絶版文庫書誌集成
大衆文学館
文庫コレクション(講談社) 【は行】



土師 清二 (はじせいじ)
「砂絵呪縛」〈上下〉 (すなえしばり)



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* 上334頁・下328頁 / 発行 1997年

*カバー文

綱吉の後継将軍擁立をめぐり幕閣は二派に分かれて熾烈(しれつ)に対立。柳沢吉保(よしやす)は紀州綱教(つなのり)を立て柳影組をつくり陰謀をめぐらせば、他方、間部詮房(まなべあきふさ)は背後に水戸光圀(みつくに)がいて天目党を組織。誘拐、スパイ等々、両派の確執を横目に、首領の、凄艶な女の肌に刺青(いれずみ)を彫る砂絵師――。坂東妻三郎主演で映画化されるや、ニヒルな主人公が多くの共感を呼び、熱狂的読者を獲得した、土師清二の名作伝奇小説、出世作。

柳影組にさらわれた清純無垢な露路(つゆじ)の行方は!? また、天目党に捕われの身となった贋金作り黒阿弥はどこにいる!? 将軍後継をめぐる陰謀合戦は、大坂城に秘蔵される黄金の竹流し分銅争奪戦へと発展の兆しをみせていよいよ激烈に。一方、女首領への恋情に妄執(もうしゅう)の虜となって夜な夜な徘徊する砂絵師――。鬼気が鬼気をよび、波乱が波乱をよんで、変転極まりなく展開する伝奇文学屈指の大作完結編。


長谷川 伸 (はせがわしん)
「荒木又右衛門(上下)」
(あらきまたえもん)


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*上368頁・下354頁 / 発行 1996年

*カバー文

寵童渡部源太夫を河合又五郎に殺害された岡山藩主・池田宮内少輔忠雄の怒りは、又五郎が、かねて池田家に遺恨を抱く旗本組に身を寄せるに及んで頂点に達する。そのころ、大和郡山で事態の進展を見守る源太夫の義兄・荒木又右衛門は武門の意地と掟の狭間で深い苦悩の中にあった……。旗本対大名の対立と幕藩体制の緊張感を背景に、緻密な考証で仇討の本義を描き出す、本格歴史小説屈指の名作!

亡君の上意を得て、事情は一変する。又右衛門は安んじて義弟・数馬の願いを容れた。同じころ、長年の盟友河合甚左衛門もまた甥・又五郎のために起った。かくして、旗本と大名の対決という幕府を震撼させる危機を孕んだまま、伊賀上野鍵屋ヶ辻の決闘の朝は来た! 史料の精査をもとに、日本三大仇討の一つとして芝居に講談に喧伝された虚飾と誇張を排しリアルな剣客像を創出した歴史文学の最高峰!


長谷川 伸 (はせがわしん)
「股旅新八景」 (またたびしんはっけい)


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*392頁 / 発行 1995年

*カバー文
縞の合羽に三度笠、軒下三寸借り受けての仁義旅 ― 舞台、映画、歌でもおなじみの〈股旅もの〉。しかし、ここに収めた八編は単なるやくざのアクション・ドラマを越えた人間の物語だ。「股旅者も、武士も、町人も、姿こそ違え、同じ血を打っている人間であることに変りはない」。義理と人情のしがらみ、法の外に打ち捨てられた渡世人の意地と哀愁にそそぐ温かいまなざし。庶民派作家の真骨頂がここにある。

*目次
八丁浜太郎
頼まれ多九蔵
旅の馬鹿安
小枕の伝八
八郎兵衛狐
獄門お蝶
髯題目の政
三ツ角段平
 巻末エッセイ 平岩弓枝
 人と作品 清原康正


林 不忘 (はやしふぼう)
「丹下左膳 乾雲坤竜の巻」〈上下〉 (たんげさぜん けんうんこんりゅうのまき)



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*上363頁・下381頁 / 発行 1996年

*カバー文

名刀乾雲丸と坤竜丸。離れれば互いに求めあい、持つ者を殺人鬼と化す宿命の妖刀だ。その一つが小野塚道場の俊才・諏訪栄三郎の手に、一つが二刀獲得に異様な執念を燃やす片眼片腕の怪剣士・丹下左膳に渡ったときから、大江戸の夜は血に染まる。乱闘に次ぐ乱闘に恋のさやあてもからみ、急展開するスリル満点の物語の興奮。映画でもおなじみ、大衆小説屈指のスーパー・ヒーロー、いよいよ登場。

異形異端の怪剣士・丹下左膳は、今宵も血刀を振るって大江戸の聞に哄笑する!2刀はふたたび仇敵同士の手に引き裂かれたのだ。左膳に与(くみ)するは奥州中村六万石、栄三郎にカを貸すのは剣侠・蒲生泰軒。血腥(なまぐさ)い魔風をな孕(はら)む刀争奪の死闘に、大岡越前の裁きや如何(いか)に?『新版大岡政談』として発表されるや、強烈な虚無的イメージで丹下左膳を一躍不滅のヒーローにした、大衆小説屈指の雄編、佳境へ!

