絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【お】

オイゲン・ヘリゲル著 榎木 真吉訳 (Herrigel.Eugen えのきしんきち)
「禅の道」
(ぜんのみち)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*208頁 / 発行 1991年

*カバー文
本書は、オイゲン・ヘリゲルのいわば「遺稿集」である。ここに収められている禅の神秘主義を論じた手稿の数々は、いずれもヘリゲル自身の決定稿である。“虎の描いて猫に類する”底の禅書が氾濫するなかで、身をもって禅の真髄に徹したヘリゲルの片言隻句は今日なお新しく、多くの示唆を与えてくれる。ヘリゲルこそは、日本人以外で禅の本質を把握し、その精神の息吹きを感得した唯一の人なのである。

*目次
編者まえがき
第一部 禅の道 ―― オイゲン・ヘリゲルの手記より
 禅の独自性 ―― ヨーロッパ神秘主義と対比して / 禅堂の修行 / 呼吸法 / 公案 / 「悟り」 / 公案体系 / 師家はどのようにして弟子の見性を「見分ける」のか? / 日本演劇との関係 / 師家の点検 / 「悟り」による弟子の変化 / 禅と芸術 / 禅画 / 詩の中の「悟り」 / 見性体験に基づく思弁 / 日常生活における禅者の態度 / 禅僧 / 「山上また山あり」
第二部 禅の実践
 禅の修行者の成長過程 / 修行の道 / 陰徳 / 放下 / 悟り、再生、仏性 / 慈と悲 / 不立文字 / 万物との交感 / 禅僧の理解力 / 禅者と世間、生活、日常
第三部 ヨーロッパから見た禅
 禅と古典的仏教瞑想神秘主義 / 雑事における忍耐と克己 / 禅は権力欲や宣伝とは無縁である / 禅宗 ―― ヨーロッパ人の視点から / 人間の「擬我」 / 転換の道 / 芸道における禅と禅道における修行法との相違 / 存在の中心 / 人間の離心と人間の本質成就 / 思惟の役割 / 正義と慈悲
ヘリゲル小伝 / 訳者あとがき


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「証言その時々」
(しょうげんそのときどき)
講談社学術文庫


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*320頁
*発行 2014年
*カバーデザイン・蟹江征治

*カバー文
「私はひとりになった。静かに涙が溢れて来た……祖国は敗けてしまったのだ。偉大であった明治の先人達の仕事を三代目が台無しにしてしまったのである」 ── 収容所で敗戦の報に接した著者が見た戦争、そして戦後日本の姿とは。数々の戦争文学を残した作家が綴る、帰還兵への思い。六〇年安保、チェルノブイリ原発事故への眼差しなど戦争をめぐる証言。


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「天誅組」〈上下〉 
(てんちゅうぐみ)


*カバー・「京都御絵図細見大成」の部分
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*上巻269頁・下巻240頁 / 発行1979年

*カバー文

黒船来訪以後、いわゆる尊皇攘夷の過激派が下級武士の間に生まれ、京都はにわかに政治的動乱の渦と化す。寺田屋の変、開国論者吉田東洋暗殺、九条関白の家令島田左近梟首、自称、青蓮院宮の家来本間精一郎の暗殺等、幕末激派の武装集団の「天誅」が続発。豊富な資料と独自の史観による史伝的歴史小説の傑作。


文久三年、儒者池田大学の梟首、浪士の脅迫や天誅により中山忠能(ただやす)、正親町三条実愛(さねなる)両議奏の辞職。やがて日本全国を捲き込む動乱の序曲であった。将軍家茂が上洛した頃の京都には、後の「天誅組」の幹部は尽く集合していた。江戸と京都の政治状勢、「天誅組」に参加する人々の克明な生活史を辿る。

*解説頁・亀井秀雄


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「萌野」
 (もや)


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*248頁
*発行 1978年
*カバー装画・福島誠

*カバー文
ニューヨークで、はじめて親となろうとしている息子夫婦に対する微妙な心情と、18年振りにアメリカを再訪したその父親の文明批評的視点を交錯させて、知的関心の全領域を、“人間的な親和の文章”で綴る。自在な形式と、鋭い洞察力により、不滅の作家精神を実証した強靭な文学境域。

*解説頁 割箸袋のメモ・松山幸雄


大岡 信 (おおおかしん)
「日本詩歌読本」
 (にほんしいかどくほん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・志賀紀子
 写真・馬場真木子
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*273頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
本書は、詩歌の主題の時代的変化、女性の恋歌、長歌と旋頭歌、和歌の中の花、連句と歌謡などを語りながら、日本詩歌の特徴とその魅力を歴史的に考察したものである。著者の柔軟で豊かな視点は、世界的な広がりをもつ詩意識に連動して、たとえば、『万葉集』に人間の戦いのドラマを見、『新古今和歌集』に暗く思いつめた忍ぶ恋を指摘する。かつてないこれらの鋭い問いかけは、そのまま一種の比較文化論、日本文化論にもなっている。

*目次
「学術文庫」のためのまえがき
第一章 詩歌の主題の時代的変化
第二章 独り寝のテーマについて
第三章 女性の恋歌T―大伴坂上郎女と額田王
第四章 女性の恋歌U―笠女郎と狭野茅上娘子
第五章 女性の恋歌V―和泉式部
第六章 長歌と旋頭歌について
第七章 和歌の中の花
第八章 歌人の視点・その変遷
第九章 連句と歌謡
あとがき
日本詩歌の核心をつかむ視野と視点 … 平井照敏


大河内 昭爾 (おおこうちしょうじ)
「味覚の文学散歩」 
(みかくのぶんがくさんぽ)


*カバー装画・生井巌
 カバーデザイン・中島真子

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*254頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
味覚随筆ほど楽しいものはない。真夏の食欲のないときも気に入った食べものの本を読めば何となく食べる気がおきるし、味覚の秋ともなれば初秋の憂鬱など吹き飛ばしてくれる。食うことの思いに執念を燃やす著者が、味覚を主題とする作品に美味追求や味覚極楽の世界をのぞき、味覚の風土を訪ねる好エッセイ。

