絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【ま】

前川 康男 (まえかわやすお)
「魔神の海」
 (まじんのうみ)


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*266頁
*発行 昭和54年
*カバー装画・床ヌプリ

*カバー文
クナシリ(国後)島の青年セツハヤが狩りから帰ってみると、和人(日本人)によって島の生活は大きく変えられていた。不戦の理想を追うセツハヤは、清純で子じかのような愛するシアヌを失って、民族を守るため立ちあがった……。「なぜ人間はお互いに憎しみ合い、殺し合うのか」を問うた力作。日本児童文学者協会賞受賞。

*解説頁・わだとしお
*さしえ・カット/床ヌプリ


前谷 惟光 (まえたにこれみつ)
「ロボット三等兵 2」
(ろぼっとさんとうへい)
講談社漫画文庫


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*134頁
*発行 1976年
*装幀・辻村益郎 / カバー・舟橋菊男

*目次
爆弾珍勇士 / あんパン地雷 / 鉄か肉か / 名将あらわる / 火炎戦法 / 原爆売りこみ / 防弾チョッキ / 慰問袋 / 大進撃 / むぎと兵隊 / 露営のゆめ

*発表誌『少年クラブ』(講談社) 昭和33年6月号〜昭和37年12月号


前間 孝則 (まえまたかのり)
「ジェットエンジンに取り憑かれた男」 
(じぇっとえんじんにとりつかれたおとこ)


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*477頁 / 発行 1992年
*カバーデザイン・河合良之 写真は国産のジェット機「橘花(きっか)」

*カバー文
日本のハイテクを担った技術者の情熱と苦闘の物語。終戦の直前、日本の空を国産ジェット機「橘花」が飛んだ。それから43年後、日本も開発に参加したエアバスA320が飛んだ。巨大なリスクを伴う最先端技術の集約であるジェットエンジン開発を通し、技術者たちのパトスを描くノンフィクション大作。

*目次
 まえがき
第一章 幻のジェットエンジン
 二十八年ぶりの帰郷 / 取り憑かれた男たち / 日本航空界の離陸
第二章 日本初のジェット機
 技術革新期の苦闘 / たった一枚の断面図 / ネ20への道程 / 「橘花」は飛んだ
第三章 空白の七年を越えて / 自己検証と反省 / 鉄研の一号ガスタービン / 石川島と土光のさきがけ / 航空解禁と国産第一号
第四章 戦後初の国産ジェット
 急転する状況とNJEの創立 / NJE苦闘の六年九ヶ月 / 戦後初の国産エンジン / 技術提携と日本初のジェット工場 / ライセンス生産の時代へ
第五章 V2500への道
 集中から分散へ / 欧米依存と世界二大企業の危機 / イギリスからの誘い / V2500へ / いま、飛躍のとき
 あとがき / 主要参考文献 / 解説 ― 中川靖造


前間 孝則 (まえまたかのり)
「マン・マシンの昭和伝説 (上下) ― 航空機から自動車へ」
(まんましんのしょうわでんせつ)




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*上754頁・下709頁 / 発行 1996年
*カバー装画・ワークステーション(西野佳高) / カバーデザイン・道信勝彦

*カバー文

航空技術者たちが心に期した技術大国への道。戦前、世界に立ち後れた日本の産業の中で、航空産業は数少ないハイテク産業としてアメリカに対抗していた。その技術者たちが、奇蹟のエンジン誉の開発、高高度戦闘機キ94の設計に明け暮れた苦闘の日々を、当時の関係者に取材してまとめた傑作ノンフィクション。

自動車王国ニッポンの礎はかくして築かれた。日産の中川良一、トヨタの長谷川龍雄、ホンダの中村良夫……航空技術から自動車の研究開発に転身した男たちが、スカイラインGT、カローラ、ホンダF1カーなど、航空機で培った高い技術力と大胆な発想によって、続々と世界の名車を生み出していった開発秘史。

*目次

 まえがき
第一章 航空機から自動車へ
第二章 奇蹟のエンジン「誉」の命運
第三章 「誉」の限界
第四章 成層圏飛行の時代
第五章 航研と立川飛行機
第六章 高高度戦闘機キ94の設計
第七章 それぞれの敗戦
第八章 自動車への傾斜
第九章 戦後の転換点
第十章 スカイラインとクラウン


