絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【に】

西岡 文彦 (にしおかふみひこ)
「絶頂美術館 名画に隠されたエロス」
(ぜっちょうびじゅつかん)


*カバー装幀・西岡文彦
 カバー装画・ジェローム
 「ローマの奴隷市場」
 37.885 A Roman Slabe Market.
jean-Leon Gerome,French,ca.1884.
(C)The Walters Art Museum,Baltimore
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*214頁 / 発行 2011年

*カバー文
観るものの心をときめかせるエロティックな絵画。時を超え、文化を超えて人々を引き付けてやまない「性」の讃歌を湛えた名画の、細部に宿る謎を解き明かす。しどけなく横たわるヴィーナスの足指が反り返っているのはなぜか。実在の娼婦から型取りされた裸体彫刻の、ねじれたポーズの意味するところは? 神話や時代背景を読み解き、読者を知的絶頂(エクスタシー)へと誘う、目からウロコの美術案内。

*目次
 はじめに
第一章 足指のひそやかな物語
    美のエクスタシーは細部に宿る
第二章 絶頂のボディ・ライン
    パリ芸術界の女王、官能の身悶え
第三章 古代ヌードのくびれ効果
    ポーズは「自分をデザインする」
第四章 新古典主義のトルコ風呂
    ハーレムに託した裸体のユートピア
第五章 接吻するエクスタシー
    愛と魂が結ばれるクライマックス
第六章 涙の美少年ヌード
    革命の少年兵が全裸で描かれた理由
第七章 無敵のギリシア同性愛軍団
    死をも超える古代神聖部隊の愛の絆
第八章 ヌードの虐殺
    倒錯と激情が渦巻くロマン主義の裸身
第九章 戦うレズビアン絵画
    反逆の画家が描く「男性不要」の官能
第十章 挑発のカメラ目線
    見る者を見返すヌードが開いた近代
第十一章 「宿命の女(ファム・ファタル)」の恍惚
    芸術家の罪深き業、悲劇のヒロイン
第十二章 禁断のマハの瞳
    ひそかに描かれた裸身の濡れた視線
 絶頂にいたるまで ―― 文庫版あとがきにかえて


西岡 文彦 (にしおかふみひこ)
「恋愛偏愛美術館」
(れんあいへんあいびじゅつかん)


*カバー装幀・西岡文彦
 カバー装画
  カミーユ・クローデル
  「ウェルトゥムヌスとポモナ(サクンタラ)」
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*286頁 / 発行 2015年

*カバー文
純愛、悲愛狂恋、腐れ縁……。芸術家による様々な恋愛、苦悩、葛藤。それらを経て生まれる名作の数々。ピカソはなぜ愛人を次々と作り、ハーレムを構えたのか。ロダンとカミーユの宿命的な愛の行方は。なぜムンクの作品は不安に満ちているのか。それぞれの人生模様、作品が織り成す華麗な物語を、分かりやすく紹介する美術案内。『恋愛美術館』改題。

*目次
 はじめに
第一章 ピカソ 性の修羅、愛の地獄
 死を目前にした自画像が見ていたもの
第二章 モディリアーニ 悲恋の記念碑
 瞳を描かぬ肖像画に画家が託したもの
第三章 ジェローム 芸術、それは美神との恋
 印象派の天敵が描き上げた神話的接吻の名場面
第四章 ドガ 夜明けのカフェ、不幸の居心地
 カメラ・アイがとらえた都市恋愛のなれの果て
第五章 ダンテとベアトリーチェ 忘れ得ぬ女
 詩聖が永遠の恋人を見たフィレンツェの街角
第六章 マネとモネ 妻の面影、日傘の恋
 妻を亡くした画家が顔を描かなくなった理由
第七章 ルノワール 芸術と青春の聖地
 動かぬ指に筆を縛りつけた老巨匠の初恋
第八章 ムンク 吸血鬼、暗黒の恋
 死者と生きていた画家の性愛のトラウマ
第九章 カミーユ・クローデル 狂恋の門
 ロダンと若き愛人の愛憎のスペクタクル
第十章 モンマルトルの夜会 ミューズの涙
 破壊の王ピカソが創造の女神に出会う時
第十一章 モンパルナスの娘 愛の墓碑銘
 偽りのモディリアーニ伝説が正される時
 おわりに
 再会のソナタ ── 文庫版あとがきにかえて


新田 次郎 (にったじろう)
「強力伝・孤島」
 (ごうりきでん・ことう)


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*259頁
*発行 昭和40年

*カバー文
五十貫もの巨石を背負って白馬岳山頂に挑む山男を描いた処女作『強力伝』。富士山頂観測所の建設に生涯を捧げた一技師の物語『凍傷』。太平洋上の離島で孤独に耐えながら気象観測に励む人びとを描く『孤島』。明治35年1月、青森歩兵第五連隊の210名の兵が遭難した悲劇的雪中行軍を描く『八甲田山』。ほかに『おとし穴』『山犬物語』。"山"を知り"雪"を"風"を知っている著者の傑作短編集。

*解説頁・小松伸六


新田 次郎 (にったじろう)
「望郷」 
(ぼうきょう)


*カバー・桑原甲子雄
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*417頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
昭和20年11月、沢田冬明は北朝鮮の丘の上から家族たちと引きはなされ、ソ連軍の捕虜となる。2ヵ月後、中共軍の技術者として職を得る。中共と国府が争う極限状況下、遠く妻子を思い、心の荒廃した人たちの間で、ひとり誠実に生き抜く……。表題長編および、その連作『豆満江』『夕日』の自伝的3編をはじめ、戦争の深い傷跡を小説化した著者の戦争文学全6編を収録する。

*目次
豆満江
望郷
夕日
七人の逃亡者
生き残った一人
西沙島から蒸発した男

 解説 山田智彦


新田 次郎 (にったじろう)
「六合目の仇討」
 (ろくごうめのあだうち)


*カバー・三井永一
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*352頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
江戸後期、西神田を出発した富士詣での先達をつとめる町人・八兵衛には、幼な馴染みのぬいをめぐる苦渋の過去があった……十年前に武士を捨てた男への復讐劇が、富士山中腹に展開される表題作。蝦夷地北辺の警衛に功のあった近藤重蔵の失脚を描く『近藤富士』、ほかに『関の小万』『冬田の鶴』『指』『太田道灌の最期』など、歴史に材をとり、そこに生きた人々の姿を見据える12編。

*目次
六合目の仇討
近藤富士
関の小万
生人形
賄賂
冬田の鶴

島名主
伊賀越え
太田道灌の最期
仁田四郎忠常異聞
意地ぬ出んじら
 解説 尾崎秀樹