*目次
 味覚と文学の旅
札幌の旅情 ― 馬鈴薯と牛乳 / 九十九里浜・犬吠埼の磯料理 ― はまぐりとあじ / 湯ヶ島・湯ヶ野の山家料理 ― しし鍋と巣ごもり / 木曽の山家料理 ― 山菜のにぎわい / 野麦峠から飛騨高山へ ― みたらし団子 / 京都の夏の風物詩 ― ハモと葛切り / 古都の抒情と味覚 ― かゆの美味しさ / 百万石の城下町・金沢の珍味 ― ゴリ料理 / 『暗夜航路』の味覚 ― 伯耆大山の精進料理 / 石見の旅情 ― 板ワカメとスズキの奉書焼き / 阿波徳島の焼餅 ― モラエスと薩摩治郎八

 味覚の名作
大阪・道頓堀の風物詩 ― 上司小剣「鱧の皮」 / 味覚のデカダンス ― 谷崎潤一郎「美食倶楽部」 / 鮨屋へのあこがれ ― 志賀直哉「小僧の神様」 / 『今昔物語』の味覚 ― 芥川龍之介「芋粥」 / さんまの悲哀 ― 佐藤春夫「秋刀魚の歌」 / 味覚の詩情 ― 永井竜男「黒い御飯」「胡桃割り」 / 麻布の鮨屋 ― 岡本かの子「鮨」 / 料理の天才 ― 岡本かの子「食魔」 / 山の手のどじょう屋 ― 岡本かの子「家霊」 / 人情を食べる ― 河上 肇「自叙伝」 / 信州霊泉寺温泉 ― 矢田津世子「茶粥の記」 / 食事と羞恥 ― 吉行淳之介「食欲」「食卓の光景」 / 武蔵小金井桜町病院の生活 ― 上林 暁「聖ヨハネ病院にて」 / 五目鮨のある情景 ― 上林 暁「愉しき昼食」 / 恋愛と味覚の相関 ― 円地文子「苺」 / 羽田空港のレストラン ― 阿川弘之「空港風景」 / 熟れた果物の味 ― 田久保英夫「蜜の味」 / 白いごはんへの憧れ ― 吉村 昭「白い米」 / 南房総鴨川の鰯とまんぼう ― 近藤啓太郎「海」 / 陰翳にとんだ人生ドラマ ― 丹羽文雄「中華料理店」 / 梅干と鰹節と豆腐 ― 庄野潤三「佐渡」 / 越後のカニ喰い ― 水上 勉「寺泊」 / 軽井沢で旬を食べる ― 水上 勉「土を喰う日々」 / 郷愁の味 ― 水上 勉「棗」 / 大阪の味 ― 織田作之助「夫婦善哉」 / 中国料理人の執念 ― 陳舜臣「幻の百花双瞳」 / 女の生命力は料理に現われる ― 耕 治人「料理」 / 精力絶倫な食談 ― 開高 健「最後の晩餐」 / 人類根源のエネルギー ― 開高 健「玉、砕ける」 / ベルリンの自炊生活 ― 柏原兵三「仮りの栖」「台所」

 下町の味覚文学案内
いせ源〈あんこう鍋〉 / 江知勝〈すき焼〉 / 蓮玉庵〈そば〉 / 笹乃雪〈とうふ料理〉 / 芋坂羽二重団子 / 長命寺桜餅〈山本屋〉 / 駒形どぜう〈どじょう鍋〉 / 染太郎〈お好み焼き〉 / どぜう飯田屋〈どじょう鍋〉 / 米久〈牛鍋〉 / 川甚〈川魚料理〉 / 鳥安〈相鴨〉

文庫版あとがき / 解説 玉村豊男


大笹 吉雄 (おおざさよしお)
「花顔の人 ― 花柳章太郎伝」
 (かがんのひと-はなやぎしょうたろう)


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*481頁 / 発行 1994年
*カバー装画・伊東深水「瀧の白糸」(国立劇場蔵)

*カバー文
湯島の芸者置屋に育ち、新派に入門、恋も芸のうちと奔放な恋に生き、昭和四十年七十歳で急逝した花柳章太郎。「夢の女」のお浪、「大つごもり」のおみね、「あぢさゐ」のきみ…一時代を画した新派の不世出の名女形の生涯を、新派の盛衰と人間関係の愛憎を軸に、綿密な取材で描いた渾身の一冊。大佛次郎賞受賞

*目次
第一章 湯島
第二章 恋
第三章 師匠
第四章 修業
第五章 花形
第六章 座頭
第七章 晩年
 解説 水落潔


大須賀 乙字著 村山 古郷編 (おおすがおつじ・むらやまこきょう)
「大須賀乙字俳論集」
 (おおすがおつじはいろんしゅう)
講談社学術文庫



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*240頁
*発行 昭和53年
*カバー装画・島田正治

*カバー文
明治大正期の俳論家として一世を風靡した大須賀乙字の代表的と目される俳論三十二篇を選んで収録。新傾向、二句一章、音調と句切れ、季題と季語、季感象徴、写生と写意など、俳句の本質と性格に鋭い洞察と深い究明を加えた諸篇は、今日の俳句になお多くの示唆と新しい問題を提起するにとどまらず、わが国詩歌の伝統の中での俳句の特殊性とその意義を解明した国語論ないしは詩歌論として、高い価値を有する俳論と稱すべきであろう。

*解題 村山 古郷


大関 松三郎・寒川 道夫編 (おおぜきまつさぶろう・さがわみちお)
「大関松三郎詩集 - 山芋 解説と指導記録」 
(やまいも)


*カバー装画・黒谷太郎
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*175頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
貧しい生活環境と時代の流れの中をたくましく生きぬいた大関松三郎少年が、生活のうえでのさまざまな感動を、みごとに歌いあげた不朽の詩集に、恩師である寒川道夫氏の愛と真情あふれる「解説と指導記録」を同時に収録した古典的名著。詩は「山芋」「虫けら」「雑草」「ぼくらの村」など23編収録。

*目次
 まえがき さがわみちお
詩集 山芋 大関松三郎
  山芋 / 畑うち / 虫けら / 巾とび / 水 / みみず / 雑草 / 一茶さん / ほたる / 虫けら / ぼくらの村 / くさむし / 夕日 / 夕日 / いやなうた / 年貢 / ゆめ / 馬 / にわ / 夜中 / 雪ふみ / あまさけをかこんで / 春がきた

