絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【た】

高田 隆雄 (たかだたかお)
「特急列車 走りつづけて80年」
 (とっきゅうれっしゃ)


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*227頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
明治39年、新橋〜神戸間に、急行列車の中でも最も速く最も豪華な急行“最急行”が運転を開始した。その後“最急行”は“特別急行”と名前を改め、昭和4年には、「富士」「桜」の愛称をつけた特急がデビューした。以来、日本全国の鉄道に君臨しつづけた特急列車のすべてを、戦前から機関車作りの第一線にあった著者が、なつかしい貴重な写真と豊富なエピソードで綴る、オリジナル・カラー文庫。

*目次
古い切符のコレクション
第1章 特別急行列車 / 東海道・山陽本線に君臨(明治39年〜昭和19年)
第2章 荒廃の中から特急列車復活(昭和24年〜昭和31年)
第3章 特急列車網 全国に広がる(昭和32年〜昭和38年)
第4章 特急列車の大衆化進む(昭和39年〜昭和49年)
第5章 ゆるぎない新幹線時代(昭和50年3月〜昭和60年2月)
第6章 21世紀へ驀進する特急列車(昭和60年3月〜)
特急をひいた蒸気機関車
私鉄特急 概観
国鉄の全特急データ / 索引
 あとがき
 憧れの特急「富士」 阿川弘之


高橋 和巳 (たかはしかずみ)
「捨子物語」
 (すてごものがたり)


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*420頁
*発行 昭和56年
*カバー・香月泰男

*カバー文
貧民窟に生れ、ふとした偶然から捨子にされて中流家庭に拾われた嬰児。成長した少年は、物質的には不自由なく育てられながら、家庭にも学校にも、醒めた視線を投げかけていた。 ― 戦時下の地方都市を背景に、少年の醒めた目が見詰める家族の崩壊、軍国主義社会の熱狂と不安、そして破滅。高橋文学の主要なテーマをすべて内包し、巨大な出発点となった記念すべき処女長編。

*解説頁・秋山駿


高橋 和巳 (たかはしかずみ)
「堕落」 
(だらく)


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*172頁
*発行 昭和57年
*カバー・平野遼

*カバー文
ある新聞社の福祉事業団体賞を受けた混血孤児収容施設・兼愛園の園長青木隆造は、表彰式の席上、思わず涙を流した、俺の人生は虚無だった。今の俺は形骸にすぎない……。元満鉄社員として五族協和の夢を抱いていた青木にとって、引き揚げてきて後の兼愛園開設は、いわば占領軍への復讐であった。それが、社会的に認知されてしまった今、彼の内面は静かに崩壊しはじめていた ― 。


高橋 義孝 (たかはしよしたか)
「大人のしつけ 紳士のやせがまん」 (おとなのしつけ しんしのやせがまん)


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*275頁
*発行 昭和59年
*カバー装画・扉カット 柳原良平

*カバー文
しちっ堅い理屈は抜きにして、怒苦笑百遍、意おのずから通じる ― 。まずは近頃気になる現代人のしつけについての不満、憤懣、ヤセ我慢たっぷりの試聴室。ついで身だしなみや趣味、贈り物、小物をめぐる粋な四畳半。さらに酒肴や器も吟味した味の特選街、海外ツアーや言葉と本の教養コーナー。フィナーレは熟年人生相談室まで取揃えた“大人のためのエッセイ博覧会”にご案内します。

*解説頁・金田一春彦


高橋 義孝 (たかはしよしたか)
「叱言たわごと独り言」 (こごとたわごとひとりごと)


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*298頁
*発行 一九八〇年
*カバー・灘本唯人 / 解説頁・北杜夫

*カバー文
本書には合成甘味料、着色料等いっさい使用しておりません。歯に衣着せぬ辛口のお叱言をベースに、ほんのりとした酒・料理の甘み、人生のほろ苦さなどを加えてじっくりと練り上げた、風味豊かなエッセイ集です。近ごろ目にあまる世相への毒舌を味わうもよし、年期の入った酒の話、書斎の隅でのよもやま話もまたよし……。どこからでも楽しめる125編のエッセイ・アラカルト。

