絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【う】

ヴァージニア・ウルフ著 中村 佐喜子訳 (Virginia Woolf / なかむらさきこ)
「燈台へ」 
(TO THE LIGHTHOUSE・とうだいへ)


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*287頁 / 発行 昭和31年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー / カバーデザイン・新潮社装幀室

*カバー文
スコットランド沖合の小島の古い別荘で夏を送る哲学者ラムジイ氏夫妻と8人の子供たち、個性的な客人の面々 ― 「燈台へ行こう」という平凡な思いつきで結ばれたある午後とその10年後の午前を、人びとの刻々の〈意識の流れ〉にそって精妙に描きあげ、人間の本質に迫った自伝的小説。

*目次

時は逝く
燈台
 解説 中村佐喜子


ウィリアム・フォークナー著 大久保 康雄訳 (おおくぼやすお)
「野生の棕櫚」
 (やせいのしゅろ)


*平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー
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*405頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和29年

*カバー文
駆け落ちした医学生と人妻。やがて人妻は妊娠するが、堕胎手術に失敗して命を落としてしまう。そして、洪水の中、小舟で彷徨う囚人と女。偶然に出会った二人の運命は……。一見無関係な二つの物語を交互に配置することによって、全く新しい効果を産みだした、フォークナー中期の代表作。

*解説頁・大久保康雄
*「棕櫚」=しゅろ。ヤシ科の常緑高木。


上田 三四二 (うえだみよじ)
「この世 この生 ― 西行・良寛・明恵・道元」 (このよこのせい)


*カバー装幀・遠藤享
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*206頁 / 発行 平成8年

*カバー文
花と月とへの憧憬、子供らとの無垢な戯れ、夢遊の至純、浄身の飽くなき実践。 ― 大患を得て自らの死と対峙し続ける体験を持った一人の文学者が、敬愛する四人の先人の、隠者の系譜につらなる詩歌と思想とに深く分け入り、死生観を味読する。その時、未知の死と不可知の死後とが、今・ここにおける生と相結んで、現世浄土を求める地上一寸の声に結晶してゆく……。読売文学賞受賞。

*目次
花月西行
遊戯良寛
顕夢明恵
透脱道元
地球浄土
 地上一寸ということ ― あとがきに代えて
 解説 西尾幹二


臼井 吉見 (うすいよしみ)
「小説の味わい方」 (しょうせつのあじわいかた)


*カバー・村上豊
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*269頁 / 発行 昭和42年

*目次
まえがき
 小説との出会い 作家と批評家 文学と読みもの
姦通小説と恋愛小説
 「アンナ・カレーニナ」「旧主人」「茶筅髪」 ― 「千羽鶴」「武蔵野夫人」 ― 「ボヴァリー夫人」
好色文学の問題
 「好色一代男」「好色一代女」 ― 「腕くらべ」 ― 「痴人の愛」「卍(まんじ)」 ― 「多情仏心」「鷲毛」
痴情小説をめぐって
 泡鳴の五部作、「黒髪」 ― 「仮装人物」 ― 「ベラミ」 ― 「サーエン」
文学と道徳
 「坊ちゃん」「行人」「こころ」 ― 「それから」「家」「人間失格」 ― 「背徳者」「チャタレー夫人の恋人」
ワイセツと文学
 再び「チャタレー夫人の恋人」 ― 「太陽の季節」「鍵」 ― 「鍵」つづき「瘋癲老人日記」
モデル小説とプライヴァシー
 「鴨東綺譚」 ― 「金閣寺」「浮雲」 ― 「或る女」 ― 「お菓子と麦酒」「月と六ペンス」「宴のあと」
風俗小説の諸相
 浮世草子と「パメラ」 ― 「つゆのあとさき」 ― 「厭がらせの年齢」「贅肉」 ― 「銀座八丁」「夫婦善哉」
私小説と心境小説
 「告白」「小便小僧」「聖ヨハネ病院にて」 ― 早老者の詩 ― 「子をつれて」「湖畔手記」 ― 「故旧忘れ得べき」「人間失格」 ― 「お目出たき人」「友情」 ― 「和解」 ― 「或る朝」 ― 「無限抱擁」 ― 「遁走」「海辺の光景」「娼婦の部屋」
自伝小説と自己形成
 「新生」 ― 「暗夜行路」 ― 「伸子」「二つの酒」 ― 「梨の花」「むらぎも」 ― 「澪標」「美しい女」「飼育」 ― 「若き日の芸術家の肖像」「息子と恋人」「美しき惑いの年」
歴史小説とは何か
 「蒼き狼」「忠直卿行状記」「俊寛」「枯野抄」「入れ札」 ― 「興津弥五右衛門の遺書」「阿部一族」 ― 「護持院ヶ原の敵討」「ある敵討の話」 ― 「少将滋幹の母」 ― 「李陵」 ― 「敦煌」「楼蘭」「暗黒事件」 ― 「夜明け前」
滑稽と諷刺
 「吾輩は猫である」 ― 「牝猫ムルの人生観」「紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見」「ガリバー旅行記」 ― 「蔵の中」「山椒魚」 ― 「新釈諸国噺」「お伽草紙」「鼻」「河童」
短編と長編
 「くびかざり」 ― 短編小説の機能 ― モーパッサンとチェーホフ ― 「ジャン・クリストフ」 ― 「静かなドン」 ― 「ユリシーズ」
あとがき
付記