第十一章 航空機と自動車とのはざまで
第十二章 大衆車時代への胎動
第十三章 本田技術、四輪市場へ
第十四章 プリンス自動車とカーレース
第十五章 日産・プリンスの合併
第十六章 本田技研のF1初挑戦
第十七章 F1五年間の成果
第十八章 「マイカー元年」のカローラ
第十九章 「スカG」とN360の旋風
第二十章 排ガス対策とカー・エレクトロニクス
第二十一章 いま新たな翼を得て
 あとがき
 主要参考文献一覧
 巻末エッセイ・中村良夫


正岡 子規 (まさおかしき)
「俳人蕪村」
(はいじんぶそん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊池信義
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*194頁 / 発行 1999年

*カバー文
江戸の俳人与謝蕪村の魅力を再発見した正岡子規の名俳論。明治になるまで芭蕉の陰で忘れられていた蕪村の俳人としての高い評価を決定し、近代芸術家としての蕪村像を後代に伝える。併せて、「蕪村と几董」「蕪村風十二ケ月」「行脚俳人芭蕉」「一茶の俳句を評す」等の江戸期俳句に関する評論を纏め、巻末資料に、当時の漫画「蕪村寺再建縁起」を収録する。

*目次
俳人蕪村
蕪村と几董
蕪村風十二ケ月
俳句上の京と江戸
行脚俳人芭蕉
芭蕉翁の一驚
俳人太祇
一茶の俳句を評す
資料・蕪村寺再建縁起
 解説 粟津則雄
 年譜 淺原勝
 著書目録 淺原勝


升田 幸三 (ますだこうぞう)
「升田将棋勝局集」
 (ますだしょうぎしょうきょくしゅう)


*カバー・山藤章二
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*320頁 / 発行 1975年

*カバー文
名人、王将、九段 ― 史上初の三冠王は、稀代の勝負師升田幸三によって達成された。信長に擬せられるその疾風迅雷の戦略は既成の将棋常識をくつがえし、比類ない新感覚は爾来棋界を席巻、近代将棋のはなばなしい幕明けとなった。 ― 鬼才升田が自らの棋譜を精選し、大勝負・名勝負を詳解する貴重な血戦譜。

*目次
 序
“打倒木村”に燃えて(木村・升田五番勝負)
破竹の三連勝(木村・升田五番勝負)
“駅馬車の譜”(塚田・升田五番勝負)
名人戦で挑む(第十期名人戦・対木村)
“指し込み”第一号(第一期王将戦・対木村)
指し込みを決める(第五期王将戦・対大山)
名人に香を引く(第五期王将戦・対大山)
王将位を守る(第六期王将戦・対大山)
九段位をかけて(第七期九段戦・対塚田)
名人位へ王手の一戦(第十六期名人戦・対塚田)
九段位、二冠王に(第七期九段戦・対塚田)
名人戦の激突(第十六期名人戦・対大山)
史上初の三冠王なる(第十六期名人戦・対大山)
九段位を防衛(第八期九段戦・対大山)
防衛第一局(第十七期名人戦・対大山)
名人位を守る(第十七期名人戦・対大山)
定説に挑む“升田式石田流”(第三十期名人戦・対大山)


町田 甲一  (まちだこういち)
「大和古寺巡歴」
 (やまとこじじゅんれき)
講談社学術文庫



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*361頁 / 発行 1989年
*カバー 大仏台座蓮弁線刻(拓本 東大寺)
 題字 西川寧
 カバーデザイン 志賀紀子

*カバー文
大和は日本人の心のふるさと。都塵を逃れ、春なれば御仏のうつら眼にかすむ大和国原へ。秋には、水煙の天女の衣の隙に澄む秋天の美しさを振り仰ぎ、折々心のやすらいを求めてめぐる古寺巡歴の、最も信頼できる手引として本書はある。従来の恣な感傷過剰の空想でなく、著者はあくまで仏像そのものに即して時代の精神の様式を語ろうとする。そこに思いもかけず古寺鑑賞の真の醒醐味が姿を顕すのだ。

*目次
 まえがき
東大寺
南山城へ
新薬師寺
薬師寺
唐招提寺
法隆寺
古都の尼寺
法輪寺
解説・二代の古寺巡礼 … 前川誠郎


松井 覚進 (まついかくしん)
「永仁の壷 偽作の顛末」
(えいにんのつぼ)