*解説頁・北杜夫


高橋 義孝 (たかはしよしたか)
「へんくつの発想」
 (へんくつのはっそう)


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*300頁
*発行 昭和57年
*カバー装画・東君平

*カバー文
この本は骨っぽい本です。大骨小骨があちこちに飛びだしてチクリチクリと刺さります。甘口ばやりの昨今、貴重品になった、へんくつ、がんこがタップリ含まれています ― 。筋金入りのがんこ親父・内田百閧フ思い出、名所旧跡を見て歩かない変な汽車旅の話をはじめ、世相の言葉の乱れに腹を立て、うまいものが減ったことを嘆く、苦味さわやかなエッセイ62編を収めました。

*解説頁・江國滋


高橋 義孝 (たかはしよしたか)
「若気のいたり 年寄の冷や水」
 (わかげのいたりとしよりのひやみず)


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*299頁
*発行 昭和59年
*カバー装画・杉浦範茂

*カバー文
若い時には失敗し、年を取ったら疎まれる ― だから世の中おもしろい。この本には、苦い失敗、しょっぱい涙、思わず頬っぺたのゆるむ笑いなど、人生をおもしろくするスパイスが各種取りそろえられています。世相や、男と女のことから、身の回り、酒のこと、さては生い立ち、人生談義まで、語る材料はさまざまながら味の塩梅は極上品。酸いも甘いもかみわけた大人の味のエッセイ115編。

*解説頁・木村尚三郎
*扉カット・杉浦範茂


高見 順 (たかみじゅん)
「如何なる星の下に」 
(いかなるほしのもとに)


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*217頁
*発行 1948年
*カバー画像・「新潮文庫の復刊」版

*カバー文(「新潮文庫の復刊」版より)
日中戦争がすでに泥沼状態に陥った昭和の暗黒時代。仕事のためにひとり浅草の安アパートに間借りした著者が、そこにうごめく庶民たちの中に見たものは……。しがない踊り子や漫才師、さらには作家くずれなど、夢やぶれ、落ちぶれて人生の裏街道を行く人々の哀歓を風俗詩的に描く。

*解説頁・北原武夫


滝井 孝作 (たきいこうさく)
「無限抱擁」 (むげんほうよう)


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*215頁
*発行 昭和23年

*カバー文
吉原の娼妓との恋愛、結婚、そして彼女の死まで縷々と流れる詩情のうちに描いた私小説中の佳品である。愛人病歿のはかなさ、その後移り住んだ田舎の風景のありさまは、“夢幻泡影(ほうよう)”といった無常観を作者の心に育てた。自らのこの体験をとりつくろわず、微塵も妥協せず書き上げた本編は、心を抉るような勁さで読者に迫り、“無限抱擁”と呼ぶにふさわしい力と愛情とを湛えている。

*解説頁・外村繁


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「遺恨の譜」 (いこんのふ)


*カバー装幀・百鬼丸
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*378頁 / 発行 1996年

*カバー文
幕末期、勤皇派の薩摩藩士の企てを上意によって阻止せんとした寺田屋の変。辛うじて生き残った志士たちが、長州との勢力争いのため、迎えることを余儀なくされた無残な最期とは(「遺恨の譜」)。詰め腹を切らされた父の無念を晴らすべく、主君の死に際してご法度となっていた追腹を願い出た武士の心情を綴った、著者のデビュー作(「高柳父子」)。哀感あふれる名作九編を収録。

*目次
高柳父子
仲秋十五日
青葉雨
下野さまの母
昔の月
鶴姫
一夜の運
千間土居
遺恨の譜
 解説 縄田一男


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「鬼哭の城」
(きこくのしろ)


*カバー装画・百鬼丸
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*307頁
*発行 1994年

*カバー文
果たし合いなど廃れていた江戸時代末期に、些細な口論から果たし状をつきつけられた武士の困惑(「蛍橋上流」)。藩主の意に背き、浪人の娘を嫁にとった親子の悲劇(「花散りて後」)。斬るなかれ、斬らるべし―という極意を得ていた剣の達人が、主君から放し討ちを命じられ、悩んだ末に思いついた秘策とは(「放し討ち柳の辻」)。武士道無残を峻烈に描き切った、緊張感みなぎる作品集。

