絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【つ】

司 修 (つかさおさむ)
「紅水仙」
 (べにすいせん)


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*253頁
*発行 1990年
*カバー装幀・司修

*カバー文
何も語らずに逝った母の人生を辿る長篇小説。母が残したわずかな写真と叔母の話をたよりに、雪深い新潟山平村から秩父、浅草、安部川、天川原、市谷富久町そして葛飾白鳥へ足を運ぶ。わずかに探りあてた手懸かりには、悲しいことばかりが写しだされていた。薄幸な越後の女の生に捧げる感動のレクイエム。

*解説頁・松谷みよ子


津島 美知子 (つしまみちこ)
「回想の太宰治」 
(かいそうのだざいおさむ)


*カバー装画・太宰治
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*298頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
太宰治は、文字通り文学のために生まれ、文学のために育ち、文学のために生きた「文学の寵児」だった。彼から文学を取り除くと、そこには嬰児のようなおとなが途方に暮れて立ちつくす姿が浮かぶ――その妻であった著者が、共に暮らした日々のさま、人間太宰の赤裸なすがたを淡々と綴る滋味溢れる回想記。

*目次
 1
御坂峠
寿館
御崎町
三鷹
甲府から津軽へ
 2
書斎
初めて金木に行ったとき
白湯と梅干
千代田村ほか
 千代田村 / 深浦 / 喜良市 / 嘉瀬
津軽言葉
税金
アヤメの帯 ― たけさんのこと
点描
 正月 / 筆名 / 揮毫 / 蔵の中 / 「聖書知識」 / 自画像 / 郭公の思い出
書簡雑感
遺品
 時計 / 兵隊靴
紋付きとふだん着
三月二十日
 3
「女生徒」のこと
「右大臣実朝」と「鶴岡」
「新釈諸国噺」の原典
「惜別」と仙台行
「パンドラの匣」が生まれるまで
 4
「奥の奥」
旧稿
「秋風記」のこと
「創作年表」のこと
 5
アヤの懐旧談

 あとがき
 太宰治年譜


津島 佑子 (つしまゆうこ)
「逢魔物語」
(おうまものがたり)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*354頁 / 発行 1989年

*カバー文
『八犬伝』の伏姫、『番町皿屋敷』のお菊、三ツ目小僧 ── 物語、伝説、夢、フォークロアなどを鮮やかな媒介として、“秩序”“制度”からはぐれ、はずれた生や、愛たちを問う、“新しい時代”の女性作家・津島佑子の果敢な力業。時代が生んだ“生”の新たな意味を問う中篇連作集。

*目次
伏姫
三ツ目
菊虫
おろち
厨子王
 著者から読者へ
 解説 G・ハーコート
 作家案内 与那覇恵子
 著者目録


津島 佑子 (つしまゆうこ)
「草の臥所」 (くさのふしど)


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*215頁 / 発行 昭和56年
*カバー装画・司修

*カバー文
見わたす限り青く深い、草のうねりの中に身をうずめ、別れた男への絶望とたえがたい憧憬を内に焦がす二人の女の、怪しげな交友と亀裂、時にひびわれた沼地の闇を手探りに探す愛の形を、凄まじい生理感覚で描き出し、津島文学の一転機を画したとされる傑作集。泉鏡花賞受賞。

*目次
草の臥所
花を撒く
鬼火
 解説 大橋健三郎


津島 佑子 (つしまゆうこ)
「寵児」
(ちょうじ)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*296頁 / 発行 2002年

*カバー文
ピアノ教室の講師をする女は、離婚して娘と暮している。娘は受験を口実に伯母の家に下宿して母親から離れようとしている。体調の変化から、ある日女は妊娠を確信する。戸惑う女が男たちとの過去を振返り自立を決意した時、妊娠は想像だと診断され、深い衝撃を受ける。自立する女の孤独な日常と危うい精神の深淵を“想像妊娠”を背景に鮮やかに描く傑作長篇小説。女流文学賞受賞。

