絶版文庫書誌集成

河出文庫 【や】

矢代 静一 (やしろせいいち)
「含羞の人 ― 私の太宰治」
 (がんしゅうのひと)
文藝コレクション



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*277頁
*発行 1998年
*カバー装丁・岩瀬聡

*カバー文
三十八歳の若さで自裁した天才作家太宰治―青春時代の著者が出逢いの時を持ち、神の如き存在として傾倒していった太宰。半世紀を過ぎた今、含羞の思いを込めて描く評伝風小説。

*解説頁・天国の裏階段 水原紫?


柳内 伸作 (やないしんさく)
「世界リンチ残酷史」 (せかいりんちざんこくし)


*カバーデザイン・Rodeo
 フォーマット・粟津潔
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*267頁 / 発行 2002年

*カバー文
浅間山荘事件を起こした連合赤軍の凄惨なリンチや、オウム真理教内部でのリンチ事件など、現代日本でも人びとを震撼させる「私刑」は、なぜ起こり、なぜ根絶しないのだろうか。
有名なKKKのリンチやロシア革命期の民衆リンチをはじめ、古今東西の戦慄的な話を紹介しながら、群集心理や深層心理、刑罰思想や人権思想、人間社会のあり方などを問う奇書。

*目次
はじめに
第1章 リンチ ―― 私刑の歴史
 リンチを発明した国
  リンチは人の名前だった / リンチされた殺人強盗の最期 / ユダヤ人に対する偏見 / 宗教的偏見がリンチを生むとき / 裁判官のリンチ / 懸賞金でリンチを呼びかける / 無実の黒人を殺害するKKKのリンチ
 民衆がリンチに走るとき
  空襲したパイロットを処刑 / 百姓がペテン師を生き埋めに / 飢餓時の泥棒をリンチ / ロシア革命 ―― 犯罪者をリンチする民衆 / 民衆に処刑された死刑執行人 / 敵討ち ―― 処刑は個人の手で / 父の墓前で殺人犯を私刑
 反政府集団のリンチ
  戦時中の日本共産党リンチ事件 / 連合赤軍の凄惨なリンチ / 西郷隆盛軍のリンチ
 無法者のリンチ
  オウム真理教の手口 / 掟破りを殺(や)れ ―― カポネのリンチ / 密輸業者の目潰しと石打ちのリンチ
 企業のリンチ
 階級によって異なる処刑
 シャム王国の火刑
 フィリピンの様々な虐殺
第2章 処刑奇談
 切り落とされた首は何秒生きているか? / 鼻の収集家 / 処刑された者の呪いの報復 / 生きた人間を料理 / 人気商品 ―― 死刑囚の首縄から骨まで / 幸福を呼ぶ血塗られたハンカチの伝説 / 監獄事情 / イヴァン雷帝好みの釜ゆで / 動物裁判 / 終身刑 ―― 鉄仮面の謎 / 二百三十もあった死罪 / 墓穴を掘った捕虜の運命 / マホメットを呪詛した殉教 / 決闘の判定の理屈 / 髭と禁酒令 / 犯罪現場の土地を所有する地主の受難 / 過酷なタイ宮廷の法律 / 雷が落ちた尖塔の責任 / 飼い犬が吠えたために殺された男
第3章 処刑の悲喜劇
 解剖室で生き返った死刑囚たち / 一度で死ねなかった死刑囚の最期 / 処刑が失敗した時 / 金になる処刑 / 胎児の性別を賭ける / 一太刀で首を落とせるかを賭ける / 宴会で呻き声を楽しむ / 怠けた奴隷は壁に塗り込めよ / 呻き声を聞きながらの食事 / 実の子を死刑に処す / 自分に不必要な民衆の大虐殺
第4章 変わり種の処刑譚
 綱の鋸引き刑 / 瞼の切除刑 / 捕虜の腹に焼石を載せる / 尻穴に火薬を詰めて爆破 / 圧殺刑 / 犂で首を刎ねる / 蒸し殺し刑 / 腹を裂いて銭を詰める / ケシのジュースで衰弱殺 / 首を捩じ切る / 獣刑 / 鋸引き刑 / 金属を流し込む / 目潰し刑 / 舌抜き刑 / 歯責め / 吊し責め / 釘打ち刑 / 生き埋め刑 / 削ぎ刑 / 炙り責め / 試し切り
参考文献 / あとがき