*目次
蛍橋上流 / 花散りて後 / 乱れ雪 / 寒月雪見橋 / 放し討ち柳の辻 / 鬼哭の城 / その名は常盤 / 解説 武蔵野次郎


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「権謀の裏」 (けんぼうのうら)


*カバー・岩田健太郎
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*299頁 / 発行 平成4年

*カバー文
肥前佐賀の大名、鍋島直茂は関ヶ原の合戦で二股をかけた。初め西軍についた直茂は、家康の勝利を確信するや、豊臣方の立花宗茂を隣国・柳川城に攻め、領地安泰をはかったのである。その直茂が自らの墓碑に豊臣家への忠誠を表す「豊臣朝臣」の文字を刻んだ真意とは…。表題作「権謀の裏」をはじめ、武士の激しく哀しい生きざまと、内に秘められた思いを峻烈に描いた秀作10編を収録。

*目次
曽我兄弟 / 倭寇王秘聞 / ときは今 / 権謀の裏 / 旗は六連銭 / 幻の九番斬り / 返り討ち無情剣 / くらやみ無限 / 薩摩兄弟飛脚 / 桜田門外の雪 / 解説 古川薫


滝田 ゆう (たきたゆう)
「昭和夢草紙」 (しょうわゆめぞうし)


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*315頁
*発行 昭和58年
*カバー・滝田ゆう

*カバー文
裏町、横丁、路地、小路、“色街”、玉の井をぬければ思い出はみんな夢の中。ドブっ端ですれちがった銘酒屋のおねえさんのうしろ姿に見とれ、おぼろ月夜の屋根の上で猫が啼いたといっては立ちどまり、物干しで洗いざらしの腰巻が風になびいていれば背のびする。うれしいことも悲しいことも、なにもかもみんな夢まみれ。下町の粋人が絵と文で綴る、今は昔の「夢のお話」101話。

*解説頁・田中小実昌


岳 宏一郎 (たけこういちろう)
「群雲、関ヶ原へ 上下巻」 (むらくもせきがはらへ)

 
*カバー装画・中川恵司
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*上巻674頁・下巻666頁 / 発行 平成10年

*カバー文
上巻
太閤に続いて加賀前田利家も逝った。家康は秀吉の遺法をこれ見よがしに犯し続ける。動乱の機運が世を包む。会津百二十万石を領す上杉景勝を取り込むべく、家康と三成が激しく動く。黒田、加藤、福島、毛利、島津、宇喜多等、群雄もそれぞれの思惑で蠢動しはじめる。西か、東か、景勝の英断が下る。歴史の軸が旋回しはじめた……。関ヶ原という壮大なドラマを新しい視点で描く歴史雄編。

下巻
家康の走狗と化した黒田、福島、細川を前軍とした上杉討伐の大軍が迫る。凛として迎え撃つ上杉景勝。だが、三成が大坂で挙兵したため家康率いる大軍は反転して西に向かった。上杉は北国の諸大名を調略し、関ヶ原の結果を待つ。引き裂かれた真田、迷走する島津、稀代の知略の鍋島等、群雄はそれぞれの想いを胸中に秘め関ヶ原に集結した。日本史最大の合戦を斬新な手法で描く快作、完結編。

*解説頁(下巻)・縄田一男


武田 泰淳 (たけだたいじゅん)
「ひかりごけ・海肌の匂い」(旧版) (ひかりごけ・うみはだのにおい)


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*205頁
*発行 昭和39年
*カバー装画・難波淳郎

*カバー文
雪と氷に閉ざされた北海の洞窟の中で、生死の境に追いつめられた人間同士が相食むにいたる惨劇を通して、極限状況における人間心理を真正面から直視した問題作「ひかりごけ」。仏門に生れ、人間でありながら人間以外の何ものかとして生きることを余儀なくされた若き僧侶の苦悩を描いて、武田文学の原点をうかがわせる「異形の者」。ほかに「海肌の匂い」「流人島にて」を収録する。