*巻末頁
 著者から読者へ
 解説 石原千秋
 年譜 与那嶺恵子
 著者目録


筒井 清忠 (つついきよただ)
「昭和期日本の構造 二・二六事件とその時代」
(しょうわきにほんのこうぞう)
講談社学術文庫


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*395頁 / 発行 1996年

*カバー文
昭和期の戦前・戦中期の日本の政治・社会をその深部から解明するために、この時代を中心的に動かした軍部、とりわけ陸軍を構造的に分析。著者はまず日本ファシズム論についての素朴な疑問から出発、陸軍の中枢部でのエリート派閥抗争を概観し、また昭和陸軍の原型に迫る。さらに、近代日本史上最大のクーデターである二・二六事件を徹底的に考究。激動の昭和を歴史社会学的に考察した画期的論考。

*目次
第1章 「日本ファシズム」論の再考察 ― 丸山理論への一批判
第2章 戦間期日本における平準化プロセス ― 思想集団の社会史
第3章 昭和の軍事エリート ― 陸軍官僚制の内部過程
第4章 昭和陸軍の原型(プロトタイプ) ― バーデン・バーデンから一夕会まで
第5章 日本型クーデターの構想と瓦解 ― 二・二六事件研究1
第6章 日本型クーデターの政治力学 ― 二・二六事件研究2
第7章 昭和軍事史の断面
付章 昭和超国家主義の断面


都筑 道夫 (つづきみちお)
「新 顎十郎捕物帳2」
 (しんあごじゅうろうとりものちょうに)


*カバー装画・小宮山逢邦
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*248頁 / 発行 1988年

*カバー文
逃亡中の盗賊の首領から、手下の仇を討ってくれ、と懇願された北町奉行所の仙波阿古十郎。その長顎ぶりから顎十郎の異名をもつ快人物だ。
 盗賊が仇と名指したのは、何とライバルの南町奉行所藤波友衛。さて顎十郎はどうする? 局面はやがて意外な方向へ!
 故久生十蘭の名作を達人が新たに書き継いだユニークな捕物シリーズ第2集。

*目次
三味線堀
貧乏神
亀屋たばこ入
離魂病
さみだれ坊主
閻魔堂橋


都筑 道夫 (つづきみちお)
「夢幻地獄四十八景」
 (むげんじごくよんじゅうはっけい)


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*246頁
*発行 昭和55年
*カバー・本文装画 真鍋博

*カバー文
バスの中で老人が隣席の若い男に話しかける ― わたしは遠くで話す人間の唇が読めますが、この前も男女が心中の相談をしているので警察に知らせたところ、男女は俳優でした、芝居の稽古なのですよ、うっかり信じこめませんな、ですから今し方見た恐るべき相談も本当かどうか……。才筆によるショートショート集。

*解説頁・谷川俊太郎


角田 文衛 (つのだぶんえい)
「平家後抄 ― 落日後の平家(上下)」
(へいけこうしょう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*上353頁 / 下391頁 / 発行 2000年

*カバー文

平維盛の子、平家の最後の嫡流六代の斬刑により、「平家は永く絶えにけり」と『平家物語』は結ぶ。しかし、壇ノ浦の惨敗の後、都に帰還した平家の女性たちの血は、皇族、貴族の中に脈々と生き続け、実に現代にまで続いていることを忘れてはならない。北山の准后藤原貞子に仮託して、壇ノ浦以後の平家の動静を克明にたどる名著。

厳しい平家狩りの目をくぐり抜けてきた人びとにも、安穏の日はなかなか訪れない。しかし、勝者源氏は十四世紀に到り亡びてしまう。平家の末流は、宗家、西洞院家、四条家などに繋り、以後の歴史の折々に大きな影響を与え続けてきた。詳細な資料調査と実地踏査によって明らかにされる『平家物語』その後。

*目次

学術文庫版のまえがき / まえがき / 序章 北山の准后 / 第一章 嵐の後 / 第二章 さまざまな運命 / 第三章 平家の残党 / 第四章 女人の行方 / 第五章 北陸の空 / 補註 / 諸家系譜抄