松三郎の詩 さがわみちお
 そのほかの松三郎の詩とつづり方(参考)

いのちの歌(指導記録) さがわみちお
 1 祖国の中の異国 / 2 群盲 / 3 大地 / 4 青白い手 / 5 青空学校 / 6 飛ぶ雲 / 7 詩論 / 8 そらから

 あとがき
 解説 丸木政臣
  カット/黒谷太郎


大久保 治男 (おおくぼはるお)
「江戸の刑罰 拷問大全」
(えどのけいばつ ごうもんたいぜん)
講談社+α文庫


*装画・維新風聞録
 デザイン・鈴木成一デザイン室
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*308頁 / 発行 2008年

*カバー文
争いのない世を切望し、罪を憎む意識は変わらなくても、犯罪はいつの時代でも起こりうる。今日の犯罪と江戸時代の犯罪とでは、どちらのほうが罪深いのかはわからないが、刑罰に関しては江戸時代のほうが恐ろしい。徹底的な階級社会、男尊女卑の規定により、同じ罪であっても、制裁に大きな差がつけられ、理不尽なリンチによって多くの罪人が惨殺されていた。
華やかな江戸文化の裏側に潜む、御上によるおどろおどろしい残虐犯科帳のすべて!

*目次
まえがき
第一話 江戸幕府の刑法と裁判
 一、江戸幕府の刑法の特色
    見せしめの残虐刑 / 十両盗めば死罪 / 刑罰は身分で決められた / 他人の犯罪で罰を受ける / 私的制裁が認められていた
 二、刑法典の制定
    法典の整備が必要になった / 高札・御触で知る庶民
 三、吟味筋と出入筋
    刑事裁判=吟味筋 / 民事裁判=出入筋 / 訴える方法 / 公事とは
 四、拷問
    幕府公認の拷問 / 幾多の拷問が考案された
第二話 大江戸の治安と牢屋
 一、町奉行所
    江戸の庶民へのにらみ / 月番制の町奉行 / 仕事は多いが効率的だった / 巡回の方法 / 与力 / 八丁堀の七不思議 / 同心 / 目明し、岡っ引き
 二、独立警察機関
    火附盗賊改 / 関八州取締出役 / 国定忠治の一件
 三、警備と捕物
    自身番 / 辻番 / 木戸番 / 捕物
 四、牢屋
    小伝馬町牢屋敷 / 地獄入り / 牢内の生活
第三話 名奉行
 一、大岡越前守
    庶民の味方だった / 大岡越前守略伝 / 大岡越前守の事蹟
 二、遠山左衛門尉景元
    遠山の金さん本妙寺に眠る / 順調な出世人生 / 金さんはなぜ入墨判官といわれるのか / お白州での遠山の金さん / 寄席の撤廃に反対する / 庶民の気持ちを代弁した
第四話 刑罰
 一、死刑
    下手人 / 死罪 / 獄門 / 磔 / 火罪 / 鋸挽
 二、追放刑
    遠島 / 追放刑の軽重
 三、体に科せられる刑
    奴隷刑 / 肉刑 / 自由刑 / 閨刑
 四、罰則刑
    労役刑 / 財産刑
第五話 殺人罪
 一、身分上位者に対する殺人
    主殺 / 親殺
 二、夫婦の殺人
    夫婦は主従に準ず / 夫が一方的に保護されていた / 妻は夫に何もしなくても厳罰 / 夫の罪は妻の罪 / 女房は家の大黒柱
 三、変死
    残虐な殺人事件 / 肉親の変死 / 首吊り・火焼死 / 死体掘り
 四、倒死
    水死 / 傷害致死 / 土左衛門 / 両腕切断 / 女体検視
第六話 窃盗
 泥棒花ざかり / 死罪になる盗みとならない盗み / 追剥・追落 / 小盗 / 凶悪な盗み / 又候盗(またぞろぬすみ) / 土蔵破り / 鼠小僧の悲惨な最後 / 奉公先への盗みが発覚して遠島に / 壁破り / 介抱どろ
第七話 放火
 火刑で木炭のようになった八百屋お七 / 盗みのために火を放った / ふられた腹いせに放火 / 主人の家に火をつけてしまった遊女 / おもしろ半分の放火で取り返しのつかないことに / 僧侶が金目当てで寺に火をつけた / 火事は江戸の華だった
第八話 密通
 間男七両二分 / 押して不義 / 密通相手の陰茎を切り落とした / 不義で父親に斬り殺された十五歳の娘 / 元売春婦の人妻との不義 / 幼女への不義 / 外国の制裁
第九話 飲む
 酒の力 / 酒は奢侈 / 酒狂人御仕置 / 酒狂のうえの事件
第十話 賭博
 博打の種類 / 勤務中に博打 / 寺の修理を名目に賭博をした / 賭場の女が人気に / 侠客
第十一話 売春
 一、江戸の歓楽街
    遊廓 / 遊女 / 遊女奉公 / 隠売女(かくればいた)と岡場所 / 日光の助平野郎 / 同情すべき売春 / 湯女などの売色
 二、女犯
    大黒・若後家 / 女犯の僧 / 比丘尼 / 筍
 三、陰間
    男色 / 男娼 / 閨房薬 / 艶な小咄 / へこたれる / 大奥女中
第十二話 女と犯罪
 女は責めにくい / 女の関所破り / 女牢 / 女の犯罪 / 毒婦と悪女 / 夫の素性 / 板の間稼ぎ / 関所破り / 相対死
第十三話 禁教徒迫害
 一、キリシタン弾圧
    秀吉、家康の残虐性 / 地獄絵巻「温泉責」 / 穴吊り
 二、不受不施
    三鳥派 / 秀吉、家康の勘気 / 奇異な宗教
第十四話 密貿易と海の犯罪
 一、抜荷
    人参(にんじん)や煎海鼠(いりこ) / 砂糖貿易で死刑 / 鼈甲(べっこう)や酸棗仁(さんそうじん)など / 奉行の手先
 二、海の犯罪
    廻船荷物に関する犯罪 / 海中より積み荷を引き揚げる罪 / 海上での喧嘩や博打 / 船囲抜け
参考・引用文献


大城 立裕 (おおしろたつひろ)
「対馬丸」
(つしままる)