*カバーデザイン・田村義也
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*301頁 / 発行 1995年

*カバー文
永仁二年銘をもつ古瀬戸最古の壷が、重要文化財に認定された。だが実は昭和の名陶工、加藤唐九郎による贋作であるとされ、当時の文部技官小山富士夫は失脚、真相は当事者の死去にともない謎につつまれた。発覚から三十年、新資料と証言を駆使してあらためて事件の真相に迫る意欲的ノンフィクション作品。

*目次
 〈序〉『永仁の壺』に寄せて 松本清張
第一章 「永仁銘瓶子を掘り出した」
 奇妙なプロセス / 不可解な寄贈話 / “松留破片”の役割
第二章 一本だった壷が二本になった
 自ら案内した唐九郎 / 五万円で元代議士の手に / 永仁の壺2号は七万円
第三章 「銘文が怪しい」
 松留窯と壺の関係 / 「重美」認定で激論 / 『陶器辞典』の原色版 / 郷土史家の究明
第四章 重要文化財に指定
 「陽刻仏花器」をめぐる疑問 / 黄瀬戸事件 / ボストン流出説 / 「馬ヶ城七人の侍」 / 小山の提案理由
第五章 偽物説強まる
 古陶器展に出品 / 春峯庵事件 / 偽作者探しへ
第六章 「永仁の壷は私が作った」
 正和銘の瓶子 / 唐九郎とピカソ / 加藤嶺雄の告白 / 唐九郎の手記
第七章 本当の作者は誰か
 唐九郎の弟・武一説 / 「古瀬戸写し」 / 唐九郎自伝の食い違い
第八章 科学鑑定はクロ
 「重文」指定取り消しへ / 「重美」のままの七点
第九章 二人は「壺」と一字だけ書いた
 小山富士夫への批判 / 唐九郎の名誉欲 / 苦い思いを残して
 あとがき / 文庫版あとがき / 解説 海上雅臣 / 「永仁の壷」関連の本
 写真提供・朝日新聞社/壺中居


松井 孝典 (まついたかふみ)
「惑星科学入門」 (わくせいかがくにゅうもん)
講談社学術文庫



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*320頁 / 発行 1996年
*カバー・金星を探査するマジェラン号(写真上・NASA提供)と原始太陽系星雲 カバーデザイン・蟹江征治

*カバー文
「ガリレオ」「マジェラン」など最新の惑星探査機の成果を盛り込み、太陽系と惑星の実像を明らかにする。また隕石に込められた様々な情報から太陽系生成の過程を再現。原子太陽系星雲から固体粒子の凝縮、集積を経て微惑星が多数誕生し、それらが衝突を繰り返して現在の惑星が形成されたとする注目の「松井理論」を展開する。巨大隕石の衝突による恐龍絶滅の検証など、興味尽きない最新科学の入門書。

*目次
はじめに
第一章 人類の住む星 ― 地球
第二章 そそり立つ絶壁の星 ― 水星
第三章 地球の双子星 ― 金星
第四章 巨大火山と生命探索の星 ― 火星
第五章 巨大ガス惑星の世界へ
第六章 新たな謎を生んだ星 ― 木星
第七章 土星の素顔へ接近
第八章 奇妙な性質をもつ遠い三惑星
第九章 太陽系内の小天体
第十章 太陽系の年齢を探る
第十一章 太陽系はどうできたか
付表 太陽系諸天体のデータ集


松下 竜一 (まつしたりゅういち)
「潮風の町」 
(しおかぜのまち)


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*221頁
*発行 1985年
*カバー装幀、本文カット・永島慎二

*カバー文
永かった家業の豆腐屋をやめて、ひっそりした家籠りの生活のなかで綴った一八の掌編。潮風ただよう中津の町に住まう一家の抒情が、しっとりと心に伝わる。あわせて行き交う人々や風景に、暖かい眼が気負いもてらいもなく注がれて、生きとし生けるものの鼓動が、誰の胸にも爽やかな響きを残してやまない。

*注 中津(なかつ)=大分県中津市


松下 竜一 (まつしたりゅういち)
「豆腐屋の四季 ― ある青春の記録」
 (とうふやのしき)


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*323頁
*発行 1983年
*カバー装画・風間完

*カバー文
泥のごとできそこないし豆腐投げ怒れる夜のまだ明けざらん――零細な家業の豆腐屋を継ぎ、病弱な身体を酷使する労働の日々、青春と呼ぶにはあまりに惨めな生活の中から噴き上げるように歌は生れた。そして稚ない恋の成就……六十年代の青春の燦きを刻して世代を超えて読み継がれた感動のベスト・セラー!

