絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【す】

杉田 久女 (すぎたひさじょ)
「杉田久女随筆集」
(すぎたひさじょずいひつしゅう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*272頁 / 発行 2003年

*カバー文
  足袋つぐやノラともならず教師妻
  花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ
大正期、俳誌「ホトトギス」に身近な台所雑詠を投句、目覚めつつある女性の心の叫びを鮮烈に詠み、天才と謳われながら、師・虚子に破門されるや一転、孤立のなか窮死。強烈な自我と時代の軋轢に苦しみながらひたむきに生きた杉田久女の人生を、俳句、随筆、俳論の三部で構成。

*目次
俳句
随筆 ── 生い立ち
随筆 ── 身辺雑記
俳論・俳話
 解説 宇多喜代子
 年譜 石昌子
 著書目録 石昌子


杉村 春子 (すぎむらはるこ)
「歩みのあと ― 舞台・人形・そして忘れ得ぬ人」
 (あゆみのあと)


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*93頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
誰が選んでくれたのかでもない。自分で選んで歩き出した道ですもの ― と「女の一生」布引けいのせりふそのままに歩く女優の道。多くの人との心深かい出会い、そして離別。幕の閉じる間もなく人生の坂道で、いつも無言の微笑をくれた人形たち。信念に満ちた一人の女優の、烈しさの奥にゆらめく情感にふれる半生記。

*目次
図版
私が集めた人形たち
思い出の舞台

歩みのあと
私と人形との出会い
私を育ててくれた人
 母 / 田村秋子さん / 森本薫さん / 三島由紀夫さん / 私を支えてくれた人 / 二人の夫との想い出
いま私を取り巻く人形たち

写真撮影 人形 / 清岡純子
       舞台 / 春内純一


杉本 苑子 (すぎもとそのこ)
「『更級日記』を旅しよう ― 古典を歩く5」 (さらしなにっきをたびしよう)


*カバー写真・竹内敏信
 カバーデザイン・菊地信義
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*222頁 / 発行 1998年

*カバー文
都から遠い上総の国で育った少女は、父親の帰任で京へ戻ると、かねて憧れの「物語」に読みひたる。「源氏物語」の夕顔や浮舟のようになれたら、と密かな望みを持ったが、現実には地味で平凡な結婚生活と、夫の死が待っていた……。ゆかりの土地に、王朝の女心を訪ねる好読物。古典シリーズ『更級日記』改題。

*目次
はじめに
道をたどる
 父菅原孝標(たかすえ)のこと / 上総の国を出立 / 武蔵の国竹芝へ / 相模の国と足柄山越え / 駿河の国から遠江へ / 三河より尾張、美濃 / 近江から京へ

心をたどる
 孝標女の周辺 / 源氏物語へのあこがれ / 父の帰京と兄のこと / 結婚 / 参籠(さんろう) / 夫の任官と突然の死 / 終りに

 解説・物語への憧憬 三角洋一

写真・江頭徹、但馬一憲/地図・磐広人

*「古典を歩く」全12巻
@「万葉集」を旅しよう … 大庭みな子
A「伊勢物語」「土佐日記」を旅しよう … 津島佑子
B「枕草子」を旅しよう … 田中澄江
C「源氏物語」を旅しよう … 瀬戸内寂聴
D「更級日記」を旅しよう … 杉本苑子
E「今昔物語」を旅しよう … 安西篤子
F「平家物語」を旅しよう … 永井路子
G「百人一首」を旅しよう … 竹西寛子
H「とはずがたり」を旅しよう … 富岡多恵子
I「好色五人女」「堀川波鼓」を旅しよう … 岩橋邦枝
J「おくのほそ道」を旅しよう … 田辺聖子
K「東海道中膝栗毛」を旅しよう … 田辺聖子


杉本 苑子 (すぎもとそのこ)
「滝沢馬琴」(上下)
 (たきざわばきん)




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*上315頁・下332頁
*発行 1989年
*カバー装画・横山大観

*カバー文

一生の夢は学者になること。黄表紙の戯作者から読本(よみほん)の人気作家となったが、馬琴は不幸だった。家計の逼迫、ぐちっぽい老妻、病身の息子、蕪雑な嫁、猾介な性格ゆえの同業者との軋轢、右眼の失明、苦しみ抜く「八犬伝」の執筆……。江戸市井の哀歓と四季の風情の中に、一人の男の強い意志を描く長編。(全二冊)


八犬伝の大団円をめざす辛苦の日々にも、世の荒波は押し寄せる。続く窮乏、身内の死、親友渡辺崋山を裏切った自責の念、そして遂に完全な失明。焦燥する馬琴に、嫁のお路が代書をかって出、二人の血の滲む執筆が再開された……。ひたすらに書いた馬琴の失意と栄光が、深い感動を呼ぶ傑作伝記文学。(全二冊)

