絶版文庫書誌集成

旺文社文庫・日本の著作
【ま】


槇 有恒 (まきゆうこう)
「山行」
 (さんこう)


*カバー・佐藤久一朗
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*286頁 / 発行 昭和48年

*カバー文
アイガー東山稜、マウント・アルバータの初登攀、最初期の冬山遭難の記録「板倉勝宣君の死」など、我が国に近代アルピニズムをもたらした岳人槇有恒が、若き日に若き筆致で綴った山への信仰の書。そればかりでなく本書は日本近代登山史の貴重な証言でもある。

*目次
まえがき
山と或る男
アルプスにおける登山の発達
登高記
 一 ヴェッターホルン
 二 メンヒよりアイガーへの縦走
 三 フィンスターアールホルンよりグロッセシュレックホルンへ
 四 マッターホルン
 五 アイガー東山稜の初登攀
 六 マウント・アルバータの登攀
 七 マウント・アルバータの印象
南側よりのアルプス
山村の人と四季
板倉勝宣君の死
岩登りについて
 解説  ― 近代登山史のなかの槇有恒 ―  安川茂雄
 ヘル・マキを待っていたアイガー 佐藤久一朗
 参考文献
 年譜


牧野 信一 (まきのしんいち)
「鬼涙村」 (きなだむら)



*カバー・鈴木民平
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*331頁 / 発行 1979年

*カバー文
ドン・キホーテのロシナンテさながら、駄馬ゼーロンを龍巻村目指して疾駆させるかと思えば、「担がれる」と呼ばれる奇態な因習の遺る鬼涙村へ読者を誘うマキノ幻想世界――。本書は、露悪的ともみえる筆致で父と子の愛憎を描き、やがて牧歌的・空想的作風を展開して無類の文学世界を構築した鬼才牧野信一の代表作11編と「文学的自叙伝」を収めた。

*目次
父を売る子 / 村のストア派 / 吊籠と月光 / 西部劇通信 / ゼーロン / 酒盗人 / 泉岳寺附近 / 鬼涙村 / 裸虫抄 / 淡雪 / サクラの花びら / 文学的自叙伝
解説 保昌正夫
参考文献 柳沢孝子
年譜 柳沢孝子


正木 ひろし (まさきひろし)
「冤罪の証明」 
(えんざいのしょうめい)


*カバー画・正木ひろし
 デザイン・池田拓
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*259頁 / 発行 1981年

*目録文
冤罪の救済に全人生を捧げた著者が、法医学鑑定の頂点にあった古畑鑑定を始めて告発する。

*カバー文
 この殺人事件にわたくしが着手したのは、昭和三十年の夏であった。ちょうど拙著『裁判官』が“裁判批判”の書として、各方面に物議をかもしていたころである。
 当時すでにこの事件は第一審の裁判がすみ、一高校生が犯人として無期懲役の判決をうけていた。しかし、第一審の弁護人はこの高校生の自供に不自然な点やアイマイな個所があると考え、黙々として本職の刑事も顔負けの地道な調査をつづけた。その結果、完全なアリバイを発見したのである。
 何ゆえにアリバイの厳存する被告人が有罪とされなければならないのか。それは二名の法医学の権威である大学教授による鑑定があったからである。
 事実は一つしかない。鑑定が正しければ、アリバイ証言は虚偽である。アリバイ証言が正しければ、鑑定書は虚偽となる。その中間は許されない。
 わたくしはこの氷炭あいいれない重大な事実を前にして、いずれかに自分のなっとくのいく結論をえなければならない、強い知的興味と、弁護士としての正義感を燃やした。
 わたくしは異常な情熱を傾けて真相の究明に没頭し、ついにその結論を得た。しかし、これを公判延で立証するためには、旧知の間柄である法医学者たちを相手とし、たがいにその良心と人格とをかけた苛烈なる論争をしなければならなかったのである。 正木ひろし

*目次
まえがき / 1 犯行現場 / 2 二つの新事実 / 3 逮捕された少年 / 4 三人の弁護人 / 5 鑑定への疑問 / 6 アリバイ追求 / 7 物証をめぐる実験 / 8 これが人間業か / 9 凶器の謎 / 10 可能性という言葉 / 11 法廷での実演 / 12 意外な「結審」 / 13 “地上”の現実と“紙上”の現実 / 14 犯行のストーリー / 15 真犯人はだれか / 解説 森長英三郎 / 法医学と人権 関原勇