*巻末頁
解説・岡部伊都子
年譜


松谷 みよ子 (まつたにみよこ)
「日本の伝説 (上下)」 (にほんのでんせつ)


*カバー装画・司修
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*上385頁・下380頁 / 発行 昭和50年

*カバー文

遠い昔にうまれた話。近代に生を受けた話。日本各地で語りつがれてきた、星の数ほどもある伝説から、限りない愛情を民話にそそぐ松谷みよ子がテーマ別に精選。上巻には〈狸・狐・蛇などの話〉〈山に生き、海に生き、土に生きた人々の話〉〈長者・姫君などの話〉〈城や武将などの話〉80篇を収める。

自然を失いつつある我々の心のふるさと豊潤な伝説の世界……現代の語り部松谷みよ子が生き生きと描き、祖先の息吹きがここに甦える。
下巻には〈鬼・河童・天狗や幽霊などの話〉〈湖のぬし・山のいわれ・木や石などの話〉〈神々・地蔵などの話〉〈笑いの主人公などの話〉懐かしい80の物語を収録。

*解説頁(下巻収録)・大島広志


松永 伍一 (まつながごいち)
「私のフィレンツェ」 
(わたしのふぃれんつぇ)


*カバーデザイン・松永真
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*139頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
雪の出会いにはじまる夢想の都フィレンツェは、ルネッサンス発祥の地として、自由と想像力に満ちた永遠の純真さを孕みながらも、富豪達の造り出した人工美との不均衡の中にあった。新たな自分にめぐり合うべくヨーロッパ美術史の光と闇に旅する詩人・松永伍一の凝視と夢想の世界を書簡文に託して描く書き下し。

*目次
冬の手紙
 第一信 K宛 ― 雪の日の出会い、わが夢想の日々
 第二信 K宛 ― ミケランジェロの思想とダビデ像
 第三信 F宛 ― 森のない石の町とボッティチュリ
 第四信 五木寛之宛 ― 十五世紀のフィレンツェの運命
 第五信 泉宛 ― フィレンツェ発達史とベッキオ橋
 第六信 E宛 ― メディチ家とメディチの館

夏の手紙
 第一信 U宛 ― ウフィツティ美術館の名作
 第二信 萩原朔美宛 ― レオナルド・ダ・ヴィンチ私見
 第三信 森崎和江宛 ― サボナローラの処刑をめぐって
 第四信 寺山修司宛 ― 天正少年使節のこと
 第五信 水木英二宛 ― ドラマ「あの夏のレクイエム」のこと
 第六信 田中健宛 ― ふたたびベッキオ橋にて
 第七信 太田治子宛 ― フィレンツェからベネチアへ
  写真撮影 野上 透


松原 泰道 (まつばらたいどう)
「同行二人 ― 西国三十三ヵ所めぐり」
 (どうこうににん)
講談社学術文庫



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*257頁
*発行 1985年

*カバー文
巡礼が金剛杖を頼りに地上の札所をめぐり歩くということは、人生の巡礼なのです。そして観音さまやお大師さまとの二人づれの旅だから「同行二人〈どうぎょうににん〉」のご修行というのです。三十三ヵ所の霊場は、人生の旅上で出会う無数のカド番の象徴です。巡礼の旅に幾多の難所があるように、人間の一生にも多くの危機があります。霊場の奉詠は、苦難をかみしめるうめきと、それを乗りこえた喜びが歌いあげられているのです。(「まえがき」より)


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「北一輝論」
 (きたいっきろん)


*カバーデザイン・舟橋菊男
 肖像 北一輝

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*332頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
二・二六事件に連って北一輝が刑死したのは昭和12年8月であった。
以来、正体のつかめない「思想家」として様々な思想図式や議論にさらされてきた。ここに著者は、決定的ともいうべき、この人物についての論著を、周到な実証によって最も客観的な歴史論の立場から迫り達成した。待望の文庫版、いよいよ刊行。

