絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【し】

塩田 潮 (しおたうしお)
「東京は燃えたか ― 黄金の’60年代」 
(とうきょうはもえたか)


*カバーデザイン・荒川じんべい
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*253頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
安保後、日本は「所得倍増」のかけ声のもと高度経済成長の道を驀進しはじめることになった。「黄金の’60年代」は、いかなるエネルギーをどう結集して達成されたのか。その時代の象徴でもある東京オリンピックや新幹線の開業はどんな役割を演じたのだろうか。日本の「オンリー・イエスタディ」を活写する。

*目次
序章 黄金の60年代
 「黄金時代」前夜 / 開幕 / 戦後史のなかの東京オリンピック
第一章 東京への三千日
 紀元二千六百年のオリンピック / ムッソリーニとヒトラー / 「東京、遂に勝てり」 / 開催返上
第二章 オリンピック、再び
 国破れて夢あり / 「いったいいくら金がかかるかね」 / 一万日の聖戦
第三章 「所得倍増」の誕生
 「黄金時代がやってくる」 / 死の淵から蘇った男 / 積極財政派への道 / 二人のブレーン
第四章 高度成長の演出者たち
 戦後最大のコピー / 二つの数字をめぐる攻防 / 投資が投資を呼ぶ / 池田政治の光と影
第五章 二人の都知事
 「復興した東京をPRしたい」 / 保守都政の帽子 / 「オリンピック知事」の誕生
第六章 東京大改造
 東京を蘇生させたい / 道と水 / 「陰の知事」の陰の任務
第七章 一兆円オリンピック
 「私生児」新幹線 / 開催準備 / 官製オリンピック
終章 「世記の祭典」の遺産
 さまざまな思惑 / 神の見えざる手 / 「高度成長」の夢の跡
 文庫版あとがき / 解説 伊藤昌哉 / 主な参考文献


島尾 敏雄 (しまおとしお)
「夢屑」
(ゆめくず)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*240頁 / 発行 2010年

*カバー文
『死の棘』の最後の章ののち発表された8つの短篇。島尾敏雄が、執拗に描き続けてきた“夢”。何故、彼は、これほどまで“夢”にこだわったのか……。夢の中に現実の関係を投影し、人の心の微妙な揺らめきにしなやかな文学的感受性を示した、野間文芸賞受賞作家の名作短篇集。

*目次
夢屑
過程

幼女
マホを辿って
水郷へ
石造りの街で
亡命人
 解説 富岡幸一郎 / 年譜 柿谷浩一 / 著書目録 青山毅


島木 赤彦 (しまぎあかひこ)
「万葉集の鑑賞及び其の批評」
 (まんようしゅうのかんしょうおよびそのひひょう)
講談社学術文庫


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*203頁
*発行 昭和53年
*カバーデザイン・杉本眞知子

*カバー文
斎藤茂吉と並称せられたアララギ派の巨匠赤彦が、永年にわたって研究した万葉集の真価を表現しようとして、薀蓄を傾けた究極の歌論書。人麿・赤人・旅人・憶良・家持らの歌とともに東歌に及ぶ二六五首について、歌人の立場から「万葉集の歌の命とする所は如何なる所にあるか」を問いかけつつ、自己の真実に徹する態度によってのみ写生の極致に達すると、子規以来の写生論を大成した本書は、茂吉の『万葉秀歌』と常に比較される名著。

*解説頁・北住敏夫


島田 雅彦 (しまだまさひこ)
「天国が降ってくる」
(てんごくがふってくる)
講談社文芸文庫



*デザイン・菊地信義
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*361頁 / 発行 2000年

*カバー文
主人公葦原真理男は九州の没落した旧家の末裔。新聞社に勤める父親の転勤によりロシアに暮すが、高校受験のために単身で帰国。父の友人の若い大学助教授中之島妙子の家に寄寓し、異国からの転校生として特異な日常が始まる。高速回転する真理男の精神はやがて晩年の感覚を所有し、自己昇華をめざす。パロディを駆使し、自意識を追究した島田文学の初期集大成。

*目次
天国が降ってくる
 【参考資料】
  メビウスの環を切る …… 島田雅彦
  夏の日の読書のために … 高橋悠治
 解説 ………………………… 鎌田哲也
 年譜 ………………………… 中村三春
 著書目録 …………………… 中村三春


清水 幾太郎 (しみずいくたろう)
「戦後を疑う」 
(せんごをうたがう)


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*283頁
*発行 1985年
*カバーデザイン・井上正篤

