絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【も】

本山 賢司 (もとやまけんじ)
「星の降る森で」
(ほしのふるもりで)


*カバー装画・本山賢司
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*242頁 / 発行 1995年

*カバー文
叔父に連れられて入った森の奥には“何か”が潜んでいた。風の匂い、魚の影、樹の枝の音、獣の気配……。でも僕らが感じていた何かは、焚火を消した時に凄いスケールで空に姿をあらわした! 表題作「星の降る森で」を始め、死の瞬間から大きさ、形、重さを刻々と変える熊の最期を写し取った「星屑のような命」など、森羅万象の底に流れる“静謐な激しさ”を見事に伝える9つの短編小説。

*目次
焚火のまわりで
絢爛
遠い湿原の記憶
腹面観察者の死
川の肋骨
星屑のような命
火の番人
密林の夢
星の降る森で
 解説 片岡義男
 挿画 本山賢司


森 浩一 (もりこういち)
「古代史の窓」
(こだいしのまど)


*カバー写真提供・奈良県立橿原考古学研究所
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*251頁 / 発行 1998年

*カバー文
「九州説」「大和説」「東遷説」 ── 果てしなく繰り広げられている邪馬台国論争の、最有力説はどれか? 「天皇」はいったい、どこからやってきたのか? 三角縁神獣鏡は本当に“卑弥呼の鏡”なのか? 発掘・調査で全国津々浦々を駆けめぐってきた考古学の第一人者が、最新研究に基づき、古代日本の謎の数々に大胆な答を提示する。知的刺激と新発見に満ちた、古代史ファン必読の書。

*目次
第一章 古代史の窓
 1 田に埋めた伏見人形 / 禅寺と古鐘 / そっくりさんの香炉 / 東福寺と承天寺 / 使われなかった設計図 / 土蔵の科学 / 考古学者の条件 / 復元望楼の是非 / 西都原方式の遺跡保存 / 切りはなされた仏頭 / 九州との出会い / 弁当を半分くれた人 / 倭人伝を導く灯台 / 津島と対馬 / 佐用姫岩と倭人伝 / アワビを鰒と書くこと / 正面に祀られた逆人 / 別離の恋人と鏡 / 駅と潟と港 / 実を食べる松 / 年魚釣りで占う娘たち / 玄界の捕鯨 / 京都と奈良の宗像神社
 2 ヤマトは国のまほろば / 邪馬台国奈良説 / 戦争と侵略のいいわけ / 磐井戦争の相手 / 聖なる水のわく磐井 / 男山にある高良神社 / 磐井の墓と岩戸山古墳 / 裁判官のいた磐井政権 / 猪飼いの目的 / 磐井戦争の後始末 / 青龍三年銘の鏡 / 危険な舶載鏡 / 鏡についての疑念 / 年号鏡の価値 / 乾隆年製のラーメン鉢 / 三国時代か四国時代か / ヒミコの機敏な外交 / イレズミをした大夫マソ / 女王国は筑紫平野東部か / 絹の東伝 / 邪馬台国東遷説 / ウズ彦と倭国造 / 末蘆国と久里双水古墳 / 一筆啓上賞
第二章 倭人と中国文化
 1 古代における日本と江南 / 2 『魏志』倭人伝と考古学 / 3 倭人と呉越文化 / 4 島の考古学 ── 東シナ海の島々 / 5 曹氏墓出土の倭人字磚とその問題 / 6 有明文化圏と江南
第三章 天皇とそのルーツ
 1 さまよえる大王のルーツ / 2 イワイと継体大王 / 3 大嘗祭と忌部氏
付章 最近の考古学の話題
 見直し進む縄文文化 / 唐古・鍵遺跡の楼閣の土器絵画 / さまよえるヤマタイ国 / 青龍三年鏡と古墳の保存 / 箸墓古墳・陵墓範囲外の調査の意義 / 地震考古学との出会い
 あとがき / 解説 地域からみた古代史と学際研究……鋤柄俊夫


森 浩一 (もりこういち)
「わが青春の考古学」
(わがせいしゅんのこうこがく)


*カバー・「調査の記録」第一冊目の冒頭ページと、中学に入った頃の写真。
(いずれも著者の所蔵、「調査の記録」の写真は梅原章一氏撮影)
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*258頁 / 発行 2002年