*カバー写真・日本郵船歴史博物館所蔵
 カバーデザイン・岡孝治+土生はづき
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*320頁 / 発行 2015年

*カバー文
昭和一九年八月、沖縄から本土に向かった学童疎開船・対馬丸はアメリカ潜水艦の魚雷を受け、夜の海に沈んだ。乗船者一六六一名、うち学童八〇〇余名。生き残った学童はわずか五〇余名。戦争完遂という大義名分のもとに実施された疎開事業における最大の悲劇が、なぜ起きたのかを伝える名著。

*目次
いのちがけの教育
行くも地獄、残るも地獄
親と子と
不気味な前夜
集合
たそがれの出航
無邪気な乗客
今晩はあぶない
撃沈
死とたたかう漂流
役に立った手旗(仲宗根正男の話)
助けあいながら(阿波連休子の話)
幼い知恵と意志で(宮城啓子の話)
わんぱくも参った(田場兼靖の話)
泣きべそと夜光虫(名城妙子の話)
愛児の死をみながら(田名宗徳の話)
むなしい上陸
校長が殺したか
燃えろ、燃えろ……
付録 / あとがき / 解説 佐藤優

*関連文庫(サイト内リンク)
 石野径一郎 「疎開船対馬丸」 旺文社文庫


太田 洋愛 / 串田 孫一 (おおたようあい / くしだまごいち)
「画文集 花の肖像」
 (がぶんしゅうはなのしょうぞう)


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*129頁
*発行 1983年
*カバー装画・太田洋愛

*カバー文
四季おりおりに日本列島を彩る花の貌。比較的私達の眼になじみ易い花58種を選び、ボタニカル・アート(植物画)の第一人者・太田洋愛の絵と、登山家で詩人・エッセイスト・哲学者と多方面に活躍の串田孫一が、その花の想い出を透徹した眼差とふくよかな抒情で綴る画文集。


大塚 久雄 (おおつかひさお)
「近代欧州経済史入門」
(きんだいおうしゅうけいざいしにゅうもん)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*264頁 / 発行 1996年

*カバー文
近代資本主義はどのように成立したか。本書は十五世紀末の地理上の発見が触発した商業革命から十七世紀の初期資本主義の完成までを論述。中世後期の東邦貿易の支配者ヴェニスは、東インド新航路の開拓によりポルトガル、スペインにその座を奪われ、さらに新興国のオランダ、イギリスが新大陸貿易の主要品「毛織物」の生産地として台頭する。転換期における大国の興亡と資本主義成立過程を説く名著。

*目次
原本の序
前編 近代欧州経済史における毛織物工業の地位
第一章 商業革命と毛織物工業
 序説
 第一節 端緒 ―― 中世後期における東邦貿易の規模と特質
 第二節 東インド新航路の開拓が東インド貿易に及ぼした影響
 第三節 新たに展開せられた新大陸貿易の規模と特質
 第四節 展望 ―― 商業革命が欧州の毛織物工業に与えた画期的意義
第二章 オランダ及びイギリスの興隆と毛織物工業
 序説
 第一節 十六世紀及び十七世紀初頭におけるスペイン
 第二節 十六世紀末及び十七世紀初頭におけるオランダ
 第三節 十六世紀末及び十七世紀におけるイギリス
 第四節 帰結 ―― 毛織物工業の発達と初期資本主義の型

後編 毛織物工業を支柱とするイギリス初期資本主義の展開
序説
第一章 イギリス初期資本主義における毛織物工業の地位
 第一節 近代イギリスにおける産業の基軸
 第二節 毛織物工業を基軸とする前期的資本の展開
 第三節 毛織物工業における資本主義の発生といわゆる綜画(囲い込み)運動の展開
第二章 イギリス初期資本主義の支柱たる毛織物工業の経営形態
 第一節 十六世紀半ばより十七世紀半ばにわたる期間の織元
 第二節 織元の二つの型 ―― 農村の織元と都市の織元
第三章 イギリス「初期資本主義」の型
 第一節 農村の織元層展開の歴史的条件
 第二節 毛織物工業と基軸とするイギリス初期資本主義の展望

解説 中村勝己


大原 富枝 (おおはらとみえ)
「建礼門院右京大夫」
 (けんれいもんいんうきょうのだいぶ)


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*448頁
*発行 昭和54年
*カバー装画・朝倉摂

*カバー文
今をときめく平家の若武者資盛との運命的な出会い。芸術に生きんとする隆信との恋。二人の恋人の間で女として成長していく右京大夫。しかし時は移り、平家滅亡という無惨な現実が彼女を待ちうけていた。……恋に生き歌に生きた建礼門院右京大夫の生涯を、歴史の巨大な波に翻弄される女の運命として描く力作長篇。

*解説頁・大岡信


大村 しげ (おおむらしげ)
「京の手づくり」
 (きょうのてづくり)


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*239頁
*発行 昭和55年
*カバー装画・川田幹

*カバー文
打出しなべ、手漉き和紙、蛇の目傘、耳かき、おひつ、焼きいも、すぐき……使う者の身になり食べる者の身になって丹精こめて作られた身近な品々から、あたたかさがにおいたつ。京都の風物詩ともいうべき暮しの中の手づくり品、その作り手たちの手仕事を、京生れ京育ちの京おんなが共感と親しみをこめて訪ねる。

*写真・名鏡勝朗


大森 実 (おおもりみのる)
「戦後秘史 8 朝鮮の戦火」 (せんごひし8ちょうせんのせんか)


*カバー装画・秋山法子
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*350頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
朝鮮戦争は、日本の戦後史にとって、まさに“曲り角”のハプニングであった。東西の冷戦が、日本と一布帯水の朝鮮半島において、あのような形で爆発するとは誰も予想さえしなかった。特需ブーム、九州の黒人兵暴動、学生アルバイトによる死体処理、スパイ事件などを描き、朝鮮戦争の真因実相を解明する。

