絶版文庫書誌集成
大衆文学館
文庫コレクション(講談社) 【さ行】



佐々木 邦 (ささきくに)
「ガラマサどん」



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*452頁 / 発行 1996年

*カバー文
失業の名人の私がやっともぐりこんだのは、ガラマサどんと仇名されるワンマン社長が一代で築いたビール会社。社長は立志伝を誇大に伝えようと、私を自伝作者に指名した。身近に接するガラマサどんの稚気と奇行、振り回される部下の困惑と狼狽。ユーモア小説の代表的名作に、昭和初期サラリーマンの哀歓を巧みにスケッチした『使う人使われる人』を加え、明朗小説の魅力を存分に伝える待望の一巻。

*目次
ガラマサどん
使う人使われる人
 巻末エッセイ 阿刀田高
 人と作品 岡保生
 挿画・細木原青起 


佐々木 味津三 (ささきみつぞう)
「小笠原壱岐守」 (おがさわらいきのかみ)


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*322頁 / 発行 1997年

*カバー文
唐津六万石小笠原家の世嗣長行(ながみち)がたどった波瀾の半生。わずか二歳で廃嫡の悲運から、一転、土佐の雷公・山内容堂の推輓もあって、幕閣の中枢へと異例の昇進をとげた長行。その闊達な人間性と、国を想う熱誠。老中兼外国奉行として国難に対処する異色の合理主義者を描く表題作に、絶筆となった『山県有朋の靴』等五篇を収録。より高次な大衆小説を目ざした著者が到達した、歴史小説の記念碑的作品群!

*目次
小笠原壱岐守 / 老中の眼鏡 / 十万石の怪談 / 流行暗殺節 / 山県有朋の靴 / 人と作品 木村行伸


笹沢 左保 (ささざわさほ)
「見かえり峠の落日」
(みかえりとうげのらくじつ)


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*294頁 / 発行 1996年

*カバー文
江戸に護送される国定忠治一行とすれ違った渡世人は、表情も変えず例幣使街道を西下する。古ぼけた道中合羽、塗りのはげた長脇差(ながどす)。賭場へ誘う遊び人を無視し、凌辱される娘を見捨て、男はひたすら歩を早める。行手の下仁田宿で待つのは、はたして何か。見かえり峠は地獄への入口なのか。人生の裏街道を往くアウトローを鮮烈に描き、ヒーロー木枯し紋次郎誕生の母胎となったネオ股旅小説の傑作集!

*目次(収録作品)
見かえり峠の落日 / 中山峠に地獄をみた / 地蔵峠の雨に消える / 暮坂峠への疾走 / 鬼首峠に棄てた鈴


佐藤 紅緑 (さとうこうろく)
「ああ玉杯に花うけて / 少年賛歌」 
(ああぎょくはいにはなうけて/しょうねんさんか)

*624頁 / 発行 1997年

*カバー文
貧しさゆえに進学できない子ども、腕力にものをいわせる餓鬼大将、やさしい心の中学生、また剛直な教師、彼らが織りなす友情と義侠と師弟愛。いつの時代にもあったいじめ・暴力・非行。だが少年らの強靱さはそれをはねかえす。現代に通じる少年群像の心の叫びのなかに、人生問題、社会問題を提起し、時代をこえて訴えかける少年文学の金字塔。


獅子 文六 (ししぶんろく)
「箱根山」
(はこねやま)


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*445頁
*発行 1996年

*カバー文
天下の険、名勝箱根山の観光開発をめぐり、運輸省を巻き込んだ二大資本の熾烈な争いは、第三の勢力の殴り込みで、さらに大混乱。駆引きと思惑が乱れとぶなか、伝統と格式を誇る地元老舗旅館は対立し、あおりをくらった若い二人の恋路も、いまや前途多難だ。西武、東急、藤田観光の世に名高い箱根開発戦争をモデルに、箱根の独得な歴史も織り込んだ、シリアスでユーモラスな企業小説の嚆矢的傑作。


柴田 錬三郎 (しばたれんざぶろう)
「異常の門」
(いじょうのもん)


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*615頁
*発行 1997年

*カバー文
夢殿轉(ゆめどのうたた) ── 元公儀隠密「地の七」、実は29年前に誘拐された、琉球国中山王の嫡子・伊舎堂(いさどう)王子。将軍家息女・清姫を犯した疑いで、浜御殿の地下牢に幽閉されること2年。鮮やかな手口で脱出に成功した轉は、異国船の財宝をめぐる天皇帖・大奥帖争奪戦の真っ只中へ。スーパー・ヒーロー眠狂四郎を彷彿させる美剣士・轉を中心に繰り広げられる、凄絶な死闘と妖艶なエロチシズム。圧倒的迫力の伝奇ロマン巨編!


