絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【う】

植木 久行 (うえきひさゆき)
「唐詩歳時記」
 (とうしさいじき)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*389頁 / 発行 1995年

*カバー文
千年以上にわたり、その繊細優艷な魅力によりわが国で広く愛読されてきた唐詩の豊穣な世界。本書は新年および季節ごとの唐代の行事・風俗を歳時記の形式で解説し、四季折々の花や鳥などの素材の持つ詩的心象を、日本文学における和歌のイメージとも比較しながら考察する。王維・李白・杜甫から、中唐の白居易(はくきょい)、晩唐の杜牧・李商隠まで、代表作の数数を選び、原文・訓読文に現代語訳を付した好著。

*目次
序にかえて
凡例
春の詩(うた)
夏の詩(うた)
秋の詩(うた)
冬の詩(うた)
洛陽城図
長安城図
学術文庫版あとがき
主要語彙索引


上田 篤 (うえだあつし)
「日本都市論」
 (にほんとしろん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・広瀬郁
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*346頁 / 発行 1986 年

*カバー文
戦後の都市開発は生産と利便に傾き、都市に対する文化的構想力を喪失していた。本書は、近代が生み出したそのような「計画された都市空間」ではなく、「生きられた都市空間」、たとえば神社や寺の境内、鎮守の森、道、広場等の再発見によって、人々が住みこなし、多様な意味をつけ加えていく「スミカとしての都市」の復権を目ざしたものである。著者のファンタジーに満ちた自由な発想と提言が随所に息づく上田都市論の原点をなす好著。

*目次
「学術文庫」のためのまえがき
序 日本の都市を考える
1 日本都市論
2 空間の論理
3 文化財の保存
4 日本の土地問題
5 新しいスミカとしての都市
あとがき
上田都市論の原点 陣内秀信
初出一覧


上田 三四二 (うえだみよじ)
「短歌一生 ― 物に到るこころ」 (たんかいっしょう)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
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*314頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
ここに心があり、そこに物があるのではない。物が心であり、心が物である。現実のあらわれかたとしては、物は物であり心は心であるが、二つを結ぶのが詩歌の言葉で、結ぶというのはそれらが本来一であることを証すのである。詩歌の言葉は、かぎりなく身にちかい。心の声だからである。その心の声が意味を帯びるのは、声が身をはなれて物にとどくからだ。むしろ、物における意味が身において声となるのである。(著者「あとがき」より)

*目次
一 作歌の指標
 底荷 / 歌の道三題 / 作歌の指標 一 / 出来、不出来 / 即詠作法 / 作歌の指標 二 / 老いと円熟
二 物に到るこころ
 物に到るこころ / 俳句に学ぶ / 序詞と枕詞のこと ― 物と心と言葉・素稿 / 子規の尖端 / 対蹠的なものの行方 / 「写生」の虚実 / いのちの歌
三 実作と鑑賞
 作歌の現場 / 春泥 ― わが歌の秘密 / ある年の春に / 詩歌十二ヶ月 / 花橘の一首 / 「ただよふ」につき / 「東海の小島」のこと / 寂寥と憧憬
四 わが来し方
 私の処女作 / 療養所にて / 歌人・人間・世間 ― あるいは隠遁について / たまものとしての四十代 / 供物の餅 / 季節はわれを / 立秋のころ / 還暦 / 余命 / 病後元旦 / 没り日と月の出 / 道の上
五 源流と本質
 定型意識の問題 / 相聞歌序説 / 物と心と言葉
あとがき
初出一覧


上野 瞭 (うえのりょう)
「目こぼし歌こぼし」 
(めこぼしうたこぼし)


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*353頁
*発行1978年
*カバー装画・挿し絵 梶山俊夫

*かばー文
下級武士の息子足柄七十郎は、ふとしたことから城下の居酒屋「とろろ」で起きた不可解で怖ろしい殺人事件にまきこまれた。事件の渦中におかれ、謎の古地図をふところに仇討ちに出た七十郎は、藩の非人間的な搾取のからくりを知る ― 人間が真に人間らしく生きる自由と平等の問題を追求した意欲的な長編時代小説。

*解説頁・鶴見俊輔


上原 和 (うえはらかず)
「斑鳩の白い道のうえに ― 聖徳太子論」
(いかるがのしろいみちのうえに)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・志賀紀子
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*374頁 / 発行 1992年

