絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【か】

海音寺 潮五郎 (かいおんじちょうごろう)
「二本の銀杏」 (ふたもとのぎんなん)


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*669頁
*発行 昭和54年
*カバー装画・原田維夫

*カバー文
維新前夜の薩摩藩に、時代の変化を鋭く見つめて奔放に行動する天衣無縫の麒麟児がいた。郷士の上山源昌房である。彼は周囲の猛反対を押し切って治水工事を進め、新田の開発に意を注ぐが、その一方で郷士頭の妻お国との道ならぬ恋に激しく傾斜して行った……。豪放多感な薩摩武士の心意気を如実に描いて、海音寺文学の代表作と称えられる、雄勁にして情味溢れる長編時代小説。

*解説頁・伊藤桂一


葛西 善蔵著・山本 健吉編 (かさいぜんぞう・やまもとけんきち)
「葛西善蔵集」
(かさいぜんぞう)


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*233頁 / 発行 1951年 / 旧仮名旧字体
*カバー画像・平成5年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
借家を追われ、二人の子をつれて夜の町をさまよう落胆の我が身を描いた初期の名作「子をつれて」から、郷里に別れ住む老婆と妊娠させた女との三角関係を諦視した晩年の傑作「湖畔手記」まで全10編。錯乱と狂態の中に無垢の魂を描きつづけた私小説作家葛西善蔵の苛烈な文学世界。

*目次
惡魔 / 子をつれて / 呪はれた手 / 春 / 暗い部屋にて / 埋葬そのほか / 仲間 / 椎の若葉 / 湖畔手記 / 酔狂者の獨白 / 解説、年譜 山本健吉


金井 美恵子 (かないみえこ)
「愛の生活」
 (あいのせいかつ)


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*243頁
*発行 1973年

*カバー文
日常の中の新鮮な発見を通して、若い二人の生活の実態を問おうとした表題作。失語症に陥った愛人との関わりの中に、言葉そして書くことの意味を、待つこと待たせることの意味を追う『エオンタ』。他に、子供の想像欲の世界を描き詩的知的なメルヘンともいうべき『自然の子供』。確かな感受性、豊饒なイメージ、鮮明な描写で現代を生きる意識に見事に形を与えた著者二十歳の作品集。

*解説頁・河野多恵子


嘉村 礒多著・山本 健吉編 (かむらいそた・やまもとけんきち)
「嘉村礒多集」
(かむらいそたしゅう)


*平成6年発行「新潮文庫の復刊」版カバー
 デザイン・新潮社装幀室
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*266頁 / 発行 1950年 / 旧仮名旧字体

*カバー文
厳しすぎる倫理観ゆえに過酷な業苦の世界に生きなければならなかった嘉村磯多。世に認められた最初の作品の題が「業苦」であったことは彼の生涯を暗示するものであり、その全著作は「業苦」と題する一大連作と言ってもさしつかえない。苦悩の年代記「途上」等、代表作19編。

*目次
業苦 / 一日 / 写真 / 崖の下 / 師への手紙 / 足相撲 / 蛍火 / 曇り日 / 愛の手紙 / 父への手紙 / 不幸な夫婦 / 日記抄など / 七月二十二日の夜 / 故郷に帰りゆくこころ / 再び故郷に帰りゆくこころ / 途上 / 風の吹く日 / 経机 /
神前結婚 / 年譜 / 解説 山本健吉


河上 徹太郎 (かわかみてつたろう)
「日本のアウトサイダー」
 (にほんのあうとさいだー)


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*233頁 / 発行 昭和40年

*カバー文
中原中也、萩原朔太郎、三好達治、梶井基次郎、堀辰雄、岩野泡鳴、河上肇、岡倉天心、大杉栄、内村鑑三……近代日本の個性的な文学者・思想家を、明治以来の立国の精神としての功利的実証主義に対するアウトサイダーとしてとらえ、その事跡と苦悩と反逆的批評精神とを検証する中で、逆に近代日本のインサイダーを照らし出そうとした労作。現代の人間存在を歴史に問いかける名著。