*解説頁・佐々木基一


竹山 道雄 (たけやまみちお)
「樅の木と薔薇」 (もみのきとばら)


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*200頁 / 発行 昭和32年

*「あとがき」より
 ここに集めたエッセーは、戰中の一篇をのぞいては戰後まもなく書いたものである。戰中から感ずることが胸にたかまっていたが、あの激動の時期に體驗したことや考えたことはまことに多かった。

*目次
樅の木と薔薇
交驩
蓮池のほとりにて
麥藁帽子
スペインの贋金
空地
昭和十九年の一高
不滅の女たちの會話
ハイド氏の裁判
燒跡の審問官
 あとがき


田島 征彦 (たじまゆきひこ)
「くちたんばのんのんき」 (口丹波呑呑記)


*カバー・田島征彦
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*218頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
絵本作家・田島征彦一家が、京都は丹波の山里に移り住んで十年。自然の厳しさと優しさに包まれて、絵筆片手に野菜を育てる生活から、人と自然、人と人との交流がはじまった。難病と闘いながら絵を描きつづけるかつての教え子、寄付金を集める謎の青年、絵描き仲間のつつましい結婚式……。ユーモアあふれる絵と文でつづった、ほろ苦くも心暖まる“口丹波の交友録”。解説・灰谷健次郎。

*目次
くちたんばのんのんき
 やぎちゃん / けいちゃんのおかあさん / トマト / 懲役 / もうひとつの伝説 / エーゲ海をさぐる / おそまつ! / 糞尿譚 / はじめて降った雪 / 有線放送 / サタンの金 / するめ すずめ / テレビ / 鮒の味 / ひょうたんつぎ / 生きものたちの記録 / 結婚式 / さびた出刃包丁 / パティ

くちたんばの子守唄
 お天気博士 / 藪の蔭 / 口丹波の子守唄 / 人生と草鞋 / 雑草譜 / 絵本『祇園祭』さま

 あとがき
 解説 灰谷健次郎


田中 英光 (たなかひでみつ)
「オリンポスの果実」 
(おりんぽすのかじつ)


*NTVアニメ化カバー画像
(「青春アニメ全集」日本アニメーション / NTV・昭和61年)
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*カバー装画・難波淳郎・昭和57年
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*154頁
*発行 昭和26年

*カバー文
師、太宰治の墓前であとを追った、傷心の無頼派作家田中英光の処女作。ロスアンゼルス・オリンピックのボートのクルーとして渡米する青年のあこがれや誇りを、若さの感激のうちに謳い出した青春の書。200枚にわたる小説が終始"彼女"のことで持ちきり、ひたむきに好きだと言い通しの小説というのも一つの奇観であり、わが文壇にただ一つだけ許されたともいいうる稀有の作品である。

*解説頁・河上徹太郎


谷内 六郎 (たにうちろくろう)
「谷内六郎展覧会 冬・新年」
 (たにうちろくろくてんらんかい)


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*223頁
*発行 1982年
*カバー・題字 谷内六郎

*カバー文
寒い夜、地蔵さまは焚火にあたっているのだろうか。地蔵のある近くの家の子は、そう思いました ― 大切な子供の日の思い出・夢の果てを、子供の眼と心の力によって描き出した絵の世界は、無垢で繊細な魂の言葉です。創刊号以来26年間にわたった「週刊新潮」表紙絵から12・1・2月の冬と新年の風物誌95点を選び、表紙の言葉をそえて編集した文庫版全集冬の巻。 解説・大江健三郎


谷内 六郎 (たにうちろくろう)
「谷内六郎展覧会 春」
 (たにうちろくろくてんらんかい)


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*222頁
*発行 1982年
*カバー装画・谷内 六郎

*カバー文
遠足の日、野原でタンポポのタネを見つけフーッと吹いてみました。タネは落下傘のように、踊り子のように空に舞い上がります ― 。幼い日の風景を純粋無垢な子供の心で描き出し、人々に憩いと慰めを与えてきた「週刊新潮」表紙絵に表紙の言葉をそえた文庫版全集春の巻。雪とけ水ぬるむ3月から花開く4月、若葉輝き夢みちる5月までの95点を選んで収めました。 解説頁・北杜夫