*カバー文
「戦後三十五年というのは、一つの異常な時期であり、徹底的に疑ってかからねばならぬ対象である。疑うことを忘れていると、明日の日本が存在しなくなるかもしれぬ」と考える著者が、戦後思想の根幹をなす「天皇制」「資本主義と社会主義・共産主義」「戦後教育」などの問題を鋭く検証した、話題の書。


芝木 好子 (しばきよしこ)
「築地川・葛飾の女」
(つきじがわ・かつしかのおんな)


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*316頁・年譜付
*発行 昭和52年
*カバー装画・岡本半三

*カバー文
旧家の誇りに生きる祖母から愛薄く育てられた萬里子は、兄には恋人のようにいたわられる。短大美術部卒後、本家の袋物店で図案書きをする彼女は、やがて若主人に見染められる。……築地川のほとりを舞台に、旧家の一家離散の運命を描く「 築地川」、日本画家に師事する中に、師への思慕を断ち切れず、入水自殺をする悲劇的作品「葛飾の女」の2編を収録。

*解説頁・松原新一


芝木 好子 (しばきよしこ)
「春の散歩」
(はるのさんぽ)


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*254頁
*発行 1990年
*カバー装画・小倉遊亀

*カバー文
女は仕事がすべてではない。きょう一日を生きた、という手応えを、愛においても、仕事においても、生活においても欲しいのである ── 。心に残る人と旅の思い出、美とのふれ合い、趣味の楽しみ。著者が生れ育った下町の暮しと、移りゆく世相への哀惜をこめて綴る六十三編。芝木文学の素顔を伝える名随筆集。

*目次
四季の眺め / 美とのふれあい / 旅に想う / 人の印象 / あとがき / 初出一覧


柴田 武 (しばたたけし)
「生きている日本語 ― 方言探索」 (いきているにほんご)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・榎戸文彦
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*318頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
われわれは母を選ぶことはできなかった。それと同じように、言語を選ぶこともできなかった。われわれ日本語の環境の中へ生まれ落ち、その方言を身につけ、その方言で考える人間として成長した。われわれの身体の中に母親があるように、われわれのことばの中には生まれた土地の方言がある。文字に書けば標準語でも、話せばそれぞれの地方の特徴が出る(東京方言も含めて)。「血は争えない」ように、「地も争えない」のである。

*目次
学術文庫版へのまえがき
はしがき
T 方言は消えない
   方言は消えない
   方言と思っていない方言
U 東京にも東京方言
   東京方言
   東京なまり
V 生きている方言
   1 自然・動植物
   2 身体
   3 食物
   4 生活・生業・遊び
   5 人間関係
   6 時間・空間(日時・方向・地名・人名・家号)
   7 言語(1) 音・文法
   8 言語(2) 意味・語
 初出文献
 あとがき
 索引


子母沢 寛 (しもざわかん)
「駿河遊侠伝」(上中下)
 (するがゆうきょうでん)

  
*カバー装画・三井永一 (画像はクリックで拡大します)

*(上)517頁・(中)515頁・(下)523頁 / 発行 昭和48年

*カバー文
(上)
十四、五の年から博奕を打ち、家出、放浪のあげく、いかさま骰子(さい)を使う暴れん坊清水の次郎長こと、駿河清水港米屋次郎八の養子長五郎 ― もって生れた度胸と筋の通った義理と人情で、やくざ仲間で頭角をあらわし、海道筋の親分と慕われてゆく。俗にいう次郎長親分の人物像を描く。

(中)
駿河一円に名をあげた親分、清水の次郎長も、金毘羅代参の石松の非業な死、義理にからんだ争いから、甲州の暴れん坊黒駒の勝蔵との対決、と因果な渡世は続くが、時勢はご維新に移り、遊侠の世界も変ってゆく。幕末下の任侠道に生きぬく次郎長一家の浮沈を実録風に描く傑作。

(下)
世は維新政府となり、やくざ渡世も変貌する。清水次郎長は道中探索方となり、山岡鉄太郎、勝海舟に協力、清水港の開港をはじめ、晩年は開墾に従事、熱病にたおれるまでの次郎長一代記のほか、富士山を挾んで甲州黒駒の勝蔵との宿縁を描く「富嶽二景」を収録した長編傑作。

*解説頁(下巻に収録)・尾崎秀樹


シャルル・ヴェグネル著 大塚幸男訳・祖田修監修
(CHARLES WAGNER・おおつかゆきお・そだおさむ)
「簡素な生活 一つの幸福論」
(LA VIE SIMPLE かんそなせいかつ)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
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*264頁 / 発行 2001年