子母澤 寛 (しもざわかん)
「行きゆきて峠あり」〈上下〉 
(ゆきゆきてとうげあり)


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*上326頁 下345頁 / 発行 1995年

*カバー文
〈上〉
江戸昌平黌(しょうへいこう)の卒業試験に落ちた榎本釜次郎は、彼を見込む箱館奉公・堀織部正に随(したが)って北海道を知り、また長崎で海軍の技術を習得する。オランダ留学も果たし海軍副総裁となった榎本だったが、倒幕の流れは洋々たる前途を一気に押し流す。「男」を描いて定評ある著者が辿る幕末の異才・榎本武揚の運命。
〈下〉
官軍への幕府海軍艦船引き渡しを拒否した榎本武揚は、主力を卒いて箱館へ向かう。脱走である。一旦は松前軍を破り独立政府を名乗るが、官軍の圧倒的な物量の前に降伏、かくて榎本らは江戸の獄中へ…。得意の聞き書き、関係者の証言等を多用し、榎本武揚とその時代を骨太に描く、巨匠晩年の代表的雄篇。

*下巻巻末頁
 巻末エッセイ 東郷隆
 人と作品 福田久賀男


下村 悦夫 (しもむらえつお)
「悲願千人斬」〈上下〉
(ひがんせんにんげき)


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*上246頁・下225頁 / 発行 1997年

*カバー文

悲運の若君太郎頼秀。斎藤道三に滅ぼされた土岐頼芸(よりのり)の遺児。稲葉山城で首を刎ねられる寸前の太郎を救い出したのは、名僧の誉れ高い白雲上人と、異腹の弟ながら上人と瓜二つの土佐青九郎。主家再興を企てる兄弟は、太郎を護りながら、日根野備中守の執拗な追及を躱す。善玉悪玉入り乱れる人物群像の鮮やかさと奔放な空想力。戦国動乱期の美濃を背景に、華麗な乱世絵図を骨太に描く伝奇小説の白眉!


夜な夜な、稲葉山城下に出没して、天誅の刃をふるう異形の武士2人。1人は般若の仮面を被り、もう1人は天狗の仮面。土岐家再興の柱と頼む太郎頼秀を毒殺され、復讐の鬼と化した白雲上人と土佐青九郎は、千人斬の悲願を胸に、城下に血の雨をふらす。
古今絶無と評されたタイトルの見事な残酷さ。「キング」創刊号から連載され、吉川英治『剣難女難』と人気を二分した波瀾万丈の伝奇巨篇、ここに完結。

*巻末頁・人と作品 末國善己


白井喬二 (しらいきょうじ)
「新撰組」 (上下) 
(しんせんぐみ)


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*上482頁・下418頁 / 発行 1995年

*カバー文
(上)
かたや但馬流独楽(こま)師・織之助、こなた卑怯未練な金門流名人・紋兵衛。男の意地と美女を賭けて、秘術の限りを尽して対決する独楽試合は、果たして吉と出るか、凶と転ぶか。息づまる一世一代の大勝負が、直情径行の熱血漢、織之助の人生を大きく変えていく。幕末の逆まく怒檮のなかを逞しく生きぬく若者の数奇な運命を奔放な想像力で描き出し、大衆文学の魅力を定着させた、面白さ抜群の大長編、一番勝負!
(下)
勤王の志士の妹・お香代の面影を恋い求め、変転する時流にもてあそばれる織之助は、思わぬ成り行きから、ふたたび独楽勝負に身の行く末を賭けることになる。対するは愛憎半ばする宿敵、伏見流名人・潤吉。剣風吹きすさぶ京、時代の激流は二人の若者と彼らが愛する美女の運命を容赦なく押し流していく。寄略縦横、日本大衆文学史に巨大な足跡を印した著者の『富士に立つ影』と並び称される異色長編。

*補足
下巻の巻末エッセイ、白石一郎氏の文章からの抜粋
「……タイトルでは近藤勇か土方歳三の活躍する小説のようだが、内容は全く違う。独楽(こま)作り、独楽回しの名人同士の技量対決の話なのである。(中略)時代背景がたまたま新撰組の活躍した幕末というだけで、近藤勇や土方歳三は点景として、話の要所要所にちらりと姿を見せるだけにすぎない。」