいへいようせんそうけんきゅうかい・もりたこうへい)
「証言・南京事件と三光作戦」
(しょうげん・なんきんじけんとさんこうさくせん)


*カバーデザイン・渡辺和雄
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*265頁 / 発行 2007年

*カバー文
南京占領に伴う入城式に備えて、徹底した敗残兵の掃討作戦が行なわれた。当時の従軍記者や将兵らによる生々しく衝撃的な証言の数々から見えてくるものとは何か……。また、南京以外でも行なわれた燼滅(じんめつ)作戦、つまり完膚なき殺戮と破壊そして略奪を旨とした「三光作戦」の全貌を証言で再現する。そのとき彼らは何を考え、何を思ったのか……。

*目次
【本書の目次】第1章 南京大虐殺 日本軍将兵の証言 / 第2章 南京大虐殺の背景 虐殺は南京だけではない / 第3章 三光作戦 殺し、焼き、略奪しつくす / 第4章 満州国の崩壊 関東軍はこうして敗走した / 第5章 敗戦後の戦闘 北支派遣第一軍残留者の証言 / 第6章 戦争と虐殺 現代の視点から / あとがき / 文庫版のためのあとがき


高橋 和巳 (たかはしかずみ)
「悲の器 ― 高橋和巳コレクション@」 (ひのうつわ)


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*549頁 / 発行 1996年
*カバー装幀・杉浦康平+赤崎正一

*カバー文
没後25周年記念・高橋和巳文庫コレクション全10巻・第1弾!(監修=埴谷雄高・川西政明)
一九六二年、第1回文芸賞を受賞した若き著者のデビュー作。法学博士・大学教授の正木典膳は、家政婦から婚約不履行により告訴される……スキャンダル、周囲からの孤立、そして破滅。戦中・戦後の日本社会の変動と知識人の内的葛藤を重層的かつスリリングに描いた長篇傑作。

*目次
悲の器
同時代エッセイ 苦悩教の始祖 埴谷雄高
巻末エッセイ 面白くて壮絶で、そして愛しい 松本侑子


高橋 和巳 (たかはしかずみ)
「わが解体 ― 高橋和巳コレクションI」 (わがかいたい)


*カバー装幀・杉浦康平+赤崎正一
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*250頁 / 発行 1997年

*カバー文
没後25周年記念・高橋和巳文庫コレクション全10巻・第10弾!(監修=埴谷雄高・川西政明)
私を支えるものは文学であり、その同じ文学が自己を告発する ―― 一九六〇年代末、戦後日本の曲がり角となった大学闘争の渦中にあって、その課題を一身に引受け、自己の在り方を追求した“わが内なる告発”の書! 戦後の文学・思想に鮮烈な足跡を残して逝った著者最後の評論。

*目次
わが解体
三度目の敗北 ―― 闘病の記
死者の視野にあるもの
内ゲバの論理はこえられるか
自己否定について
経験について
死について
同時代エッセイ 正体不明の新しさ 竹内好
巻末エッセイ 「あの時代」とその後の影 稲葉真弓


高橋 鐵 (たかはしてつ)
「あぶ・らぶ 高橋鐵コレクション」


*カバー装幀・高麗隆彦
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*371頁 / 発行 1992年

*カバー文
異常なのが正常であり、正常は異常の塊なのである ── 。サド・マゾヒズム、フェティシズム、同性愛、その他……。謎にみちたさまざまな性衝動と、その歓び、苦悩、悲哀を、カウンセリングや現実の事件を通して分析し、人間存在の普遍的真実の解明によって、人々を心理的呪縛から解きはなつ、現代セクソロジー最大の先駆者の画期的な労作! 好評の文庫コレクション第6弾。

*目次
まえがき・君も彼女もBlue Sex / 異常犯罪の「鍵」として / 新版・PREFACE 異常な反響にこたえて
序章 「激しい恋は生きられぬ」(ウィッテルス)
女性編
 第1章 女性にひそむ露出欲 / 第2章 女性の中の変痴心趣味(フェティシズム) / 第3章 女性と女性の同性愛 / 第4章 その狂わしい懺悔録 / 第5章 女心の底に燃えるH欲九態
男性編
 第6章 淫魔たちの体験記録とその分析 / 第7章 悲願四千人斬の色魔の分析 / 第8章 「裸体」異常愛(アブ・ラブ) / 第9章 縛る快感・縛られる快感 / 第10章 アベック殺しの心理 / 第11章 同性フェティシズムの百相 / 第12章 性器化粧のゲイ術 / 第13章 腹切(ハラキリ)願望の分析 / 第14章 汚?症と淫斬症 / 第15章 戦争が製造する変態性 / 第16章 異常・人性記
カウンセリング編
 第17章 下着・下穿フェティシズムの感溺 / 第18章 女の刺青に憑かれて / 第19章 女性の身体を濡らしたい熱望 / 第20章 女の排泄物に心酔する告白(四相) / 第21章 全裸露出のマゾヒズム / 第22章 受身な空想的オナニー / 第23章 死をまねいた情事事件 / 第24章 警官バラバラ事件の底に / 第25章 性研究の愉しみと効用
あとがき / 主要資料文献抄
補章1 啄木の「ローマ字秘密日記」分析 / 補章2 男根狂崇型(ファリシズム) / 補章3 異性変装症(トランスベスティズム)
「高橋鐵」先生の死と「あぶ・らぶ」について 鈴木敏文 / 文庫版への補記 鈴木敏文