*カバー文
斑鳩の白い道のうえを、黒駒を駆って戦さに赴く聖徳太子。若き日の多感な太子の“血塗られし手”の経験こそ彼の人生の原点とみる著者は、同時に法隆寺創建や勝鬘経講経など、深く仏教に帰依した太子の姿を玉虫厨子に描かれてある「捨身飼虎」図と重ね合わせて、そこにまぎれもない捨身の思想を見出す。東アジア未曾有の歴史の転換期を生きた一人の古代知識人の華麗にして哀切な運命を描いた名著。

*目次
「学術文庫」版まえがき / はしがき(原本)
序章 斑鳩のこころ
 1 言葉の証し
 2 消された文字
第一章 豊聡耳廐戸皇子(とよとみみのうまやどのみこ)
 1 飛鳥の石棺
 2 疾駆する“騎馬の太子”
 3 飛鳥と磐余(いわれ) ―― 二つの誕生地
 4 厩戸の肖像画
第二章 遍歴の太子
 1 伊予湯岡(いよゆのおか)の碑
 2 海上の道
第三章 血塗られし手
 1 物部守屋(もののべのもりや)討伐戦
 2 崇峻弑逆(すしゅんしいぎゃく)
 3 法隆寺の創建 ―― 『勝鬘経(しょうまんぎょう)』と「十七条憲法」
第四章 “太子コロニー”の誕生
 1 蘇我馬子と厩戸 ―― 斑鳩隠遁説の疑問
 2 花咲ける“太子コロニー”
 3 結晶する創造的精神
第五章 廐戸の死
 1 哀切の天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)
 2 捨身飼虎(しゃしんしこ) ―― よみがえる玉虫厨子(たまむしのずし)
終章 不死鳥の寺
 1 灰燼 ―― 壬申の乱前夜
 2 法隆寺の再建

解説 梅原猛 / あとがき / 系図 / 聖徳太子年表 / 索引


上原 和 (うえはらかず)
「トロイア幻想 : 古代憧憬の旅」 (とろいあげんそう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・志賀紀子
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*275頁 / 発行 1989年

*カバー文
パルテノン神殿の柱を見ては、法隆寺の太く雄々しい柱の源流ならんかと思い、アルカイック期の女神たちの微笑と正面観照性の衣褶に、遥かなわが飛鳥仏を偲び、古代美術の大いなる東漸の道に想いを馳せる。あるいはまた、ギリシア悲劇の中でも、十年に及ぶトロイア遠征にかかわる詩句は、その先史世界の諸遺跡と相まって、著者の胸奥に今もなお鮮明に息づく。日本美の源泉を求め続ける旅人が、古代逍遥に見いだしたロマンのこころ。

*目次
トロイアと斑鳩を結ぶもの ―― 序に代えて
T エーゲ海の光と風 ―― 古代美術の宴
U トロイア幻想 ―― 古代憧憬の旅
V インドの光と影
W 遥かなる敦煌
X 斑鳩古京
初出一覧
索引


上山 安敏 (うえやまやすとし)
「世紀末ドイツの若者」
(せいきまつどいつのわかもの)
講談社学術文庫


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*カバーデザイン・志賀紀子

*296頁 / 発行 1994年

*カバー文
ドイツの若者のイメージを代表するワンダーフォーゲルは、反世紀末的で、反デカダン的であった。彼らは世紀末を次の世紀への飛躍の兆候としてとらえた。若者たちが創り出した雑誌「ユーゲント」も未来への希望を表現した。ドイツの世紀末は、パリやウィーン風の終末論的世紀末と異なり、未来志向の世紀末転換期であった。世紀末に生きるドイツの若者の生態を文化史的観点から斬新に描いた名著。

*目次
講談社学術文庫版まえがき
1 遍歴する若者たち
2 ワンダーフォーゲルの思想と背景
3 「自由ドイツ青年」
4 世紀末の大学生気質
5 若者と性
6 ボヘミアンとコロニー
終章 世紀転換期から三〇年代へ
原本あとがき
解説 上山さんのこと、『世紀末ドイツの若者』のこと … 木田元
『世紀末ドイツの若者』関連年表
写真・図版文献
参考文献
索引(事項・人名)


