絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【ま】

マイク・モラスキー編 (Michael Molasky)
「闇市」
(やみいち)


*カバー写真・朝日新聞社
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*407頁 / 発行 2018年

*カバー文
一枚の百円紙幣が語り手となり、闇屋、陸軍大尉などを転々としながら見た欲と情の光景を綴る太宰治「貨幣」。会社の命令で闇食糧の調達に奔走し、その最中に逮捕された朝鮮人の悲惨な運命を描く鄭承博「裸の捕虜」。平凡な会社員が電車内での突発事から闇屋として生き抜くことに目覚める梅崎春生「蜆」 ―― 終戦時の日本人に不可欠だった違法空間・闇市。その異様な魅力を伝える名短篇11作を収録。

*目次
はじめに
 経済流通システム
貨幣 … 太宰治
軍事法廷 … 耕治人
裸の捕虜 … 鄭承博
 新時代の象徴
桜の下にて … 平林たい子
にぎり飯 … 永井荷風
日月様 … 坂口安吾
浣腸とマリア … 野坂昭如
 解放区
訪問客 … 織田作之助
蜆 … 梅崎春生
野ざらし … 石川淳
蝶々 … 中里恒子
解説 マイク・モラスキー / 文庫版あとがき / 著者紹介 / 初出一覧


牧山 圭男 (まきやまよしお)
「白洲家の日々 娘婿が見た次郎と正子」
(しらすけのひび)


*カバー写真・田澤進(新潮社写真部)
 デザイン・新潮社装幀部
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*264頁 / 発行 2015年

*カバー文
白洲次郎のひとり娘を奪い、“七年の敵”と呼ばれた著者。「夫婦円満の秘訣はなるべく一緒にいないこと」という奇想天外な二人のもと、後年様々な薫陶を受けることになる。著者が夫婦喧嘩をしたときに、居合わせた正子が見せた女性らしい素顔、夜中に訪れた新聞記者に次郎が応えて言った「僕は口が堅いからここまで生きてこられんたんだ」という言葉の重み……。秘話満載の名エッセイ。

*目次
 はじめに〜次郎さん、人生最悪の日
一 家族のこと、家のこと
 円満の秘訣 / 直言は親譲り / 可愛い孫との秘密 / 骨董店での仰天 / 正子のアドバイス / 正子らしい毒舌 / 骨董について / 食卓にて / 店を甘やかさない / 男次郎の持論 / 鶴川村のパパとママ / 屋根替えのこと
二 スポーツマンシップ
 ゴルフクラブライフ 1 / ゴルフクラブライフ 2 / ゴルフクラブライフ 3 / お洒落について / 軽井沢の思い出 / スポーツ大好き夫妻 / プロとアマの違い / 華麗なる車遍歴 / オイリーボーイのゴール
三 仕事と友情と
 公私混同するなかれ / 夜中の対決 / 肝を冷やした一言 / 白洲会長、大弱り / 生涯唯一の負け戦 / 政治家嫌い / 捨てられなかった書類 / 揺るがぬプリンシプル / イギリスへの最後の旅
あとがき
 婿殿の日 阿川佐和子


マグリッド・オード著 (Marguerite Aunoux) / 堀口 大學訳 (ほりぐちだいがく)
「光ほのか」 (DOUCE LUMIERE/ひかりほのか)


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*204頁
*発行 昭和31年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
不運の星の下に生れた薄幸な娘。彼女は“光ほのか”と呼ばれた。怜悧で感受性の豊かなほのかは決して人を憎まず、それがために苦難の人生を耐え忍んでゆく ― 。中部フランスの寒村に生まれ、自らも荊棘の道を歩みつづけた著者が、気高い魂の美しさを切々と謳い上げた哀憐の絶筆。


正宗 白鳥 (まさむねはくちょう)
「生まざりしならば・入江のほとり」
 (うまざりしならば・いりえのほとり)


*平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー
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*昭和38年9刷表紙

