絶版文庫書誌集成
大衆文学館
文庫コレクション(講談社) 【や】



山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「棺の中の悦楽」
(ひつぎのなかのえつらく)


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*255頁
*発行 1996年

*カバー文
愛する人のために殺人を犯した彼は、唯一の目撃者である公金横領犯と、たがいの利益をかけて、ひそかにある契約を結んだ。しかし、四年後、初恋の女性の結婚式が彼を一変させる。誓約は破られ、彼はとめどない女遍歴へのめりこんでいった……。棺にひそむ悦楽とは何か? 人間心理の機微と意表をつく結末。鬼才の奔放な空想力と緻密な構想力が鮮やかに融合した、緊迫感溢れる異色ミステリー。

*巻末頁
  巻末エッセイ 関川夏央
  人と作品 縄田一男


山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「奇想小説集」 (きそうしょうせつしゅう)


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*341頁 / 発行 1995年

*カバー文
風邪をひけば股間でくしゃみをし、美女を見れば鼻がマスクを突き上げる……。鼻と陰茎の位置が逆転した男の世にも悲痛滑稽な物語『陰茎人』、人口抑制のため制慾帯着用と性交時間制限を立法化する『満員島』など、奇想天外、奔放無比の発想で隠微なタブーの本質をえぐる快作八編に、若き日の日本人文豪がホームズに挑む異色推理『黄色い下宿人』を加えて開示する、天馬空を行くイマジネーションの饗宴!

*目次
陰茎人
蝋人
満員島
自動射精機
ハカリン
万太郎の耳
紋次郎の職業
万人坑
(わんいんかん)
黄色い下宿人
 巻末エッセイ 中野翠
 人と作品 縄田一男


山田風太郎 (やまだふうたろう)
「奇想ミステリ集」
(きそうみすてりしゅう)


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*444頁
*発行 1997年

*カバー文
奇想天外・荒唐無稽と絶賛をあびる山田風太郎作品。その原点が現代ミステリだ。「愛する義妹の孕(はら)む子の父親探しに狂奔するアプレ遊廓の経営者」「客の男たちを恋の騎士として競わせる経歴不詳の酒場のマダム」ら、戦後のデカダンスを色濃く映す主人公。戦慄と猟奇、妖美と夢幻の渦巻くなかに仕掛けられる想像を絶する動機と犯罪、ドンデン返しの結末。人情の機微を踏まえたトリックが翻弄する傑作集。

*収録作品
新かぐや姫 / 女妖 / 二人 / ノイローゼ / 目撃者 / 不死鳥 / 露出狂奇譚 / 祭壇 / 春本太平記 / 青銅の原人 / 笛を吹く犯罪 / 墓堀人 / 司祭館の殺人


山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「忍者 枯葉塔九郎」
(にんじゃかれはとうくろう)


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*355頁 / 発行 1997年

*カバー文
奇想天外、荒唐無稽を地でゆく、恐ろしいまでの面白さで、一世を風靡(ふうび)した「風太郎忍法帖」の傑作短編集。 幕府のお庭番の変装所・大丸屋の娘が、秘命をおびたお庭番に恋する「忍者枝垂(しだれ)七十郎」。斬られても、その刹那すぐに溶けあって肉体がつながる忍法を会得している男が、仕官志望の男に勝負を譲って、相手の妻を譲り受ける「忍者枯葉塔九郎」など。現在入手不能の、天下にその名を轟かせた異色作八編。

*目次
忍者枝垂(しだれ)七十郎 / 忍者枯葉塔九郎 / 忍者本多佐渡守 / 忍者明智十兵郎 / 忍者車兵五郎 / 忍者服部半蔵 / 忍者撫子(なでしこ)甚五郎 / 忍者傀儡(くぐつ)歓兵衛 / 解説 久米勲


山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「忍法甲州路」
(にんぽうこうしゅうじ)


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*390頁 / 発行 1997年

*カバー文
復活する「風太郎忍法帖」の中、現在入手不可能の驚天動地・抱腹絶倒の忍法で読者を魅了すること請け合いの傑作短編集。古来伝わる睡魔をもって襲う忍者に対抗すべくあみだされた半睡浮遊剣、仮睡自在剣、夢界生動剣。そこに生じた思いもよらない陥穽を描く「忍法甲州路」のほか、忍法陰陽変を用いて男根女陰を交換する「転の忍法帖」、筑摩一族の忍びの活躍を描く「忍者六道銭」等収録。

*目次
忍法甲州路 / 忍法肉太鼓 / 忍法鞘太鼓 / 麺棒試合 / 転の忍法帖 / 忍者六道銭 / 天明の判官 / 羅妖の秀康 / 解説 高橋千劒破


山田 風太郎 (やまだふうたろう)
「妖説太閤記」(上下巻) 〈ようせつたいこうき〉



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*上巻442頁 下巻445頁 / 発行 1995年

*カバー文
上巻
英雄色を好む、という。だが、色を好むために英雄をめざす男もいる。信長の妹・お市の方の美貌に魂を奪われた瞬間から、名もなき軽輩の天下取りへの夢は始まった。巧みな弁舌と憎めぬ猿面の陰の冷徹な権謀術数。ライバルを蹴落とし、敵同士を反目させ、はては本能寺の変をも演出した希代の謀略家・秀吉。確固たる歴史眼と人間洞察力をもとに、無類の想像力で描く風太郎版太閤記の魅力!