*目次
T 北一輝解釈と時代背景
U 「国体論」の粉本
V 史的「乱臣賊子」論
W 明治天皇と天智天皇
X 「改造法案」の自注
Y その行動軌跡の示すもの
Z 北一輝と西田悦
[ 決行前後
\ 断罪の論理

対談=ある国家主義者の原像 久野収・松本清張


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「彩色江戸切絵図」 (さいしきえどきりえず)


*カバー装画・川田幹
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*334頁 / 発行 昭和50年

*カバー文
日本橋界隈に暮す商人達の静かな生活の裏面をあばいた「大黒屋」。信仰にからむ色と欲の世界を描いた「大山詣で」。虐げられ、ふみつけられた者の意地を爆発させた「山椒魚」ほか三編。揺らぎ始めた江戸の時代相と名もない庶民の生活を巧みに描写、人情の機微と犯罪のからくりを見事に解明した時代推理短編集。

*目次
大黒屋
大山詣で
山椒魚
三人の留守居役
蔵の中
女義太夫
 解説 戸板康二


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「写楽の謎の『一解決』」
 (しゃらくのなぞのいちかいけつ)


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*94頁
*発行 昭和52年

*カバー文
役者絵で名高い浮世絵師・写楽は、その生涯が全く謎につつまれ、今日まで多種多様な人物像が描かれてきたが、その決着はついていない。本書は美術に造詣の深い、日本文学界の巨匠である著者が、その鋭い分析と大胆な推理に基づいて、日本美術の点と線を明かす、興味深いひとつの試論である。

*構成内容 94頁中26頁が写楽のカラー図版、本文は51頁、用語解説が8頁


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「紅刷り江戸噂」
 (べにずりえどうわさ)


*カバー装画・川田幹
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*276頁 / 発行 昭和50年

*カバー文
色と欲とに根ざしておこる事件を追い、人間の弱さと罪業を、江戸下町の風俗を背景に描く推理傑作集―正月七日、日本橋の織物問屋の主人庄兵衛が急死した。七種粥の中に毒草が混ぜられていたのだ。七草は女房お千勢がなずな売りから買ったもの。岡っ引の探索はなずな売りを追うが ―― 「七種粥」他5編を収録。

*目次
七種粥

突風
見世物師

役者絵
 解説 戸板康二


松山 樹子 (まつやまみきこ)
「バレエの魅力」 
(ばれえのみりょく)


*カバーデザイン・アドファイト
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*102頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
すぐれたバレリーナは、どのようにして魅力を備えていくのだろうか。肉体の限界を超えて美を追い舞台を翔ける。行けども行けども果てしのないバレエの道を、自らのさだめとひたすら歩んできた著者が語るバレエと人生。それは、基礎から舞台に至る豊富な写真と相まって、あなたにバレエのすべてを伝えてくれるだろう。

*目次
図版
 白鳥の湖 / コッペリア / ジゼル / ドン・キホーテ

バレエと私
 美の極致を求めて / 日本人の味を生かしたバレエの創造 / 若い二人、森下洋子と清水哲太郎 / 愛読書と私 / 絵画とバレエ / バレエと音楽

バレエの基礎
 バァールを使った練習 / 中央での練習 / マイム


丸木 位里 / 丸木 俊 (まるきいり / まるきとし)
「原爆の図」 
(げんばくのず)


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*126頁 / 発行 昭和55年

*カバー文
1945年8月6日、原爆投下。三日後、ひろしまに帰った画家は、現代の地獄図絵を目撃する。「原爆の図」は、画家が二十数年をかけ完成した畢生の大作であり、世界の多くの人々に深い衝撃をよびおこしたのだった。本書収録のこの作品の全貌を通じて、私たちは、平和と人間愛への祈念をさらに新たにしてゆきたいと思う。

*目次
 図版 「原爆の図」(全十四部)……丸木位里・丸木俊
  第一部 幽霊 / 第二部 火 / 第三部 水 / 第四部 虹 / 第五部 少年少女 / 第六部 原子野 / 第七部 竹やぶ / 第八部 救出 / 第九部 焼津 / 第十部 署名 / 第十一部 母子像 / 第十二部 とうろう流し / 第十三部 米兵捕虜の死 / 第十四部 からす