高橋 鐵 (たかはしてつ)
「あるす・あまとりあ ― 性交態位六十二型の分析」― 高橋鐵コレクション



*カバー装幀・高麗隆彦
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*261頁 / 発行 1993年

*カバー文
この本は他人にお貸しになってはいけません!! あなたの御手許には再びもどらないでしょう ― 昭和24年、本書刊行の際に著者自身が作ったオビのコピーである。戦後はじめて、日本人男女のセックスを、心理的、肉体的、技術的に余すところなく分析解明し、著者の地位を確立した超ベストセラー。ヴェルデ『完全なる結婚』、謝国権『性生活の知恵』と並ぶ性の伝道書。

*目次
まえがき
序文
第一章 性の喜びとは何か
 1 心理的な喜び ― 接触の喜び・皮膚愛
 2 闘争する喜び ― からむ心理・抱きしめる心理・息苦しさの魅力
 3 吸収する喜び ― 女性器と精液・男性器羨望・男性の心理的摂取・眼でみる喜び
 4 あたえあう喜び ― 精液とパ氏腺液・膣分泌液・子宮頚管腺液・含蓄ある性交
 5 淫虐の喜び ― 男根嵌入と愛咬・獣としての汚れ・破戒する興奮
 6 退行の喜び ― 原始人の本能・胎内(子宮)へ入る幻想・体温と性の湿潤・コイツス後の快眠
 7 人生の喜び ― 快感曲線・緊張と弛緩
第二章 態位とは何か
 1 性の民俗差を埋める ― 性器の計測値・日本人(♂)の亀頭・日本人(♀)の小陰唇・性交と感受性
 2 性の個人差を埋める
 3 境遇・性格の個人差を埋める ― 異性親との関係・男根羨望と去勢心理・幼時外傷(口唇・尿道・肛門・その他)性度・自己愛と同性愛・性にたいする態度
 4 接触部位に変化をもたせる
 5 視覚による「喜びを得る」
 6 テンポやリズムと運動を効果的にする
第三章 態位をどう使うか
 はじめに ― 分類のしかた
  男上位と女上位
 1 前立位
  (1)凭立位 / (2)脚揚位 / (3)懸縋位
 2 背立位
  (4)脚揚背立位 / (5)四肢位 / (6)床上床下背立位
 3 前座位
  (7)椅座位 / (8)膝座位 / (9)脚伸座位 / (10)胡座位 / (11)女跨位 / (12)脚揚座位 / (13)折衷前座位 / (14)半座位
 4 背座位
  (15)椅座背位 / (16)膝座背位 / (17)男反背位 / (18)女俯背位 / (19)女跨背位 / (20)折衷背位
 5 女上前位
  (21)女上膝位 / (22)女上跨位 / (23)女上伸位 / (24)折衷女上前位
 6 女上背位
  (25)女上背膝位 / (26)女上背跨位 / (27)女上背伸位 / (28)双仰臥位 / (29)折衷女上背位
 7 男上前位
  (30)開股位 / (31)膝高位 / (32)屈曲位 / (33)男踞位 / (34)纏絡位 / (35)女下位 / (36)双伸位 / (37)男掌位 / (38)抱上位 / (39)折衷男上前位 / (40)互脚男上前位 / (41)床上床下男上前位
 8 男上背位
  (42)腹臥位 / (43)膝肘背位 / (44)女掌位 / (45)閉股位 / (46)折衷男上背位 / (47)互脚男上背位
 9 前臥位
  (48)前側位 / (49)纏絡前臥位 / (50)反臥位 / (51)間隔位
 10 背臥位
  (52)背側位 / (53)間隔背側位 / (54)女仰位
 11 斜横位
  (55)斜横女上位 / (56)斜横男上位 / (57)男側位 / (58)床上床下斜横位 / (59)女斜位
 12 逆角位
  (60)逆角女上位 / (61)逆角男上位 / (62)逆角側臥位
 付 13 曲技的態位
あとがき
献辞 アルフレッド・キンゼイ先生へ
『あるす・あまとりあ』の意義 鈴木敏文


高橋 鐵 (たかはしてつ)
「浮世絵 ― その秘められた一面」 ― 高橋鐵コレクション
 (うきよえ)


*カバー装幀・高麗隆彦
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*229頁 / 発行 1991年

*カバー文
春画こそは浮世絵の中で、もっとも正確に庶民のバイタリティを伝えている ― 現代セクソロジーの最大の先駆者である著者が、最晩年に発表した不朽の名著。初期肉筆浮世絵から師宣・祐信・政信・春信・湖龍斎・清長・歌麿・北斎・英泉そして歌川派にいたる滔々たる流れを、豊富なカラー絵図で鮮やかに解き明かし浮世絵春画の世界史的意義を甦らせる。注目の高橋鉄文庫コレクション第2弾!

