絶版文庫書誌集成

未分類絶版文庫 【わ】

若桜木 虔 (わかさきけん)
「小説 沖田総司」
 (しょうせつおきたそうし)
秋元文庫



*カバー・東幸見
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*202頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
 総司は、白河藩江戸下屋敷に仕えた二十俵二人扶持の下級武士、沖田家の次男として生れた。八歳の時に父をなくし、小石川にあった、天然理心流近藤道場に、内弟子として預けられた。道場主近藤周斉と、兄弟子の宮川勝太(後に養子に入って近藤勇)に可愛がられて、メキメキ上達し、十三歳で免許皆伝、十四歳の時には師範代となり、まさに剣の天才であった。
 近藤勇らと共に、京都に上ったのが十六歳。人なつこく、子供好きで、笑顔の絶えない性格だったが、剣をとっては新選組髄一で、倒幕浪士たちに恐れられた。十九歳、池田屋切り込みの際に喀血して倒れ、以後療養を続けたが、二十三歳で江戸に戻って後に病死した。歴史上、最も多くの人を斬ったと伝えれれるが、生活態度には虚無のかげりは少しもなかった。主義主張があったわけでもない。ただ剣のみを明るく生きたのだ。肺病という暗いイメージとはまるで逆の、奇妙に透明な人生を送ったのが、沖田総司である。

*目次
第一章 試衛館天然理心流 / 第二章 動乱の京都へ / 第三章 誠の旗のもとに / 第四章 倒幕攘夷の嵐 / 終章 / あとがき

*さし絵 大道寺鉄


若林 正丈編 (わかばやしまさひろ)
「矢内原忠雄『帝国主義下の台湾』精読」
(やないはらただおていこくしゅぎかのたいわんせいどく)
岩波現代文庫


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*401頁
*発行 2001年

*カバー文
植民政策学・国際経済学の権威で無教会派クリスチャンとしても有名な元東大総長矢内原忠雄。「帝国主義下の台湾」は植民地台湾の経済と政治を、帝国主義理論と現地調査を含む豊富なデータに基づいて分析した著作であり、戦後の地域研究の出発点となった。編者は読者の理解に資するため本文に詳細な注を施し、矢内原の研究方法と時代情況について多角的に講究、本著作の歴史的・現代的意義を明らかにする。


和田誠・絵 (わだまこと)
「超時間対談」 (ちょうじかんたいだん)
集英社文庫


*カバー・和田誠
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*324頁 / 発行 昭和60年

*目次
ボギー、おれも男だ!
ハンフリー・ボガート+田中小実昌

諸君、喜劇は終わった! / ベートーヴェン+山下洋輔
ベルグソン先生、ユダヤ人はジョークのホームラン王です! / アンリ・ベルグソン+タモリ
タフでなければ生きていけなし! / レイモンド・チャンドラー+河野典夫
ジャン・ギャバンとともにきょうまで生きてきた…… / ジャン・ギャバン+池波正太郎
ポオさん、お顔を見せてください! / エドガー・アラン・ポオ+都筑道夫
放浪紳士の見はてぬ夢はほろにがく / チャーリー・チャップリン+虫明亜呂無
ヒトラー総統 ご退場を! / アドルフ・ヒトラー+開高健
ほんとにシェイクスピアさんなんですか? / シェイクスピア+唐十郎
書を捨てて武器商人になったなんて嘘だろ、ランボー? / アルチュール・ランボー+寺山修司
ぼくたちはみんなルイが大好きだった / ルイ・アームストロング+植草甚一
七人の小人と白雪姫がデキてたってほんとですか? / ウォルト・ディズニー+赤塚不二夫
無双の剣客シラノ・ド・ベルジュラックただいま参上! / シラノ・ド・ベルジュラック+星新一
お忘れですか? モンゴルに渡った義経です / 成吉思汗+高木彬光


渡辺 洋 (わたなべひろし)
「悲劇の洋画家 青木繁伝」
(ひげきのようがか あおきしげるでん)
小学館文庫


*カバー画・石橋財団 / 石橋美術館臓
 カバーデザイン・小島伸行
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*363頁
*発行 2002年

*カバー文
 日本の洋画史上に輝く名画『海の幸』(本書カバーに使用)をはじめとして物語性に富む名作を残し、二十九歳の若さで夭折した洋画家、青木繁。「天才」「鬼才」の称号をほしいままにしながら、その短い人生は波乱の連続だった。描くことにしか意味を見出せず、他人との関係を築けない一匹狼性格の故に、貧困に苦しみ、画壇からは見放され、ついには親兄弟にも見捨てられ、孤独のまま福岡の地でこの世を去った。
 青木と同郷に育った著者が、その裸の人間像に迫る。
「書物のなかで青木繁という男が人間の体臭を持って現れた」
 (松永伍一氏の解説より)

