絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【た】

高井 有一 (たかいゆういち)
「時の潮」
(ときのうしお)
講談社文芸文庫


(画像はクリックで拡大します)

*400頁
*発行 2007年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
天皇崩御のニュースをきいて近くの御用邸に記帳に出かけた。昭和に生まれた私は、私の時代が終わってしまったような気がした。元新聞記者の私は、十歳年下の共同生活者、真子と葉山に暮らし、四季を楽しんでいる。しかし、さまざまに形をかえて潮だまりが出現するように、二人の間にわだかまりがないわけではない。戦時下に生まれ、戦後を生きる男と女を静かに描く野間文芸賞受賞作。

*巻末頁
著者から読者へ / 解説 松田哲夫 / 年譜 武藤康史 / 著書目録 武藤康史


高田 好胤編著 / 野上 透写真 (たかだこういん/のがみとおる)
「薬師寺への誘い」
 (やくしじへのさそい)


(画像はクリックで拡大します)

*150頁
*発行 昭和52年
*カバーデザイン・松永真

*カバー文
大和路の静謐な空気は美とロマンのかぐわしい香気を立ちのぼらせ、時代を超えて人びとを誘う。物で栄えて心で滅びる今日、なかでも、奈良・西ノ原薬師寺は、安息を渇望する現代人の心のふるさとともなっている。本書は名僧好胤師が精神のルネッサンスを叫んで世に問う、名刹の歳月のあとさきそして生きがいを語る著。


高橋 源一郎 (たかはしげんいちろう)
「さようなら、ギャングたち」



(画像はクリックで拡大します)

*313頁
*発行 1985年

*カバー装画・日比野克彦

*カバー文
 人々は昔、親によってつけられた名前をもっていた。それから人々は、自分で自分の名前をつけるようになった。だが、恋人たちは違ったやり方で……。
 繊細で感覚と深い思索で選ばれた言葉、快いリズムと技巧を凝らした表現。遊びの精神と独創的魅力溢れる新らしい文学の誕生。群像新人賞長篇小説賞優秀作。


高橋 たか子 (たかはしたかこ)
「彼方の水音」 (かなたのみずおと)


*カバー装画・齋藤和雄
(画像はクリックで拡大します)

*265頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
真昼のしらじらとした明るさの中にこそ闇を見つめる孤高な眼。平穏な日常の中にこそ死の気配を嗅ぎとる存在の痛み。狂暴な破壊への意思を内に秘め生きる女の虚無。……鋭利な感覚で人間存在の毒と、清冽な〈彼方〉への憧れを描き、特異な文学空間を創り上げた著者の処女作品集。「相似形」「囚われ」「渺茫」等5編。

*目次
相似形
囚われ
渺茫
子供さま
彼方の水音
 聖なる訓練 平岡篤頼
 年譜


高橋 正夫 (たかはしまさお)
「本居宣長 ― 済世の医心」 (もとおりのりなが)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・多田進
(画像はクリックで拡大します)

*239頁 / 発行 1986年

*カバー文
戦前・戦後を通じて、国学者本居宣長への評価は多様を極めた。そして、宣長が同時に優れた小児科の開業医でもあった事実はよく知られているが、国学者宣長と医者宣長との内面的な相補関係については、これまであまり重視されてこなかった。本書はその宣長自身の存在構造の複合性の意味、とくに医者春庵と思想家宣長の統合の問題について考察した。宣長論をわが国精神史における最も象徴的な医・文両全者の視座から試みた劃期的評伝。

*目次
序に代えて
第一章 本居宣長の医学と国学
 一 医学史上の位置 / 二 小児科医・春庵と国学者・宣長 / 三 医学と文学の交響 / 四 先見性と今日的意義
第二章 春庵考
 一 開業宣言 / 二 医師(くすし)志向 / 三 「春庵・宣長」の誕生 / 四 宣長と景山 / 五 花実相具
第三章 女童心
 一 小児科医の心 / 二 婦女子の心 / 三 大丈夫の心 / 四 まことの人倫
第四章 生命観
 一 二つの斎(いつき) / 二 生活者の統合 / 三 惟神(かむながら)と念仏 / 四 遺言
第五章 医論
 一 転形期の医学 / 二 養気の説 / 三 伝統医学の発展 / 四 医と窮極にあるもの
 あとがき
 春庵・本居宣長略年譜
 索引


高橋 貢 (たかはしみつぐ)
「古本説話集(上)」
(こほんせつわしゅう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*293頁 / 発行 2001年

*カバー文
鎌倉時代初期成立と見られる撰者未詳の無名説話集が昭和十八年に発見され、斯界の耳目を驚かせた。そして、原本が散佚した『宇治大納言物語』の流れを汲むこの作品は、日本古典文学の貴重な財宝となった。貫之・躬恒・和泉式部・赤染衛門など、王朝歌人たちの逸話を多く集め、宮廷文化の典雅な世界が展開する。上巻は、和歌説話集で、世俗説話四十六話を収録。