柳家 小満ん (やなぎやこまん)
「べけんや わが師、桂文楽」


*カバーデザイン・松岡史恵
 カバー写真・金子圭三
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*264頁 / 発行 2005年

*カバー文
桂文楽に“一目ぼれ”、熱に浮かされたように落語の世界へ飛び込んだ筆者が見た、名人の芸と素顔。時代はまさに落語黄金期。高座はもちろん、日々の生活に至るまで、すべてが粋でまぶしかった……。昭和四十六年八月三十一日、伝説となった文楽最後の高座、その舞台裏も明かされる。

*目次
第一章 一目ぼれ
第二章 ハンカチの思い出
第三章 師匠の食事
第四章 お座敷
第五章 夢の口上
第六章 最後の高座
第七章 道楽三昧
第八章 煙草入れとダイヤ
第九章 おかみさん
第十章 師匠の言葉
 あとがき
別章 べけんや
 文庫あとがき / 桂文楽略年譜
 解説 長部日出雄


五代目 柳家つばめ (やなぎやつばめ)
「落語の世界」
(らくごのせかい)


*カバーデザイン・松岡史恵
 カバー写真・橘蓮二
 カバーフォーマット・佐々木暁
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*357頁 / 発行 2009年

*カバー文
入門、稽古、昇進、しくじり、収入など、落語の世界で起こるさまざまな出来事をリアルに描き切った名著が復活。「現場にいる人間だけが見ることのできる風景をつつみ隠さず正直に」(解説=大友浩)書き、その筆は落語界のタブーにまで及ぶ。巻末に落語事典も収録され、これから落語を聞く人にも、落語通にも必携の一冊。

*目次
 つばめのこと 柳家小さん / 一 自殺した落語家 / 二 入門 / 三 楽屋入り / 四 前座の仕事 その1 / 五 前座の仕事 その2 / 六 噺の稽古 / 七 下座さん / 八 小言のかずかず / 九 覚えること / 十 二つ目前夜 / 十一 二つ目の悲哀 / 十二 迷い / 十三 真打 / 十四 新作落語の苦しさ / 十五 古典落語のすばらしさ / 十六 評論家 / 十七 定席天国 / 十八 噺家の収入 / 十九 高座のおきて / 二十 高座での考えごと / 二十一 師匠と弟子 / 附録 落語事典 つばめ編 / 解説 大友浩


矢野 誠一 (やのせいいち)
「落語とはなにか」
(らくごとはなにか)


*カバーデザイン・市川衣梨
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*229頁 / 発行 2008年

*カバー文
「落語は純粋話芸であって、その語り口の個性こそが落語の本質を支えているということを見失っては困る」……そう断じる著者の言葉が、四十年を経ようとする現在もいぜん古錆びていない(解説より)。さまざまな古今の名人、気鋭の芸風を紹介しながら、落語の魅力をあますところなく伝える落語論の決定版。

*目次
T 落語、その位置
  追いつめられた落語 / 運動と無縁の藝 / 大衆藝能としての落語
U 落語、その文学性
  落語と文学 / 速記本の変遷にみる文学性 / サゲの意味 / 文学性からの脱却 / 新作落語の問題
V 落語、その藝
  語り口の個性 / 落語の演技術 / きかせる藝のなかの見せる要素 / 落語の嘘とリアリティ / 落語家の藝と生活
あとがき
文庫版あとがき わが青春の書
解説 決して落語をあきらめまい 原健太郎


山崎 正和 (やまざきまさかず)
「このアメリカ」


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*290頁
*発行 1984年

*目録文
現代日本の鏡ともいうべき、60年代アメリカの体験から、アメリカの原像を導き出した著者の代表作!


