絶版文庫書誌集成
大衆文学館
文庫コレクション(講談社)
【な行】


直木 三十五  縄田 一男編 (なおきさんじゅうご)
「仇討二十一話」 (あだうちにじゅいちわ)


*466頁 / 発行 1996年

*カバー文
高田の馬場の堀部安兵衛、鍵屋の辻の荒木又右衛門、忠臣蔵で知られる赤穂四十七士…忠臣孝子の復讐譚は、芝居に、映画に、また小説に謳われてきた。仇討、その数は二百を越すという。『仇討十種』で作家デビュー以後、著者はこの日本的美徳をさまざまな形で追求しつづけた。厖大な数の仇討作品群のなかから選び抜いた二十一編は、美化されがちな艱難辛苦の物語の陰の真実をも鮮やかに浮彫りにする。

*目次
仇討に就て / 鍵屋の辻 / 高田馬場 / 鏡山 / 崇禅寺馬場 / 相馬の仇討 / 討入 / 槍の権三重帷子 / 黒石の乱闘 / 総穏寺の相討 / 近藤源太兵衛 / つづれの錦 / 波の鼓 / 岩見重太郎 / 浄瑠璃阪物語 / 巌流島 / 娘巡礼形見笈摺 / 傾城買虎之巻 / 安達元右衛門 / 芥川虚無僧記 / 敵討亀山譚


直木 三十五 (なおきさんじゅうご)
「南国太平記」〈上下〉
 (なんごくたいへいき)


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*上 603頁・下 609頁 / 発行 1997年

*カバー文
 上
調書(ずしょ)笑左衛門の改革策断行で、薩摩藩は財政立て直しに成功した。だが藩主斎興(なりむき)は世子斉彬に家督を譲ろうとしない。洋学好みの斉彬(なりあきら)の浪費による財政再崩壊を恐れたのだ。一方、斉興の愛妾のお由羅の方は、実子久光への家督継承を画策。その意を受けた兵道家牧仲太郎は、斉彬の子どものたちの呪殺を謀り、斉彬派の軽輩武士は陰謀暴露に奔命する。─藩情一触即発の風雲をはらむ南国藩「お由羅騒動」の顛末。

 下
薩摩藩相続をめぐって、お由羅(ゆら)一派の意をうけた牧仲太郎の呪誼は、家督を継いだ斉彬(なりあきら)のうえに及ぶが、その阻止を謀る仙波小太郎の追及も急である。一方、藩内上士と下士の対立はいよいよ熾烈(しれつ)化し、風雲児益満(ますみつ)休之助ら改革派の策動は着々と基礎を固める。
南国薩摩のお家騒動に想を借りて、激動する幕末維新期の様相を、経済、因習、新旧勢力の対立と抗争など、重層的ダイナミズムの中に捉える意欲大作。

*解説頁 「人と作品」縄田一男


中薗 英助 (なかぞのえいすけ)
「密航定期便」
(みっこうていきびん)


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*327頁 / 発行 1996年

*カバー文
美女の水葬死体と一枚の朝鮮文字(オンモン)ビラが、対馬沖の海底で発見された。だが警備艇が収容に向かったとき、死体は消えていた! そして、ビラに記された戦慄すべきメッセージと死体消失の謎が、朝鮮半島と日本を結ぶ謀略と利権の暗部を浮かび上がらせる。一九六〇年代の朝鮮半島情勢を背景に、愛憎織りなす人間ドラマを緊迫感に満ちた展開の中に描き、日本スパイ小説の先駆となった記念碑的名作。

*巻末頁
 巻末エッセイ 船戸与一
 人と作品 新保博久


中山 義秀 (なかやまぎしゅう)
「戦国史記 ― 斎藤道三」 (せんごくしき)



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*383頁
*発行 1995年

*カバー文
一介の油売り商人から天下取りへ。カこそ正義、智カと財力を武器に成り上る斉藤道三(どうさん)の不逞な生き方こそ、戦国ならではの男の姿だ。美濃守護職・土岐氏の家中乱脈に乗じ勢力を固め、その愛妾をも奪い、“国盗り”を目指す。独創的な領国経営で美濃の覇者となった乱世の、梟雄(きょうゆう)斉藤道三の苛烈な生きざまを描く表題作のほか、中編『松永弾正』、名短編『月魄(つきしろ)』『春日』を併録する、風格堂々の独自の文学世界。