*目次
まえがき / 解説 / 主要参考文献 / 凡例
大斎院事〈大斎院の事〉 第一
公任大納言屏風歌遅進事〈公任の大納言屏風の歌を遅くたてまつらるる事〉 第二
或人
歴覧所々間入尼家和歌事〈或る人所々を歴覧する間に、尼が家に入りて和歌を詠む事〉 第三
匡衡和歌事〈匡衡が和歌の事〉 第四
赤染衛門事〈赤染の衛門の事〉 第五
帥宮
通和泉式部給事〈帥宮の和泉式部に通ひ給ふ事〉 第六
和泉式部歌事〈和泉式部が歌の事〉 第七
御荒宣旨歌事〈みあれの宣旨が歌の事〉 第八
伊勢大輔歌事〈伊勢の大輔が歌の事〉 第九
堤中納言事〈堤の中納言の事〉 第十
季縄少将事〈季縄の少将の事〉 第十一
清少納言事〈清少納言が事〉 第十二
公任大納言事〈公任の大納言の事〉 第十三
清少納言清水和歌事〈清少納言が清水の和歌の事〉 第十四
道命阿闍梨事〈道命阿闍梨の事〉 第十五
継子小鍋歌事〈継子が小鍋の歌の事〉 第十六
賀朝事〈賀朝が事〉 第十七
樵夫事〈きこりの事〉 第十八
平中事〈平中が事〉 第十九
伯母事〈伯の母の事〉 第二十
伯母仏事々〈伯の母が仏事の事〉  第二十一
貫之事〈貫之が事〉 第二十二
躬恒事〈躬恒が事〉 第二十三
蝉丸事〈蝉丸が事〉 第二十四
藤六事〈藤六が事〉 第二十五
長能・道済事〈長能・道済が事〉 第二十六
河原院事〈河原院の事〉 第二十七
曲殿姫君事〈曲殿の姫君の事〉 第二十八
伊勢御息所〈伊勢の御息所の事〉 第二十九
高光少将事〈高光の少将の事〉 第三十
公任大納言事〈公任の大納言事の事〉 第三十一
道信中将遭
父喪事〈道信の中将の父の喪に遭ふ事〉 第三十二
貧女盂蘭盆歌事〈貧しき女の盂蘭盆の歌の事〉 第三十三
或女房売
鏡事〈或る女房の鏡を売るの事〉 第三十四
元良御子事〈元良の御子の事〉 第三十五
小大君事〈小大君が事〉 第三十六
大斎院見
荼毘煙給事〈大斎院荼毘の煙を見給ふ事〉 第三十七
樵夫詠
隠題事〈きこりの隠し題を詠む事〉 第三十八
道信中将献
花山院女御歌事〈道信の中将の花山院の女御に歌をたてまつらるる事〉 第三十九
高忠侍事〈高忠が侍の事〉 第四十
貫之赴
土佐任事〈貫之が土佐の任に赴く事〉 第四十一
大斎院以
女院御出家時和歌事〈大斎院女院の御出家の時を以て和歌をたてまつらるる事〉 第四十二
入道殿御仏事時大斎院被
和歌事〈入道殿の御仏事の時大斎院和歌をたてまつらるる事〉 第四十三
大隅守事〈大隅の守の事〉 第四十四
安倍中麿事〈安倍の中麿の事〉 第四十五
小野宮殿事〈小野の宮殿の事〉 第四十六


高橋 貢 (たかはしみつぐ)
「古本説話集(下)」
(こほんせつわしゅう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*297頁 / 発行 2001年

*カバー文
日本古典文学の一大ジャンル説話文学の領域に登場した近年新発見の魅力ある作品の全訳注。風雅な生活を送った大斎院も、出家し往生を遂げる。恐怖・病・飢えなど当時の人々の生活感を投影した話や観音・毘沙門・吉祥天女の霊験奇瑞(れいげんきずい)の逸話が展開する。貴族子女の啓蒙書として編纂され、王朝文化の雰囲気を醸(かも)す仏教説話二十四話を収録。

*目次
興福寺建立事〈興福寺建立の事〉 第四十七
貧女
蒙観音加護事〈貧しき女観音の加護を蒙る事〉 第四十八
清水利生入谷底少児令レ生事〈清水の利生に依りて谷底に落し入れたるわかき児を生けしむる事〉 第四十九
関寺牛事 和泉式部詠和歌事〈関寺に依りたる牛の事和泉式部が和歌を詠む事〉 第五十
西三条殿若君遇
百鬼夜行事〈西三条殿の若君百鬼夜行に遇ふ事〉 第五十一
極楽寺僧施
仁王経験事〈極楽寺の僧仁王経の験を施す事〉 第五十二
丹後国成合事〈丹後の国の成合の事〉 第五十三
田舎人女子蒙
観音利生事〈田舎人のむすめ観音の利生を蒙る事〉 第五十四
摩訶陀国鬼食
人事〈魔訶陀国の鬼人を食ふ事〉 第五十五
留志長者事〈留志長者の事〉 第五十六
清水寺二千度詣者打
入双六事〈清水寺に二千度詣でしたる者双六に打ち入るる事〉 第五十七
長谷寺参詣男以
虻替大柑子事〈長谷寺に参詣した男あぶを以て大柑子に替へたる事〉 第五十八
清水寺御帳給女事〈清水寺にて御帳を給はる女の事〉 第五十九
真福田丸事〈真福田丸の事〉 第六十
伊良縁野世恒給
毘沙門下文鬼神田与給者事〈伊良縁野世恒毘沙門の下した文を給はり鬼神田の物を与へ給ふ事〉 第六十一
和泉国々分寺住持艶奇
吉祥天女事〈和泉の国の国分寺の住持こひを吉祥天女に奇する事〉 第六十二
龍樹菩薩先生以
隠蓑笠一犯二后妃事〈龍樹菩薩先のよに隠れみの笠を以ちてきさきを犯す事〉 第六十三
観音経変
化蛇身鷹生事〈観音経蛇身に変化して鷹生を輔けたまふ事〉 第六十四
信濃国聖事〈信濃の国の聖の事〉 第六十五
賀茂社御幣紙米等減程用途僧事〈賀茂の社より御幣紙米などを用途につかふほどを給わる僧の事〉 第六十六
観音替
信女殖レ田事〈観音の信女に替はりて田を殖ゑたまふ事〉 第六十七
小松僧都事〈小松の僧都の事〉 第六十八
信濃国筑摩湯観音為
人令沐給事〈信濃の国筑摩の湯に観音の人と為りてゆあみせしめ給ふ事〉 第六十九
関寺牛間事〈関寺の牛の間む事〉 第七十


高橋 義孝 (たかはしよしたか)
「すこし枯れた話」 
(すこしかれたはなし)


(画像はクリックで拡大します)

