絶版文庫書誌集成
講談社大衆文学館
文庫コレクション 【た行】



高垣 眸 (たかげきひとみ)
「龍神丸 / 豹(ジャガー)の眼」
(りゅうじんまる / じゃがーのめ)


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*506頁
*発行 1997年

*カバー文
世界の富の半ば以上と噂される龍神丸の秘宝。そのありかを記す、「古記録」と「謎の紙片」を巡る奸計と正義のせめぎ合いを活写する、少年伝奇小説の画期的作品『龍神丸』。大インカ帝国の王統を伝える唯一の人は日本の少年。王宮の財宝のありかの謎をとく「王位の指環」と「ツンガ王の碑」をめぐる虚々実々の駆け引きを描く『豹の眼』。いずれも、少年の胸を高鳴らしめた少年小説の大傑作。


高木 彬光 (たかぎあきみつ)
「ミイラ志願」 (みいらしがん)



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*330頁 / 発行 1996年

*カバー文
即身仏を志す盗賊の心情、信長の影武者をめぐる謀略、蹴鞠(けまり)に入れあげ乞食に身を落とす今川氏真の運命、討入りを脱落した高田郡兵衛の苦衷、首斬り浅右衛門家に養子に入った男の巧妙な計算……“志願”というユニークな視点から歴史の謎を切りとった9編の意欲連作。多年、本格推理界をリードしてきた著者が、卓抜な着想と絶妙の語り口で、我意と妄執に憑(つ)かれた人間のすさまじい情念の世界を抉り出す!

*目次
ミイラ志願 / 偽首志願 / 乞食志願 / 妖怪志願 / 不義士志願 / 飲醤志願 / 首斬り志願 / 女賊志願 / 渡海志願
 巻末エッセイ 二階堂黎人 / 人と作品 中島河太郎


多岐川 恭 (たきがわきょう)
「濡れた心・異郷の帆」 (ぬれたこころ)


*503頁 / 発行 1997年

*カバー文
烈しく愛しあう典子と寿利。少女らの愛をあざ笑うかのように、重くのしかかる殺人事件、その裏には、いかなる悪魔的意思がひそんでいるのか? 澄明な美文で、清らかな同性愛をうたいあげ、第四回江戸川乱歩賞に輝いた『濡れた心』。長崎出島を舞台に、幕末日本の閉塞感をみごとにとらえた『異郷の帆』―誰もが認める多岐川恭代代表作ベスト長編二作。


檀 一雄 (だんかずお)
「石川五右衛門」〈上下〉 (いしかわごえもん)


*上583頁・601頁 / 発行 1996年

*カバー文

遠州味方ヶ原に住みついた流れ者夫婦に、天啓のごとき子ができた。生まれついての大器量、5、6歳ともなれば独ら荒野を駆けて狐や狸を狩る怪童、後の大盗・石川五右衝門である。時は戦国。藤吉郎、家康、信玄らの血なまぐさい天下取らの裏で、野盗の女頭目をも配下におさめ、「人間どもの小賢しさに大砲をぶっ放す」神出鬼没の大暴れ! 奔放な想像力と自在な文体で直木賞を受賞した痛快長編。


天下取りなどいじましき限り、日本中を跳梁し、唐天竺まで駆け抜けようぞ。秀吉、家康らの攻防を笑いとばす大盗石川五右衛門。京の隠れ家に数々の名器を集め、大茶会を催す放胆無類の風流ぶりには、秀吉も驚嘆するばかり。天地に悪業善行の別などあるものかと広言し、個性的な荒くれどもを引き具して戦国の世を傍若無人、痛快に暴れまわった希代の風雲児の一生を、伸びやかな筆で描破した雄編。


陳 舜臣 (ちんしゅんしん)
「枯草の根 / 炎に絵を」 (かれくさのね/ほのおにえを)


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*618頁 / 発行 1997年

*カバー文
乱歩賞受賞の処女長編でありながら、中国人名探偵陶展文の活躍を、清新かつ簡潔で乾いた文体、独得のユーモア、優しく成熟した人間認識で描き、大人(たいじん)の風格を漂わせる『枯草の根』。余命いくばくもない異母兄の依頼で始めた父親の汚名晴らしに、産業スパイやドンデン返しを織りまぜて、完全犯罪を明らかにする、爽やかな『炎に絵を』。人間と人間の織りなす綾で読者を魅了する長編傑作推理二編。

*目次
枯草の根
炎に絵を
 人と作品 権田萬治


都筑 道夫 (つづきみちお)
「猫の舌に釘をうて・三重露出」 (ねこのしたにくぎをうて・さんじゅうろしゅつ)


