
*カバー装画・堂昌一
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*(一)276頁・(二)264頁 / 発行 昭和51年
*カバー文
(一)
田滑意次は江戸時代の第一番の金権政治家である。出世を願う大名・旗本、利権を狙う政商が彼の邸に雲集し、彼らが持参する賄賂は広間の外まで溢れたという。しかし、わが世を謳歌するのは田沼とその徒党のみで、民衆は狂った政治の重圧に喘ぎ、斃れ、「田沼時代」を呪っていた。このとき、巷の一角から忽然と現れた自雷也〈じらいや〉に民衆は拍手をおくった。変幻自在な活躍の彼こそ田沼を懲らしめうる侠盗だ。痛快な諷刺を含んだ伝奇巨編!
(二)
老中・田沼意次は賄賂の好きな政治家で、謹呈京人形と書いた箱をあけると、生きた美人が飛出したという逸話がある。本編のお総はそうした運命を辿るべきところを自雷也に救われたが、相手は天下の老中、今後の安全の保証はない。ここに奇怪なのは霧の五郎兵衛、田沼の懐中〈ふところ〉に収って、ますます跳梁する。だが、時の権力に抗するもの、自雷也だけではない。天の声は随所に炸裂する。構想、描写ともに出色と菊池寛氏を唸らせた長編。
*解説頁(二巻の巻末に収録) 「自雷也小僧」の周辺・萱原宏一
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