*208頁
*発行 1984年

*カバー文
枯淡の文体で人生の智慧を綴る珠玉のエッセイ。比類なき知性と磨ぎ澄まされた感性で、数多くの名エッセイを発表してきた著者が、「この頃、気に染まない原稿は書かないことにしている」というなか、自ら選りすぐった名編の数々。日頃気になるアレコレから芸術観まで、成熟の眼に映ったものは ― 。

*解説頁・三國一朗


高橋 義孝 (たかはしよしたか)
「蝶ネクタイとオムレツ」
 (ちょうねくたいとおむれつ)


(画像はクリックで拡大します)

*247頁
*発行 1985年
*カバー装画・柳原良平

*カバー文
磨ぎ澄まされた感性で、日々の"粋"を綴る。感受性豊かな青春時代を描いた「こしかた」をはじめ、「食べもの飲みもの」「身のまわり」など、現代人が失ってしまった味覚やこいきな心意気を呼びさます。今日ではほとんど見当たらなくなった東京もんのダンディズムが燻銀のように光る珠玉のエッセイ集。

*解説頁・常盤新平


高群 逸枝 (たかむれいつえ)
「女性の歴史」 上下 (じょせいのれきし)


*カバー装画 K・B・K
(画像はクリックで拡大します)

*上560頁・下678頁 / 発行 昭和47年

*カバー文
上巻
大正昭和の激動期、女性はいかに生くべきか、を問うて執筆された本書は、その後多くの歳月が流れた。にもかかわらずいよいよその価値をましている。女性史を俗書から学問の書としてまとめた最初の書、という著者の自負はますます客観的評価を高めている。
武蔵野の一隅にあって、夫の献身と二十年余をかけ、火の国の詩人によって始めてなしえた女の生活の歴史的復権の書。
下巻
「原始女性は太陽であった」 ― 自然なる原始の母性我的母権社会から室町以降男性の個人我の父権社会をへてそれの訂正、原始復帰への最初の叫び。新しい女の権利獲得運動、戦後現憲法下での男女同権の一応の実現を、さらに労働婦人の歩みと働く婦人の諸問題を分析、一貫して母性我に視点を据えた女性解放の女性史。

*目次
上巻
第一章 女性が中心となっていた時代
 一 日本列島のもつ原始性 / 二 家庭を知らなかった社会 / 三 無痛分娩の母たち / 四 族母卑弥呼 / 五 女性中心の文化
第二章 女性の地歩はどんなぐあいに後退したか
 一 文明の開幕 / 二 私有財産がうまれた / 三 氏族がこわれた / 四 国家ができた / 五 女性文化がくずれた
第三章 女性の屈辱時代
 一 世界史の基本法則からみた日本女性史 / 二 市民社会が出現した / 三 「家」が形づくられた / 四 封建権力が天下をとった / 五 いわゆる庶民文化

下巻
第四章 女性はいま立ちあがりつつある(一)
 一 開国とゲイシャガール / 二 明治政権と女性 / 三 家父長制の再編 / 四 近代恋愛の発生と挫折
第五章 女性はいま立ちあがりつつある(二)
 一 婦人問題の展開 / 二 女性の自覚と運動
第六章 女性はいま立ちあがりつつある(三)
 一 労働婦人のあゆみ / 二 婦人労働の諸問題
第七章 女性はいま立ちあがりつつある(四)
 一 第二次大戦の前後 / 二 危機の文化と女性
第八章 平和と愛の世紀へ
 一 平和運動 / 二 愛の世紀

 あとがき
 年譜


高群 逸枝 (かたむれいつえ)
「火の国の女の日記(上下)」 (ひのくにのおんなのにっき)


*カバー装画 K・B・K
(画像はクリックで拡大します)


*上巻402頁・下巻468頁 / 発行 昭和49年

*下巻カバー文
1931年、37歳、森の研究所に面会謝絶の札を懸け〈女性史学事始〉、与えられた道を歩み始める ― 机上に本居宣長「古事記伝」唯一つ。「最も良き後援者となろう」と誓う夫憲三と唯二人で。〈1日10時間〉の読書を己れに課し、生涯無名の一坑夫に終ることを望みつつ ― 。遂に古代系譜に多祖を発見。日本母系制社会を実証し婚姻史、女性史へと結実する。いわば白熱の時代そして終焉、30年の生を語る。

*下巻巻末頁
 三つの言葉 後記にかえて 橋本憲三
 高群逸枝、橋本憲三との愛 瀬戸内晴美


高群 逸枝 (たかむれいつえ)
「恋愛論」 
(れんあいろん)


*カバーデザイン K・B・K
(画像はクリックで拡大します)


*272頁 / 発行 昭和50年

*カバー文
―― 高群逸枝という存在は、この世の成立ちを、生命系の秘奥からのぞき込んでいるまなざしだったと思うのです。……いのちの糸が発するこまやかな光。そのような糸で織りなされてゆく一番内側の、最初の薄い柔らかな透明な繭。そのように宇宙の薄闇の間にかかっている一箇の繭を(恋愛論から)イメージします――石牟礼道子〈解説〉より。
本書は生涯を通じ可憐な恋愛者だった彼女の内質の部分を示すものである。

*目次
 著者のことば
第一章 恋愛の起原
第二章 恋愛と生殖―その目的
第三章 両性―その使命
第四章 貞操とその死
第五章 ヨーロッパにおいて―男性の寂寥
第六章 婦人の世紀
第七章 近代思想芸術と恋愛観
第八章 近代娼婦主義
第九章 社会革命思想
第十章 結び―貞操の復活
 解説 石牟礼道子 / 年譜


瀧井 孝作 (たきいこうさく)
「松島秋色」
(まつしましゅうしょく)
講談社文芸文庫


(画像はクリックで拡大します)

