
*カバー装画・堂昌一
(画像はクリックで拡大します)
|

|
*(一)360頁・(二)350頁 / 発行 昭和52年
*カバー文
(一)
この小説のたて糸は勤王・佐幕の抗争である。とりわけ、太守井伊をめぐる動勢。だが横糸は、絢爛たる金糸。雪葉という絶世の美女の流浪の旅路を描く。 ― 月食の夜、月を鏡にうつせば未来の良人の影がうつると。悲しくも、雪葉の見たものは乱れた雲ばかりであった。父の独断で進めた祝言。そこから悲劇は起り、女の哀しい巡礼が始まる。 ― 昭和八年、東京・大阪の朝日新聞に起稿。書出しの見事さは、新聞小説の典型といわれる。
(二)
朱い杯 ― それは身ひとつで流浪する雪葉にかけがえのない宝であったが、朱杯〈さかずき〉 ― と善七はいう。だが死ぬほど憎かった男が、なぜか今は慕わしい。同時に、その男 ― 大次郎は善七を父の敵としているのだ。右か左か、愛憎の岐路に踏み迷う雪葉である。さて後編、俄に逞しい活動を開始するのは、井伊直弼のふところ刀 ― 長野主膳。天性の冴えた剃刀にものいわせて、結末に一波瀾呼びそうだ。
*解説頁・「女人曼陀羅」茶話 後醍院良正(第二巻に収録)
|