絶版文庫書誌集成

未分類絶版文庫 【ほ】

保阪 正康 半藤 一利・松本 健一・原 武史・冨森 叡児
 (ほさかまさやす・はんどうかずとし・はらたけし・とみのもりえいじ)
「戦争と天皇と三島由紀夫」 (せんそうとてんのうとみしまゆきお)
朝日文庫


*カバー装幀・間村俊一
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*261頁 / 発行 2008年

*カバー文
三島は、宮中で天皇を殺した後で自決したかった? 岸信介は司法取引で、A級戦犯を逃れた? GHQが、二・二六事件を評価? 天皇制システムは崩壊に向かう? 従来の定説や常識が覆ること必至! 昭和史研究の論客5人による、過激で画期的な対論集。

*目次
半藤一利×保阪正康 「昭和の戦争と天皇」
 なぜ天皇は陸海軍の総大将となったのか?
 統帥権は明治憲法成立以前に独立していた
 徹底的な軍人教育を受けていた昭和天皇
 立憲君主と大元帥の立場を巧みに使い分けていた
 「二・二六事件」が起きた瞬間に、昭和天皇は背広から軍服に着替えた
 皇后でさえかかわることができない女人禁制の宮中祭祀がある
 軍上層部のリトマス試験紙となった「二・二六事件」
 近衛第三連隊が高橋是清を襲撃した本当の理由
 青年将校たちの“思い込み”が決起を拙速ならしめた
 テロは実行せずに脅しをかけたほうが効果的
 〈対談を終えて〉

松本健一×保阪正康 「二・二六事件と三島由紀夫」
 GHQは「二・二六事件」を民主主義的な革命運動と評価した
 磯部浅一に共鳴しなければ三島は自裁しなかった
 三島はいかにして「二・二六事件」を体感したのか?
 三島は「宮中で天皇を殺して」自分も死にたかった?
 天皇は軍隊と「栄誉の絆」で結ばれなければならない
 十一歳の三島少年は「事件から完全に拒まれてゐた」
 『憂国』を書き、二十五年遅れで「二・二六事件」に参画する
 「人間宣言」した天皇が〈美しい天皇〉を汚した
 オキュパイド・ジャパンからアメリカナイズド・ジャパンへ
 三島は民主投票による“天皇制共産体制”を恐れた
 三島事件をもっとも恐怖したのは昭和天皇だった
 A級戦犯が政治的責任を取ったおかげで、昭和天皇は靖国神社に参拝できた
 〈対談を終えて〉

原武史×保阪正康 「昭和天皇と宮中祭祀」
 宮中内部を大混乱させた「魔女問題」
 “民主主義下の天皇制”に組み込まれる昭和天皇
 内奏と宮中祭祀が天皇制の連続性を読み解くカギ
 昭和天皇が目指した宮中改革と“抵抗勢力”としての貞明皇后
 昭和天皇に代わって宮中の実験を握った貞明皇后の真実
 宮中での祭祀の習慣は戦後も続けられている
 祭祀が行われる宮中三殿が取材できない本当の理由
 日本国の共産化防止のためにキリスト教「信仰」を肯定する
 “お祭り”に非常に熱心な現天皇と皇后
 宮中三殿も宮中祭祀もない未来の皇室の姿
 〈対談を終えて〉

冨森叡児×保阪正康 「戦後日本を動かした政治家たち」
 小泉の「郵政解散」と吉田茂の「抜き打ち解散」の類似性
 「ワンフレーズポリティクス」の源流はヒトラーの『わが闘争』
 独裁を生む小選挙区制は日本の政治文化になじまない
 保守合同は戦後政治史上最大のポイント
 “大日本帝国の輝ける官僚”と“A級戦犯”という二つの顔
 岸のA級戦犯不起訴は一種の司法取引か?
 安保デモを経済に回せば大変なエネルギーを生み出す
 戦後日本政治の象徴としての田中角栄
 五五年体制を終焉に導いた男
 村山・自社さ連立内閣のあまりにも日本的な結びつき
 ブルジョア政党のなかで命がけで政治をやっているのは吉田茂だけ
 皇位継承問題にいちばん危機感を持ったのは中曽根康弘?
 社会のなかで深く論議する習慣が極端に減っている
 〈対談を終えて〉