*カバー文
現代文明は人類に物的な豊かさをもたらした。だが反面、私たちは果てしなく欲望をふくらませ、人間として大切な多くのものを失ってきたのではないだろうか ―― 。ヴァグネルは精神や思想、言葉、家庭、教育など日常的なテーマをとり上げて簡素の本質を論じ、人間の永遠の幸福の基礎は心の簡素、生活の簡素にあると説く。百年前の書でありながら、今もなお新しい。

*目次
監修者まえがき
初版のはしがき
第一章 複雑な生活
第二章 簡素な精神
第三章 簡素な思想
第四章 簡素な言葉
第五章 簡素な義務
第六章 簡素な欲求
第七章 簡素な楽しみ
第八章 営利精神と簡素と
第九章 売名と世に知られぬ宝と
第十章 世俗趣味と家庭生活と
第十一章 簡素な美
第十二章 交際関係における傲慢と簡素と
第十三章 簡素のための教育
第十四章 むすび
解説 祖田修


十返舎 一九著 興津 要校注 (じゅっぺんしゃいっく・おきつかなめ)
「東海道中膝栗毛(上下)」
 (とうかいどうちゅうひざくりげ)


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*上巻429頁・下巻495頁
*発行 昭和53年
*カバー装幀・村山豊夫

*カバー文
江戸者弥次郎兵衛、喜多八の少し品は悪いが気の良い憎めない小悪人が展開する東海道の道中記。主人公の演じる失敗談におりおりの狂歌、各地の風俗、奇聞を織り込んで抱腹絶倒の旅はつづく。この滑稽本の名作を読み易くするため工夫配慮し、図版等も出来うる限り多数とりいれ、忠実に翻刻した。


松竹編 (しょうちく)
「小津安二郎 新発見」
(おずやすじろうしんはっけん)
講談社プラスアルファ文庫


*デザイン・鈴木成一デザイン室
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*316頁 / 発行 2002年

*カバー文
「映画には、文法がないのだと思う。これでなければならないという型はない。優れた映画が出てくれば、それが独特の文法を作ることになるのだから、映画は思いのままに撮ればいいのだ」 ── 世界の名作映画にも選ばれた『東京物語』や『早春』『秋刀魚の味』など日本人の心を描きつづけた映画監督小津安二郎の仕事とプライベートを完全網羅!
撮影所に眠っていた貴重な写真を多数含む本書の収録写真点数は役400!!

*目次
序章 小津安二郎の肖像と語録 / 第一章 小津映画の名優たち / 第二章 小津映画の撮影現場 / 第三章 小津安二郎交遊録 / 第四章 小津安二郎の生涯 / 第五章 小津美学の秘密 / 第六章 小津映画と私 / 第七章 小津映画全作品 / 第八章 小津安二郎 年譜(作成・本地陽彦) / 小津家家族図 / 写真協力・参考文献


庄野 潤三 (しょうのじゅんぞう)
「絵合せ」
 (えあわせ)


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*293頁 / 発行 昭和52年
*カバー装画・木下義謙

*カバー文
結婚を間近にひかえた長女と彼女を暖かく取りかこむ家族たち。五人それぞれの想いをさりげなくつつんで流れる日常の時間を澄んだ眼でとらえた野間文学賞受賞の名作「絵合せ」。他に「丘の明り」「小えびの群れ」等、同じ家族がつむぎ出す風景をいつくしみつつ細緻に描く佳作9編を収める人間讃歌の庄野文学の精髄。

*目次
星空と三人の兄弟 / 卵 / 丘の明り / 尺取虫 / 戸外の祈り / 野菜の包み / さまよい歩く二人 / 小えびの群れ / カーソルと獅子座の流星群 / 絵合せ / あとがき / 解説 饗庭孝男 / 年譜


庄野 潤三 (しょうのじゅんぞう)
「自分の羽根 庄野潤三随筆集」
(じぶんのはね)
講談社文芸文庫



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*392頁
*発行 2006年

*カバー文
小学生の娘と羽根つきをした微笑ましいエピソードに続けて、「私の羽根でないものは、打たない」、私の感情に切実にふれることだけを書いていく、と瑞々しい文学への初心を明かす表題作を始め暮らしと文学をテーマに綴られた九十篇。
多摩丘陵の“山の上”に移り住んだ四十歳を挟んだ数年、充実期の作家が深い洞察力と温雅なユーモアをもって醸す人生の喜び。名作『夕べの雲』と表裏をなす第一随筆集。

