絶版文庫書誌集成

大衆文学館
文庫コレクション(講談社) 【あ行】


鮎川 哲也 (あゆかわてつや)
「ペトロフ事件」 (ぺとろふじけん)



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*277頁 / 発行 1996年

*カバー文
日本支配下の旧満州、大連近郊で独身の老ロシア人富豪ペトロフが殺害された。財産目当ての犯罪―鬼貫警部は三人の甥とその恋人を追及する。しかし、そこには堅固なアリバイが立ちはだかっていた! 大動脈・満鉄時刻表の行間にそそがれる鬼貫の執拗な視線と緻密な推理。時刻表ミステリーを拓いた巨匠のデビュー作を、実際の時刻表をもとに補筆された決定稿に、松野一夫画伯の挿絵を添えて贈る。


海野 十三 (うんのじゅうぞう)
「深夜の市長」 
(しんやのしちょう)


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*211頁 / 発行 1997年

*カバー文
深夜、急激に変容する大都市新興地区が帯びる迷宮感覚 ―― 。東京を思わせるTという大都市。夜ともなると昼間とは全く別個の存在となり、ごく少数の人しか知らない不思議な都市と化す。その闇と迷路の暗黒の世界を支配するのが「深夜の市長」。昼間の市長と市議会の対立するなか、次々と起こる怪事件。解決しようと深夜の街をかけまわる奇妙な男 ―― 怪人市長の正体は!? 幻想ミステリ傑作。

*解題 紀田順一郎


海野 十三 (うんのじゅうぞう)
「蠅男」 
(はえおとこ)


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*268頁 / 発行 1996年

*カバー文
大阪の富豪に殺人予告が届いた。差出人は蝿男。警備は厳戒をきわめた。しかし、それを嘲笑うかのごとく、富豪は天井に吊されていた。完全に近い密室に、煙のように侵入しうる犯人とは、いったい何者? 名探偵・帆村荘六は、この不可能犯罪に敢然と挑み、怪人蝿男に肉迫する! 猟奇的な発端から戦慄のラストシーンまで、昭和初期のエログロ・ナンセンスの雰囲気を濃密に漂わせた鬼才の代表的長編。

*目次
蝿男

 巻末エッセイ 橋本哲夫
 人と作品 紀田順一郎



江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) 新保 博久編集 (しんぼひろし)
「明智小五郎全集」 (あけちこごろうぜんしゅう)



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*453頁 / 発行 1995年

*カバー文
もじゃもじゃの髪をかきむしり、難事件を鮮やかに解く名探偵明智小五郎。『D坂の殺人事件』でデビュー以来、乱歩の本格推理や少年ものに登場、天才的な推理力で絶大な人気を獲得する。本書は、近代的名探偵の代名詞でもある明智小五郎が関わった全短篇に、未刊行の脚本『黒手組』を加え、さらに、明智小五郎を描いた初出誌の挿絵も添えて名探偵の独特のイメージと魅力を多面的に再現するユニークな企画。

*目次
何者
D坂の殺人事件
心理試験
黒手組
脚本 黒手組
幽霊
屋根裏の散歩者
怪人二十面相より
兇器
月と手袋
 巻末エッセイ 久世光彦
 人と作品 新保博久


岡本 綺堂 (おかもときどう) 縄田 一男編 (なわたかずお)
「半七捕物帳〈正続〉」 (はんしちとりものちょう)



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*正編 445頁・続編 429頁 / 発行 正編1995年・続編1997年

*カバー文
 正編
日本にもシャーロック・ホームズはいた!江戸の風物、人情に関する綺堂の豊かな造詣と限りない郷愁を身にまとった神田三河町の岡っ引・半七の名推理は、大衆文学史に、“捕物帳”という魅力のジャンルを拓いた。江戸ならではの怪事件の謎を通して、この街に生きた人びとの息づかいをも活写した探偵譚68編から、江戸市井物に才筆を振るう直木賞作家が10編を厳選、雑誌発表時の挿絵とともに贈る。