 あとがき
 文庫版あとがき
 関連年表

*「昭和」(朝日新聞社2005年刊)の改題


星野 道夫 (ほしのみちお)
「星野道夫 人と物 15」
(ほしのみちおひとともの)
MUJI BOOKS(株式会社無印良品)


*編集デザイン・櫛田理、広本旅人、佐伯亮介
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*157頁 / 発行 2020年

*カバー文
アラスカを旅したのち、フェアバンクス郊外に建てた家で生活しながら、極北に生きる野生動物や人々を撮影しつづけた写真家・星野道夫。「家を建て、薪を集める」など6つのエッセイや、グリズリーのくらし、カリブーの季節移動などをカメラで捉えた貴重な写真作品、長期にわたる撮影キャンプで使い込んだ装飾品などを収録。

*目次
くらしの形見
星野道夫の言葉
家を建て、薪を集める
カリブーのスープ
森に降る枝
オーロラのダンス
シシュマレフ村
自然写真家という人生
逆引き図像解説
この人あの人



ホーソーン著・坂下 昇編訳 (Nathaniel Hawthorne・さかしたのぼる)
「ホーソーン短篇小説集」
(ほーそーんたんぺんしょうせつしゅう)
岩波文庫


*カバーカット・大学卒業時のシルエット(今世紀半ばに発見された)
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*363頁 / 発行 1993年

*カバー文
ホーソーン(1804−64)は『緋文字』によって一躍人気作家となるが、それに先きだつ20年間に約100篇の短篇小説を書いていた。そのうちからよく知られた『ヤング・グッドマン・ブラウン』など物語性に優れた12篇を厳選し、さらに処女作群中の重要作品『アリス・ドーンの訴え』を加えた。「永遠に生きる」作家ホーソーンの清新なアンソロジー。

*目次
僕の親戚、メイジャ・モリヌー
ヒギンボザム氏の意外な破局
ヤング・グッドマン・ブラウン
ウェークフィールド
白の老嬢
牧師の黒のベール ある寓話
石の心の男 ある寓話
デーヴィッド・スワン あるファンタジー
ドゥラウンの木像
雪少女 こどもじみた奇跡
大いなる岩の顔
フェザートップ 訓話になった伝承
 *
補(処女作原稿より)
 アリス・ドーンの訴え

 訳注
 解説 ホーソーンの短篇小説を編む


解説・堀田隆子 / 写真・大江弘之 (ほったたかこ / おおえひろゆき)
「ギャッベ・アート ― イラン遊牧民カシュガイ族の手織絨毯」
(CABBEH ART)
AD COLLECTION(アートダイジェスト)


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*254頁
*発行 平成13年(京都書院1997年刊の新装版)

*目次
ギャッベの故郷を訪ねて
カシュガイ族の遊牧生活
 ザグロス山脈に抱かれて
 青空の下の結婚式
ギャッベのパターン
 アンティーク・ギャッベの文様とデザイン
コンテンポラリー・ギャッベ・コレクション
あとがき


堀田 善衛 (ほったよしえ)
「海鳴りの底から (上下)」
(うみなりのそこから)
朝日文芸文庫


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*上407頁・下350頁
*発行 1993年
*装画・駒井哲郎『海鳴り』 / 装丁・菊地信義

*カバー文
生きるか死ぬか、死ぬるのが吉利支丹じゃろうか? ―― 幕府のキリシタン弾圧と藩の圧政に三万七千人の老若男女は島原の小さな城に立て篭もった。時に寛永14(1637)年11月。それに対して幕府連合軍は総勢十二万五千。城の内と外で繰り広げられるハライソ=天国とインヘルノ=地獄。


堀田 善衛 (ほったよしえ)
「奇妙な青春」
 (きみょうなせいしゅん)
集英社文庫



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*274頁
*発行 昭和54年
*カバー・島真一

*カバー文
敗戦直後から二年間の、激動する日本の歴史的瞬間の中で、自立することもできずに情勢に流され適応してゆこうとする知識人たちの姿を鋭く抉り、彼らに愛を求めながら深く傷ついてゆく女性を浮き彫りにし、昭和史の証言をする快作。
「記念碑」に続く連作長篇。 解説・小田切進