下巻
天下も取るが女も取る。ついに一指も触れえなかったお市の方の忘れ形見・ちゃちゃ姫と自らの血との混交を恍惚として夢見る老醜の秀吉。そして、その執念が晩年の異常無残な言動を生み出すことになる。「民衆というものは、平和をもたらした人間よりも、おのれを蹂躪した人間を崇め、愛するようにさえなる」―英雄伝の虚構性を痛烈に暴き、数ある太閤記のなかでひときわ特異な光芒を放つ渾身の力作。


結城 昌治 (ゆうきしょうじ)
「白昼堂々」
(はくちゅうどうどう)


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*365頁
*発行 1996年

*カバー文
筑豊の廃坑の村。離職者更生の手段として、自分の経験と技術を教えこんだ元スリの耳に、昔の仲間、いまは東京のデパート保安係が囁いた ―― もっと安全で割りのいい稼ぎがあるじゃないか。かくて結成された窃盗団。大胆巧妙な手口とチームワークを見せる面々とベテラン刑事との虚々実々の駆引き、そして意外な結末。雑草の逞しさで生きる泥棒集団の活躍を温かく軽妙に描いた、会心の悪漢小説(ピカレスク・ロマン)。


山手 樹一郎 (やまてきいちろう)
「夢介千両みやげ(上下)」
(ゆめすけせんりょうみやげ)


*デザイン・菊地信義
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*上445頁・下420頁 / 発行 1995年

*カバー文

大枚千両を使い江戸で道楽してこい。小田原の豪農である父親から途方もない宿題を与えられた青年夢介は旅立った。図体は大きいが底抜けのお人好し。懐中を狙った名うての美女道中師・お銀も、そのとぼけた温かさには、いつしかベタ惚れ。前非を悔い、よき女房たらんと、ともに江戸に入ったのはいいが……。明朗朴訥なスーパーマンの善意あふれる言動を描き、敗戦日本の心を潤した大衆小説の代表的傑作。


夫婦約束をしてお銀と江戸暮らしを始めた夢介だが、道楽修業どころか、待っていたのは剣難色難ばかり。夢介の天性のおおらかさと怪力、お銀のけなげな活躍でそれを振り払った二人は、父親の許しを得るために小田原へ向かう。だが、事はそう簡単には運ばない。ふたたび波乱の道行きが始まった。山手文学を象徴する快作に、幻の続編『夢介めおと旅』を併録して贈る、待望の「夢介シリーズ」完全版!

*下巻巻末頁
 エッセイ・小池一夫
 人と作品・木村行伸


横溝 正史 (よこみぞせいし)
「髑髏検校」
(どくろけんぎょう)


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*483頁
*発行 1996年

*カバー文
絶海の孤島から不死身の怪人・髑髏検校が江戸に潜入、夜ごと、生き血を求めてさまよう。侍女ふたりもまた吸血鬼だ。立ち向かうのは剣の名手、碩学の鳥居蘭渓と息子の縫之助。しかし、父子の奮闘を嘲笑うように、江戸の闇を切り裂く恐怖の悲鳴は跡を絶たない。異色の日本版ドラキュラ小説に、剣士、妖術使いが名笛を争う伝奇ロマン『神変稲妻車』を加えた、巨匠の妖美の筆鮮やかな怪奇傑作選。


吉川 英治 (よしかわえいじ)
「江戸城心中」
(えどじょうしんじゅう)


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*551頁
*発行 1997年

*カバー文
名君と評判の徳川八代将軍吉宗は、本来なら三万石の大名で終るべき身分の人だけに、身辺に隙があった。登用した江戸町奉行大岡越前守忠相(ただすけ)は名奉行と市井の喝采をあびる。越前が必死に捕えんと追う密貿易船(ぬけがいぶね)は一網打尽にしたが、彼を悩ます怪人が江戸に現れた。将軍ら四人に復讐を誓う四ツ目菱の袷を着た一ツ目男――。人間描写の巧みさで、運命に翻弄される人物を描く、傑作伝奇小説。


吉川 英治 (よしかわえいじ)
「貝殻一平(上下)」 (かいがらいっぺい)


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*上416頁・下392頁 / 発行 1995年

*カバー文

時は幕末、世は日増しに物情騒然。幕府の秘密をさぐり出し京へ逃げ帰ろうとする公卿の娘、執拗に追う同心や旗本、娘をひそかに助ける謎の浪人。そんな騒ぎをよそに、好きな女との行く末ばかりで頭がいっぱいの若者がいた。本編の主人公・貝殻一平である。しかし時代の激しいうねりは、彼に呑気な生き方を許してはくれなかった……。全編にみなぎる巨匠の着想の妙と鮮やかな物語の魅力!


大坂の武家屋敷の仲間(ちゅうげん)、のんびり屋の貝殻一平。ある人物と人相はもちろん、ほくろの位置までそっくりという奇縁が彼の人生を大きく変えた。その人物とは、新撰組につけ狙われる志士・沢井転(うたた)。かくて、一平の身に思いもかけぬ白刃が襲いかかる。飛騨谷一万石を賭けた藩主の遺児探索騒動もからみ、物語はなおもスリリングに展開していく。吉川文学の特色であるあたたかい眼が行間に溢れる出色の時代長編。

*解説頁(下巻収録)
巻末エッセイ 杉本苑子 / 人と作品 尾崎秀樹


吉屋 信子 (よしやのぶこ)
「安宅家の人々」 (あたかけのひとびと)



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*397頁 / 発行 1995年

*カバー文
無垢な魂を持つ知的障害者の夫を支え、ひとりで養豚場経営に汗を流す妻。安宅家の平穏な生活は、しかし、事業に失敗して転がりこんだ夫の弟夫婦によって破られる。軽薄才子の彼は、ひそかに財産を狙い兄をそそのかす。さらに、優しく清純な義妹に、夫がほのかな恋心を抱いていると知った妻の驚愕と苦悩。純粋さゆえに傷つけあわざるをえない男女の姿を通して幸せの意味を問いかける感動の名作。

*巻末頁
 巻末エッセイ 田辺聖子
 人と作品 駒尺喜美