*目次
はじめに ― なぜ、私はこの本を書いたか
1 初期の浮世絵 ― 素っ裸な庶民精神の結晶
2 菱川師宣 ― 浮世絵を庶民の手に解放したアイデアマン
3 西川祐信と奥村政信 ― 無限に広がる題材とテーマ
4 鈴木春信 ― 夢の創造者
5 湖龍斎、春章、重政 ― 夢の世界から、精密な現実描写へ
6 鳥居清長 ― 豊満な人体美の誕生
7 喜多川歌麿 ― マザー・コンプレックスと自己愛の結晶
8 葛飾北斎 ― 自己革命の芸術家
9 渓斎英泉 ― 凄艶な江戸のビーナスの創造
10 歌川派―幕末の世相を描いた豊国・国貞・国芳
むすびに
浮世絵師生没年表


高橋 鐵 (たかはしてつ)
「えろす福音書」 ― 高橋鐵コレクション (えろすふくいんしょ)


*カバー装幀・高麗隆彦
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*348頁 / 発行 1994年

*カバー文
愛と性の真実と至福を、生涯をかけて説き続けた、戦後最大のセクソロジストが、心魂を傾け書きあげたエロスの教科書 ―― 。男女の肉体構造の相違、歴史的社会的差異、そこから生まれる心理的葛藤、自慰と交悦の違い、初体験のさまざまな課題、性の真の悦びと挫折の問題など……、名著『あるす・あまとりあ』の姉妹篇として、性愛の全領域を精神的=肉体的に解明した力作

*目次
序章 世界の聖典に現れたエロスの福音
第一章 自慰と交悦(コイツス)はどう違うか
第二章 正しいコイツス道 ―― 性交教育と性交倫理
第三章 性生活(初交)へ入る際の戒め
第四章 「密入(ミツチリ)性交」の奨め
第五章 極致性感(アクメ)の観察鑑定
第六章 コイツス(交悦)の心理性 ―― ヴェルデ学説はなぜ「不完全」か
第七章 性器の心理学 ―― 性器に集まる本能感情
第八章 コイツス・アクメによる無意識満足 ―― 人はなぜ肉交へ進むか?
第九章 性的不満から惹起する個人的・社会的大害
名著『あるす・あまとりあ』の兄貴格 鈴木敏文


高橋 鐵 (たかはしてつ)
「日本の神話 ― 性のユートピアを求めて」 ― 高橋鐵コレクション (にほんのしんわ)


*カバー装幀・高麗隆彦
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*208頁 / 発行 1991年

*カバー文
古事紀・日本書記が伝える日本の神話が私たちに語りかけるものは果して何か? イザナギ・イザナミの国生み、天の岩戸、ヤマタの大蛇、イナバの白兎、天孫降臨、海幸・山幸など、誰もが知っている神話を民俗学的・精神分析学的に捉えなおし、その奥底に秘められた日本人の大らかで豊饒な性意識を解き放った画期的な名著。戦後セクソロジーの先駆者として生涯を貫いた著者の文庫コレクション第1弾!

*目次
まえがき
はじめに ― なぜ、神話のベールを剥ぐか
1 オノゴロ島 ― はじめ女性が上だった
2 ヨミの国 ― 屍姦の願望
3 アマテラスとスサノオ ― 姉弟婚とその破局
4 天の岩戸 ― 女性器崇拝の心理
5 ヤマタの大蛇 ― 古代の略奪・輪姦事件
6 イナバの白兎 ― 古代の人口くらべ
7 オオクニヌシ ― さまざまな結婚のしかた
8 天孫降臨 ― 女が先頭に立った時代
9 コノハナサクヤ姫 ― 日本人起源論を解くカギ
10 海幸・山幸 ― 性のユートピアを求めて
むすびに ― 日本の神話の特徴
神々の系譜
参考文献
性科学のパイオニア 高橋鐵 石川弘義


竹熊 健太郎 (たけくまけんたろう)
「篦棒な人々 戦後サブカルチャー偉人伝」
(ベラボーなひとびと)


*カバーデザイン・祖父江慎+cozfish
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*360頁 / 発行 2007年

*カバー文
戦後大衆文化に放たれた、激烈なるエネルギー ── 康芳夫(マルチプロデューサー、虚業家)、石原豪人(挿絵画家、画怪人)、川内康範(月光仮面原作者、生涯助ッ人)、糸井貫二(全裸の超・前衛芸術家)。彼らケタ外れの偉人たちを追う伝説のインタビュー集。裏の昭和が熱く妖しくよみがえる。