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*584頁 / 発行 1997年

*カバー文
名探偵が実は犯人であった、という意外さ。被害者と思われていた人物が、本当は加害者であったという面白さ。一人称小説の記述者、つまり私が、真犯人である、という驚き ―― ミステリの難題一人三役に敢然と挑んだ野心作『猫の舌に釘をうて』。007の痛快さと山田風太郎忍法帖の面白さを併せもつ冒険アクションとしても楽しめる『三重露出』。凝りに凝った工芸品のような本格推理趣向の傑作二編。

*目次
猫の舌に釘をうて
三重露出
 巻末エッセイ 中野康太郎
 人と作品 新保博久


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「怪異雛人形」 (かいいひなにんぎょう)



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*431頁 / 発行 1995年

*カバー文
連続殺人の犠牲者は、みな雛人形を抱えていた。名人人形師の遺作という5体の人形には、どんな秘密が隠されているのか。日ごろ子供達に手習いを教える異色の同心いろはの左近は、この謎をどう解く?推理小説の手法も鮮やかな表題作をはじめ、般若面をつけた生首の怪を追う『鬼面三人組』、刺青を彫った死体ばかりが盗まれる『美しき白鬼』など、巨匠の抜群の小説技巧を示す初期捕物帳七作を収録。

*目次
怪異雛人形
鬼面三人組
美しき白鬼
恋文地獄
自殺屋敷
悪魔凧
逆立小僧
 巻末エッセイ 思い出に鮮烈な新宿での一夜 ―角田喜久雄先生を偲んで― 山村正夫
 人と作品 角田喜久雄 縄田一男


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「髑髏銭」 (どくろせん)


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*641頁 / 発行 1996年

*カバー文
只見川渓谷に眠る謎の財宝 ―― 浮田城の浮田左近次は子孫のために財宝のありかを髑髏銭の組合せで知らせようとしたが何者かに殺される。孤独な剣士銭酸漿(ぜにほおずき)は亡父左近次の遺恨をはらそうと復讐鬼と化す。死闘の末に手にした髑髏銭が示す秘宝の謎とは何か。秘宝をめぐる幕府の実力者柳沢保明、駿河大納言忠長卿の末裔らの入り乱れての活劇に、悲恋の色模様も交えた伝奇小説の会心作!

*解説頁・仁賀克雄


戸川 昌子 (とがわまさこ)
「大いなる幻影 / 猟人日記」 
(おおいなるげんえい/りょうじんにっき)


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*624頁
*発行 1997年

*カバー文
古色蒼然とした五階建て赤レンガのアパートは、男子禁制の女の館だった。互いに他人を寄せつけずに暮らす孤独な老嬢たち。そこへ突如アパート移動工事が始まる。工事に呼応して奇怪な事件が続発し、それまで沈潜していた老嬢たちの過去が、むき出しにされた。――華麗なデビューを果たした江戸川乱歩賞の、二重のドンデン返しが見事なサスペンス小説の傑作。その映画化が話題を呼んだ猟人日記を併録する。

*巻末頁
巻末エッセイ 戸川安宣
人と作品 関口苑生


富田 常雄 (とみたつねお)
「姿三四郎」 
天の巻・地の巻・人の巻 (すがたさんしろう)




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*天の巻 452頁・地の巻 425頁・人の巻 449頁 / 発行 1996年

*カバー文
天の巻
文明開化の波は、日本武道にも押し寄せていた。理論に裏打ちされた近代柔道を模索する矢野正五郎の紘道館に身を寄せた若者・三四郎は、苛酷な稽古に耐え、紘道館を敵視する古式柔術、唐手、さらにはボクシングをも次々に打ち破っていく。興隆期に向かう明治の時代相を背景に、柔道草創期の苦難を生きた天才児の野望と成長の姿を雄渾に描き上げた、大衆文学史に輝やく入魂の青春物語。全三巻。

地の巻
紘道館の俊英姿三四郎に、苛烈な試練が次々と襲いかかる。柔術諸派との興廃を賭けた対決につづくアメリカ人ボクサーとの変則的な興行。その陰には、怨みを越えて彼を慕う乙美を身売りから救おうとする強い決意が秘められていた。だが、金銭を得る興行は、紘道館からの破門を意味していた…。快男児の激情と懊悩を、柔道の苦難の青春期に重ね合わせて描く渾身のロマン、いよいよ波乱万丈。

人の巻
驕慢な子爵令嬢、彼が倒した柔術師範の遺児、数奇な生い立ちの娘義太夫の花形、鳶の頭の勝気な娘。彼女たちのひたすらな思慕にも、柔道一筋の三四郎の心が乱されることはなかったが、嫉妬と敵意の渦は否応なく彼を巻きこんでいく。そして、最後の強敵の登場。必殺技山嵐は炸裂するか。柔道の黎明期に燦然と輝やく天才児の多感な青春を、迫真の決闘描写をまじえて描いた感動の名作、堂々完結。

*人の巻巻末頁
 巻末エッセイ 野瀬光ニ
 人と作品 笹川吉晴

*挿画・風間 完