*229頁 / 発行 1951年 / 旧仮名旧字体

*カバー文
業病を背負って生まれついた我が子をめぐる夫婦の陰湿な確執と悲劇の結末「生まざりしならば」。因習の色濃い地方の旧家に住む兄妹たちの暗鬱な日常「入江のほとり」。ほかに「微光」「泥人形」。人生への懐疑と嫌悪を残酷とも言える虚無的な筆に描きつづけた著者の代表的短編を収録。

*解説頁・平野謙


正宗 白鳥 (まさむねはくちょう)
「作家論」上下巻
 (さっかろん)

*上巻294頁・下巻304頁 / 発行 昭和29年

*目録文
四迷・紅緑・漱石・龍之介・直哉・荷風・秋聲・横光等々、人物で見る明治大正昭和文學史。


松本 隆 (まつもとたかし)
「紺碧海岸」
(こんぺきかいがん)


*カバー装幀・石倉ヒロユキ
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*228頁 / 発行 1995年

*カバー文
群青の海に轟くエンジン音。陽光に照り映える艶やかなボディ。ひたすら栄光を求め、死の匂いに包まれる選ばれし戦士たち ── 。残酷なまでに華麗なF1グランプリの陰で、男と女は出会い、別れ、少年は英霊に導かれ至福の時を迎える……。F1が最も輝いた4年半、モナコからケープタウンまでアイルトン・セナを追った著者が、実際のレース展開を基に構築した短編小説9編を収録。

*目次
T 紺碧海岸
U 永遠の一瞬、一瞬の永遠
V アリゾナの決闘
W 止まらない夏
X マニクールの壁
Y 風になった少年
Z イカロスの叫び
[ 喜望峰
\ 風の墓標


丸谷 才一 (まるやさいいち)
「新々百人一首(上下)」
(しんしんひゃくにんいっしゅ)




*カバー・和田誠
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*上巻504頁・下巻403頁 / 発行 2004年

*カバー文
上巻
王朝和歌の絢爛たる世界が蘇る! 藤原定家の「小倉百人一首」、源義尚の「新百人一首」に続き、丸谷才一が新たに編んだ「新々百人一首」。定家と義尚が選んだ二百人を敬遠せず、かつ両人の取った二百首との重複は避けて厳選した百首と、それに付された滋味溢れる長短繁簡とりどりの注釈は、王朝和歌の楽しみを存分に与えてくれる。上巻は、「春」「夏」「秋」「冬」の部を収録。
下巻
王朝和歌に対する当世随一の愛情と批評眼を持つ読み手・丸谷才一が、二十五年の歳月をかけて不朽の秀歌百首を選び、スリリングな解釈を施した現代版「百人一首」。万葉集に始まり室町期の私家集で終わる、紀貫之の春の歌から紫式部の祝福の歌までの百首は、通読すると歌で読む「日本文学史」にもなっている。下巻は、「賀」「哀傷」「旅」「離別」「恋」「雑」「釈教」「神祇」の部を収録。

*目次
上巻
はしがき
新々百人一首内容順目次
新々百人一首
 春 / 夏 / 秋 / 冬
新々百人一首時代順目次

 対談 王朝和歌は恋の歌 丸谷才一 / 林望

下巻
新々百人一首内容順目次
新々百人一首
 賀 / 哀傷 / 旅 / 別離 / 恋 / 雑 / 釈教 / 神祇
新々百人一首時代順目次

 小倉百人一首一覧
 新百人一首一覧
 勅撰和歌集一覧
 テクスト、表記、人名について
 初出一覧
 和歌索引

 対談 百人一首腕くらべ 丸谷才一 / 俵万智


丸山 健二 (まるやまけんじ)
「ぶっぽうそうの夜」
(ぶっぽうそうのよる)


*カバー装画・田島照久(ジーズデイズ)
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*533頁
*発行 2000年

*カバー文
定年間際で会社を去り、男は故郷に戻った。死に場所と定め、数十年ぶりに眺める山村。そこではかつて、妹が惨殺され、世を儚んだ母が自殺を遂げていた。久々に訪れた実家には首を吊った弟の亡骸 ―― 。それでもなお、自身の最期にはふさわしい地のはずだった。だが、ぶっぽうそうの鳴き声が響いた夜、仇敵は姿を現わした。女たちを狙う猟奇殺人犯を、男は餓鬼岳の頂上に追い詰める。