堀田 善衞 (ほったよしえ)
「橋上幻像」
 (きょうぞうげんぞう)
集英社文庫



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*273頁
*発行 1998年
*装画・柄澤齋 / AD・岡邦彦

*カバー文
ありふれた街のありふれた風景のなかに架かる一つの橋。それは三つの方向から延び真中で交わる橋。上空から見ればY字型をした橋。その橋の上へと読者を誘う三つの物語。日本軍によるニューギニアに於ける人肉喰、ナチスによるユダヤ人虐殺、ヴェトナム戦線から脱走したアメリカ人の困惑。人間の存在と意識を極限の形にまで昇華させた名作。

*解説頁・小田実


堀 和久 (ほりかずひさ)
「死にとうない 仙腰a尚伝」
(しにとうない せんがいおしょうでん)
新人物文庫(新人物往来社)


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*334頁 / 発行 2010年
*表紙カバー写真 / 仙黒M「座禅蛙画賛」(出光美術館所蔵)
 カバーデザイン / クリエイティブ・コンセプト

*カバー文
 ── 誰も、わしの過去を知らない。わしのたどってきた茨の道を知らない。あまりにも恥深き半生だったゆえに、わしも、おのれの過去をことさら口に出すことはしなかった。
 病床に臥した仙高フ眼裏に、七十年近い昔の乞食旅をつづける雲水姿が浮かぶ。「大悟透徹した禅師」「無欲恬淡の風雅人」「童心をもつ洒脱飄逸の大和尚」などと評される仙高セが、若き日に投身自殺まで図った苦悩の修行と悟りを重ね、たどりついた境地 ── 八十八歳にして、新しい発見をする。日々、新しい世界がひらけてくる。死にとうないのう……。
 名僧仙豪`梵の漂泊の生涯を描く歴史長篇小説。


堀江 宏樹 (ほりえひろき)
「フェティシズムの世界史」
 (ふぇてぃしずむのせかいし)
竹書房文庫



*カバーデザイン・橋元浩明(so what.)
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*311頁 / 発行 2007年

*カバー文
古の時代、ありとあらゆる“フェチ”には名前などなかった。なぜならそれは等しく愛という名の病であったから……。「純潔な者は一人もいない。たいていの者は自分の罪を偽り、巧妙に隠しているだけだ」とは、母と交わり、生殖腺を抜いた美男の奴隷を妻にし、さらには屈強な奴隷に自らを“女”として抱かせた伝説を持つネロの言葉である。彼らの行為は悪徳の栄えに過ぎなかったのか、それとも勇気ある先駆けだったのか ― 。ただひとつ言えるのは、貴人の性癖は芸術文化をリードしただけでなく、政治をも動かす原動力となりえたということである。SM、近親相姦、同性愛…やんごとなき人々の隠れた性癖から世界史を紐解く禁断の歴史雑学本!