*下巻巻末頁
 巻末エッセイ 金井美恵子 / 人と作品 浅子逸男


林 芙美子 (はやしふみこ)
「絵本猿飛佐助」 (えほんさるとびさすけ)


*426頁 / 発行 1996年

*カバー文
信州の山奥で仙人・戸沢白雲斎から独得の武芸を伝授された少年猿飛佐助は、真田幸村に乞われ沼田城に入った。時は戦国、佐助の奇策は徳川や北条の城攻めを次々に封じる。だが、自然児にとって武士の世界はなじみにくかった。放浪の旅に出た彼は、人の野心、怨恨、情愛をしたたかに思い知らされる…。「立川文庫」最大のヒーローを、著者自身の体験と重ね合わせて、人間として捉えなおした異色の長編。


日影丈吉 (ひかげじょうきち)
「ハイカラ右京探偵全集」 (はいからうきょうたんていぜんしゅう)


*472頁 / 発行 1996年

*カバー文
山高帽に針のような口髭、鹿革の手袋に細身の杖(ケーン)、フランス好みの洋服に身を包み、突如登場する怪紳士は、元国際スパイと噂も高い外務省嘱託で探偵・右京慎策。変幻自在の行動と推理で、警視庁随一の腕利き吾来警部を相手に、時には挑発、時には助力、文明開化が惹き起こす難事件を次々に解く。単行本未収禄2編を加えた<ハイカラ右京シリーズ>決定版!

*目次
舶来幻術師 / 明治の青髯 / 幽霊買い度し / 異説蝶々夫人 / 当世錬金術 / 新春双面神 / 右京閑日月 / 開花隠形変 / 怪異八笑人 / 開化百物語 / 牡丹灯異変 / 美人通り魔 / 双児の復讐 / 明治吸血鬼 / 狼男の恋


久生 十蘭 (ひさおじゅうらん)
「真説・鉄仮面」 (しんせつてっかめん)

*299頁 / 発行 1997年

*カバー文
1666年、白馬に乗った王室の公用使が、新雪をついてアルマソン村の宏壮な城館(やかた)に到着した。これが、貴公子マッチョリ殿の数奇な運命の発端となろうとは!?
仏王ルイ14世の双生児(ふたご)の兄弟、本来なら、華麗な宮殿に住み、優雅な日々を約束されたはずなのに……。その誕生にまつわる秘密とは?
ボアゴべ、デュマなどであまりにも有名な鉄仮面伝説に、久生十蘭独自の史観と、一流の切口で迫る真実!


火野 葦平 (ひのあしへい)
「花と龍」〈上下〉 (はなとりゅう)



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*上445頁・下445頁 / 発行 1996年

*カバー文
 上
女は広島の山間から、男は四国の松山から、時を同じくして裸一貫の旅に出た。日露戦争を目前に探え近代日本は興隆の頂点をめざしていた。門司港の石炭荷役に携っていた二人の若者は、運命の糸に操られるように殺伐たる九州の港を流れるなかで結ばれ、転変の人生をともに歩みはじめる。玉井金五郎の侠気とマンの心意気、その底に通いあう細やかな愛情。著者天性の雄渾なロマンみなぎる名作。
 下
喧嘩と暴力が日常の沖仲仕の上にも、近代化の波は押し寄せる。巨大資本による石炭積み込みの機械化が企てられ、若松港で玉井組の親方となった金五郎は、荷主側との交渉に身体をはった。争議、脅迫、奸計、ヤクザとの生命をかけた抗争…。時代の激流と沖仲仕の独特な信念がひきおこす事件の連続のなかに、明治の男と女の豪放で繊細な交情を鮮やかに定着させた、痛快無類、興趣抜群の自伝的長編。

*下巻巻末頁
 巻末エッセイ 佐々木久子 / 人と作品 星加輝光


藤原 審爾 (ふじわらしんじ)
「赤い殺意・罪な女」
(あかいさつい・つみなおんな)


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*238頁
*発行 1997年

*カバー文
夫と子供の不在の一夜、強盗に踏まこまれた、一人の平凡な主婦と強盗との接点を、誰にでも日常的に起こる得る恐怖と描く心理サスペンス『赤い殺意』。貧しく不幸に生まれ、ただ一筋に男に尽くすしかない可愛い女を浮き彫る直木賞受賞「罪な女」。精細な心理描写の丹念な積み重ねと、定評のある女の情感描写の双方が響き合って、人間の哀しさと人間愛へと収斂されていく長短編の代表作を収録。


船山 馨 (ふなやまかおる)
「お登勢(上下)」 (おとせ)


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*上339頁・下308頁 / 発行 1997年

*カバー文

幕末期、徳島藩とその属藩稲田家は陰湿な対立状態にあった。本藩の下級家臣に奉公に出たお登勢は、陪臣津田貢にはげしく惹かれる。だが一方で、主家の嫡子から恋慕される。しかもその嫡子の妹と貢のあいだに縁談がもちあがるのだ。一介の下女と武士のあいだに横たわる身分の壁。一少女に時代は酷だ。 ―― 激動する幕末維新期の荒波のなかで愛一筋を生きた女の運命を描く著者会心の長編歴史ロマン!


徳川政権瓦解は徳島藩の属藩稲田家にも暴風のごとき嵐となって吹きつけた。北海道静内への移住。先に渡道した津田貢のあとを追って、お登勢も厳寒の北海道へとわたる。だが、その地で見出したのはあまりにも厳しい大自然の猛威だった。さらに、お登勢は思いもかけぬ愛の苦境、愛の修羅場に立たされる ―― 幕末維新期の荒波を超えて、大地に生きる女性の断乎たる生きざまを描く長編歴史大作。