*248頁 / 発行 1999年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
河東碧梧桐に俳句を学び、句作で鍛えた簡潔強靱な文体は、「手織木綿の如き」文章と芥川龍之介に評された。自己の身辺を凝視し、自然風景を鮮やかに描いた作品は、写生文の真骨頂とうたわれた。少年期の体験を記す「父」、結婚に至るまでの心情を活写する「結婚まで」のほか、「積雪」「大火の夜」「伐り禿山」「松島秋色」「野趣」の七篇。瀧井孝作傑作短篇集。

*巻末頁
 解説 紺野馨
 年譜 津田亮一
 著書目録 津田亮一


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「粟田口の狂女」
 (あわたぐちのきょうじょ)


*カバーデザイン・倉橋三郎
(画像はクリックで拡大します)

*288頁 / 発行 1989年

*カバー文
伊達勢大軍による味方討ちで、神保隊三百余名は哀れ全滅する。伊達の権勢に遠慮した家康側は、この事件を闇にほうむろうとした。
 真相を知り、娘婿神保長三郎の無念を思いやる老女お勝は、ひそかに一計を案じて洛中の街頭に立ったが……。
 大坂夏の陣を題材に、豊臣・徳川の交替劇を鮮烈多彩に描いた歴史小説集。

*目次
花のようなる秀頼さまを
大野修理の娘
粟田口の狂女
燃えなかった蝋燭
坂崎乱心
孫よ、悪人になれ
国松斬られ
 初出誌一覧 / 解説 植村修介


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「遺恨の譜」 (いこんのふ)


*カバーデザイン・倉橋三郎
(画像はクリックで拡大します)


*319頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
薩摩藩の勤王派による先走りを、上意によって阻もうとした寺田屋の変。辛くも生き残った志士たちは、国元へ送り返されたかにみえたが、長州とのリーダーシップ争いに腐心する薩摩藩としては、若者たちに過酷な運命を刻印せざるをえなかった! 歴史の変動に挟みこまれた犠牲者のうめき、酷薄な人生を、鮮やかに浮き彫りにする表題作等四篇。

*目次
青い落日 ― 沖田総司
遺恨の譜
古心寺の石
醉小楠
 解説 尾崎秀樹・


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「恨み黒髪」
 (うらみくろかみ)


*カバーデザイン・倉橋三郎
(画像はクリックで拡大します)

*328頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
猛将立花道雪のもとで、長い滞陣をもて余した三十五人がひそかに家庭に戻った。これを知った道雪は成敗を命じ討手が三十五人のもとに走った。
 三杉右京の新妻真砂は、討手として訪れた夫の親友甲斐源吾に向かい、夫の自害ののち、ある決意を告げる……。
 軍律の酷薄さに抗う女心のしたたかさを描いた表題作等、鮮烈な七編を収録。

*目次
秋月の桔梗
遺恨戸次川
恨み黒髪
名将死す
関ヶ原の風
風の名残
知る人もなし
 解説 小林慎也


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「薩摩軍法」 
(さつまぐんぽう)


(画像はクリックで拡大します)

*300頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
ひっそり暮らす田舎の老爺与茂作に、突然七十万石の太守島津家久から呼び出し命令がきた。「きっとあのことじゃ」と胸に覚えのある与茂作は腰をぬかしそうになる。四十年も前の戦場で起きたあの出来事こそ、薩摩武士の酷薄な掟ゆえ秘匿された与茂作の秘密であった。士道の表裏を鮮烈に描く俊英の代表作品集。

*目次(収録作品)
「薩摩軍法」「秋雨の首」「仲秋十五日」「白梅月夜」「鶴姫」「かげろう記」「奸臣と人のいう」
 解説 磯貝勝太郎


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「猿ケ辻風聞」 
(さるがつじふうぶん)


*カバー装画・倉橋三郎
(画像はクリックで拡大します)


*326頁 / 発行 1990年

*カバー文
動乱の幕末、尊攘派の公卿姉小路公知は、京都猿ヶ辻で刺客に襲われ、非業の死をとげた。刺客の持っていた刀が薩摩の田中新兵衛の指し料だったことから彼が容疑をかけられるが、刀は盗まれたものと主張して自決する。複雑な政治状況のもとでの暗殺事件はついに謎のままか? この事件の謎や風聞を巧みにからめた表題作など、歴史秀作十編収録。

*目次(収録作品)
萩の雨 / 小隼人と源八 / 折鶴さま / 猿ヶ辻風聞 / 松木騒動書留 / 琴の調べ / 勝頼に責めありや / 侍ばか / 命のお槍 / 敬老の宴
 解説 武蔵野次郎


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「拝領妻始末」
 (はいりょうづましまつ)


*カバー装画・渡辺文昭
(画像はクリックで拡大します)

*306頁 / 発行 1982年

*カバー文
会津藩主松平正容の愛妾お市の方は男子を生んだが、藩主の気まぐれから家臣笹原与五郎の妻として生きる。夫や舅に労わられ幸せな一時をすごしたが、突如再び藩に戻された。彼女の生んだ子がお世継ぎとなったのだ。藩命に屈すべきかどうか。与五郎は父と共に決心をした……。武家社会の非 人間性を峻烈に描く名作集。

*目次
拝領妻始末
下野さまの母
千間土居
上意討ち心得
異聞浪人記
三弥ざくら
綾尾内記覚書
悲運の果て
 解説 武蔵野次郎


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「葉隠無残」 
(はがくれむざん)


*カバー装幀・百鬼丸
(画像はクリックで拡大します)


*318頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
急死した姉に代って義兄の後添えに、と望まれたみなは、そこで初めて驚ろくべき真相を知らされた。姉は病死ではなく、若党と密通し、それを目撃した義兄に成敗されたのだという。愛妻の裏切りにも毅然と武士道(体面)を貫き通した義兄に、みなは人間としての対決を迫る。葉隠精神の峻烈さと人間性との接点を鮮やかに描いた秀作集。