谷内 六郎 (たにうちろくろう)
「谷内六郎展覧会 夏」
 (たにうちろくろうてんらんかいなつ)


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*221頁
*発行 1982年
*カバー装画・谷内六郎

*カバー文
雲をジッと見つめているといろいろなものになって見えてきます。象になったり、人形になったり――。暑い夏、待ち望んでいた夏休み、ミンミンゼミの声が、潮騒が、波が、子供たちを誘います。幼い頃抱いていた喜びやもの悲しさ、夢と憧れを温かく蘇らせてくれた「週刊新潮」表紙絵に表紙の言葉をそえて、一番長い季節の思い出の光景95点をあつめました。

*解説頁・飯沢匡


谷内 六郎 (たにうちろくろう)
「谷内六郎展覧会 秋」 (たにうちろくろうてんらんかいあき)


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*223頁
*発行 1982年
*カバー装画・谷内六郎

*カバー文
山すそから涼しい初秋の風が吹き、銀ネズミのすすきの穂が波うつころ山の子はすすきの穂で、インデアンごっこです――愛、郷愁、抒情の画家谷内六郎さんの限りない夢を集大成した文庫版全集の秋の巻。祭りの太鼓が聞え、赤とんぼが葉に火をつける。そして枯葉が舞えば、辺りはもう冬支度。そんな9、10、11月の風物95点を「週刊新潮」表紙絵より収めます。

*解説頁・懸田克躬


谷内 六郎 (たにうちろくろう)
「谷内六郎展覧会 夢」
 (たにうちろくろうてんらんかいゆめ)


平成6年刊(株)郎工房版カバー
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*217頁
*発行 昭和57年
*カバー装画・谷内 六郎

*カバー文
地平線にアメリカの煙草の箱が輝いて見えた焼けあと時代、夜の庭に看護婦さんの白衣姿が浮んだ入院時代――以来、谷内さんの限りない夢は愛と郷愁の世界をかけめぐり、数えきれない名作が生まれました。初期の傑作をはじめ、油絵、はり絵、壁面モザイク、そして人知れず保存されてきた習作絵本、絵日記など、残された夢の結晶の数々をこの一冊に収めます。

*解説頁・横尾忠則


谷内六郎・絵と文 横尾忠則・編 (たにうちろくろう・よこおただのり)
「谷内六郎の絵本歳時記」 (たにうちろくろうのえほんさいじき)


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*202頁
*発行 昭和56年
*カバー絵・谷内六郎 レイアウト・横尾忠則

*カバー文
幼い日の思い出、それは純真無垢な喜びと哀しみ、未知のものへの怖れと憧れに彩られて、いつまでも私たちの記憶の奥深くたたえられています。心に甦る数々の光景を優しさあふれる眼で見つめ、想像力豊かに描き続けた谷内六郎の郷愁の世界をあなたに。「週刊新潮」25年、1300枚の表紙絵から、もうひとりのイマジネーションの天才が共感をこめて編む抒情と幻想の四季のうた。

*解説頁・横尾忠則


田勢 康弘 (たせやすひろ)
「島倉千代子という人生」
(しまくらちよこというじんせい)


*カバー写真・上杉敬
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*319頁 / 発行 2001年

*カバー文
日本の戦後を代表する歌手、「島倉千代子」。だが、婉然(えんぜん)とした笑顔の陰には、人知れぬ波瀾万丈の人生が荒々しくも滾(たぎ)っていた。七歳の時の大怪我、十六歳でのデビュー、結婚と離婚、巨額の借金、そして乳癌宣告……。「この世の花」「からたち日記」「人生いろいろ」など、数々のヒット曲に乗せ、辣腕政治ジャーナリストがその愛と悲しみを描ききる。完全版歌唱年表、人名・曲名索引付き。