*巻末頁・解説「美に殉ずる」ことの意味を探る労作 松永伍一


渡辺 裕 (わたなべひろし)
「マーラーと世紀末ウィーン」
(まーらーとせいきまつうぃーん)
岩波現代文庫


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*255頁 / 発行 2004年

*カバー文
マーラーの作品の真の新しさや面白さは、世紀末ウィーンの文化史全体に目を広げて初めて明らかになる。著者は同時代人クリムト、O.ワーグナー、フロイト、V.アードラーらの活動をも視野に入れ、彼らの夢と現実のありようを描きだす。また現在、彼の音楽のどのような側面が注目され、それが現代文化のいかなる状況を表現しているのかを問う。

*目次
 まえがき
第一部 同時代者の中のマーラー
 第一章 花形指揮者の憂鬱 ── 一九世紀の歌劇場の状況の中で
 第二章 芸術による社会革命の夢 ── マーラーと学生運動
 第三章 意識下の世界の探索 ── マーラーとフロイト
 第四章 綜合芸術の館 ── マーラーと分離派
 第五章 指揮者マーラーの挑戦 ── マーラーのベートーヴェン受容
 第六章 文学世界と音楽世界の統合 ── ピアノ版《大地の歌》に託されたもの
 第七章 『ベニスに死す』とマーラー ── マーラー、マン、ヴィスコンティ
 第八章 都市の音の知覚 ── マーラーのサウンドスケープ
 第九章 都市近代化の中で ── マーラーの生活圏を歩く
 第一〇章 新しい音の世界で ── マーラーとチェンバロん
第二部 現代人の中のマーラー
 第十一章 マーラーとポストモダニズム ── 芸術とキッチュのはざま
 第十二章 音楽の「論理」の解体 ── 音楽の空間性
 第十三章 ワルター神話を超えて ── 『第四』演奏史の分析
参考文献 / ちくまライブラリー版あとがき / 岩波現代文庫版あとがき


渡辺 龍策 (わたなべりゅうさく)
「川島芳子 その生涯 ― 見果てぬ滄海」
 (かわしまよしこ そのしょうがい みはてぬうみ)
徳間文庫



*カバーデザイン・矢島高光
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*284頁 / 発行 1985年

*カバー文
 清朝の王族粛親王(しゅくしんおう)家に生まれた金璧輝(きんへきき)、本名愛親覚羅顕シは、満蒙独立を図る志士川島浪速(なにわ)の養女となり、川島芳子と名乗って日本で育つが、昭和初期、大陸進出を目論む日本軍部と関わったことから、その人生を大きく変える。天性の美貌と才気を武器にした彼女の行動は、日中両国民の間に様々な憶測を生んだ。「東洋のマタハリ」「男装の麗人」――日中戦争の動乱期を生きた川島芳子の生涯の軌跡をたどる。

 ※「愛親覚羅顕シ」(あいしんかくらけんし)のシは「王」に「子」

*目次
文庫版まえがき / プロローグ / 第一章 生みの親、育ての親 / 第二章 男装の乙女 / 第三章 狂い咲き / 第四章 金司令の出現 / 第五章 失意の日々 / 第六章 逮捕・裁判 / 第七章 謎の死刑 / エピローグ / 初刊本あとがき / 解説 榎本滋民


渡辺 龍策 (わたなべりゅうさく)
「大陸浪人」
(たいりくろうにん)
徳間文庫



*カバーデザイン・矢島高光
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*349頁 / 発行 1986年

*カバー文
 明治以降、高揚した日本のナショナリズムは多種多様な“壮士”を海外に“雄飛”させた。孫文に終生援助を惜しまなかった宮崎滔天,大アジア主義を唱えた内田良平、蒙古独立を図った川島浪速、馬賊・天鬼将軍こと薄益三から、果ては金に釣られた一旗組に中国侵略の手先となった大陸ゴロまで、“満蒙”の大地に野望を馳せた群像に照明を当て、彼らを歴史の落し子として認知せんとする日中裏面史の野心作。

*目次
文庫版あとがき
第一章 青雲の志
第二章 壮士・志士の功罪
第三章 大陸へのかけ橋
第四章 満蒙独立運動
第五章 第三革命と日本人
第六章 北伐時に躍った日本人
第七章 大陸の遺産と傷痕
自著解題
 解説にかえて 朽木寒三