*目次(収録作品)
その心を知らず
名の重くして
下郎首
貞女の櫛
みれんの裏を見候え
血染川
権平けんかのこと
一夜の運
 解説 磯貝勝太郎


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「謀殺」
 (ぼうさつ)


*カバーデザイン・倉橋三郎
(画像はクリックで拡大します)

*328頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
 竜造寺隆信は、柳川城主蒲池民部大輔を宴に招き、討ち取ろうと企てる。使者は西岡美濃。美濃は竜造寺家切っての正直者として名高い。彼が「身の危険などなし」と告げ、相手を信用させるわけである。果たして美濃の一世一代のウソは通じるだろうか?
 竜造寺家、鍋島家にかかわる悲劇の数々を、練達の筆致で描いた歴史小説集。

*目次
謀殺
与四郎涙雨
埋もれ木の譜
汚名
鼓峠
朝鮮陣拾遺
高柳父子
朽ち葉の記
 作品ノート ― あとがきにかえて 滝口康彦


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「落日の鷹」 (らくじつのたか)


(画像はクリックで拡大します)

*288頁
*発行 昭和55年
*カバー装画・山下昌也

*カバー文
天正12年、九州の雄だった竜造寺隆信が戦死し、佐賀35万石の藩主の地位は、隆信の家臣だった鍋島氏に引き継がれた。異例のこの交代劇は、表面おだやかにみえたが、竜造寺家につながる人々にとって、次第に怨念をつのらせる推移となった……。乱世に生きる武門の消長と士魂を峻烈に描いた歴史長篇小説。

*解説頁・尾崎秀樹〈おざきほつき〉


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「流離の譜」
 (りゅうりのふ)


(画像はクリックで拡大します)

*502頁
*発行 1988年
*カバーデザイン・倉橋三郎

*カバー文
 徳川幕府の弱体化がすすんだ幕末、唐津藩主の座に心ならずも就いた小笠原長行は、すでに三十六歳だった。藩中の反対勢力を制し、江戸城に伺候した長行は、時代改革の必要を次々具申、若年寄をへて老中職を仰せつかる。
 しかし時勢はあまりにも急旋回しようとしていた。長行の数奇な運命とは?最後の老中を精緻に描いた出色長編。

*解説頁・尾崎秀樹


滝田 ゆう (たきたゆう)
「下駄の向くまま 新東京百景」
 (げたのむくまま)


*カバー装画・滝田 ゆう
(画像はクリックで拡大します)

*292頁 / 発行 1983年

*カバー文
ツウーっと横丁曲って、路地の奥へツゥと入って……下駄の向くまま気の向くまま、ひたすら地ベタの感触と人間臭い風景にひかれ、なにやらやって来ましたあの町この町。ああ郷愁の…ムグ…"あの頃"。スケッチブック片手のブラブラ歩き、落着く先はなぜか黄昏時の赤提灯、ふられ酒あり祭り酒あり。江戸っ子絵師滝田ゆう流。“東京百景”。(一口ガイド・マップ付き)

*目次
たそがれ酒場
 新宿夢小路 / 新宿ひとり酒盛 / 新宿二丁目午前二時 / 神楽坂うつろ酒 / 神田思い出トリスバー / 銀座ほろほろ酒 / 新橋烏森滲み酒 / 渋谷ハチ公ふられ酒 / 夢の冷や酒池袋 / 吉祥寺……酎ロック / たそがれ酒場0番地
下駄の向くまま
 浅草なじみ酒 / 玉電・ボロ市・歳の暮 / 亀戸天神くず餅祈願 / 深大寺門前……酒 / 百草園無縁酒 / 西新井門前町 / 江戸川鯉こく一人酒 / 神田明神祭り酒 / 百花園経由どぜう酒 / 祝・巣鴨とげ抜き地蔵 / 目黒権之助坂懐古酒 / 入谷鬼子母神朝顔市 / 目白散策千登世橋 / 世田谷芦花公園 / 下駄の向くまま湯島天神
下町えれじい
 玉の井慕情 / 駄菓子屋えれじい / 深川森下さくら橋 / 佃大橋がまん酒 / 隅田川しぶき酒 / 築地酔雨午前酒 / 人情下町人形町 / 浅草合羽橋道具街 / 昼席上野本牧亭 / 洲崎名残り橋 / 都電の夢
気まぐれコップ酒
 有情無情平和島 / お茶の水流れ酒 / 赤坂弁慶橋ボート場 / 国立駅前マジメ酒 / 府中迷い酒 / 秋晴れ東京競馬場 / 立川気まぐれコップ酒
 あとがき
 「あとがき」のあとがき


武井 武雄 (たけいたけお)
「お噺の卵
 武井武雄童話集」 (おはなしのたまご)


*カバー装画・武井武雄
(画像はクリックで拡大します)

*294頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
現在も、童画家・版画家・造本芸術家として多彩な活躍をしている武井武雄の、日本では珍しいナンセンス童話 ―― 「お噺の卵」「ペスト博士の夢」「ラムラム王」の3作品集 ―― を全部収録。どの作品もふしぎな面白さ、辛辣な風刺にあふれており、著者自身の繊細優美なイラストが更に魅力を添えている。

*目次

 復刊にあたって

お噺の卵
 お噺の卵 / 蜂の質問 / プウ太郎鍛冶屋 / 竹の着物 / 流れ星 / 小悪魔ピッピキの話 / 木魂の靴 / 陸軍大将 / 又取ったよう / 天国 / 多衛門の影 / 立聞話 / 化けマンドリン / 蜉蝣(かげろう) / 不朽の花園 / ムヘット・ムヘット / 眼玉

ペスト博士の夢
 牧場の聾ぞろい / 日に吠える豚 / 鼠の肖像 / カア公爵 / ポリシネルと蛍 / 馬鹿正直の親玉 / 乳の森 / 子供の芝居 六十六万年後 / ラッパ太郎と眼鏡太郎 / 月五話 / 星を食べる大根 / 人形ヘゼキヤのこと / 蟻の胡弓 / テンツルテンの命(みこと) / 夜の眼鏡 / ペスト博士の夢