宇月原 晴明 (うつきばら はるあき)
「聚楽 ― 太閤の錬金窟(グロッタ)」
(じゅらく)


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*763頁
*発行 2005年
*カバー装画・中川惠司

*カバー文
秀吉の天下統一もなって数年。「殺生関白」秀次は、異端の伴天連ポステルと聚楽第に巨大な錬金窟を作りあげ、夜ごとの秘儀を繰り広げていた。京洛の地下に隠された謎をめぐって暗躍する家康・三成らの諸侯、蜂須賀党・服部党の乱破、イエズス会異端審問組織「主の鉄槌」。秀吉が頑なに守る秘密、そして秀次の企みとは? 権力の野望に魅せられた男たちの狂気を描く、オカルト満艦飾の戦国絵巻。


宇野 浩二 (うのこうじ)
「子を貸し屋」
 (こをかしや)


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*243頁
*発行 1950年
*カバー画像・平成6年12刷「新潮文庫の復刊」版

*カバー文
さまざまな商売を替えたあげく団子屋を始めた佐蔵は、預かったひと様の子を淫売婦に貸して思わぬ金を手にする。やがて本業よりも子貸し業のほうが繁盛するようになってしまうのだが……下世話の人情をしみじみと描いた表題作ほか、「人心」「一と踊」「あの頃の事」など初期代表作選。

*解説頁・川崎長太郎


梅崎 春生 (うめざきはるお)
「幻化」
 (げんか)


*カバー・正井和行
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*309頁 / 発行 昭和49年

*カバー文
「桜島」以来、特異な文学的資質と鋭敏な感受性で、一貫して戦後の繁栄の仮象の底に生の深淵を見つめ続けた梅崎春生の後期作品集。自らの生命と引きかえるようにして書き上げられた『幻化』は、消え去った記憶を確かめようと南九州を旅する精神病の男を通して、二十数年間の心象風景を文学へと結晶させた戦後文学屈指の名作。ほかに『庭の眺め』『記憶』『仮象』など全7編を収録する。

*目次
庭の眺め
空の下
突堤にて
凡人凡語
記憶
仮象
幻化
 解説 森川達也
 年譜


梅崎 春生 (うめざきはるお)
「桜島・日の果て」
 (さくらじま・ひのはて)


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*248頁
*発行 昭和26年

*カバー文
米軍上陸に備える桜島へ転勤と決った暗号員村上兵曹は、その前夜、妓楼で片耳のない妓を抱く。どうやって死ぬの。おしえてよ ―― 。目前に迫った死の運命、青春のさなかにあって、断ち切られようとしている自らの生に対する諦念と絶望感の相剋を、みずみずしい青春の情感を根底として記録風に描く『桜島』。はかに『日の果て』『崖』『硯』『黄色い日日』の4編を収める。

*解説頁・浅見淵