山崎 正和訳 (やまざきまさかず)
「太平記」全四巻
(たいへいき)


*カバー絵・羽石光志画 「児島高徳」


 「湊川で敗走する楠正成」
 カバーデザイン・渋川育由
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 「稲村が崎の新田義貞」


 「赤坂城の戦い」


*(一)227頁・(二)226頁・(三)254頁・(四)252頁
*発行 1990年

*カバー文
(一)
後醍醐帝・新田義貞・楠正成など、歴史をいろどった英雄たちの死闘策謀を克明にたどり、鎌倉幕府の崩壊を描く壮大な変革期の人間ドラマ『太平記』。この不朽の軍記物語の名作を、原文の息づかいを考慮しながら読みやすい現代の言葉に転換した、みごとな口語訳でおくる。(一)は、巻の一「後醍醐天皇の御治世ならびに武家の隆盛」から、巻の六「赤坂城の合戦」までを収録。
(二)
後醍醐帝・新田義貞・楠正成など、歴史をいろどった英雄たちの死闘策謀を克明にたどり、鎌倉幕府の崩壊を描く壮大な変革期の人間ドラマ『太平記』。この不朽の軍記物語の名作を、原文の息づかいを考慮しながら読みやすい現代の言葉に転換した、みごとな口語訳でおくる。(二)は、巻の七「吉野城の合戦」から、巻の十一「金剛山の寄せ手ら誅せらる」までを収録。
(三)
建武中興は、つかのまに潰えさり、足利尊氏によって武家政権がよみがえる……。興亡の大ロマンを描いて、動乱ただならぬ中世史の真相に迫る『太平記』。この不朽の軍記物語の名作を、原文の息づかいを考慮しながら読みやすい現代の言葉に転換した、みごとな口語訳でおくる。(三)は、巻の十二「朝廷一統の政治」から、巻の十六「正成の首を故郷へ送る」までを収録。
(四)
建武中興は、つかのまに潰えさり、足利尊氏によって武家政権がよみがえる……。興亡の大ロマンを描いて、動乱ただならぬ中世史の真相に迫る『太平記』。この不朽の軍記物語の名作を、原文の息づかいを考慮しながら読みやすい現代の言葉に転換した、みごとな口語訳でおくる。(四)は、巻の十七「叡山攻撃ならびに日吉の神託」から、巻の二十六「楠正行の最期」までを収録、完結。


山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「伝馬町から今晩は ― 山田風太郎コレクション」 (でんまちょうからこんばんは)


*カバー装幀・村上光延
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*283頁 / 発行 1993年

*カバー文
伝馬町の出火による囚人の切放しを機に、蛮社の獄で捕らえられた天才蘭学者高野長英は逃亡をくわだてた。顔を硝酸で焼き、執拗な逃亡の意志と強烈な生命力でもって繰り返される彼の遍歴のあとに残された、逃亡に巻き込まれた人々の死屍累々の地獄絵を描く表題作ほか、全五編を収録。
幕末の妖人たちの凄じい姿を描いた山田風太郎の妖説日本史!

*目次
からすがね検校
芍薬屋夫人
獣人の獄
ヤマトフの逃亡
伝馬町から今晩は
 解説 縄田一男


山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「明治波濤歌〈上下〉 ― 山田風太郎コレクション」
 (めいじはとうか)