*目次
お詫び (まえがきにかえて)
康 芳夫 現世(うつしよ)はすべての神の遊戯(たわむれ)
石原 豪人 画怪人(アート・モンスター)かく語りき
川内 康範 憎むな!殺すな!赦(ゆる)しましょう!
糸井 貫二 ダダの細道
『クイック・ジャパン』と『箆棒(ベラボー)な人々』(あとがき)
その後の箆棒(ベラボー)な人々 (文庫版あとがき)
解説 本橋信宏


竹西 寛子 (たけにしひろこ)
「国語の時間」
(こくごのじかん)


*カバー装幀・中島かほる
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*259頁 / 発行 2000年

*カバー文
一日に一度だけでもよい、言葉で生きる人間を意識する時間をもちたい ―― 。教室だけが「国語の時間」ではない。日常の言葉遣いが社会生活の基盤となる。考え方、感じ方の土台となる。言葉の美しさ、楽しさのみならず、恐ろしさ、はかなさを知る時、人間はより深味を帯びてくる。言葉と人間との豊かな関係を、具体的な例を挙げながら、感銘深く書き継いだ名随想。

*目次
T
 国語の時間 / 幼稚と単純 / 振仮名の重み / 注意の喚起 / 茶の間の辞典 / 流行現象 / 勘違い / 数学の時間 / 嫁入り支度 / 政治家の言葉 / 無意識の残酷 / 思い込み / 郷里の言葉 / 手紙の箱 / 「セミの声が鳴り響く」 / 忌み言葉 / 謙譲の言葉 / Gペンと百人一首 / しーっ! / 主張と傾聴
U
 四十七年目の消息 / 「感性の論理」 / 英語の時間 / ジンメかシンメか / コマーシャル / 生きとし生けるもの / 「ワンパターン」 / いやはや / 的は敵 / ○×式解答法 / 言の葉 / 古い日記 / 小学校の校歌 / 歯切れ / 記者会見 / これはおかしい / 若年寄 / 病人の心理 / いたのか、いなかったのか / 旅先からの手紙
V
 旅先での通訳 / 「外国人の人」 / 「おしょうね」 / 「壽」 / 困った、困った / 名文句 / 「やつ」の多用 / 一口で言うと / 蛍の光 / 挨拶の教育 / 譬喩について / やはりおかしい / 主人・夫・うちの人 / 慶弔の言葉 / 「方(かた)」と「人(ひと)」 / ニュースの時間 / 匿名記事 / 職業意識 / 古くて新しい言葉 / 国語の時間
 あとがき
 文庫版あとがき


竹本 健治 (たけもとけんじ)
「囲碁殺人事件」
 (いごさつじんじけん)


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*244頁
*発行 昭和60年
*カバー装幀・菊地信義 / カバー原画・間村俊一

*カバー文
〈碁の鬼〉と怖れられる槇野九段が、首を切り取られた屍体となって発見された! 殺人を予告していた、謎の詰碁“珍瓏”。事件に挑む三人 ― 知能指数208・囲碁の天才少年とミステリーマニアの姉、その恋人の大脳生理学者の推理の行方は……坂田栄男九段から「詰碁の仕掛けも面白く、囲碁ファンもぜひ挑戦してほしい」と絶賛された、本格探偵小説の知的魅力にあふれる、超大型新鋭の長篇推理傑作

*解説頁・中井英夫


太宰 治 (だざいおさむ)
「文豪ミステリ傑作選 太宰治集」
(ぶんごうみすてりけっさくせん だざいおさむ)


*カバー装幀・里見恭助
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*263頁
*発行 1998年

*カバー文
人間の存在そのものに解き難い“謎”を抱かざるを得なかった太宰は、誰にも増して本質的にミステリアスな作家であると言えるだろう。だから、ある意味で太宰の作品はすべて、「生れて、すみません」の一語が投げかける深い謎をめぐるミステリ小説なのかもしれない ―― 編者 人間の“原罪”に共感し続けた作家が、哀切なユーモアをこめ描き出す、罪と罰の15の風景!

*目次
魚服記 / 地球図 / 雌に就いて / 燈籠 / 姥捨 / 葉桜と魔笛 / 愛と美について / 誰も知らぬ / 清貧譚 / 令嬢アユ / 恥 / 日の出前 / 女神 / 犯人 / 女類 / 編者解題 井上明久


田中 小実昌 (たなかこみまさ)
「自動巻時計の一日」
(じどうまきどけいのいちにち)


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*233頁
*発行 2004年
*カバー装画・小田扉 / カバー装幀・鷹嘴麻衣子

*カバー文
「どんなに、おれのまわりを見まわしても、見なれたものばかりだ」。米軍基地の化学研究所に勤める男が、朝起きてから夜寝るまでのことを書き出してみようと思い立つ。家での朝食、通勤風景、米兵たちとのやりとり、時間を盗んで翻訳している小説……何のへんてつもない日常の出来事が一体となって、類例のない小説が誕生した! 解説・佐々木正人


田中 小実昌 (たなかこみまさ)
「上陸 田中小実昌初期短篇小説集」
(じょうりく)


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*248頁 / 発行 2005年
*カバーデザイン・鷹觜麻衣子