*巻末頁
 巻末エッセイ 安西篤子
 人と作品 清原康正


南條 範夫 (なんじょうのりお)
「わが恋せし淀君」 (わがこいせしよどぎみ)



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*268頁 / 発行 1996年

*カバー文
淀君こそ史上最高の美女。雑誌編集者の誠之助が大坂城趾で艶麗な姿態を夢想したとたん、石垣は崩れ、彼は慶長十九年の城内にタイムスリップした! 洋服姿から切支丹と疑われるが、歴史知識を活用、神の予言者として信頼と人気を集める。そして、ついに憧れの淀君の寝所へ招かれた! だが、彼も歴史を変えることはできなかった……。SF的発想と確かな史眼で、落城の悲劇を軽妙に描く異色の快作。

*巻末頁
 巻末エッセイ 東郷隆
 人と作品 縄田一男


仁木 悦子 (にきえつこ)
「猫は知っていた」 (ねこはしっていた)


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*299頁 / 発行 1996年

*カバー文
奇怪な連続殺人は、仁木雄太郎と悦子の学生兄妹が下宿したばかりの病院で発生した。謎の電話、秘密の抜け穴、闇にきらめく毒塗りナイフ……。事件ごとに現われるペットの黒猫は何を目撃したのか? 急造名探偵の二人は次第に真相に迫っていく。鮮やかなトリックと論理的な推理、明快な文体で日本のクリスティ誕生と絶賛され、空前のミステリー・ブームを巻き起こした江戸川乱歩賞屈指の傑作!

*巻末頁
 巻末エッセイ 夏樹静子
 人と作品 硲田安介


野村 胡堂 (のむらこどう)
「銭形平次 青春篇」 (ぜにがたへいじせいしゅんへん)

*325頁 / 発行 1996年

*カバー文
正義感と人情に厚い岡っ引、騒々しい子分の八五郎を供に、窮地は名人芸の投げ銭で切り抜ける、ご存じ銭形平次。若い娘が化粧品屋で次々と消える『金色の処女』、与力一家に崇る化物の怪『復讐鬼の姿』、輿入れ途上の花嫁が相次いで誘拐される『七人の花嫁』など、江戸情緒たっぷりの妖奇と謎。初文庫化作品を中心とした初期傑作十編。恋女房となるお静とはまだ許嫁の仲。全編にみなぎる若き平次の魅力。

*収録作品
金色の処女 / 振袖源太 / 大盗懴悔 / 呪いの銀簪 / 幽霊にされた女 / 復讐鬼の姿 / お珊文身調べ / 鈴を慕う女 / 人肌地蔵 / 七人の花嫁

*資料 野村胡堂「銭形平次捕物控」作品年表



野村 胡堂 (のむらこどう)
「美男狩」〈上下〉 (びなんがり)



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*上532頁・下517頁 / 発行 1995年

*カバー文

銭屋五兵衛の財宝をめぐる暗闘で、壮大な物語の幕は開く。五兵衝の遺児・お京、異人を装う元手代・多三郎、宿敵同士の美男剣士・篠原求馬と横山新太郎、さらには水茶屋の女、軽業の少女、兇賊……。多彩な人間模様が絡みあい江戸の闇を奔(はし)る。謎が呼ぶ謎の果てに登場するのは、美男を招く妖異の邸。奸計、怨念、邪慾、そして悲恋。千変万化の展開で読者を魅惑の迷路に誘う、これぞロマンの白眉!

妖しの釣り天井に奇怪な密室。役人さえ手を出せぬこのお化け屋敷の主は高貴な美女。美男コレクターの彼女のために、妖術使いの女道士・雪江は二人の美男剣士をも邸に誘いこんだ。そして、女主人の前で何が始められるのか。わが国屈指のストーリーテラーが描き上げた構想卓抜な大長編伝奇快作。

*下巻巻末頁
 巻末エッセイ 高橋克彦
 人と作品 石井富士弥