*解説頁・神谷次郎
*第12回(1978年) 吉川英治文学賞受賞


杉本 秀太郎 (すぎもとひでたろう)
「伊東静雄」
(いとうしずお)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*352頁 / 発行 2009年

*カバー文
萩原朔太郎が「日本に尚一人の詩人がある」と激賞した伊東静雄の第一詩集『わがひとに与ふる哀歌』。その誌群に魅了された著者が伝記的通説を排除し、註釈に徹した画期的詩人論。『哀歌』全篇に用心深く隠された連繋を「私」と「半身」というふたりの擬作者に割り振り、『古今和歌集』、ヘルダーリンの詩、セガンティーニの絵に範例を求めつつ詩人の「意識の暗黒部との必死な格闘」を読み解く。

*目次
序 / 晴れた日に / 曠野の歌 / 私は強いられる ―― / 氷れる谷間 / 新世界のキィノー / 田舎道にて / 真昼の休息 / 帰郷者 / 同 反歌 / 冷めたい場所で / 海水浴 / わがひとに与ふる哀歌 / 静かなクセニエ / 咏唱 / 四月の風 / 即興 / 秧鶏は飛ばずに全路を歩いて来る / 咏唱 / 有明海の思ひ出 / (読人不知) / かの微笑のひとを呼ばむ / 病院の患者の歌 / 行つて お前のその優秀の深さのほどに / 河辺の歌 / 漂泊 / (読人不知) / 寧ろ彼らが私のけふの日々を歌ふ / 鶯 / (読人不知) / 伊東静雄年譜 / テクストおよび参考文献 / 詩集『わがひとに与ふる哀歌』各篇の想定擬作者および発表誌一覧 / あとがき / 著者から読者へ / 解説 原章二 / 年譜 / 著書目録


鈴木 隆雄 (すずきたかお)
「骨から見た日本人 古病理学が語る歴史」
(ほねからみたにほんじん)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*296頁 / 発行 2010年

*カバー文
骨は情報の宝庫である。古病理学は古人骨を研究対象とし、現代の医学で診断し、その個体の病気の経過と症状を明らかにする。骨にあらわれたヒト化の道のり、縄文人の戦闘傷痕と障害者介護、弥生時代以降の結核流行、江戸時代に猖獗をきわめた梅毒と殿様のガン……。発掘された人骨を丹念に調べあげ、過去の社会構造と各時代の与件とを明らかにする。

*目次
プロローグ 古病理学からみえる世界
第一章 化石にあらわれた病気 ── 人類進化の世界
 1 最初に花を愛でし人びと ── ネアンデルタール人の病気
 2 ピテカントロプスの生命力
 3 ヒト化への道のり──最古の人類・ルーシーの骨は語る
第二章 強く生きる ── よみがえる縄文の世界1
 1 過酷な狩猟採集活動
 2 戦いはいつはじまったか ── 「牧歌的社会」をくつがえす
第三章 福祉と介護 ── よみがえる縄文の世界2
 1 障害と向き合う ── 縄文人の介護社会
 2 ガン患者第一号 ── 人骨にあらわれた日本最古のガン症例
 3 ストレスは語る ── 古代の人びとを検診する
第四章 日本人誕生 ── 結核は何をもたらしたか
 1 骨に残された結核
 2 結核が在来人を襲う
第五章 刀と病と極楽と ── 鎌倉の世界
第六章 江戸を生きる ── 命長ければ病多し
 1 江戸の徒花・梅毒
 2 命長ければ病多し
エピローグ 現代人の骨の老化と死への想い
あとがき
学術文庫版あとがき
参考文献
付録 骨からの情報を読む


鈴木 孝夫 (すずきたかお)
「日本語は国際語になりうるか ― 対外言語戦略論」
 (にほんごはこくさいごになりうるか)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
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*242頁 / 発行 1995年

*カバー文
武器を捨て、経済的には超大国となった日本が、この利害の錯綜する国際社会の中で自分を主張し、自分を守るためには、言語と情報の力に頼るほかに方法のないことを悟るべきである……。言語現象を人間の思想と文化に密着したものとみなす言語社会学の視角から、日本語の特性を文明史的に考察し、国際語としての日本語の可能性を探る。外国語学習法の根本的な転換をも示唆する必読の文庫オリジナル。

*目次
まえがき
1 日本の対外言語戦略を考える
2 日本語は日本人だけのものか
3 文明史的観点から見た日本語の国際化
4 日本漢字の特性について
5 転換期の日本人とことば
6 国際化とは何か
7 日本語は国際語になりうるか


鈴木 秀夫 (すずきひでお)
「風土の構造」 (ふうどのこうぞう)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・志賀紀子
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*245頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
人間は、人間が考えている以上に環境の産物である。そのなかでも最も大きな意味をもっているのは気候である。気候条件のちがいを全地球的(グローバル)にとらえ、人間への影響を考察してゆくと、文化の様態がいかに多く気候によって形づくられているかがわかる。たとえば、離婚と気候の関係が推定される。日本で雪の多い地方は離婚が多かったのである。著者は、気候学が発見した新しい事実から、人間文化の形成に関して、ユニークな推論を展開した。