*目次
プロローグ
 1 北風に咲く寒椿 / 2 三分半のオペラ / 3 消えた歌手
第1章 「歌手島倉千代子」誕生
 4 出生 / 5 左腕の怪我 / 6 「ひばりは二人いらない」 / 7 「涙のグラス」 / 8 本名でデビュー
第2章 時代が求めた「泣き節」
 9 しばらく売れなかった「この世の花」 / 10 雪の山形で聴いた歌 / 11 二曲あった「からたち日記」
第3章 NHK紅白歌合戦
 12 生き甲斐 / 13 紅白辞退 / 14 「人生いろいろ」
第4章 美空ひばりへの憧憬
 15 神さまのような存在 / 16 「大人」と「少女」の「中性的」魅力 / 17 「三重に巻いても余る秋」 / 18 「お千代なら来てもいい」 / 19 ひばりの死 / 20 島倉に似合う「悲しい酒」 / 21 母娘の愛憎
第5章 死生観
 22 妥協を知らぬ不幸 / 23 ふたつの「死」 / 24 結婚そして離婚 / 25 巨額の借金 / 26 乳癌の手術
第6章 人生と重なり合う歌
 27 「やっぱり器用に生きられないね」 / 28 母の歌 / 29 私は演歌歌手じゃない / 30 「親孝行」の三文字 / 31 「人生はショータイム」
エピローグ
文庫化にあたって / 島倉千代子・年表(昭和29年〜平成13年) / さくいん(人名・曲名) / 解説 山折哲雄


田宮 虎彦 (たみやとらひこ)
「霧の中」
 (きりのなか)


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*277頁
*発行 昭和31年

*カバー文
薩長の官兵に肉親を陵辱、惨殺された旧幕臣の遺児が日本の強大な新権力を仇とねらい、激しい復讐心を秘めながら落魄流浪の剣士として、明治、大正、昭和の三代を生きぬくという、凄惨な人生の裏街道を描いた傑作『霧の中』、庶民的な日本の女の哀しい生涯を追及した『梅花抄』。ほかに『顔の印象』『比叡おろし』『朝鮮ダリヤ』『幼女の声』『異端の子』の全7編を収録。

*解説頁・猪野謙二


田宮 虎彦 (たみやとらひこ)
「銀心中」
 (しろがねしんじゅう)


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*245頁
*発行 昭和36年

*カバー文
平穏無事に営まれていた庶民の生活が、召集令状一つで破られていった時代、残酷な運命の番狂わせから善良な男女を死に追いやった悲恋物語『銀心中』のほか『明石大門』『千本松原』『酒場ルルチモで』『富士を見に』『ぎんの一生』『眉月温泉』『黄山瀬』の全8編。少数の富者より多数の貧者を愛し、世の勝者より敗者に、より深い哀憐の情を注ぐ著者の文学の精華を収める。

*解説頁・石塚友二


団 鬼六 (だんおにろく)
「檸檬夫人」
(れもんふじん)


*カバー装幀・宇野亜喜良
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*270頁
*発行 2001年

*カバー文
「お願い、私の口の中へお出しになって」 ―― 。高貴で貞淑な大学教授夫人が、情事のなかで淫奔な素顔を露わにする「檸檬婦人」。憧れの女性を別の男に寝取られる作家の実体験と、SM時代小説がダブりつつ進行する「卑怯者」。回春薬バイアグラの、面白うてやがて哀しき体験記「勃起薬綺譚」。ますます盛んな「緊縛の文豪」が写しとる、切ないほどの愚かさに満ちた男と女。五篇を収める短篇集。

*目次
檸檬夫人 / 卑怯者 / 老木の花 / 勃起薬綺譚 / 大切腹 / 解説 夢枕獏



檀 一雄 (だんかずお)
「リツ子・その死」
(りつこそのし)


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*311頁
*発行 昭和25年

*カバー文
中国戦線の従軍を経て廃墟と化した故国に帰還した著者は、暗い世相のさ中で妻リツ子の死にあう。生への妄執と歎願と祈祷の声を尻目に、無残にも死の巨大なハンマーがうちおろされたのである。愛妻の死を見守るのは死を経て来た旅人の目であり、淡々とした筆致の裏に、生の確立への願望が激しく燃える。純粋刹那の愛と美を追求した、たぐいまれな生命への讃歌である。

*解説頁・真壁呉夫