絶版文庫書誌集成

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野口 冨士男著・武藤 康史編 (のぐちふじお・むとうやすし)
「作家の手 ― 野口冨士男随筆集」
(さっかのて)
ウェッジ文庫
(株式会社ウェッジ=JR東海グループの出版社)


*装丁・榛地和
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*281頁 / 発行 2009年

*カバー文
 戦前より同人誌に習作を発表していた野口冨士男は、仕事盛りの十数年を費やして徳田秋聲の研究に沈潜する。秋聲伝は高い評価を得たが、小説家としての真価が認められたのは半世紀近く後のことだった。本書は随筆家としての文業を、伊藤整、岡本かの子、川端康成、小林秀雄ら記憶に残る文学者たちのスケッチを中心に、初期の単行本未収録の劇評から晩年の随筆に至るまで精選したオリジナル随筆集。

*目次
作家の手 / 自伝抄「秋風三十年」 / 赤面症 伊藤整 / 浮き名損 岡本かの子 / 雨宿り 川端康成 / 武藝者 小林秀雄 / 傷だらけ 井上立士 / 枝折れ 豊田三郎 / ごめん、ごめん 十返肇 / 蒸発 再び川端康成 / すこし離れて 北原武夫 / 二つの姿勢 水上勉 / 耽美と闘魂の人 舟橋聖一 / 和田芳恵との交友 / 回想の井上靖氏 / 処女作の思い出 / 外国文学と私 / 築地のハムレット / 新劇雑観 / 新劇往来 / 新劇評判 / 新劇の現状 / 『たけくらべ』論考を読んで / 女あそび / 三代の芸者 / かんにんどっせ / 三十人の読者 / 文学者は浮動している / 臨終記 / 残日余語

野口富士男略年譜 / 演劇青年・野口富士男 武藤康史


野口 冨士男 (のぐちふじお)
「私のなかの東京 ― わが文学散策」
(わたしのなかのとうきょう)
岩波現代文庫


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*220頁 / 発行 2007年

*カバー文
後に都電三号線になった外濠線沿いを手始めに銀座、小石川、本郷、上野、浅草、吉原、芝浦、麻布、神楽坂、早稲田……。明治末年生まれの著者が、記憶の残像と幾多の文学作品を手がかりに、戦前から戦後へと変貌を遂げた街の奥行きを探索する。昭和文学青春期の証言者として、愛情溢れる追想と実感に満ちた東京散歩が綴られる。

*目次
外濠線にそって / 銀座二十四丁 / 小石川、本郷、上野 / 浅草、吉原、玉の井 / 芝浦、麻布、渋谷 / 神楽坂から早稲田まで / 解説 川本三郎

中公文庫版(サイト内リンク)


野坂 昭如 (のさかあきゆき)
「『終戦日記』を読む」
(しゅうせんにっきをよむ)
朝日文庫



*カバー装幀・菊地信義
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*240頁 / 発行 2010年

*カバー文
戦争時、少年だった『火垂るの墓』の著者が、大佛次郎、永井荷風、高見順ら知識人たちの日記から、彼らが東京大空襲、原爆投下、玉音放送などに対してどんな見識を持っていたかを探る。加えて、内地で終戦をむかえた自身の戦争体験も振り返る。当時の大人たちが思考停止状態に陥り、「しようがなかった」で済ませようとしていた戦争を伝える。

*目次
まえがき
第一章 八月五日、広島
第二章 原爆投下とソ連参戦
第三章 空襲のさなかで
第四章 終戦前夜
第五章 八月十五日正午の記憶
第六章 遅すぎた神風
第七章 混乱の時代のはじまり
第八章 もう一つの「八月十五日」
第九章 インフレと飢えの中で
あとがき
 「日記」の書き手たち


野坂 昭如 (のさかあきゆき)
「騒動師たち」
 (そうどうしたち)
集英社文庫



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*245頁
*発行 1979年

*カバー文
「なぜか今宵は血が騒ぐ」という台詞があるが、この血のなせるわざか騒動なのであって、乱世泰平いずれたるとを問わず、騒動師たちは、物情騒然市井動乱の臭いをかぎつけ、さらに、その極まりなき蔓延をねがい、力をかす。騒乱の中にのみ生甲斐を感じる連中の、ただもうでたらめな行動の中にこそ、ぼくはあたらしい時代を開く人間の力を感じるのであって、やぶれかぶれちゃらんぽらんではあるけれど、そのゆえにこそ、彼らは英雄のなのである。(著者のことば)

*解説頁・飯島耕一


野田 正彰 (のだまさあき)
「喪の途上にて ─ 大事故遺族の悲哀の研究」
(ものとじょうにて)
岩波現代文庫



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*464頁 / 発行 2014年

*カバー文
かけがえのない人の突然の死を、遺された人々はどのように受け容れるのだろうか。精神科医である著者が航空機事故史上最悪の惨事となった日航ジャンボ機墜落事故遺族の悲哀の過程をたどる。一人一人の想いと向き合いながら、悲しむことの意味を問い直すノンフィクション。第一四回講談社ノンフィクション賞受賞作。