*カバー文
終戦直後、パリコミロクマ(呼び込み易者)をしていたころの日常を描いた「やくざアルバイト」、戦場での兵隊と上官との悲惨な関係「赤鬼がでてくる芝居」、労働争議の中の人間模様「その十日間のこと」等、同人誌時代の田中小実昌の多彩な創作活動を示す貴重な作品集。後のコミさんの作品世界はここに凝縮されていた。

*目次
やくざアルバイト / 赤鬼がでてくる芝居 / マスター・サージャンの片目 / 生き腐れ / まじない / 初恋だった / 上陸 / その十日間のこと


田中 小実昌 (たなかこみまさ)
「香具師の旅」
(やしのたび)


*カバー装画・小田扉
 カバー装幀・鷹嘴麻衣子
 フォーマット・粟津潔
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*265頁 / 発行 2004年

*カバー文
復員後、戦災孤児を集めて暮らし始めた浪曲師朝日丸。パンパン狩りを逃れて地下室に逃げ込んできた耳の不自由な女の子、ミミ。戦後の動乱期にめぐりあったちょっと不思議な人びとのちょっと不思議な生き方を、コミさんならではの語り口で描き出す傑作短篇集、遂に初文庫化! 第八一回直木賞受賞作「浪曲師朝日丸の話」「ミミのこと」を収録。

*目次
浪曲師朝日丸の話
ミミのこと
香具師の旅
母娘(ははこ)流れ唄
鮟鱇(あんこう)の足
味噌汁に砂糖
解説 井口時男



種村 季弘 (たねむらすえひろ)
「アナクロニズム」


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*270頁 / 発行 昭和60年
*カバーのイラスト・「VICTORIAN INVENTIONS」より

*カバー文
地球空洞説。人間栽培論、霊媒実験、少年十字軍などに現われた人間の狂愚や極端な逸脱、迷信、奇想、妄想などは、そのいかがわしさ、変奇さゆえに、文化的におとしめられ、周辺に追いやられてきた。しかし、これら文化的ガラクタは、無価値なゆえに特有の魅力と活力を有し、新たな文化を作り出す力をも秘めていた…東西文明の底辺に隠された奇想の系譜を発掘し、その魅力を物語るエッセイ集。

*目次
蘆原将軍考 序にかえて / 地球空洞説 / 続・地球空洞説 / 人間栽培論 / 小児十字軍 / モーゼの魔術 / 壜の中の手記 / ロボット考 / 空飛ぶ円盤 / 血液嗜好症(ヘマトフイリア) / 文学的変装術 / 少女流儀 / 蛇と舞踏者 / 聖指話法 / 奇行奇人綺譚 / 奇術師入門 / 第三の眼 / 女の決闘 / 再説・蘆原将軍考 / あとがき


種村 季弘 (たねむらすえひろ)
「怪物の解剖学」
 (かいぶつのかいぼうがく)


*カバー・タニグチデザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*274頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
ヨーロッパ文化史に登場するゴーレムからロボット、自動人形に至る人工生命の数々 ― その系譜を発掘し、神話の時代から近代へと至る変遷をエピソード豊かに描き出しながら、創造者の条件と創造行為の深層を考察!! また近代の闇に沈潜し胎動する“独身者の機械”のかずかずに光をあてつつ、これら怪物たちが甦る来たるべき祝祭空間に思いをはせる刺激にみちたエッセイ集。

*目次
ゴーレムの秘密 / 怪物の作り方 / 魔術師シモン / 壜のなかの精霊 / 少女人形フランシーヌ / 始原児の再生 / 自動人形庭園 / マンドラゴラの旅 / 機械人間の系譜 / ピュグマリオンの恋 / ドッペルゲンゲルの彷徨 / 鉱物の花嫁 / 怪物胎生学(あとがきにかえて) / 初出誌一覧


種村 季弘 (たねむらすえひろ)
「吸血鬼幻想」
 (きゅうけつきげんそう)


*装丁・口絵 野中ユリ
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*315頁 / 発行 1983年

*カバー文
ドラキュラ伯爵としておなじみの吸血鬼の発生は、人類の出現とともに古く、その分布は広範にわたっている。本書は吸血鬼伝説を広く渉猟して歴史的系譜をたどりながら、文学、哲学、芸術、精神分析学、映画などさまざまなジャンルにその影を追い求め、魂の陰画としての吸血鬼幻想、戦慄すべき血のエロチシズムの世界を縦横に考察した、吸血鬼研究の先駆的作品である。

*目次
吸血鬼幻想
吸血鬼の系譜学
 前史 / 狼人 / 死餓鬼 / さまよえる死者 / 擬吸血鬼 / 名称
吸血鬼論争
吸血鬼百科
 黒死病 / 早すぎた埋葬 / 腐敗しない屍体 / 恐怖の幻像 / 吸血鬼予防法
大吸血鬼の肖像
吸血鬼のエロチシズム
 死者交接 / 血のエロス / キリスト教的倒錯
吸血鬼小説考
吸血鬼詩アンソロジー
 吸血鬼詩小論
生きている吸血鬼
 ジル・ド・レエ / バートリ・エルジェベト / ジョン・ヘイ(ロンドンの吸血鬼)
吸血鬼の画廊
吸血鬼の眼・吸血鬼の言語
吸血鬼文献資料
 吸血鬼文献 / 吸血鬼映画一覧
あとがき
初出誌一覧