*目次
はじめに
序論
T 世界の風系
 一 - 一 赤道西風帯
  一 - 一 - 一 モンスーンの新しい理解
  一 - 一 - 二 アフリカの干ばつの原因
  一 - 一 - 三 インドモンスーンの特色
  一 - 一 - 四 湿舌
  一 - 一 - 五 アマゾンの雨
 一 - 二 亜熱帯高圧細胞
  一 - 二 - 一 貿易風
  一 - 二 - 二 貿易風逆転と大陸西岸の乾燥
  一 - 二 - 三 サンフランシスコの霧
  一 - 二 - 四 東岸の暴風
  一 - 二 - 五 エルニーニョ
 一 - 三 中緯度偏西風帯
  一 - 三 - 一 地中海性気候の成因
  一 - 三 - 二 世界の大砂漠地帯の成因
  一 - 三 - 三 梅雨
  一 - 三 - 四 インディアンサマー
  一 - 三 - 五 西欧の憂鬱
  一 - 三 - 六 ジェットストリームの蛇行
 一 - 四 極高圧部
  一 - 四 - 一 南極の氷とヒマラヤの関係
 一 - 五 世界の気候区分
  一 - 五 - 一 ケッペン式気候区分の批判
  一 - 五 - 二 アリソフの気候区分
  一 - 五 - 三 アリソフ区分の不備
  一 - 五 - 四 ニューヨークの大雪とブラジルのコーヒーの霜害
  一 - 五 - 五 アリソフ後の試み
U 世界の気候と人間
 二 - 一 物に及ぼす気候の影響
  二 - 一 - 一 物体の腐蝕と地域差
  二 - 一 - 二 イナゴの移動と前線帯
 二 - 二 人間への影響
  二 - 二 - 一 人間の身体について
  二 - 二 - 二 気候と文明
  二 - 二 - 三 ハンチングトンとイタイイタイ病
  二 - 二 - 四 中緯度中心思考
  二 - 二 - 五 砂漠とイスラム
  二 - 二 - 六 宗教と食べ物
V 日本の気候区分
 三 - 一 動く気候の図的表現
  三 - 一 - 一 資料の問題
  三 - 一 - 二 日降水量の分布例
  三 - 一 - 三 とくに冬型降水について
  三 - 一 - 四 利尻山の蔭
  三 - 一 - 五 札幌と千歳の差
  三 - 一 - 六 日高西麓の降水域
  三 - 一 - 七 東北の天気界
  三 - 一 - 八 上越の天気界
  三 - 一 - 九 山雪と里雪
  三 - 一 - 一〇 富士山とスキー 
  三 - 一 - 一一 関ヶ原の吹き出しと東京都の大気汚染
  三 - 一 - 一二 南国の雪
  三 - 一 - 一三 朝鮮半島の蔭
  三 - 一 - 一四 降水量分布と大気現象
 三 - 二 気候区の大きさ
  三 - 二 - 一 天気界・天候界・気候界
  三 - 二 - 二 日本の気候の中区分
  三 - 二 - 三 日本の気候の大区分
  三 - 二 - 四 日本の気候の小区分
  三 - 二 - 五 細区分について
W 日本の気候と他の分布現象
 四 - 一 動植物の分布と気候
  四 - 一 - 一 ユズリハの分布
  四 - 一 - 二 土壌の分布
  四 - 一 - 三 テントウムシの分布
  四 - 一 - 四 イエネズミの分布
 四 - 二 人間生活と気候
  四 - 二 - 一 シモヤケの方言分布
  四 - 二 - 二 離婚率の分布
  四 - 二 - 三 隠居・本家・分家
  四 - 二 - 四 たたみの数と部屋割
  四 - 二 - 五 気候と離婚の関係
 四 - 三 局地的ないくつかの問題
  四 - 三 - 一 旧暦の特異日
  四 - 三 - 二 大気汚染の局地性
  四 - 三 - 三 まつぼり風などの局地風について
おわりに ― 風土の学としての気候学
引用文献
講談社学術文庫版へのあとがき


須知 徳平 (すちとくへい)
「春来る鬼」
 (はるくるおに)


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*219頁
*発行 昭和53年
*カバー装画・吉田清志

*カバー文
三陸の岬の浜に流れついた駆け落ちの若い男女がお石とり・喪屋ごもりのためしを受けて村の一員となった頃、その村にジャビという悪疫がはびこる。それは南の海を渡ってくる鬼のたたりという ― 隔絶され、因習に生きる漁村の生への闘いを民俗学の素養を生かして描く「春来る鬼」(第1回吉川英治賞)ほか、「三陸津波」「南部牛方節」「山の伝説」を収録。

*解説頁・進藤純孝