 文 幽霊に憑かれて……丸木俊
  一、殺人光線 ― ひろしま / 二、幽霊 / 三、プリーズ・サイン / 四、米兵捕虜の死 / 五、烏

 「原爆の図」小史
 あとがき


丸谷 才一 (まるやさいいち)
「闊歩する漱石」
(かっぽするそうせき)


*カバー装画・デザイン 和田誠
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*248頁 / 発行 2006年

*カバー文
夏目漱石の『坊っちゃん』は、あだ名づくしで書かれた反・近代小説。『三四郎』は都市小説のさきがけ。『吾輩は猫である』は価値の逆転、浪費と型やぶりによる言葉のカーニバル。初期三作をモダニズム文学としてとらえ、鑑賞し、分析し、絶賛する。東西の古典を縦横無尽に引いて斬新明快に語る、画期的漱石論。

*目次
忘れられない小説のために
三四郎と東京と富士山
あの有名な名前のない猫
解説 中条省平


丸谷 才一 (まるやさいいち)
「日本文学史早わかり」
(にほんぶんがくしはやわかり)
講談社文芸文庫



*装幀・菊地信義
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*256頁 / 発行 2004年

*カバー文
古来、日本人の教養は詩文にあった。だから歴代の天皇は詞華集を編ませ、それが宮廷文化を開花させ、日本の文化史を形づくってきたのだ。明治以降、西洋文学史の枠組に押し込まれて、わかりにくくなってしまった日本文学史を、詞華集にそって検討してみると、どのような流れが見えてくるのか? 日本文学史再考を通して試みる、文明批評の一冊。詞華集と宮廷文化の衰微を対照化させた早わかり表付。

*目次
T
日本文学史早わかり
U
香具山から最上川へ / 歌道の盛り / 雪の夕ぐれ / 花
V 
趣向について / ある花柳小説 / 文学事典の項目二つ 風俗小説 戯作
夷齋おとしばなし

 付表 / あとがき / 解説 大岡信 / 著者から読者へ / 年譜 / 著書目録 藤本寿彦


丸山 圭三郎 (まるやまけいざぶろう)
「言葉・狂気・エロス 無意識の深みにうごめくもの」
(ことば・きょうき・えろす)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*222頁 / 発行 2007年

*カバー文
言葉の音と意味の綴じ目が緩んだとき現れる狂気、固定した意味から逃れ生の力をそのまま汲み取ろうとする芸術、本能が壊れたあとに象徴的意味を帯びてイメージ化されるエロティシズム。無意識レベルの欲動エネルギーを覆う言葉の網目をかいくぐって現れる人間的活動のありようとは? ソシュール研究で世界的に有名な著者が言葉の深層風景に迫る。

*目次
プロローグ ── 始原(アルケー)も終極(テロス)もなく
第一章 「イカ天」とペレストロイカ
 1 イカ天・ドラクエ・AI(人工知能) / 2 恣意的必然の世界と複数の文化
第二章 文化という記号
 1 『薔薇の名前』をめぐって / 2 記号学(論)の歴史
第三章 意識と無意識
 1 死と原光景の記憶 / 2 現象学と精神分析学 / 3 形而上学の陥穽
第四章 深層の言葉と言語芸術
 1 深層意識の言語風景 / 2 メタファーとメトニミー
第五章 狂気の言葉
 1 パラノイア患者の自伝的回想録 / 2 クッションの綴じ目
第六章 エロ・グロ・ナンセンス讃
 1 エロ・グロ・ナンセンス時代 / 2 狂気と創造性 / 3 円環運動持続のファクター
第七章 虚構の美と生活世界
 1 虚構が生む〈意味〉 / 2 世阿弥の夢幻能 / 3 日常生活の歓び
あとがき / 解説 末永朱胤


丸山 健二 (まるやまけんじ)
「夏の流れ・正午なり」
 (なつのながれ・まひるなり)


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*373頁
*発行 1973年

*カバー文
裁く者と裁かれる者の錯綜した心理、市民生活と犯罪、不条理ともいうべき人間の生と死を、囚人の処刑執行日を目前に控えた看守たちの日常生活の中で捉え、硬質な筆致で描いた芥川賞受賞作品「夏の流れ」。都会での生活に敗れ、帰郷してきた青年の、人間と性を追求した「正午なり」。ほかに秀作二篇を収録。 (解説・篠田一士)