*目次
 まえがき
第一章 戦後五年目の熱い曲がり角
 日曜日の奇襲攻撃 / 戦争勃発直前に吹き荒れた“赤狩り” / 弾圧の標的にされた在日朝鮮人連盟
第二章 もつれるアメリカの対朝鮮・台湾政策
 泥縄的に固定された三十八度線 / 韓国軍の叛乱と米戦略体系の分裂 / 大統領選挙と絡みあう台湾政策
第三章 アメリアの無関心と衝撃
 対日講和をめぐる国防総省、国務省、GHQの確執 / 朝鮮情報に麻痺していたワシントンとGHQ / 打ちひしがれたマッカーサー
第四章 国連旗を翻しての朝鮮出兵
 最前線に投入された“犠牲部隊” / 過小評価しすぎた北朝鮮軍の威力 / 三十五日間の脱出行 / マッカーサーと蒋介石の密議
第五章 戦争の代償
 日窒コンツェルンの崩壊と朝鮮共産党の浮上 / 南北に割れた朝鮮労働党 / スターリンの陽動作戦 / 起死回生の仁川上陸作戦
大森実直撃インタビュー
 カール・バーナード
 ヒュー・ブラウン
 韓載徳
 呉基完
  年表
  参考・参照・引用文献
  事項・人名索引


大宅 壮一 (おおやそういち)
「『無思想人』宣言」 (むしそうじんせんげん)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*247頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
戦前から戦後にかけて知識人の間では特定の思想やイデオロギーを紹介し、または支持することがもてはやされた時期があった。この風潮に対し大宅は「猿取哲の特性は、まず第一に世間に通用している主義主張を決してもたないことである。厳正中立、不偏不党、徹底した是々非々主義でおしとおすことである」とこれを痛烈に批判し、思想は帽子のように取替えてもいいのかと疑問を投げた。本書は大宅壮一の原点の書といえよう。

*目次
T 敗戦とう名の処女体験
 日本の没落 ―― 大東亜戦争の輝かしき戦果一覧
 天皇絶対性を支えるもの・倒すもの
 ”敗者復活戦”参加の七〇年代
U 日本人とマルキシズム
 亡命知識人論
 共産主義における人間の研究
 山川均・福本和夫・河上肇
V 無印の思想をすすめる
 「無思想人」宣言
 思想の功利化と投機化
W 買いかぶられた民主主義
 共産主義のすすめ
 血槍を下げた民主主義 ―― 後進国にみる多数決政治への疑問
 世界は楕円である
 解説 青地晨


大山 康晴 (おおやまやすはる)
「大山将棋勝局集」
(おおやましょうぎしょうきょくしゅう)


*カバー装画・山藤章二
 デザイン・菊地信義
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*308頁
*発行 昭和58年

*カバー文
超人・大山康晴。優勝回数百二十回以上、勝局数は千局を。常に棋界の先端に立ち、この道一筋の精進は五十年にの長きに亘る。重厚無類の戦法で確実に勝ちを制し、棋界に前人未到の金字塔をうち樹てたこの不死鳥は、いまなお新棋風の工夫に余念がない ── 大山将棋の真髄を披瀝する珠玉自戦記。

*解説頁・八段 山川次郎


岡 潔 (おかきよし)
「日本のこころ」 
(にほんのこころ)


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*368頁 / 発行 1971年

*カバー文
情緒・学問・信仰・教育など、日本人の原点的な精神生活に深い洞察の眼をむけて、〈春宵十話・すみれの言葉・私の人生観〉など、全21編の多彩な思想を集大成した異色随想集。碩学岡潔博士の、現代におくる生きた思索の書。

*目次
第一部 人生
  春宵十話 / すみれの言葉 / 私の人生観 / 日本人としての自覚 / 湖底の故郷
第二部 情緒
  日本的情緒 / 自己とは何ぞ / 人の世 / 絵画 / 情緒 / こころ / いのち / 女性と情緒 / 独創とは何か / 宗教について
第三部 教育
  教え子の顔 / 義務教育私話 / 創造性の教育 / 教育と研究の間 / かぼちゃの生いたち / 六十年後の日本
あとがき


岡崎 義恵 (おかざきよしえ)
「日本の文芸」
 (にほんのぶんげい)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・深山眞知子
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*25頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
一国文芸学の成立の根拠を追求して日本文芸学という独創的な学説、体系を構築した著者が、文芸は芸術の一種として美的意志の現れであって、そのことは文芸が芸術的なものの一様式であることを意味するという理念でもって、日本文芸というものの性格と本質を、通俗的から専門的に、平易から難解へと説き明かした本書は、日本文芸の特質・日本文芸の展開・文芸精神の流動、の三部から成っており、日本文芸学への入門書の性格を持つ。

*目次
改版の序

第一部 日本文芸の特質
 一 日本文芸とは何か / 二 日本文芸の歴史と分類 / 三 日本の叙事詩 / 四 物語の系譜 / 五 浮世草子と近代小説 / 六 和歌の伝統 / 七 俳諧の芸術的価値 / 八 近代詩の世界 / 九 浪漫的戯曲 / 十 日本の近代劇 / 十一 随筆の日本的特色 / 十二 日本的な美について
第二部 日本文芸の展開
 一 伝統の継承と外来の影響 / 二 文芸の自律的進展と社会的影響 / 三 様式展開の問題
第三部 文芸精神の流動
 一 情操の流れ / 二 みやびの精神 / 三 象徴的精神 / 四 写実的精神 / 五 日本文芸学の伝統
解説 北住敏夫


岡部 伊都子 (おかべいつこ)
「美を求める心」
 (びをもとめるこころ)


*カバーデザイン・栃折久美子
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*233頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
美しいものとは、美しい形とは、美しい姿とは、美しい心とは……。つねに美しきを希い、美しきものに憧れ、美なるものをもとめて歩む著者の心に、おりにふれ時に応じてうつった美の感動の数々。きびしくもしなやかな筆づかいに綴る珠玉の随筆88編、その切々の文章が、読むものに鮮烈な感銘をあたえてやまない。

*目次
T 美のあるところ
U 女ひとり
V 暮らしのなかで
W おりおりの……
あとがき
解説 鶴見俊輔
伊都子著書目録


岡本 かの子著・大久保 喬樹編 (おかもとかのこ・おおくぼたかき)
「食魔 岡本かの子食文学傑作選」
(しょくま)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*288頁 / 発行 2009年