 続編
半七は江戸時代の隠れたシャーロック・ホームズだ。「江戸名所図会」に描かれている江戸の姿を今日に伝えたいという著者の意図が全編に行きわたり、江戸の風物詩と市井の機微にひたりながら、半七老人の語りに、いつしか耳を傾ける。奇怪な謎に挑む半七の足でかせぐ捜査と冴えた推理にいつしか酔いしれる。捕物帳の嚆矢ながら、今日でも新鮮さを失わない大衆文学の古典。前期から13編の珠玉を収録。

*目次
 正編
十五夜御用心 / 金の蝋燭 / 正雪の絵馬 / 新カチカチ山 / 河豚太鼓 / 菊人形の昔 / 青山の仇討 / 吉良の脇指 / 歩兵の髪切り / 二人女房

 続編
お文の魂 / 石灯籠 / 勘平の死 / 湯屋の二階 / お化け師匠 / 春の雪解 / 三河万歳 / 熊の死骸 / 張子の虎 / 弁天娘 / 冬の金魚 / むらさき鯉 / 三つの声 / 人と作品 縄田一男


小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう)
「成吉思汗の後宮
(ゼナーナ・ジンギスカン)」 (じんぎすかんのこうきゅう)

*399頁 / 発行 1995年

*カバー文
ジンギスカンの秘宝が、中国北辺に流れついた男たちの暗い野望を煽る!新伝奇の名作として知られる表題作、天明期、シベリア探険を試みた日本人の異常凄絶な最期、中国紅軍に参加したドイツ人の酸鼻を極めた体験奇譚など、虚実ないまぜ、異境での人間の孤独な夢と暗い情熱を描く7編は、妖しいまでの魔力で読者を異次元世界へ誘う。幻想と幽闇の彼方に燦然と屹立する小栗伝奇ワールドの巨峰!

*目次(収録作品)
海螺斎沿海州先占記 / 紅軍巴蟆を越ゆ / ナポレオン的面貌 / 成吉思汗の後宮 / 破獄囚「禿げ鬘」 / 皇后の影法師 / 金字塔四角に飛ぶ
*巻末頁 / 巻末エッセイ 古川薫 / 人と作品 福島行一



尾崎 士郎 (おざきしろう)
「うそ八万騎」 (うそはちまんき)


*365頁 / 発行 1996年

*カバー文
河童(かっぱ)を思わせる愛嬌者、曽呂利(そろり)新左衛門は、堺でも知られた鞘(さや)細工の名人だった。信長の知遇を得るはずの日に起きた本能寺の変が、彼の運命を一変させた。雑賀(さいが)衆の軍師として秀吉軍と戦い惨敗、堺に舞い戻った彼を、突然秀吉が訪ねてきた。猿面と河童面の奇妙な交流が始まる。その陰で、淡い恋が生まれ、消えた……。戦国乱世を、才覚と度胸で飄々と生きた奇人の姿を、骨太に描き出した歴史小説。


大佛 次郎 (おさらぎじろう)
「冬の紳士」 (ふゆのしんし)



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*286頁 / 発行 1995年

*カバー文
娼婦が立つ露地裏、常連に支えられた小さなバー。そこに気まぐれに現われる正体不明の男を常連客は冬の紳士と呼んだ。男は自棄になった若い女性を救い、彼女のヒモを気取る義兄に生きることを教える。実は彼自身、はためには順調にみえる事業や家庭を捨てて、自らの第二の人生に挑戦していたのだった。冬の紳士こと尾形祐司の奇矯な行動を通して、敗戦後の日本人の生き方を示唆した記念碑的長編。

*巻末頁
 巻末エッセイ 古川薫
 人と作品 福島行一


大佛 次郎 (おさらぎじろう)
「霧笛・花火の街」 (むてき・はなびのまち)



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*417頁 / 発行 1996年

*カバー文
ガス灯揺れる横浜の異人館。ボーイの千代吉は、居留地に巣喰うならず者たちと、酒、賭博、喧嘩に明け暮れていた。そして偶然、ひとりの謎めいた少女に出会う。可憐な外見とはうらはらななまめいた女に千代吉は惹かれていく。無頼な若者の青春の燦きと悲哀を鮮やかにとらえた名作『霧苗』に、居留地ならではの哀切な恋物語『花火の街』を併録。開化期の横浜を情趣豊かに描き上げた、大佛文学の真髄!

*巻末頁
 巻末エッセイ 都筑道夫
 人と作品 福島行一

*挿画・木村荘八