ラムラム王

 解説 上 笙一郎
 年譜
  さしえ / 武井武雄


竹内 好 (たけうちよしみ)
「魯迅」
(ろじん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*258頁 / 発行 1994年

*カバー文
“絶望の虚妄なることは正に希望と相同じい”と魯迅を引用し「絶望も虚妄ならば、人は何をすればよいか。……何者にも頼らず、何者も自己の支えとしないことによって、すべてを我がものにしなければならぬ。」と魯迅を追尋しつつ論及、昭和十八年遺書を書く想いで脱稿。そして応召。僚友武田泰淳の『司馬遷』とともに、戦時下での代表的名著。

*目次
序章 ─ 死と生について
伝記に関する疑問
思想の形成
作品について
政治と文学
結語 ─ 啓蒙者魯迅
附録 思想家としての魯迅
附録 創元文庫あとがき
附録 未来社版あとがき
略年譜
 解説 川西政明
 作家案内 山下恒夫
 著書・編書・訳書目録 山下恒夫
 表記の変更について 山下恒夫


武田 泰淳 (たけだたいじゅん)
「司馬遷 ― 史記の世界」 (しばせん)


*カバー装画・田中岑

講談社文芸文庫版カバー
 デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)


*241頁 / 発行 昭和47年
*講談社文芸文庫 310頁 / 発行 1997年

*カバー文
歴史家は無為である、また為さざることなし――容易にみえて容易ならざる覚悟と執念で、司馬遷が記録した大著『史記』。司馬遷の歴史家としてのきびしい態度と、そこに描かれた世界の中心たる政治的人間たちを著者は浮き彫りにする。そして歴史と人間世界を空間的・全体的に把握しようと試みた古典的名箸。
*講談社文芸文庫版カバー文
「司馬遷は生き恥さらした男である。」に始まる本書は、武田泰淳の中国体験もふまえた戦中の苦渋の結晶であり、それまでの日本的叙情による歴史から離れて、新たな歴史認識を展開した。世界は個々人の集合であり、個の存在の持続、そして、そこからの記録が広大な宇宙的世界像と通底する。第一篇「司馬遷伝」、第二篇「史記」の世界構想。

*目次
序文
 (講談社文庫版の序文 / 一九六五年講談社新版の序文 / 序文<昭和三十五年> / 序文<昭和三十四年> / 第三版序文 / 再版自序 / 初版自序)
第一篇 司馬遷伝
第二篇 「史記」の世界構想
 一、「本紀」について
    歴史とは / 世界の中心 / 聖と悪 / 異様なる個人 / 人間始皇帝 / 二つの心中 / 鴻門の会 / 高祖「本紀」と「列伝」 / おそろしき女
 二、「世家」について
    並立状態 / 喪家の狗 / 転換 / 持続
 三、「表」について
 四、「列伝」について
    「伯夷」から「貨殖」まで / 象徴的人間 / 思想の面 / 文化の運命 / 公孫弘批判 / 文学者 / 英雄豪傑(一) / 英雄豪傑(二) / 匈奴問題
 後記
 司馬遷年譜対照表 / 語注 市川宏 / 解説 竹内好 / 年譜 (古林尚編)


武田 泰淳 (たけだたいじゅん)
「わが子キリスト」 
(わがこきりすと)


(画像はクリックで拡大します)

*216頁 / 発行 昭和46年

*カバー文
征服地ユダヤの完全支配をもくろむローマ政府の高官は、キリストの実の父だという部下の隊長を使って、キリストを神の子にまつりあげようとする。政治的人間によって作られた救世主という作者独特の聖書解釈から、世界全体の空間的構成を考察する異色作。他に二編を収録。

*目次
わが子キリスト
王者と貴族の美姫
揚州の老虎

 武田泰淳の文学 柄谷行人
 年譜(古林尚編)


竹田 真砂子 (たけだまさこ)
「鏡花幻想」
(きょうかげんそう)


*カバーデザイン・安彦勝博
(画像はクリックで拡大します)

*283頁
*発行 1994年

*カバー文
神楽坂の芸者桃太郎との出会いは、新進作家泉鏡花の前途に大きな影響を与えた。絶対的権力をもつ師の尾崎紅葉がこの恋に猛反対した件は、のちに「婦系図」のお蔦と主税に投影される。だが桃太郎は結局鏡花の妻となり、苦難の鏡花を側面から支え続けた。耽美小説の祖泉鏡花の原点と生涯を精密に描く評伝。

*解説頁・川本三郎


武田 麟太郎 (たけだりんたろう)
「日本三文オペラ ― 武田麟太郎作品選」
(にほんさんもんおぺら)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*290頁 / 発行 2000年

*カバー文
後年は風俗小説「銀座八丁」を書いたプロレタリア作家の初期権力との格闘を示す伏字××のある小説「暴力」収録。その後浅草のアパートを舞台に庶民男女の哀歓を活写した「日本三文オペラ」や「市井事」「一の酉」「井原西鶴」と、「川端康成小論」「西鶴町人物雑感」「好色の戒め」等の評論を併録。強靱な散文精神で戦前戦中の激動時代を疾駆した作家武田麟太郎(明治三十七年‐昭和二十一年)の精髄を一冊に凝縮。

*目次
暴力 / 反逆の呂律 / 日本三文オペラ / 市井事 / 一の酉
 ※
井原西鶴 / 横光利一 / 川端康成小論 / 西鶴町人物雑感 / 好色の戒め / 京都学校 / ああ、俗悪なる ──

 解説 川西政明 / 年譜 保昌正夫 / 著書目録 保昌正夫


竹之内 静雄 (たけのうちしずお)
「先師先人 現代日本のエッセイ」
(せんしせんじん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*342頁 / 発行 1992年