*カバー文
毎晩どじょう汁をねだりに来る老彫金師とどじょう屋の先代の女将の秘められた情念を描いた「家霊」。北大路魯山人をモデルにしたといわれる、食という魔物に憑かれた男の鬼気迫る物語「食魔」ほか、昭和の初めに一家で渡欧した折の体験談、食の精髄を追求してやまないフランス人の執念に驚嘆した食随筆など、かの子の仏教思想に裏打ちされた「命の意味」を問う、食にまつわる小説、随筆を精選した究極の食文学。

*目次
T 小説
 家霊 / 鮨 / 娘 / 食魔 / 女体開顕(抄)
U 随筆
 食魔(グウルメ)に贈る / 異国食餌抄 / 旅とガストロノム / 欧洲土産話 / 巴里の食事 / 外国の魚 / 季節のじゅん / 新茶 / うなぎ、揚げもの、川魚 / 新米 / 粉末食料品時代 / 酒と煙草 / 若菜 / 夏季と味覚 / 初秋におくる / 野菜料理 / 田家の兎料理 / 国民食、大根礼讃 / 食物に関して男子への注文 / 力を培う餅 / 食餌感想 / 恋人にたべさせたい御料理
 参考資料 お総菜
 解説 大久保喬樹 / 年譜 小松邦宏 / 著書目録 宮内淳子


岡本 かの子 (おかもとかのこ)
「巴里祭・河明り」
(ぱりさい・かわあかり)
講談社文芸文庫


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*213頁
*発行 1992年

*カバー文
日本に妻を置いたまま巴里に在住する主人公の“幻の女”をめぐって繰りひろげられる女たちの華麗な手練手管の世界「巴里祭」。幼くして許嫁者同士となった男女が、その因縁のしがらみを果敢にといて行く“河”をめぐる美事な“物語”世界「河明り」。芥川龍之介の晩年を描き、出世作となった「鶴は病みき」の三篇を収録。

*巻末頁
解説 川西政明
作家案内 宮内淳子
著書目録 宮内淳子


小川 国夫 (おがわくにお)
「生のさ中に」 (せいのさなかに)


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*203頁 / 発行 昭和53年
*カバー装画・門坂流

*カバー文
先生、世界に夕焼ってものがなくって、或る日急に夕焼が見えたら、みんなよく見るでしょうね。地球が出来てから無くなるまでに、夕焼が一回しかなかったら、その晩には気が狂う人が出るでしょうね。……終末の色に深く彩られた世界を背景に、陰翳に富んだ若く多感な日々の心のゆらめき、血のざわめきを妖しく描く。

*解説頁・利沢行夫


小木 新造 (おぎしんぞう)
「東亰時代 江戸と東京の間で」
(とうけいじだい)
講談社学術文庫


*カバー図版・小林清親「武蔵国百景之内江戸ばしより日本橋の景」(神奈川県立歴史博物館蔵)
*カバーデザイン・蟹江征治
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*275頁 / 発行 2006年

*カバー文
東京は、天下の総城下町から、一挙に近代国家の首都へと移行したのではない。その過渡期は明治前半期であり、東京が「東亰」とも呼ばれた時代であった。それは、文明開化の時流に取り残された江戸根生いの民が、江戸文化の名残を引きずりつつ生きた時代でもある。江戸から東京へと変貌していく過程を生きた、市井の民の生活実態を浮き彫りにする。

*目次
はじめに
序章 変革の嵐
 一 “菊は栄える葵は枯れる” / 二 面従腹背 ―― 明治の新政を迎えて / 三 江戸・東亰・東京
第一章 「文明開化」の幻影
 一 西欧化の実験場 / 二 船宿汐留の消滅 / 三 銀座慕情
第二章 暮らしの曲線
 一 火事は「都会の花」 / 二 住まいの条件 / 三 諸職人の賃金と暮らし / 四 衣料生活 / 五 食生活
第三章 開化の蔭で
 一 開化の戸惑い / 二 平均寿命男四十二・八歳 / 三 飲料水の危機 / 四 結婚・早婚・離婚
第四章 庶民の遊び
 一 四季遊歴と行事 / 二 寄席の繁昌 / 三 ゆらぐ近代歌舞伎
第五章 寺子屋始末記
 一 東京の家塾 / 二 東京の私立小学校 / 三 大久保一翁の勇断
終章 東亰時代
 一 江戸っ子意識 / 二 失われゆく江戸 / 三 東京改造論 / 四 江戸と東京の間で
『東亰時代』関連年表 / 明治の歴史を知るために / 結びにかえて


興津 要編 (おきつかなめ)
「江戸小咄」 
(えどこばなし)


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*520頁 / 発行 1973年

*カバー文
古典落語の原話として広く知られる咄本は、日本人の笑いの無尽蔵の大鉱脈であるが、また、その時代の世相を如実に映しており、庶民の生活を見る上の貴重な文献でもある。本巻では、現代人の感覚にもよく通じる江戸後期の作品群を主としてとりあげ、原文のまま紹介するものである。各編、解説、訳注を付す。

*目次
 凡例
話稿 鹿の子餅(かのこもち) / 珍話 楽牽頭(がくたいこ) / 楽牽頭後篇 坐笑産(ざしょうみやげ) / 聞上手(ききじょうず) / 聞上手二篇 / 御伽草 / 俗談 今歳花時(ことしばなし) / 興話 飛談語(とびだんご) / 再成餅(ふたたびもち) / 茶のこもち / 新落 一のもり / 鹿子餅後篇 譚嚢(たんのう) / 鯛の味噌津 / 落咄 臍繰金 / 江戸前噺鰻
 解説
 小咄の歴史


興津 要編 (おきつかなめ)
「古典落語 (続々々)」
 (こてんらくごぞくぞくぞく)


*カバー装画・原田維夫
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*569頁 / 発行 1973年

*カバー文
日本民族の文化遺産、古典落語の集大成を文庫版で試みる待望の第5巻。各作品は、いずれも数代にわたる名人芸によって磨きぬかれた名作の全篇無削除版である。本巻総収録作品36編、東京篇「狸賽」「付き馬」「禁酒番屋」「高田の馬場」など30編、上方篇、「馬の田楽」「愛宕山」「景清」など6編。