潮木 守一 (うしおぎもりかず)
「京都帝国大学の挑戦」
(きょうとていこくだいがくのちょうせん)
講談社学術文庫


*装幀・蟹江征治
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*288頁 / 発行 1997年

*カバー文
わが国高等教育の頂点に君臨する東京帝国大学の良きライバルとして、明治三十年に創設された京都帝国大学。東大の官僚育成のための詰めこみ教育や権威主義を批判して、ドイツの大学をモデルに演習や卒業論文を重視した独自の教育方法を展開した。学生の自由でかつ自主的な学習・研究態度の育成をめざした京大創設期の教育改革の理想と挫折の歴史を考察し、あらためて今日の大学教育のあり方を問う。

*目次
第一章 先発大学と後発大学の競争
 京都帝国大学の登場 大学間の競争 後発大学の挑戦 拝官主義への批判 創設期の京大教授たち ドイツ・モデルの移植
第二章 明治三十年代の大学改革論
 フランス型大学・ドイツ型大学 なぜ学生を自由にしておいたのか 高根義人の森有礼批判 研究を通じての教育 ゼミナール教育
第三章 モデルとしてのドイツの大学
 ドイツの大学のゼミナール ゼミナールの変質 ゼミナールの増加 研究の細分化 ゼミナール批判
第四章 帝国大学の教育システム
 京大方式の登場 京大方式の独自性 実験大学としての京大 東大の教育システム ヴェンティヒの東大批判 東大でのゼミナール 改革の担い手 明治三六年改革の意味
第五章 東西両京の大学の競争
 文官高等試験をめぐる競争 高文合格者の背景 誰が高文試験を支配したのか 学生獲得をめぐる競争 学生からみた両京の大学
第六章 改革の挫折
 帝大特権廃止運動 帝大批判の登場 謎の明治四〇年敗北 退陣の弁 おわりに
付論
 1 ルーツは果たしてドイツか?
 2 京都帝国大学の挑戦と挫折
 3 大学と学問の風土 ―― 利根川進博士のノーベル賞受賞に思う
 4 教育論の自己成就予言的ディレンマ
原本あとがき
学術文庫版あとがき


内村 鑑三著 大内 三郎訳 (うちむらかんぞう・おおうちさぶろう)
「余はいかにしてキリスト信徒となりしか」
 (よはいかにしてきりすとしんととなりしか)


新版カバー
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旧版カバー

*261頁
*発行 昭和46年

*カバー文
宗教的無関心や偶像崇拝的な精神の桎梏を脱し、唯一の神の子キリストの福音に目覚めていく入信の過程を英文で記した信仰的自叙伝である。求道的な態度で自己を厳しく律しながら回心していく姿は、読む者の胸を強くうたずにはおかない。キリスト教文学の世界的名著。


宇野 精一 (うのせいいち)
「儒教思想」
(じゅきょうしそう)
講談社学術文庫


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*171頁
*発行 1984年
*カバーデザイン・志賀紀子

*カバー文
日本の思想及び文学と儒教とのかかわりは古く、記紀の時代からであり、かつその影響力たるや深く、儒教を理会せずに日本を語れないと言われているが、その中国で二千余年の間になした変化発展は複雑である。偏見を棄て、虚心坦懐に儒教の本道(ほんとう)を識ることは、現在の日本人にとって必要なことであろう。本書は儒教の根本思想を「儒教の成立と発展」「経書及び経学」「哲学思想」「倫理思想」「政治思想」の五段階に区分し、整理した好著である。


宇野 千代 (うのちよ)
「或る一人の女の話・刺す」
(あるひとりのおんなのはなし・さす)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*282頁 / 発行 1989年

*カバー文
他の介入を許さず気侭に生きた〈放蕩無頼〉の人生。雪の上で夥しい血を吐き、狂い死した父は、娘に〈真っとう〉に生きろと教えた。しかし娘は、父の道をなぞるように更に鮮烈に生きた。七十を越した女が、この世に生れ過した不思議を恬淡と語りかける「或る一人の女の話」。「刺す」を併録。自伝的傑作二篇。

*巻末頁
著者から読者へ / 解説 佐々木幹雄 / 作家案内 大塚豊子 / 著書目録


宇野 信夫 (うののぶお)
「うつくしい言葉」 (うつくしいことば)


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*204頁
*発行 1988年
*カバーデザイン・河合良之