種村 季弘 (たねむらすえひろ)
「詐欺師の楽園」
 (さぎしのらくえん)


*カバー M・エルンスト「百頭女」
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*283頁 / 発行 1990年

*カバー文
「詐欺師はインテリの犯罪である」(ラインハルト・ハップレヒト)
「人間は詐欺をするべく作られた」(E・A・ポオ)
「詐欺師とは私である」(種村季弘)
ヨーロッパのさまざまな詐欺師たちがまきおこした事件の数々を軽快なタッチで物語り、愛すべきトリックスターたちの肖像を描き出す痛快エッセイ。『ぺてん師列伝』姉妹篇。

*目次
はじめに ― 表層の人
1
贋エチオピア皇帝の訪れ
 英国艦隊をコケにした悪漢ヴェア・コール
パルムベックの王様
 大盗賊団長アドルフ・ペーターセン
ルーマニアの泥棒英雄
 貴婦人総ナメのゲオルク・マノレスコ
モナ・リザ泥棒
 無頼の王様アポリネール
2
詐欺師の哲学
 薔薇十字団大幹部カザノヴァ
華やかな鉄仮面
 女装の剣士デオン・ド・ボーモン
大革命の時計商
 国家陰謀の技師ボーマルシェ
夢の機械魔術師
 史上最大の魔術師ロベール・ウーダン
3
悪魔博士の正体
 オカルト怪人シュレンク・ノッチング
二十世紀に蘇る救世主
 奇蹟かペテンかブルーノ・グレーニング
顔のない男
 詐術と煽動のスーパー・カメレオン
史上最大の贋金造り
 ポルトガル乗っ取りのアルヴェス・レイス
4
詐欺師の楽園
 トリックスターたちの肖像

種村 季弘 (たねむらすえひろ)
「山師カリオストロの大冒険 種村季弘コレクション」 (やましかりおすとろのだいぼうけん)


*カバーデザイン・岩瀬聡
(画像はクリックで拡大します)

*285頁 / 発行 1998年

*カバー文
フリーメーソンの影の大立物として、十八世紀ヨーロッパ社交界に彗星の如く現れ、革命前夜のフランス宮庭で王妃の頸飾り事件を起こした、謎の人物カリオストロ伯爵。彼は山師の仮面の一つなのか。それとも、聖なる東方の精神の顕現なのか。
ネルヴァル等の礼拝者を生み続け、ゲーテが好奇心を持ちながら否定した、神秘的な人物カリオストロの正体に迫る評伝。

*目次
T ゲーテ対カリオストロ
U 高貴なる旅人
V 北方の放浪山師
W 詩人と悪漢
X 王妃の頸飾り事件
Y 天使城の終身囚
 あとがき
 年譜
 参考文献


種村 季弘編 (たねむれすえひろ)
「ドイツ怪談集」 (どいつかいだんしゅう)


*カバー・プレダン「死の喜劇」(部分)
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*326頁 / 発行 昭和63年

*紹介文
超自然の顕現! ありふれたモノに宿った未知なるものの影…存在の恐怖を形象化する16の不可思議な物語。

*目次
ロカルノの女乞食 … ハインリヒ・フォン・クライスト 種村季弘訳
廃屋 … E.T.A.ホフマン 池内紀訳
金髪のエックベルト … ルートヴィッヒ・ティーク 前川道介訳
オルラッハの娘 … エスティーヌス・ケルナー 佐藤恵三訳
幽霊船の話 … ヴィルヘルム・ハウフ 種村季弘訳
奇妙な幽霊物語 … ヨーハン・ペーター・ヘーベル 種村季弘訳
騎士バッソンピエールの奇妙な冒険 … フーゴー・フォン・ホーフマンスタール 小堀桂一郎訳
こおろぎ遊び … グスタフ・マイリンク 種村季弘訳
カディスのカーニヴァル … ハンス・ハインツ・エーヴェルス 石川實訳
死の舞踏 … カール・ハンス・シュトローブル 前川道介訳
ハーシェルと幽霊 … アルブレヒト・シェッファー 石川實訳
庭男 … ハンス・ヘニー・ヤーン 種村季弘訳
三位一体亭 … オスカル・パニッツァ 種村季弘訳
怪談 … マリー・ルイーゼ・カシュニッツ 前川道介訳
ものいう髑髏 … ヘルベルト・マイヤー 池田香代子訳
写真 … フランツ・ホーラー 土合文夫訳