*解説頁・高橋英夫 / 年譜、著書目録・助川徳是



庄野 潤三 (しょうのじゅんぞう)
「夕べの雲」 
(ゆうべのくも)


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*発行 昭和46年
*カバー装画・畦地梅太郎

*カバー文
むすみ合いつつ平和な日々を送る夫と妻と三人の子供たち……その波瀾のない生活のかげにひそむ、驚き、歓び、惑い――愛と詩情にみちた家庭の映像を鮮明にとらえて、幼い日への郷愁をよび、爽やかな笑いを誘う――人間への信頼と共感の秀作長編。読売文学賞受賞。

*巻末頁
庄野潤三の文学 小沼丹
 人と文学について / 「夕べの雲」について
年譜(古林尚編 / 昭和51・12)


庄野 英二 (しょうのえいじ)
「にぎやかな家」
(にぎやかないえ)


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*167頁 / 発行 昭和52年
*カバー装画・中谷千代子

*カバー文
かつて家庭は小さいながらも、それぞれがひとつのノアのはこぶねであった。夫婦と子供たち、庭にはさまざまな木々や花々、小さな動物たち、時には思いがけない来客もある。……ちょっと変な造りのこの〈にぎやかな家〉がかもしだす芳醇な世界は、極上のワインの味であり、失われゆくものへのひそやかな挽歌でもある。

*目次
はじめに / 畑 / 設計 / 歩調と目測 / 風見 / ブリッジ / ハッチ / かき / マスト / 門 / にわとり / ぶどう / ごちゃごちゃの間 / ざしき / はと / ばら / オリーブ / ライラック / つた / はまゆうとたんぽぽ / うばめがしとげっけいじゅ / おうむ / おしゃべりおうむ / 二わのおうむ / なんきんはぜ / あとがき / 「にぎやかな家」を読んで 小沼丹 / 年譜


庄野 英二 (しょうのえいじ)
「ロッテルダムの灯」 
(ろってるだむのひ)


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*187頁
*発行 昭和49年
*カバー装画・中谷千代子

*カバー文
最も哀歓多かるべき若き日を、戦争のさなかに過した著者が、異国に見た生命あるものの美しさ、尊さ、そしてはかなさを、淡い抒情のうちに鮮かにうたいあげる青春の書。「星の牧場」の作者自らが何よりも愛着深い作品と述懐するエッセイストクラブ賞受賞の名作。

*解説頁・河盛好蔵


白洲 正子 (しらすまさこ)
「謡曲平家物語」
(ようきょくへいけものがたり)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*330頁 / 発行 1998年

*カバー文
幼い頃自ら能の舞台にも立った経験を持つ著者が、平家物語と謡曲との違い、読むもの、聞くものから見るものへの展開、その魅力の深まりを跡づける。幽霊能の世界を極めた『花伝書』の世阿弥に共感しつつ、能が醸す夢うつつの至福の境へと読者を誘う。平家物語と能への導きとなる二十七章。

*目次
まえがき 平家物語と謡曲
野べの草 ―― 妓王・妓女
仏の原 ―― 仏御前
鬼界ヶ島の流人 ―― 俊寛僧都
あづまの花 ―― 熊野
鵺(ぬえ) ―― 源三位頼政
嵯峨野の月 ―― 小督の局
倶利伽羅落し ―― 木曽義仲
粟津ヶ原の露 ―― 今井兼平・巴御前
帰郷 ―― 斎藤別当実盛
恋の音取 ―― 左中将清経
箙(えびら)の梅 ―― 梶原源太景季
旅宿の花 ―― 薩摩守忠度
青山の琵琶 ―― 但馬守経正
青葉の笛 ―― 無官大夫敦盛
王朝の美女 ―― 小宰相の局
須磨の埋れ木 ―― 武蔵守友章
千手の前 ―― 三位中将重衡
藤戸の渡り ―― 佐々木三郎盛綱
八島の合戦 ―― 九郎判官義経
正尊の起請文 ―― 土佐坊昌俊
船弁慶 ―― 新中納言知盛
碇かづき ―― 新中納言知盛
日向の勾当 ―― 悪七兵衛景清
観音の利生 ―― 主馬八郎左衛門盛久
平家最後の人 ―― 六代御前
みちのくの悲話 ―― 佐藤嗣信・忠信
大原御幸 ―― 建礼門院
 解説 水原紫苑
 年譜 森孝一
 著者目録・参考文献 森孝一