*カバー文
小学5年の時、近くの川で拾った土器のかけらを辞典で調べたら、朝鮮式土器だった ―― これが森少年と考古学の出会いであった。戦時中から遺跡探訪を続け、ノートに細かく記録した中学時代。荒れ果てた古墳の緊急発掘や占領軍キャンプ内での調査に追われた体験は、やがて壮大な森・遺跡学へと結実する。考古学の魅力を存分に綴った、自伝的エッセイ。「僕は考古学に鍛えられた」改題。

*目次
 はしがき
第T部 考古学との出会い
 1 体験が学問に生きる / 2 考古学からの誘惑 / 3 考古学人生のスタート
第U部 敗戦直後の考古学
 1 黄金塚の緊急発掘 / 2 古代史との接点を求めて / 3 占領軍兵営内での古墳調査
第V部 同志社大学に入ったころ
 1 垣間見た学界と僕の実践 / 2 さまざまな遺跡調査
第W部 黒姫山古墳の発掘と研究会の結成
 1 黒姫山古墳の発掘 / 2 若者で機関紙を発行する / 3 そのころの発掘風景
第X部 『古代学研究』の発行
 1 雑誌の影響とその後 / 2 青春紀行
第Y部 青春の総括としての黄金塚の発掘
 1 黄金塚の本格調査 / 2 出土状況の語る事実 / 3 三角縁神獣鏡を考える
書きもらした一本の刀 ―― あとがきをかねて
年譜 / 文庫版あとがき


森 茉莉 (もりまり)
「贅沢貧乏」
 (ぜいたくびんぼう)


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*237頁
*発行 昭和53年
*カバー・斎藤和男

*カバー文
著者の創作の舞台裏であり愛猫とふたり(?)の珍妙なアパート暮しのようすを軽妙な筆致で、自由に綴る批評的自画像。見かけだけ贅沢で、実は、内容の寒々としている現代風の生活に、侮蔑をなげつけながら、奔放豪華な夢を描く連作長編『贅沢貧乏』。ほかに、著者の目にうつる文壇をその鋭い洞察力で捉え、パロディ化した『降誕祭パアティー』『文壇紳士たちと魔利』など全5編を収録。

*解説頁・吉行淳之介


森田 たま (もりたたま)
「もめん随筆」
 (もめんずいひつ)


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*283頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和26年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
関東と関西の違いをユーモラスに論じる「東京の女・大阪の女」、内田百閧ニ一緒に芥川龍之介の家を訪ねた日の思い出を綴った「芥川さんのこと」「七月廿四日」などの随筆のほか、小説も収める。家庭婦人の眼に映った日常生活の出来事を、鋭い感性と観察眼で巧みにとらえた随筆集。


モーパッサン著 杉 捷夫訳 (Guy de Maupassant / すぎとしお)
「ピエールとジャン」
(PIERRE ET JEAN)


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*245頁
*発行 昭和27年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
ある日突然、知人の遺産が弟ジャンのところに転がり込んできた。なぜ、弟だけ……? 舞い上がる父母と弟をよそに、ひとり複雑な思いに沈む兄ピエール。その日から兄弟の半目が一気に爆発し、思いがけない事実が発覚する。人間の苦悩と悲劇を描いたフランス自然主義文学の傑作。


モリエール著・内藤 濯訳 (ないとうあろう)
「女学者・気で病む男」
(おんながくしゃ・きでやむおとこ)


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*220頁
*発行 1952年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*目録文
十七世紀フランス上流社会を舞台にした風俗喜劇「女学者」と、医学と医者を鋭く諷刺した笑劇「気で病む男」。フランス古典劇の代表者モリエールの晩年の性格喜劇二編を収録。


モーリヤック著 鈴木 健郎訳
「蝮のからみあい」
 (まむしのからみあい)


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*239頁・旧字体
*発行 昭和29年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
新婚早々、妻に愛されぬことを知ってから、所有欲と復讐の妄念に憑かれた悪魔となった夫。以後五十年間にわたって家族を苦しめ続けた彼が、死を目前にして綴った回想録。醜悪ともいえる人物が、作者の深い愛に濾過されて到達した境地とは。カトリック作家モーリャックの代表作。

*解説頁(あとがき)・訳者