*目次
 現代文庫刊行に寄せて
第一章 日航機墜落後の遺族の仕事
第二章 「死の棘」を焼く
第三章 悲しみの時間学
第四章 豊穣の喪
第五章 子供と死別をわかちあう
第六章 癒しの皮膜
第七章 回心と生きる意味の再発見
第八章 家族の生死の第一人者
第九章 山守りたちの雛祭り
第十章 安全共同体(セイフティ・コミュニティ)への離陸(テイク・アウト)
第十一章 法律家の経済学 ── 上海列車事故に見る
第十二章 喪のビジネス
 おわりに / 参考文献 / 用語および概念の索引


野地 秩嘉 (のじつねよし)
「ビートルズを呼んだ男」
(Beatlesをよんだおとこ)
小学館文庫


*カバーデザイン・坂川栄治+嶋田小夜子(坂川事務所)
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*396頁 / 発行 2017年

*カバー文
「タツのためならいくらでも質問に答えよう。思い出せる限りね」ポール・マッカートニーはそういって一人の男の話を始めた……。一九六六年に来日、武道館コンサートによって日本を熱狂の渦に巻き込んだビートルズ。空前の社会現象を引き起こし日本の音楽シーンを一変させた彼らの公演を実現させた裏にはある伝説的プロモーターの存在があった。米軍キャンプへのミュージシャンの斡旋から始め、世界最高峰のミュージシャンの来日を次々に成功させた男・永島達司の知られざる七三年の生涯を国内外に追った傑作ノンフィクション。

*目次
プロローグ 三十二年前の記憶 / 第一章 ミシシッピーを渡って / 第二章 グレン・ミラーの思い出 / 第三章 結婚 / 第四章 興行の現場 / 第五章 呼び屋という仕事 / 第六章 トゥー・ヤング / 第七章 リンボーダンスとサーカス / 第八章 インテレクチュアル・プロパティ / 第九章 若者の音楽 / 第十章 ロンドンでの交渉 / 第十一章 守る男たち / 第十二章 見に行くものたち / 第十三章 来日前夜 / 第十四章 日本到着 / 第十五章 脱出 / 第十六章 聴こえた……。音は聴こえた / 第十七章 余熱 / 第十八章 呼び屋の終わり / エピローグ セント・マーチン教会で / あとがき / 二〇一七年 / 二つめのあとがき / 解説 松浦弥太郎


野村 雅昭 (のむらまさあき)
「落語の言語学」
(らくごのげんごがく)
平凡社ライブラリー



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*342頁 / 発行 2002年
*カバー図版・桜川慈悲成の「中入り」の口上(初代歌川豊国画)をもとに水月千春が着彩。

*カバー文
座布団が置かれた、間口三間ほどの舞台。落語家は、扇子と手拭い、話術だけで勝負する。聴衆をことばに酔わせ、架空の世界の高みへと、そして最後は一気に現実の世界に引き落とす。マエオキ、オチ、演題などを軸として、噺家の個性をも重ね合わせ、その特徴・構造・魅力を言語学的に解読する。

*目次
第一章 落語の言語空間
 話芸としての落語 / 落語のことば・落語家のことば / 談話としての落語 / 落語の構造
第二章 マエオキはなぜあるのか
 マエオキについてのまえおき / 桂文楽のマエオキ / 一九六〇年ごろの落語家たち ― その一 / 一九六〇年ごろの落語家たち ― その二 / 現代の落語家たち ― その一 / 現代の落語家たち ― その二 / 落語速記以前の状況 / 近代落語の成立とマエオキ / 三遊亭円朝のマエオキ / 人情噺のマエオキの系譜 / マエオキの構造
第三章 オチの構造
 オチとはなにか / オチの成立 / オチのいろいろ / これまでのオチの分類 / オチの分布 / ワライにおける緊張と緩和 / 落語とクライマックス / オチからみた噺の構成 / 枝雀の四分類 / 談話行動としてのオチ / 独話によるオチ / 対話によるオチ / 質問表現に対するオチ / 説明要求表現に対するオチ / 命令表現と行動 / 命令表現に対する拒否表現 / 判叙表現に対するオチ / 要求表現をともなう判叙表現 / 判叙表現に対する否定表現 / ジグチの構造 / ジグチオチの位置 / 落語にはなぜオチがあるのか / 談話行動からみたオチの類型 / 発話行動によるオチの分類
第四章 演題の成立
 落語の演題の特徴 / 東京落語の演題 / 演題の構成 / 命名の視点 / 演題における造語・命名の特徴 / 上方落語の演題との比較 / 演題の意味するもの

 文献
 あとがき
 わが青春の全落連と早稲田大学
 平凡社ライブラリー版 あとがき
 解説 ― 凍結された言葉の世界へ 矢野誠一
 索引