*カバー文
激しい雨の中、玉川上水に身投げしたとの急報に、幾日もその跡を捜してさ迷った回想の記「太宰治の死」。夭折したその才を惜しむ「同門 ── 高橋和巳のこと少し」。多くの優れた文人たちの深い知遇を得た出版人の著者が、若き日に巡り合った〈人生の師〉竹内勝太郎をはじめ〈学問の師〉吉川幸次郎と田辺元、武田泰淳、三好達治他、その精神を慕う十二人の〈先師先人〉の肖像を鮮烈に彫む。

*目次
竹内勝太郎、その生活・探求
土井虎賀寿教授のこと
深瀬基寛先生についての小さな話
太宰治の死
田辺元博士 ── その側面の一面
陰翳ふかき人 ── 落合太郎博士
大山定一教授の思い出
同門 ── 高橋和巳のこと少し
文・酒・人 ── 吉田健一さん
武田泰淳さんのこと
吹雪の中の友情 ── 三好達治の死生
双視の人 ── 吉川幸次郎先生
 人と作品 江崎誠致 / 年譜 / 著書目録


太宰 治 (だざいおさむ)
「虚構の彷徨 / ダス・ゲマイネ」 
(きょこうのほうこう)


(画像はクリックで拡大します)

*231頁
*発行 昭和48年
*カバー装画・司修

*カバー文
左翼運動への裏切りと鎌倉海岸での心中未遂、縊死未遂の告白を軸に、小市民的モラルを否定しながらも惨落と自負の意識に痛ましく引き裂かれていく青春の日日、その絶望の乱舞を、道化の言葉で綴った「道化の華」「狂言の神」「虚構の春」、いわゆる『虚構の彷徨』三部作と、他に「ダス・ゲマイネ」を併録。

*解説頁・饗庭孝男 / 付年譜


橘 蓮二・写真 高田 文夫・監修 (たちばなれんじ たかだふみお)
「大増補版 おあとがよろしいようで 東京寄席往来」


(画像はクリックで拡大します)

*223頁
*発行 2005年

*カバー文
小さん、志ん朝去って、東京落語は衰退しつつあるのか? 心配ご無用、そんなことはございません。それが証拠に、昭和の末、寄席の空気をみごとに切り取った伝説の文庫写真集が、新しい芸の息吹も爽やかに、大増補して戻ってまいりました。上方の名人の高座も入った賑々しさ。どうか手に取ってご覧あれ。

*カバーデザイン・渡辺和雄
*カバー写真 右上から時計まわりに
 立川談志 / 立川志の輔 / 古今亭志ん朝 / 立川談春 / 春風亭昇太 / 春風亭小朝


田辺 聖子著 岡田 嘉夫・絵 (たなべせいこ/おかだよしお)
「源氏たまゆら」 (げんじたまゆら)


(画像はクリックで拡大します)

*285頁 / 発行 1995年
*カバー装画・岡田嘉夫

*カバー文
皇族から臣籍に下ったが、おれの父は帝。世の人に、光るように美しいと言われ、官位は中将にすすんでいる。気ままな恋に遊びながら、しかし心はいつも満たされない。口が裂けても言えないことだが、おれは……。青年源氏の若々しい独白、恋の喜びと秘密の辛さ。新鮮な現代文と華麗な絵で楽しむ、源氏絵巻。

*目次
【第一章】光源氏
 空蝉 / 夕顔 / 末摘花 / 若紫 / 源典侍 / 藤壺 / 六条御息所 / 朧月夜 / 明石の上 / 女三の宮
【第二章】薫
 宇治の姫君たち / 浮舟


ダニエル レビンソン著・南 博訳 (Daniel J. Levinson・みなみひろし)
「ライフサイクルの心理学〈上下〉」
(THE SEASONS OF A MAN'S LIFE)
講談社学術文庫




*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*上341頁・下290頁 / 発行 1992年

*カバー文

人は不安定な幼・少・青年期を経て成人するが、一旦大人になってしまえばもう安心だろうか。そうでもない。大人にもライフステージごとに特有の問題が発生し、職業・家庭・精神生活の各局面で様々の難問がふりかかる。仕事上の悩み・転職=退職の危機・妻との関係・子供の教育問題等々が〈心〉を脅やかす。人々は人生のピンチをどうしのいでいるか。四十人の個人史を詳細に面接比較した画期的研究。

大人の人生の困難は、青少年問題・老人問題の谷間で見過ごされがちだ。本書で著者たちは、ミドルエイジの工場労働者・会社の管理職・生物学者・小説家の四つの職業グループから各十人、合計四十人に個別面接し詳しく比較考察。その結果人間は成人した後も変化しつづけ、一定の段階を踏んで発達していく事実を明らかにした。下巻では、人生半ばの過渡期から中年に入る時期の生活構造が解明される。

*目次


第T部 成人の発達について
 1 ライフサイクルとその四季 / 2 ライフリサイクルの構造 / 3 発達段階 ―― 生活構造の発展 / 4 四人の男性
第U部 成人前期の新米時代
 5 新米成人時代 ―― 成人への過渡期、おとなの世界へ入る時期、三十歳の過渡期 / 6 新米時代の主要な発達課題 / 7 管理職ジェイムズ・トレイシーの場合(1) / 8 労働者ウィリアム・ポールスンの場合
第V部 一家を構える時期
 9 第二の生活構造を築く / 10 一家を構える時期の5つの発達過程 / 11 ジェイムズ・トレイシーの場合(2) / 12 小説家ポール・ナムソンの場合

第W部 人生半ばの過渡期と中年に入る時期
 13 人生半ばの過渡期 / 14 人生半ばの個性化 ―― 若さと老いの対立 / 15 人生半ばの個性化 ―― その他の対立 / 16 人生半ばの過渡期に生活構造を修正する / 17 生物学者ジョン・バーンズの場合 / 18 中年に入る時期 / 19 ジェイムズ・トレイシーの場合(3)
第X部 おわりに
 20 成人の発達の課題と可能性
 注 / 解説 南博