正木 ひろし (まさきひろし)
「戦時下の個人誌 近きより」〈全五巻〉 (ちかきより)


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*452頁
*発行 1979年

*カバー文
正木ひろしは、冤罪の救済に全人生を賭けた日本の代表的な弁護士であるが、正木の業績のなかで最も特筆されることは、戦時中の苛烈な言論統制下にあって個人雑誌「近きより」を刊行、敗戦まで公然とファシズムを批判しつづけたことであろう。本文庫は、創刊号から終刊号までの正木の執筆文を網羅し、年代順に全五巻にまとめたものである。

*全五巻構成
1 〈日中戦争勃発〉 第1巻第1号(昭和12年4月)〜第2巻第7号(昭和13年12月)。
2 〈大陸戦線拡大〉 第3巻第1号(昭和14年1月)〜第4巻第5号(昭和15年5月)。
3 〈日米開戦前夜〉 第4巻第6号(昭和15年6月)〜第5巻第9号(昭和16年9月)。
4 〈空襲警戒警報〉 第5巻第10号(昭和16年10月)〜第7巻第5号(昭和18年5月)。
5 〈帝国日本崩壊〉 第7巻第6号(昭和18年6月)〜第11巻第2号(昭和24年10月)。

*解説頁・古賀正義


松下哲雄 (まつしたてつお)
「誰も書かなかったカナダ」 (だれもかかなかったかなだ)

*251頁 / 発行 1983年

*目録文
カナダでサバイバルした青年が、十数年後に及ぶ現地体験を、ユニークな視点でまとめたレポート。



松永 伍一 (まつながごいち)
「悪魔と美少年」 (あくまとびしょうねん)



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*285頁 / 発行 1977年

*カバー文
〈夭折〉という華麗なことばの裏面からきこえてくる、死者たちの痛切な叫びを聴いたことがあるか。彼らを称揚しその才能を愛惜するのは、しかし、生きのびた人間の勝手な思い上がりではないのか?――夭折者の閃光のような短い生の軌跡を克明にたどり、その栄光と悲惨に肉迫する、著者渾身の評論集。

*目次(カッコ内は編纂室補足)
荒淫の果ての孤独祭(藤田文江) / 悶絶のうた(竹村浩) / 花骸の執念(淵上毛銭) / 非転向の鞭(陀田勘助) / 海は凍っていた(長沢延子) / 悪魔と美少年(村山槐多) / 無声慟哭(宮沢賢治) / 化石の蝶(田中稲城と勝野ふじ子) / 信仰の悲しみ(関根正二) / 行倒れ淀君(岡本宮子) / ちりめん花模様(細井和喜蔵) / 咳しても一人か(尾崎放哉) / 宝石のような虹(奥居頼子) / 覚書
 解説 中井英夫
 年譜


松永 伍一 (まつながごいち)
「うたの慰め」 (うたのなぐさめ)

*発行 昭和53年

*目録文
歌謡曲、民謡から童謡、わらべうたまで、日本におけるうたの伝統をめぐる魅惑的な考察。



眉村 卓 (まゆむらたく)
「還らざる城」 (かえらざるしろ)


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*195頁
*発行 1983年
*カバー画 中村まゆみ

*カバー文
40世紀の未来少女カラリンコとともに、戦国時代に逆もどりした敏夫と稲田青年は、扇谷上杉氏や野武士の過酷な支配に苦しむ農民たちを救うために戦い、勝利を得る。しかし、20世紀の武器と知識をもつ稲田青年は、いつしか戦国大名として自立する野望をもつようになった。


丸川 賀世子 (まるやまかよこ)
「ドキュメント 女たちの殺意」 (おんなたちのさつい)


(画像拡大不可)

*244頁
*発行 1986年

*目録文
“ミス千葉”がなぜ愛人殺しを? 戦後起きた女性犯罪九件を取りあげ、犯行の背景に鋭く迫る!