*目次
 プロローグ
第1章古代、中世、ルネサンス
1 インドSMことはじめ〜カーマスートラに学ぶ愛の極意
2 歪みきったマザコン〜悪女なママと暴君ネロ、愛と憎しみの「蜜月」
3 禁断の女装趣味と男装趣味〜兄弟が性別まで交換? 奇書『とりかへばや物語』
4 平安のホモセクシュアル〜藤原頼長『台記』のド耽美ワールド
5 美少年殺戮の快楽〜「聖なる怪物」=聖女ジャンヌを愛した悪魔ジル・ド・レ
6 イタリア兄弟・禁断の近親相姦愛〜バチカンの娼婦、ルクレツィア・ボルジア
フェチ写真館@ 男と女の下着
フェチ写真館A やおいはバロックである
第2章バロック、ロココ
7 マゾヒスティック・エクスタシー〜神の「女」の絶愛体験
8 おサイコ忠臣蔵(1)〜幕府を揺るがす男の嫉妬
9 おサイコ忠臣蔵(2)〜吉良の首はどこへ行った?
10 ザ・サディズム(1)〜元祖サディスト!? サド侯爵の秘密
11 ザ・サディズム(2)〜変人から狂人へ、「狂宴の夜」のその後
12 暴れん坊将軍の息子は“中性”だった? 徳川家重、骨があかす真実
13 絵島生島事件の真相(1)〜陰間の花盛り、背徳の役者買い
14 絵島生島事件の真相(2)〜勝者はどっち? 年増の陰謀と三十路の初恋
15 日本の男色史〜稚児と若衆、陰間の「それから」
16 最強のファザコン伝説〜実母までライバル視した天英院熙子の孤独
17 老いらくの恋? 花咲けるロココの女たち〜80歳でも恋愛現役のすごい時代
18 マリー・アントワネットのフェティシズム(1)〜母の愛を求めてさまようアダルトチルドレン
19 マリー・アントワネットのフェティシズム(2)〜潔癖の王妃、悲劇のダブルキャスト
20 残酷処刑・ギロチン秘話〜死刑執行人の苦悩と民衆の狂乱
フェチ写真館B マリー・アントワネットの華麗なる生活
フェチ写真館C 男の下着エトセトラ
第3章ロマン主義、世紀末
21 涙の大奥化粧〜眉毛と美人のフェティッシュな関係
22 寺は江戸時代のホストクラブ〜奥女中と破戒僧の「蜜」な関係
23 奥女中御用達のヘルス嬢〜大奥の奥の秘密、女按摩
24 西太后なナルシズム(1)〜美の指南役=女官長は帰国子女
25 西太后なナルシズム(2)〜美白フェチ、母乳を美容ドリンクにした女帝
26 高貴なるアウトロー、バイロン男爵の生涯〜同性愛、そして禁断の姉弟愛へ
27 和宮と将軍家茂、仲良し夫婦のタブーとは?〜甘味フェチの二人に残された謎
28 処女未亡人の動物偏愛〜キャリア女性は猫に狂う、天璋院篤姫の生涯
29 切り裂きジャック〜絵画が告発する、ヴィクトリア女王の背徳
30 ちょっとフェティッシュな刺青の話〜世紀末、日英文化羞恥交流
31 屍体になるのはお好き?〜世紀末の美女、サラ・ベルナールの奇行
32 イニシャルはS・M〜わがまま放題、マゾッホの奴隷愛契約
フェチ写真館D 女の下着エトセトラ
フェチ写真館E 世紀末紳士・淑女録
エピローグ


ポール・ゴーガン著 (Paul Gauguin) 前川堅市訳 (まえかわけんいち)
「ノア・ノア ― タヒチ紀行」
 (NOA NOA)
岩波文庫



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*118頁
*発行 昭和7年

*帯文
文明の国フランスを脱出.原始の島タヒチに渡った情熱の画家ゴーガンの滞在記.その絵の如く新鮮に印象的に島の風土と人間を描く.

*解説頁・前川堅市


本田 哲郎 (ほんだてつろう)
「釜ケ崎と福音 ― 神は貧しく小さくされた者と共に」
(かまがさきとふくいん)
岩波現代文庫


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*280頁 / 発行 2015年

*カバー文
一人のホームレスとの出会いが神父の生き方を変えた。人を根底から変え、解放と救いをもたらす力は最も社会的に低くされた者の中にあり、神の選びは貧しく打ち捨てられた者の側にこそある。釜ケ崎の労働者たちの感性に学び、その願いに連帯し、ともに働く道を探った二十年の歳月を語り、聖書を読みなおす。実体験により育まれた、独自の福音理解にもとづく力強い聖書の思想がここにある。

*目次
 はじめに ── 一枚の絵
T ある出会い
U 宗教を超えて福音を ── 聖書講義
 一 貧しく小さくされた者の選び / ニ イエスとはだれか
V いま、信頼してあゆみ始めるために
 一 真の平和、ほんとうの和解を求めて / ニ 社会活動の霊性(スピリチュアリティ)
人権と共に人間の尊厳を大切に ── むすびに代えて
現代文庫版あとがき