*目次
序 / 中原中也 / 萩原朔太郎 / 昭和初期の詩人たち / 岩野泡鳴 / 河上肇 / 岡倉天心 / 大杉栄 / 内村鑑三 / 正統思想について / 解説 福原麟太郎


川口 松太郎 (かわぐちまつたろう)
「新吾十番勝負」 (上中下)
 (しんごじゅうばんしょうぶ)

  
*カバー・成瀬数富 (画像はクリックで拡大します)

*上巻・539頁/中巻・578頁/下巻・583頁
*発行 昭和40年
*解説頁・小松伸六

*カバー文
上巻
八代将軍吉宗の御落胤・葵新吾の剣の道を描く大長編。越前鯖江藩主・松平頼方(のちの吉宗)は、習いおぼえた剣法をためしたくて行列の供先を乱した越前屋半六を無礼討ちにする。越前屋の娘お長は、許嫁の庄三郎と共に頼方とつけねらうが逆に捕えられ、頼方の寵愛をうける。お長は男児を生み美女丸と命名されるが、庄三郎は城中に忍び入って美女丸を奪い秩父の自源流道場で育てる。

中巻
青年剣士に成長した美女丸は、黒田藩士と争いを起こしたことから出生の秘密を知り、父・吉宗も美女丸の所在を知ることとなる。吉宗は美女丸との対面を望むが、美女丸がそれを拒んだため、「葵新吾」の名とともに諸国通行勝手の許可を与え、諸藩に保護をたのむ。無位無官の修行者として全国を歩ける身となった新吾は、剣の修業と正義のため、一番また一番と真剣勝負を重ねていく。

下巻
自源流「地ずりの構え」の達人となった葵新吾は、六番目の勝負で柳生流七剣士の宗田豊之進を斬り、柳生一族から狙われることになる。しかし、新吾のめざす相手はただ一人、剣の恩人・梅井多門を失明させた放生一真流の武田一真のみ。いっぽう将軍吉宗は、新吾との対面を果たすため、全国の武芸者を集めて御前試合を行うことにし、新吾はそこで一真と十番目の勝負を闘う。


川崎 洋 (かわさきひろし)
「かがやく日本語の悪態」
 (かがやくにほんごのあくたい)


*カバー装画・森英二郎
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*279頁 / 発行 平成15年

*カバー文
阿呆、馬鹿、間抜け……だけじゃない。日本語にはもっと面白い悪態がいっぱいある。落語、遊里、歌舞伎、芝居、映画、文学作品、方言、そして大学のキャンパス用語と幅広い分野から詩人が集めた、生命力に満ちた悪態の数々。啖呵もあれば洒落もあり、あげ足とりもあれば捨てぜりふもある。日本語の豊潤な世界の一翼を担う味わい深い悪口を選りすぐった、魅力あふれる「悪態大全」。

*目次
まえがき
第一章 落語に息づく悪態
第二章 遊里を彩る悪態
第三章 芝居・映画・文芸に見る悪態
第四章 方言に表現を得た悪態
第五章 現代キャンパスに飛び交う悪態
あとがきに代えて
日本語を耕すひと 茨木のり子
さくいん


河竹黙阿彌 (かわたけもくあみ) / 河竹繁俊編 (かわたけしげとし)
「黙阿彌名作選」 (もくあみめいさくせん)


*平成6年「新潮文庫の復刊」版カバー
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*291頁・旧仮名旧字体 / 発行 昭和30年

*カバー文
幕末から明治初期にかけて活躍した希代の歌舞伎作者、河竹黙阿彌。その生涯に世に送りだした作品は、世話物を中心に約三六〇編に及び、団・菊・左による歌舞伎史上最大の興隆期を支えた。本書は詩情豊かな表現力を駆使した彼の代表作を、その養嗣子が選定し解説を加えたものである。

*目次
天衣紛上野初花(くもにまがふうへののはつはな) 〈河内山・直侍〉
高時
船辨慶
新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)〈魚屋宗五郎〉
辨天娘女男白浪(べんてんむすめめをのしらなみ)〈辨天小僧〉
 黙阿彌小傅


川端 康成 (かわばたやすなり)
「天授の子」
(てんじゅのこ)