 超自然の露出(編者あとがきにかえて) 種村季弘訳
 初出一覧


種村 季弘編 (たねむらすえひろ)
ドラキュラ ドラキュラ ― 吸血鬼小説集」


*カバー装画・野中ユリ
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*253頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
ロマン派からポップ文学にいたるまで脈々と受け継がれた“血”の系譜……十九世紀のヨーロッパに一躍吸血鬼ブームを巻き起こしたポリドリの『吸血鬼』を筆頭に、メリメ、ジュール・ヴェルヌ、コナン・ドイルからジェラシム・ルカ、H・C・アルトマンまで、文学史上にユニークな歯跡を残す吸血鬼小説を、稀代の吸血鬼愛好家種村季弘が精選した名品珍品揃いのミニアチュール・アンソロジー。

*目次
『吸血鬼』 ジャン・ミストレル 種村季弘訳
『グスラ(抄)』 プロスペル・メリメ 根津憲三訳
『吸血鬼』 ジョン・ポリドリ 佐藤春夫訳
『吸血鬼の女』 E・Th・A・ホフマン 種村季弘訳
『カルパチアの城』 ジュール・ヴェルヌ 安東次男訳
『吸血鳥』 マルセル・シュオップ 種村季弘訳
『サセックスの吸血鬼』 コナン・ドイル 延原謙訳
『吸血鬼』 ルイージ・カプアーナ 種村季弘訳
『吸血鬼を救いにいこう』 ベレン 種村季弘 / 橋本綱訳
『受身の吸血鬼』 ジェラシム・ルカ 種村季弘 / 橋本綱訳
『ドラキュラ ドラキュラ』 H・C・アルトマン 種村季弘訳 
編者解説


種村 季弘編 (たねむらすえひろ)
「日本怪談集 下」 (にほんかいだんしゅう)


*カバー画・河鍋暁齋「暁齋百鬼画談」より
 恵俊彦氏所蔵
 カバーデザイン・中島かほる

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*438頁・上下全二巻 / 発行 1989年

*目次
〈動植物〉
猫が物いふ話 森銑三 / くだんのはは 小松左京 / 件 内田百 / 孤独なカラス 結城昌治 / ふたたび猫 藤沢周平 / 蟹 岡本綺堂 / お菊 三浦哲郎

〈器怪〉
鎧櫃の血 岡本綺堂 / 蒲団 橘外男 / 碁盤 森銑三 / 赤い鼻緒の下駄 柴田錬三郎

〈身体〉
足 藤本義一 / 手 舟崎克彦 / 人間椅子 江戸川乱歩 / 籠の中の顔 田中貢太郎

〈霊〉
仲間 三島由紀夫 / 妙な話 芥川龍之介 / 予言 久生十蘭 / 幽霊 吉田健一 / 幽霊 正宗白鳥 / 生き口を問ふ女 折口信夫

解説 種村季弘
出典一覧


種村 季弘 / 高柳 篤 (たねむらすえひろ/たかやなぎあつし)
「新版・遊びの百科全書A だまし絵」
(だましえ)


*本文 カバーデザイン・イエローバック
 撮影・乙悼一

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*221頁 / 発行 昭和62年
*編集制作・カマル社 / 「遊びの百科全書」編集スタッフ

*カバー文
だまし絵は、人間の眼の能力とふかい関わりをもっている。透視図法などを駆使してリアルに描けば、人間の眼はそこから容易に現実の三次元の世界を読みとる。だましが巧みであればあるほど、人間の眼の潜在的能力をひき出すことができるのだ。

*目次
はじめに
02-100 視覚のトリック 種村 季弘
02-101 唯一ツノ世界ニテハ足ラズ
02-102 逆転の構図
02-103 空間を変える瞞し絵
02-104 遠近法函という覗きからくり
02-105 円筒アナモルフォーズの魔術

02-200 アイトリック事典 高柳 篤
02-201 選ばれた眼のみに見えるアナモルフォーズ
02-202 見えることなき死が浮び上るアナモルフォーズの奇跡
02-203 神の眼差しを伝えるアナモルフォーズ
02-204 謎解きと諷刺のアナモルフォーズ
02-205 アナモルフォーズを逆手にとったアナモルフォーズ
02-206 偏見によってこそ正しく見えるアナモルフォーズ
02-207 プリミティブなアナモルフォーズ作画法
02-208 修道会で研究されたアナモルフォーズ作画法
02-209 視点の位置とアナモルフォーズ
02-210 壁面に描かれた大アナモルフォーズ
02-211 壁面に使われたアナモルフォーズ作画装置
02-212 アナモルフォーズは裏返しの遠近法
02-213 「デューラーの窓」と呼ばれる遠近法作画装置
02-214 アナモルフォーズで遠近画を描くアクロバティックな試み
02-215 円筒型の鏡で復元するアナモルフォーズのバリエーション
02-216 イリュージョン製造装置としてのだまし絵 ―― トロンプ・ルイユ
02-217 眼の「見ようとする」力が遠近法を成立させた
02-218 遠近法が通用しなかった眼の話
02-219 「浮き絵」「へこみ絵」と呼ばれた遠近法による浮世絵
02-220 錯視することができる人間の眼
02-221 「盆のような」月を見てしまう人間の眼
02-222 意味ある形を見つけようとする人間の眼
02-223 眼が意味を見つけられず混乱する「悪魔のフォーク」の図
02-224 意味づけようとする眼をだます「ペンローズの三角形」
02-225 エッシャーの「滝」実はペンローズの三角形
02-226 見えないはずの輪郭を見てしまう眼の能力
02-227 眼はばらばらの形から意味のある形を見つけ出す
02-228 無意味な図形から意味を見つけるロールシャハ・テスト
02-229 一つの絵なのに二つの絵「図地反転図形」
02-230 古今東西、人間の眼を魅きつけた図地反転図形
02-231 現代絵画に見る図地反転図形
02-232 見せる力のバランスによって「図」と「地」は決まる
02-233 「図」の中に二つの図を組みこんだ多義図の傑作「娘と老婆」
02-234 眼の先入観を実証するフィッシャーの「男と少女」
02-235 「だまし絵」や「隠し絵」は眼の能力への挑戦
02-236 常識によって見え方が決まる
02-237 アナモルフォーズも隠し絵も「意味ある図」を周到に隠す
02-238 アナモルフォーズも隠し絵も同じ時代に栄えた兄弟
02-239 科学と美術の結合が眼のメンタリティーをゆさぶる