*目次
うなぎ屋 / 狸賽(たぬさい) / 釜どろ / かわり目 / 松ひき / 付き馬 / 五月のぼり / 高田の馬場 / いも俵 / 富士まいり / 磯のあわび / 笠碁 / 鉄拐(てつかい) / 権助ぢょうちん / 禁酒番屋 / 坊主のあそび / 本膳 / 水屋の富 / 開帳の雪隠 / 三助のあそび / 星野屋 / 唐茄子屋政談 / 小粒 / 盃の殿さま / 百川 / お血脈 / ふたなり / お化け長屋 / 夢金 / 淀五郎
《上方篇》 馬の田楽 / 愛宕山 / たばこの火 / くっしゃみ講釈 / 景清 / 箒屋娘
 解説 / 新作落語史



興津 要編 (おきつかなめ)
「古典落語 (大尾)」
(こてんらくご たいび)


(画像はクリックで拡大します)

*533頁
*発行 1974年
*カバー装画・原田維夫

*カバー文
日本民族の笑いの宝庫、古典落語の集大成を初の文庫版で試みる注目の第6巻。本シリーズも、この巻をもって大尾(おわり)となる。本巻収録作品32編、東京篇、「金明竹」「牛ほめ」「長者番付」「だくだく」「猫の茶わん」など26編。上方篇「仏師屋盗人」「でんがく食い」「吹き替えむすこ」など6編。総目録付き。


桶谷 秀昭 (おけたにひであき)
「保田輿重郎」
(やすだよじゅうろう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*245頁 / 発行 1996年

*カバー文
近代日本の文明開化を徹底批判し、戦後は好戦的文士として公職追放を受けた保田輿重郎。著者は、厖大な資料を駆使して、保田の戦時中の歩みだけでなく、戦後三十数年に及ぶ思想の一貫性を確認。戦時下の保田があれだけ若者を魅きつけたのは、日本主義や好戦思想のためではなく、「死」を真に意味づけうるものが、その真摯な思索の中にあったからだと説く。復古派文人・保田輿重郎の批評精神の軌跡。

*目次
学術文庫版まえがき
T 偉大なる敗北の歌 ―― 戦前
一 戦後の受難
二 『やぽん・まるち』
三 ロマン的イロニイとレアリズムの意識
四 文明人的藝術意識と大衆
五 革命の神話(ミュトス)
六 『ウェルテル』と近代の楽園喪失
七 「文明開化の論理」と日本主義
八 「偉大なる敗北」の予感

U 紙なければ、空にも書かん ―― 戦後
一 敗戦期
二 永遠の日本の暮らし
三 絶対平和論
四 もう一つの大東亜戦争
五 文学における「近代の終焉」
六 固有の生の時間

保田輿重郎私誌 ―― あとがきに代えて
解説……高橋英夫


尾崎 一雄 (おざきかずお)
「あの日この日(全四巻)」 (あのひこのひ)


*カバー題字・著者
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*第一巻315頁・第二巻343頁・第三巻330頁・第四巻316頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
(一)
常に偽らざる自己を語って、変遷めまぐるしい今世紀を生きてきた一私小説家の文学私史的自伝。野間文芸賞受賞。現代文学を側面から解き明かす手掛りと発見にみちた書として評価も高い。本巻では、志賀直哉作品との運命的な出会い、早稲田高等学院時代、大震災前後、「主潮」創刊のころ、幼少年期の回想等が綴られる。

(二)
常に偽らざる自己を語って、変遷めまぐるしい今世紀を生きてきた一私小説家の文学私史的自伝。野間文芸賞受賞。現代文学を側面から解き明かす手掛りと発見にみちた書として評価も高い。本巻では、「主潮」以下の同人誌時代、書けずに苦しんだ“新進作家”の頃、直哉を追うようにして行った奈良での日々等が綴られる。

(三)
常に偽らざる自己を語って、変遷めまぐるしい今世紀を生きてきた一私小説家の文学私史的自伝。野間文芸賞受賞。現代文学を側面から解き明かす手掛りと発見にみちた書として評価も高い。本巻では、結婚前後の経緯、西鶴現代語訳の苦心、同人誌「小説」のこと等を録し、多喜二の直哉訪問時期の真相を丹念に追求する。

(四)
常に偽らざる自己を語って、変遷めまぐるしい今世紀を生きてきた一私小説家の文学私史的自伝。野間文芸賞受賞。現代文学を側面から解き明かす手掛りと発見にみちた書として評価も高い。全四巻。本巻では、「暢気眼鏡」執筆前後から、暗い戦争の時代へ、そのさなか病にたおれ故郷に帰るまでのことが綿密に綴られる。

*解説頁・佐伯彰一(第四巻に収録)


尾崎 秀樹 (おざきほつき)
「伝記 吉川英治」 (でんきよしかわえいじ)


*カバー・吉川英治筆跡
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*318頁 / 発行 昭和49年

*カバー文
「宮本武蔵」「新・平家物語」「私本太平記」をはじめ、数々の国民文学を生み文化勲章に輝く文壇の巨星吉川英治の波瀾に富んだ生涯。苦難の時代に生きてなお尽きせぬ日本人の豊穣な夢とロマンを描き続けた人間吉川英治の詩と真実を、追悼の思いを込めて綴った評伝。

*目次
序 川口松太郎

序章 ある結婚披露宴
T 吉川家の系譜
U 開港地ヨコハマ
V 赤門前界隈
W 他人の中
X かんかん虫の唄
Y 雉子郎誕生
Z 青春の光と影
[ 大震災前後
\ 「キング」創刊の頃
] 旅を書斎に
]T 「宮本武蔵」成因
]U 戦火の中の地図
XIII 「新・平家物語」の世界
XIV 大衆とともに
おわりに
吉川英治略年譜


小塩 節 (おしおたかし)
「ドイツの都市と生活文化」 (どいつのとしとせいかつぶんか)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・さかもとふさ
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*322頁 / 発行 1993年

*カバー文
ドイツは森の国である。その森に守られて、各地にたくさんの都市がある。ドイツの都市は、それがどんなに小さくても個性があり、独特の顔がある。それでいてドイツの都市は、構造上も精神的にも、普遍的な共通性を有している。そしてそこに住む人びとは、独自のドイツ的生活文化を作りあげている。ドイツ的生活文化とは一体どんなものか。具体的な日日の生活の中でそれを探るのが本書の目的である。