*カバー装画・東山魁夷
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*374頁 / 発行 1999年

*カバー文
川端康成は、2歳から14歳までに、両親と姉と祖父母とを亡くし、天涯の孤児の感情を知った。養女を迎える話に、著者の孤独な少年時代を回顧する「故園」、上洛する古人の旅の心情を描く「東海道」、養女の民子への慈しみと戦後まもないペンクラブの活動を綴る「天授の子」など4編を収録する。1968年、日本で最初のノーベル文学賞を受賞した著者の、魂の奥の奥にふれる貴重な作品集。

*目次
故園
東海道
感傷の塔
天授の子
 解説 佐伯彰一
 覚書 川端香男里
 年譜


川本 三郎 (かわもとさぶろう)
「いまも、君を想う」
(いまもきみをおもう)


*カバー写真
 川本恵子、初代シャム猫と。(著者撮影)
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*199頁 / 発行 2012年

*カバー文
家内あっての自分だった。一人きりで迎える静かな時間の中で、とめどなく蘇る君在りし頃の思い出。手料理の味、忘れられない旅、おしゃれ、愛した猫や思い出の映画……。夫婦二人だけで過ごした35年間のささやかな日常には、常に君がいてくれた。いい時も悪い時も、7歳下の美しく、明るく、聡明な君が ―― 。文芸。映画評論でつとに知られる著者が綴る、亡き妻へ捧げる感涙の追想記。

*目次
持てあます野良猫二匹やひとり者
家内、川本恵子は二〇〇八年、五十七歳で逝った
 日々の暮らしのなかのファッションと小さなたしなみ / 三鷹での新婚のころ / ♪ツー・ストライク、ノー・ボール、それでもニッコリまけないぞ / 料理好き
「人生で一番の旅は」と聞くと、家内は私と行った台湾と答えた
 ロシア旅行のこと、台湾旅行のこと / 家計のこと、自由業の妻であること / ファッション評論のこと、アジサイのこと
他愛のない会話がいま懐しい
「一人食う飯はまずく女房と食べた晩飯は楽しかった」(伊藤茂次)
 医者の「容赦ない宣告」 / 家内の本、「魅惑という名の衣裳」 / 「もっと優しうしといてやりゃよかった」
静かな葬儀をするということ
幸せだった思い出を語るのが、いちばんうれしいことではないか
 在宅看護 / 善福寺川緑地への散歩 / 公園墓地と言う霊園で亡き妻を思いひとり弁当を食う
あとがき
「別れ」という重たい代償 ―― 西川美樹
解説 ―― 佐久間文子


河盛 好蔵 (かわもりよしぞう)
「藤村のパリ」
 (とうそんのぱり)


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*399頁 / 発行 平成12年
*カバー装画・香月泰男

*カバー文
姪との「不倫」に苦悩した島崎藤村は、逃げるようにしてフランスへ渡った。折しも勃発した第一次世界大戦に濃く色どられた約三年間のパリ生活で、藤村は何を観、何を聴き、どんな事態を体験したのか? 下宿の女主人との関係は? 河上肇や藤田嗣治ら、パリの日本人たちとの交友は? 人間への好奇心、その飽くなき情熱が生き生きと蘇えらせる、藤村の歩いたパリ。読売文学賞受賞。

*解説頁・清岡卓行


上林 暁 (かんばやし あかつき)
「聖ヨハネ病院にて」
(せいよはねびょういんにて)


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*258頁・旧仮名旧字体 / 発行 1949年
*カバー画像・平成5年刊「新潮文庫の復刊」版

*カバー文
重度の精神病を患った妻を介添えする夫の、自嘲と献身の狭間に揺れる姿を通して、神々しいまでの夫婦愛を写す表題作。病んだ妹のために一輪の薔薇を学校の花壇から盗んだ少年のやりきれぬ日常を乾いた筆致で描いて出世作となった「薔薇盗人」など、代表作7編を収めた中短編作品集。

*目次
薔薇盗人
天草土産

二閑人交遊圖
小便小僧
明月記
聖ヨハネ病院にて
 解説 伊藤整