*カバー装幀・村上光延


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*上巻353頁・下巻414頁 / 発行 1994年

*カバー文
 上巻
波のごとき運命に左右されながら、欧米の知識を求め、波涛をこえて様々な人々が明治を行き交う。―復讐をねらう咸臨丸の元乗員とその弟の奇妙な運命。パリ視察中の川路利良、成島柳北、井上毅とゴーギャン、ヴェルレーヌらの前で起こる元芸者の殺人事件。南方熊楠と自由民権運動に燃える北村透谷らの青春物語。虚と実の狭間の真実を描く風太郎の傑作明治伝奇。
 下巻
明治の波間に様々な人々の意外な物語が歌われる。―鴎外を追って、ドイツからきた「舞姫」エリスの泊まる築地精養軒で繰り返される奇妙な決闘。旧主の娘を人買いから救おうとする樋口一葉と黒岩涙香の前で起きた一夜の惨劇。借金取りから逃げる川上音二郎の妻貞奴に恋をした野口英世の物語。風太郎の連作明治伝奇の完結。

*解説頁・長谷部史親


山本 健吉 (やまもとけんきち)
「奥の細道を読む」 (おくのほそみちをよむ)


*カバー写真・最上川(榊原和夫撮影)
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*245頁 / 発行 1989年

*カバー文
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。……」
四十六歳の芭蕉は、門人曾良を伴い、江戸を発って、はるかなるみちのくの旅に出た。それは、全行程六百里、苦難に耐えた七か月の大旅行であった。
紀行文学の最高峰『奥の細道』は、私たちに旅の意味を、そして人生の意味を問いかけてやまない。本書は、その『奥の細道』を多角的に読み味わう入門書。

*目次
『奥の細道』現代語訳
『奥の細道』全句評釈
『奥の細道』原文(素龍本)
   *
芭蕉の詩心 ― 『奥の細道』の発句に沿って
酒田の落日
人生の旅を見つめる
奥の細道ところどころ
『奥の細道』序説
虚と実と ― 『奥の細道』二つの挿話


山本 昌代 (やまもとまさよ)
「江戸役者異聞」
 (えどやくしゃいぶん)


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*189頁
*発行 1993年
*カバー装画・坂田靖子

*カバー文
「花形」から「達磨」へ!? 江戸歌舞伎で人気の華を咲かせながら不治の病に冒され手足を切断した沢村田之助。それでも舞台に俺は立つ、と毒気とけれんで人々を魅了した田之助の、心に巣くう業を描いた魅惑の作、待望の文庫化。

*解説頁 ― さよならの響き 黒川創


山本 容朗 (やまもとようろう)
「作家の食卓」
(さっかのしょくたく)


*カバー装幀・巖谷純介
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*222頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
吉行淳之介さんと中国料理店の無愛想な女店員の話。開高健・牧羊子さん夫婦が年に一度の御馳走を饗応してくれる話。檀一雄さんと駅弁、吉田健一さんのお酒、半村良さんの手料理、その他その他……当代きっての文壇通エッセイストが、四十人に及ぶ大家・中堅・流行作家たちの意外な好みを御披露しながら、いつしかその人間味と作品の本質を浮かび上がらせる、ユーモアと滋味あふれる酒食物語

*目次
T 文壇食物誌
  文士はそば好き / 文士とご飯 / 作家の行った食い物屋 / 駅弁の味は人間の味 / 「慶祝慶賀大飯店」 / 食べに行きたい

U 食談あらかると
  正月の味 / 群馬の海老天 / おかず咄 / 競馬場までの小さな旅 / 競馬場の食堂 / 豆腐 / 座右の書 / 某月某日 / わたしの「柳橋新誌」 / 酒処「利佳」の話 / 新宿二丁目 / さけの本 / 「味」の本と人 / 食味文化人

V 作家の食卓
  “東光庵”の焼肉
今東光 / 郷愁の「ダマッコ鍋」吉村昭 / 食は鴨川に在り近藤啓太郎 / 夕ご飯たべて……田辺聖子 / 円卓に美味あり陳舜臣 / 味覚の百花斉放開高健 / ワイン&お惣菜田中小実昌 / 焼跡闇市派の怨念節野坂昭如 / 半文居のドジョウ鍋半村良 / 食味・東西南北藤本義一 / 飯盒のある食卓古山高麗雄 / 新鮮さが一番黒岩重吾
あとがき
著者ノート 五年の歳月 ―― 食談その後