主要参考文献 / 著者略歴

*「アナモルフォーズ」【anamorphose[フランス]】
絵画や素描において描かれた歪像のことで,特定の視点から見たり,器具を使用すると正常に見えるものをいう。(世界大百科事典 第2版)


田山 花袋 (たやまかたい)
「東京震災記」
(とうきょうしんさいき)


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*253頁
*発行 2011年
*カバーデザイン・真田幸治

*カバー文
一九二三年九月一日、関東大震災。地震直後の東京の街を歩き回り、壊滅した市中で動揺する民衆の声を拾い集めたルポルタージュ。流言が飛び交い混乱の中で歪む人間群像。人々はいかにしてこの大震災から立ち上がったのか。歴史から学び、備えるための記録と記憶。

*解説頁・大震災における作家のあり方 石井光太


団 鬼六 (だんおにろく)
「伊藤晴雨物語」
 (いとうせいうものがたり)


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*192頁
*発行 1987年
*カバー画・伊藤晴雨「獣姦十二支」(『秘画艶画春画』三和出版刊)

*カバー文
「変態画家」「変態性欲者」と罵しる世間の冷たい眼や、画集を猥褻文書扱いする官憲の弾圧に耐え、縛られ苦痛にゆがむ女体が放つ妖しいエロスに魅せられて、絵筆を動かし続けた天才責め絵画家・伊藤晴雨。彼の数奇な運命を評伝タッチで描いた快作。性を通して女の官能美を、執拗な筆致で追求してきた耽美派作家・団鬼六の原点が、ここに凝縮されている。


檀 一雄 (だんかずお)
「新説 国定忠治(上下)」
 (しんせつくにさだちゅうじ)


*カバー装画・梶山俊夫
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*上267頁・232頁 / 発行 昭和59年

*カバー文

年は若いが度胸と貫禄の国定忠治、奇ッ怪なアバタヅラに凄みを秘める日光の円蔵、女ながらも妖しい剣さばきで敵味方を魅了する血桜お竜、並はずれた才気と気ップで一家をリードするカンバイの清六……御存じ忠治一家のメンメンが、赤城おろしの吹きすさぶ上州一円を股にかけて八方やぶれの大暴れ。ときに豪快奔放に、ときには清冽哀愁をこめて自在に描く檀一雄の痛快任侠ロマン。

宿願の玉村の主馬を討ち果たした忠治一家は八州取締りに追われる身となり、住みなれた赤城の山を捨てて残雪の信州に落ちのびる。折から関東一円は大飢饉に襲われ餓死する人数知れずというアリサマ。束の間平穏の日々を送っていた一家は、その惨状を見かねて窮民の先頭に立ち、アタルベカラザルいきおい。奔放不覊といわれた国定忠治の半生を豪放自在に描く痛快任侠ロマン。

*解説頁(下巻収録)・「北関東の檀一雄」立松和平


檀 一雄 (だんかずお)
「夕日と拳銃」 (上)
 (ゆうひとけんじゅう)


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*357頁
*発行 1984年
*カバー装画・梶山俊夫

*カバー文
伊達伯爵家の三男坊に生まれながら、何を考えているのか暇さえあればピストルばかり撃っている万事にケタはずれの少年。この麟之介がふとしたことから人を殺し、一挺の拳銃を懐に満州に追放される破目になった。つき従うは柔道七段逸見六郎、馬賊の群に身を投じた麟之介を慕って後を追う山岡綾子とおこう……。 一挺の拳銃に生命を貫いた快男児を描く檀一雄の名作。


淡野 史良 (たんのしろう)
「江戸あへあへ草紙」
(えどあへあへそうし)


(画像拡大不可)

*218頁
*発行 1985年

*目録文
江戸の将軍から熊さん・八つぁんまで、その生活を生き生きととらえた快著。女・カネ・病気の江戸誌