*目次

T ドイツとドイツ人
U 日々の生活
V 都市・自然・生活文化
W 厚みのある生活文化を
あとがき


小田 実 (おだまこと)
「海冥 ― 太平洋戦争にかかわる十六の短編」
(かいめい)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*364頁 / 発行 2000年

*カバー文
戦犯として刑死した父の冤罪を晴らすため、現地P ― 島のジャングルの奥へ入ってゆく、その息子の新聞記者吉田。「玉砕」につぐ「玉砕」、ひとつの島全体が餓える ―― “餓島”。南海の果て、また戦後の横浜港の氷川丸を発端に、それぞれ独立した空間と時間を生きる海の戦争に関わる登場人物達の生と死の挿話が重なり、大きなうねりとなって、苛酷な戦争の真実を伝えてゆく。歴史に埋もれた死者を悼む16の短篇。

*目次
海冥 ― 太平洋戦争にかかわる十六の短編
 海のいくさ / 船 / 骨 / 肉 / 姦 / 風呂 / 男 / P ― 島にて / 指揮官 / 卒 / 雲、あるいは、愛 / ジャップ / ジョギング / 海を眺める墓地 / 太平洋の話 ― tales from the Pacific / 舟
  あとがきとしての鎮魂歌
 著者から読者へ
 解説 菅野昭正
 年譜
 著者目録 黒古一夫


小田 実 (おだまこと)
「ガ島」
 (がとう)


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*370頁
*発行 昭和54年
*カバー装画・粟田潔

*カバー文
安くてうまく、大繁昌のトンカツ屋の主人西川と妻の姉キヨ子は香港旅行の時、マカオで知り合った不動産屋中島に誘われて「ガ島」へ…。そこに展開する壮大な事業計画と、思いもかけぬ恐怖の体験。日本文学には稀な全体小説を志す作者が、戦場の島ガナルカナルを舞台に、骨太なユーモアで描く意欲の長編政治小説。

*解説頁・高橋三千綱


尾上 松緑 (おのえしょうろく)
「松緑芸話」
 (しょうろくげいばなし)


*カバーデザイン・菊地信義
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*408頁 / 発行 1992年

*カバー文
不世出の名優・尾上松緑の芸と人生のすべてを綴る。最愛の息子・辰之助の死を乗りこえて、六代目菊五郎、父と二人の兄、三度の出征体験、脇役たちとの交遊などなど、感概ぶかく語る。「義経千本桜」「勧進帳」をはじめ、数多くの名演や役作りについても、話が及ぶ。昭和を生きた歌舞伎役者の唯一の芸談。

*目次
ひとこと
父のこと ― 七世松本幸四郎
師匠のこと ― 六代目尾上菊五郎
兄たちのこと ― 上の兄 十一代目市川団十郎・中の兄 初代松本白鸚
私の戦争体験
脇役の人々
義経千本桜
菅原伝授手習鑑
仮名手本忠臣蔵
一谷嫩軍記
傾城反魂香
勧進帳
毛抜鳴神
土蜘 茨木 関の扉 隅田川
梅雨小袖昔八丈
新皿屋舗月雨暈
盲長屋梅加賀鳶
新作物


折口 信夫著・安藤 礼二編 (おりぐちしのぶ / あんどうれいじ)
「折口信夫対話集」
(おりぐちしのぶたいわしゅう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)


*400頁 / 発行 2013年

*カバー文
生涯に膨大な対談、鼎談を残した折口の対話を三章で構成した安藤礼二のオリジナル編集。北原白秋、室生犀星、西脇順三郎、谷崎潤一郎、川端康成、小林秀雄達と文芸を語り合った第一章。第二章は師・柳田国男と民俗学について。鈴木大拙等との宗教をめぐる第三章は、全集未収録で資料としても貴重な座談会である。

*目次
 T 文学をめぐって
緑ケ丘夜話 (×北原白秋)
古典について (×室生犀星)
一九四九年の春を語る (×西脇順三郎)
細雪をめぐって (×川端康成, 谷崎潤一郎)
日本詩歌の諸問題 (×神西清, 日夏耿之介, 三好達治)
古典をめぐりて (×小林秀雄)
燈下清談 (×小林秀雄)
 U 民俗学をめぐって
日本人の神と霊魂の観念そのほか (×柳田国男, 石田英一郎)
民俗学から民族学へ (×柳田国男, 石田英一郎)
 V 神道学をめぐって(全集未収録座談会)
思想維新 ―― まつりに就いて (×『鶴岡』同人)
神道と仏教 (×鈴木大拙, 横山秀雄, 『悠久』同人)
 解説 安藤礼二
 年譜 著者 / 安藤礼二
 著書目録 安藤礼二


折口 信夫著・安藤 礼二編 (おりぐちしのぶ・あんどうれいじ)
「折口信夫文芸論集」
(おりぐちしのぶぶんげいろんしゅう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*288頁 / 発行 2010年

*カバー文
釈迢空の別名を持ち、学者にして詩人、詩人にして学者という生涯を送った折口信夫は、古代から近代にいたる日本文化を貫く本質をとらえ、詩歌、小説、文学研究、民俗学研究と他の追随を許さない多岐にわたる業績を残した。源氏物語、隠者の文学、短歌の滅亡、近代文学など折口が関心を寄せた日本文学の諸相を多彩な切り口で整理し、批評家としての全体像に迫る画期的評論集。

*目次
はじめに 安藤礼二 / T 釈迢空の起源 零時日記 / 異郷意識の進展 / U 源氏物語論 日本の創意 ── 源氏物語を知らぬ人々に寄す / 反省の文学源氏物語 / V 隠者の文学 ── 芭蕉と西鶴 / 無頼の徒の芸術 / 恋の座 / 西鶴俳諧の所産 / W 短歌・俳句・近代詩 茂吉への返事 / 女流の歌を閉塞したもの / 詩語としての日本語 / 俳句と近代詩 / X 近代文学論 ── 逍遥からホームズまで / 逍遥から見た鴎外 / 鏡花との一夕 / 先生の学問 / 『細雪』の女 / 山の音を聴きながら ── 川端康成氏の近業 / 『かげろふの日記』解説 / 人間悪の創造 / Y 折口信夫の終焉 ── 贖罪 / すさのを / 天つ恋 ── すさのを断章 / 夢の剽盗 / 年譜 / 著書目録