谷川 健一 (たにがわけんいち)
「南島論序説」 (なんとうろんじょせつ)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・多田進
(画像はクリックで拡大します)

*318頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
奄美と沖縄は一括して南島と呼ばれており、なかでも宮古・八重山両群島は沖縄本島から遠く離れているために先島と言われ、本島には見られぬ特有の歴史と習俗を持つ。本書は、その先島の数十回に及ぶ著者の実地踏査をもとにした二つの論考から成り立つ。一つは人頭税に代表される南島の受難の歴史、もう一つは、先島の習俗を通して鮮明に映し出される日本人の世界観と死生観である。南島を総体として捉えようとした出色の南島民俗論。

*目次
まえがき
一 人頭税の世界
 与那国・石垣・宮古の旅
 宮古綾語(ミヤコアヤグ)と八重山の悲歌
 北国の旅人 ―― 中村十作と沖縄人頭税廃止運動
二 琉球の世界観
 太陽の洞窟 ―― 琉球の宇宙観
 あかるい冥府 ―― 琉球の他界観
三 古代日本と琉球
 シャコ貝幻想
 サルタヒコの誕生
 魂と首飾り
 めづらし君 ―― おもろさうしの一句
 ハレとケ ―― おもろさうしの一語
解説 岡谷公二


谷川 徹三 (たにかわ てつぞう)
「日本人のこころ」
(にほんじんのこころ)
講談社学術文庫



(画像はクリックで拡大します)

*299頁
*発行 1976年

*目録文
日本人の心は日本人の生活をはなれて理解することはできない。そしてその生活は長い間の伝統を離れては理解できないと説く講演のほか、日本文化の諸領域に現れた日本人の心の本質を語る諸論文を収める。


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「刺青・異端者の悲しみ ほか六編」
 (しせい・いたんしゃのかなしみ)


*カバー装画・三村淳
(画像はクリックで拡大します)

*324頁 / 発行 昭和47年

*カバー文
人間の意識の深淵に潜む悪魔的な耽美の世界を浮き彫りにして、時代に瑞々しい衝撃を与えた処女作「刺青」。芸術美を追う男の内面の分裂を、深い哀しみの色調で綴った自伝小説「異端者の悲しみ」他六編の珠玉短篇集。いずれも緊張を孕んでなお芳烈な純粋官能の絵模様。

*目次
刺青
少年
幇間
秘密
人魚の嘆き
異端者の悲しみ
小さな王国
母を恋うる記
 語注
 解説 高田瑞穂
 年譜


玉城 康四郎 (たまきこうしろう)
「仏教の根底にあるもの」
 (ぶっきょうのこんていにあるもの)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・杉浦幸治
(画像はクリックで拡大します)

*318頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
仏教の根底という発想が浮んだのは、いつごろだったろうか。大学に入って仏教の講義を聞いたときにさかのぼるように思う。親鸞の生き方には多少のなじみはあったが、仏教に触れたのは大学で初めてだった。それ以来何十年、仏教各派の領域に踏みこみ、さまざまな試行錯誤をかさねて、還暦近くなってやっとブッダの目覚めに出会ったのである。形なきいのちが顕わになってくる、と。仏教の根底がほのかに見えはじめてきたのである。(著者)

*目次
まえがき
T 仏教の根底にあるもの ― 救いと悟り
U 空海から親鸞・道元へ
V 法然の念仏
W 親鸞の宗教的世界 ― 行ということ
X 真理の体現者 道元
Y 仏教の無
Z 仏教の時間論
[ 仏教の未来
あとがき
学術文庫あとがき ― 全人格的思惟と当面の諸問題


田村 圓澄 (たむらえんちょう)
「仏教伝来と古代日本」
 (ぶっきょうでんらいとこだいにほん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*296頁 / 発行 1986年

*カバー文
日本の古代国家建設に仏教はどんな影響を与えたのか。本書において著者は、王権を目指して伝来した仏教が、日本における国家仏教として成立するまでの過程や、律令国家と仏教との関係、神道と仏教との相違点などを概観して、宗教が天皇政治の本質に深く係っていたことを強調する。同時に、その後の日本仏教の歴史をみると、国家・政権の側から仏教を必要とすることはなく、古代の終焉はまた国家仏教の終焉でもあった、と結論づける。

*目次
まえがき
第一章 仏教伝来の道
第二章 聖徳太子と半跏思惟像
第三章 古代朝鮮の弥勒信仰
第四章 宇佐八幡の誕生
第五章 神仏習合とその源流
第六章 日本古代国家と宗教
古代日本仏教史年表
索引
初出一覧


田山 力哉 (たやまりきや)
「小説 浦山桐郎 ― 夏草の道」
 (しょうせつうらやまきりお)


(画像はクリックで拡大します)

*306頁
*発行 1996年
*カバーデザイン・田山理恵子

*カバー文
衝撃のデビュー作「キューポラのある街」をはじめ「私が棄てた女」「青春の門」などの傑作をのこした映画監督・浦山桐郎。23年間で9本しか撮らなかった全作品に、若くして世を去った母と父への追慕の念、ふるさと相生への熱き想いが籠められている。54歳で逝った鬼才の壮絶な生涯を描く、渾身の長篇小説。

*目次
プロローグ / 父・浦山貢 / 天皇陛下バンザイとお母ちゃん / 戦中、戦後の姫路中学生 / 旧制姫路高校の青春 / 青春の暗い日々 / 上京、撮影所助監督に / 小津、川島、今村 / 大塚和と今村組 / 「キューポラのある街」と吉永小百合 / トリュフォ、そしてモスクワ / 私が棄てた女 / 他社と独立プロでの仕事 / その晩年 / エピローグ / 解説 川本三郎