絶版文庫書誌集成
大衆文学館 文庫コレクション(講談社) 【ま行】



牧 逸馬 (まきいつま)
「世界怪奇実話」
(せかいかいきじつわ)


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*434頁 / 発行 1997年

*カバー文
結婚するや否や花嫁を連続殺害する“浴槽の花嫁”のような猟奇殺人。パリ社交界に二十年にわたり女王として君臨した驚倒的大詐欺師。世紀の大遭難タイタニック号を描く海難事故もの。軍事スパイものに進化論裁判ものと、世界怪奇実話全三十三話から精選した十編を収録。一人三役の奇才が外遊して犯罪怪奇事件を渉猟し、綿密に描写し、読者の心胆を寒からしめる実録小説集。

*目次
都会の類人猿
ウンベルト夫人の財産
浴槽の花嫁
戦雲を駆る女怪
カラブウ内親王殿下
運命のSOS
白日の幽霊
街を陰る死翼
戦争とは何だ
神変美容術師
 人と作品 浅子逸男


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「彩色江戸切絵図」 
(さいしきえどきりえず)


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*382頁 / 発行 1996年

*カバー文
江戸幕府の頽廃の翳(かげり)は、日本橋界隈の商人たちの一見平穏な暮らしをも蝕(むしば)みはじめていた。惨殺死体が真実を暴く「大黒屋」をはじめ、捕物帳の形を借りた6編の物語は、爛熟の気配色濃い風俗の陰に生まれる不気味な犯罪のからくりに鮮やかな推理の光をあてる。仮借ない世相のなかの庶民のせつない生活感と憐れな人情。ミステリーの巨匠が、的確な時代認識をふまえて描いた時代推理小説の傑作!

*目次
大黒屋
大山詣で
山椒魚
三人の留守居役
蔵の中
女義太夫
 巻末エッセイ 阿井景子 
 人と作品 権田萬治


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「紅刷り江戸噂」 
(べにずりえどうわさ)


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*320頁 / 発行 1997年

*カバー文
色と欲からおこる事件の数々、人間の弱さと罪業の深さ、江戸下町にも日本橋辺の大店にも、人生の悲愁が翳を落とす。織物問屋主人急死の真相を暴く『七種粥』、渡りの絵職人の犯罪を描く『虎』など、収録六編に纒綿する江戸情緒は、巨匠清張の的確な史観と、鋭い人間観察に裏打ちされ、生彩な光を放つ。―江戸市井の人間模様と風俗を描いて、推理の妙味と時代小説の醍醐味を堪能させる傑作集。

*目次
七種粥

突風
見世物師

役者絵
 人と作品 権田萬治


三上 於莵吉 (みかみおときち)
「雪之丞変化」〈上下〉 
(ゆきのじょうへんげ)

 
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  *上380頁・下388頁 / 発行 1995年

*カバー文

あで姿で大江戸の人気をさらう上方芝居の若手女形・雪之丞の胸には、重大な決意が秘められていた。豪商だった父と母を奸計で破滅させ、無残な死へ追い込んだ長崎奉行と輩下の商人たちが、いま江戸で権勢を振るっている。親の仇、恥知らずの悪人どもを許すことはできない! 免許皆伝の腕を美貌に隠し、雪之丞は侠賊・闇太郎とともに復讐の時を窺う。絢爛たる設定、手に汗握る展開、これぞ大衆小説の粋!

あるときは危機一髪の白刃、またあるときは決意を鈍らせる人情の足枷。女賊の横恋慕、将軍家愛妾の純愛、さらには邪剣の使い手の逆恨みが、次々に雪之丞の前に立ちはだかる。しかし、闇太郎の侠気にも助けられ、雪之丞の復讐の刃は、一歩また一歩と親の仇に迫っていく。そして、ついに凄絶な最後の時がやってきた。映画や舞台の名場面でも知られる、奔放華麗、日本大衆文学史を飾る代表的長編。

*巻末頁
 巻末エッセイ 岩橋邦枝
 人と作品 石井富士弥


村上 元三 (むらかみげんぞう)
「佐々木小次郎」〈上下〉 
(ささきこじろう)


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*上巻 425頁・下巻 429頁 / 発行 1995年

*カバー文
上巻
自分の力を試したい。家柄が物をいわず、己れ一人の実力が頼れる世界に出たい―小太刀の名人に養育された孤児佐々木小次郎は、一剣に野望を賭け、恋人を捨て、故郷を捨てた。やがて、出雲のお国の舞姿に啓示を得た無心の剣は、一閃、熊野に乱舞する飛燕二羽を斬り落とす。これぞ、秘剣つばめ返し。恨みの白刃、恋のしがらみを振り払い、己れの恣意に生きる美貌の天才剣士の華やかな躍動感。

下巻
剣名上がり、新流派を興(おこ)した小次郎は、曲折の未に結ばれた恋人と平穏な日々を送っていた。そんなとき、剣による自己完成をめざすもう1人の天才が登場する。宮本武蔵だ。かくて、浜ぐるま咲く孤島船島の浜で、小次郎は宿命のライバルとの対決の瞬間を待つ……。既成の権威に抗し、24年の人生を不羈(ふき)奔放に駆け抜けた若者の運命を描き、戦後時代小説復活の輝やかしい烽火(のろし)となった画期的名作。