第六章 鎮魂の歌 / 第七章 時の流れ / 第八章 おどろの路 / 第九章 暗雲 / 第十章 源平の黄昏 / 終章 恩怨無常 / 補註 / 諸家系譜抄 / 人名索引 / 解説 角田史学の心髄をみる


津村 節子著・高村 規写真 (つむらせつこ・たかむらただし)
「智恵子から光太郎へ」 
(ちえこからこうたろうへ)


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*93頁 / 発行 1979年

*カバー文
精神分裂症を病み悲劇の死を遂げた智恵子は、死を目前にして千数百点の紙絵をつくった。それらは比類のない美しさにあふれ、作者の才能と至純の心を表わしている。智恵子死して40年、「智恵子抄」に、けがれなき精神をうたわれた智恵子の、これは、夫・光太郎への恋文であり、哀切の生涯を象徴する美の結晶であった。

*目次
紙絵(カラー図版) ― 高村智恵子 撮影・高村規
智恵子から光太郎へ ― 津村節子
  一、「智恵子抄」との出逢い
  二、智恵子の生い立ち
  三、若き日の智恵子
  四、その結婚生活(大正三〜昭和一三)
  五、智恵子の紙絵


津村 節子 (つむらせつこ)
「智恵子飛ぶ」
(ちえことぶ)


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*356頁
*発行 2000年
*カバー装画・高村智恵子 紙絵 / 紙絵撮影・高村規 / カバーデザイン・菊地信義

*カバー文
天才芸術家である高村光太郎の陰で、その秘められた才能を花咲かすことの出来なかった妻・智恵子。天真爛漫な少女時代、平塚らいてうらと親交を深める青春時代、光太郎との運命の出逢い、そして結婚、発病 ── 。一心に生きた智恵子の愛と悲しみを余すことなく描いた、芸術選奨文部大臣賞受賞の傑作長編。

*解説頁・川西政明


鶴間 和幸 (つるまかずゆき)
「始皇帝陵と兵馬俑」 (しこうていりょうとへいばよう)
講談社学術文庫



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*296頁 / 発行 2004年
*カバー写真 / 彩色の残る兵馬俑(秦始皇兵馬俑博物館所蔵)・カバーデザイン蟹江征治

*カバー文
二千二百年以上も前に中国を統一した秦の始皇帝。その巨大陵墓は二重の城壁を備え、墳丘の下には未発掘の地下宮殿が眠る。死後も皇帝の霊魂が地上で暮らすための寝殿を建て、八千体に及ぶ兵馬俑を造った帝国不滅への願望。現地踏査を続ける第一人者が最新の研究成果や遺跡の徹底図解を紹介し、地下帝国の発掘から滅亡した地上の帝国の実像に迫る。

*目次
学術文庫版まえがき
プロローグ 二人だけの皇帝
第一章 新発見相次ぐ始皇帝陵園
第二章 始皇帝の死と二世皇帝の実像
第三章 秦王陵の伝統をさかのぼる
第四章 始皇帝陵の地下世界と地上の帝国
エピローグ 永遠の地下帝国を守るために
秦兵馬俑坑ガイド
秦俑学のすすめ ―― 本書の参考文献にかえて


鶴見 俊輔 (つるみしゅんすけ)
「限界芸術」
 (げんかいげいじゅつ)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・佐藤雄治
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*189頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
著者によれば、限界芸術とは、純粋芸術や大衆芸術より広大な領域で芸術と生活との境界線にあって、専門家でない人によって創られ、普通の人々に享受される作品をさす。それは、五千年前のアルタミラの壁画以来、地上にあらわれた芸術の最初の形であり、また今日の人間が芸術に接する最初のジャンルでもある。本書には、この限界芸術の意義を論じたユニークな論文「芸術の発展」のほか、「黒岩涙香」「マスコミ時評」など四篇を収録。

*目次
まえがき
芸術の発展
黒岩涙香
マスコミ時評
チェンバレン『日本ふうのもの』
これはフリードリッヒ大王の書いた本か
解説 山本明