*カバー文
日本人が忘れてしまった美しい言葉と美しい日本語。近頃の言葉の乱れの根源はテレビである、とよく言われる。綺麗な美しい言葉が年と共に次第に通用しなくなってくるのは、淋しいかぎりである。とりわけ言葉を大切にし、言葉について考えてきた劇作の第一人者が、鋭敏な言葉感覚と洒落た都会感覚で綴る。

*解説頁・西山松之助


宇野 信夫 (うののぶお)
「しゃれた言葉」 (しゃれたことば)


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*239頁
*発行 1984年

*カバー文
人生の達人と各界の名人の名言、至言、警句を、粋な筆致で綴るほんものの1冊。戯曲というとりわけ言葉を大切にする仕事に携わる劇作家である著者が、耳にし、感動した"しゃれた言葉"の数々。言葉の乱れが気になる昨今に、日本に住み、日本人であるからにはもっと日本語を大切にしたい、その味と深さ。

*解説頁・土岐雄三


梅棹 忠夫 (うめさおただお)
「狩猟と遊牧の世界 ― 自然社会の進化」
 (しゅりょうとゆうぼくのせかい)
講談社学術文庫



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*174頁
*発行 昭和51年
*カバー装画・秋野卓美

*カバー文
自然社会から農業社会をへて産業社会と進化してきた今日、地球上にはいまもそれからの社会が展開している。本書は現代社会の基盤を解明するため、狩猟、遊牧、農耕という三つの生活様式を地球的規模で位置づけるとともに、旧世界の東北から西南にひろがる乾燥地帯に生活する狩猟と遊牧民の社会に焦点をさだめその起源をさぐる。ここには豊富な踏査体験のうえにしか構築されえない著者特有の雄大な社会進化史の基骨が提示されている。

*解説頁・谷泰


梅田 修 (うめだおさむ)
「世界人名物語 名前の中のヨーロッパ文化」
(せかいじんめいものがたり)
講談社学術文庫


*カバー図版提供・PPS
 カバーデザイン・蟹江征治
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*256頁 / 発行 2012年

*カバー文
神々や英雄への憧憬、聖人や名君への賞賛から生まれた名前。歴史と文化に根ざす人々の思いと固有のイメージがこめられている名前の由来と変遷をさぐり、多様な文化の交流と積み重ねの上に成立しているヨーロッパの発想、価値観、社会観を明らかにする。ギリシャ・ローマ神話からハリウッドスターまで、人名で読み解くヨーロッパの文化、歴史、民俗。

*目次
はじめに
序章 名前がもつ豊かな世界
第一章 ヤハウエが臨在するヨーロッパ人の心
第二章 殉教聖人にひそむギリシャの神々や英雄
第三章 東からの光に照らされる覇者ローマ
第四章 キリスト教を受け入れて再生したゲルマン精神
第五章 現代に生きるケルトのロマン
第六章 北欧とビザンティンを繋ぐロシア
おわりに / 学術文庫版あとがき / 主な参考文献


海野 弘 (うんのひろし)
「酒場の文化史」
(さかばのぶんかし)
講談社学術文庫


*カバー図版・19世紀のロンドンのパブのようす カバーデザイン・蟹江征治
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*256頁 / 発行 2009年

*カバー文
石器時代の洞窟にはじまる「ドリンカーの楽園」はどう変化してきたのか? 宿屋、イン、パブ、キャバレー、カフェ、ギャンゲット、ジャズ・クラブ……。十九世紀から二十世紀にかけて起こった酒場の革命とは?
ギリシア神話、チョーサー、シェイクスピア、ディケンズ、バルザック、シムノン……。同時代の小説をも資料として読み込み、人間臭い特殊空間の変遷を活写する。

*目次
第一章 酒場の誕生
 1 洞窟の酒場 / 2 チョーサーの酒場
第二章 愉しきイギリス
 1 シェイクスピアの酒場 / 2 「大旅行」時代の酒場
第三章 大都市のなかで
 1 ディケンズの酒場 / 2 バルザックの酒場
第四章 世紀末へ
 1 消えゆくロンドンの居酒屋 カクテル・タイム1 / 2 世紀末の酒場
第五章 二十世紀とジャズの時代
 1 ワインと一九二〇年代 カクテル・タイム2 / 2 カクテル・エイジとホテルのバー カクテル・タイム3 / 3 ジャズ・エイジの酒場
あとがき / 学術文庫版へのあとがき