絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【よ】

横光 利一 (よこみつりいち)
「家族会議」 
(かぞくかいぎ)


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*324頁
*発行 1949年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
大阪北浜、東京兜町の生き馬の目を抜く世界で生きる青年、重住高之。妖艶、精爽、純情、明知の四人の女たちが彼を取り巻き、謀略と愛欲が華麗に交錯するとき――。主人公の揺れ動く心理を巧みに描き、誰もが心の奥底に抱いている深い闇を見事に捉えた、横光文学の金字塔。

*解説頁・佐々木基一


吉川 潮 (よしかわうしお)
「浮かれ三亀松」
(うかれみきまつ)


*カバー装画・蓬田やすひろ
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*489頁 / 発行 2003年

*カバー文
数多の芸者と浮名を流すなんざぁ、ほんの序の口。きれいさっぱりケリつけるべく、結婚式中抜けして、愛人宅にしけこんじゃう。都々逸、さのさ、三味線漫談、その艶な喉、粋な音曲、オトナな芸。人気もギャラも、当代随一。だけど、遣いっぷりもまた、ハンパじゃない ── 。吉行淳之介に「粋」を指南し、寛美・勝新に金の遣い方を教えた凄い芸人。女は焦がれた、男も惚れた、深川男の気っ風一代。

*目次
序章 さのさ / 第一章 木遣りくずし / 第二章 深川節 / 第三章 縁でこそあれ / 第四章 貝づくし / 第五章 ひぐらし / 第六章 花づくし / 第七章 相惚れと / 第八章 罪じゃぞえ / 第九章 うたた寝の / 第十章 すきまもる / 第十一章 男純情の / 第十二章 英霊が / 第十三章 槍はさびても / 第十四章 やきもちを / 第十五章 明けの鐘 / 第十六章 浮気稼業 / 第十七章 俺の命と / 最終章 伊達男 / 書籍版あとがき / 文庫版あとがき / 解説 なぎら健壱


吉川 潮 (よしかわうしお)
「江戸っ子だってねえ ― 浪曲師廣澤虎造一代」
(えどっこだってねえ ― ろうきょくしひろさわとらぞういちだい)


*カバー装画・ささめやゆき
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*429頁 / 発行 2002年

*カバー文
江戸前の切れのよいタンカでその名を馳せ、次郎長伝で一世を風靡する。“旅行けば駿河の道に茶の香り”“馬鹿は死ななきゃなおらない”。ラジオから流れる名調子に日本中が聴き惚れ、節を口ずさむ。その人気はひばりをもしのぎ、意気と度胸と気風の三拍子とくれば、女が放っとくわけがない ―― 。徳川夢声も日本一と称えた不世出の芸、破天荒な生涯を、万感の思いをこめて映し出す

*目次
 序 虎造引退披露
第一章 虎造修行旅
第二章 虎造襲名
第三章 夫婦春秋
第四章 虎造三十石船
第五章 虎造売り出す
第六章 虎造色模様
第七章 血煙田島町
第八章 戦中情話
第九章 虎造の貫禄
第十章 虎造人情道中
第十一章 本妻の意地
第十二章 虎造倒れる
第十三章 虎は皮を残す
 書籍版あとがき
 文庫版あとがき
 解説 町田康


吉川 潮 (よしかわうしお)
「突飛な芸人伝」
 (とっぴなげいにんでん)


*カバー装画・石塚公昭
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*287頁 / 発行 平成13年

*カバー文
芸人は生まれながらに芸人である。会社勤めなんぞ、出来るものかい! 酒の悪さで有名だった、川柳川柳(かわやなぎせんりゅう)。かつては喧嘩三昧、石倉三郎。家族にもヨイショの、古今亭志ん駒。風俗と邦画の鬼、快楽亭ブラック。ホラを吹きまくる、ポール牧。骨がずれるまでドツカれた、正司敏江。そして、ご存知、「♪アホの、坂田ァ〜」。17人のハチャメチャな人生を満載。「芸人奇行録・本当か冗談か」改題。

*目次
 まえがき
借金のタンゴ ― 月亭可朝
川柳の賛美歌 ― 川柳川柳
八つの顔の男だぜ ― 林家木久蔵
野球狂の唄 ― ヨネスケ
喧嘩エレジー ― 石倉三郎
究極の貧乏 ― 祝々亭舶伝
与太郎の青春 ― 柳家小三太
男の顔は履歴書 ― マルセ太郎
神様のヨイショ ― 古今亭志ん駒
音頭をとるなら ― 桂文福
歌舞伎座の怪人 ― 快楽亭ブラック
ドツかれる女 ― 正司敏江
ベビの軌跡 ― ショパン猪狩
白塗り仮面 ― 桂小枝
六甲おろしに颯爽と ― 月亭八方
浪速のアホ一代 ― 坂田利夫
 あとがき
 解説 春風亭昇太


吉川 幸次郎 (よしかわこうじろう)
「杜甫ノート」
 (とほのーと)

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*172頁
*発行 昭和29年

*カバー文
詩仙李白と並んで名声を馳せた詩聖杜甫の、窮乏と孤独と漂泊の生涯とその代表的詩編『九日』『月夜』『鼓角』『勝跡』『桜桃』『春雨』『倦夜』を選び、豊富な古今の文献をあげて解説と鑑賞を行なった完璧な研究書で、ここには、現代人の憂愁を先取りした千年前の詩人の言葉が、昨日の歌のように息づいている。『杜甫小伝』『杜甫と飲酒』『杜甫について』を併録。 (解説 三好達治)


吉田 健一 (よしだけんいち)
「シェイクスピア」



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*242頁 / 発行 昭和26年
*カバー画像・平成6年発行「新潮文庫の復刊」版

*カバー文
昭和三一年の読売文学賞を受賞した、シェイクスピアの作品論。各作品をストーリーに沿って論じつつ、著者は主人公の中に、自己の人生と厳しく対峙するという共通の姿勢を見出し、独自のシェイクスピア像を描くことに成功した。著者の驚くべき鑑賞力と、鋭い批評力の結実が本書である。

*目次
エリザベス時代の演劇 / 「ロメオとジュリエット」 / 「真夏の夜の夢」 / フォルスタフ / 「十二夜」 / 十四行詩 / 「ハムレット」 / 「オセロ」 / 「リヤ王」 / 「マクベス」 / 「アントニイとクレオパトラ」 / 「嵐」 / 解説


吉田 絃二郎 (よしだげんじろう)
「小鳥の来る日」 
(ことりのくるひ)


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*211頁 / 発行 昭和32年
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
ほんとうに人生を泣いた人でなければ、人生の笑いは理解せられない ― という「涙の味いを知る人間の生活」等、自然と人生への感傷的な憧憬と悲哀の情を綴った三十篇を収める随筆集。その宗教観や、人道主義に溢れた文章で、大正から昭和初年にかけて一世を風靡した若者達のバイブル。

*目次
寂人芭蕉 / 路上素畫 / 郊外に住みて / 柔かな草 / 私は生きてゐたい / 自然に還る日 / 春日夜 / 涙の味ひを知る人間の生活 / 心の影 / 夏の朝 / 草の上の學校・宗教・藝術 / 筑紫の秋 / 冬日抄 / 修善寺行 / 眞人間となるまで / 一本の葱 / 濁った河 / 榛名小學の先生へ / 冬のうた / 素直な心 / 自分の魂のために / 藝術のひそむ新生の力 / 南國の町と島 / 一人で歩む道 / クリスマスの鐘が / 千住の市場 / 貧しき者の春 / 供養の心 / 備後の兄へ / 基督の解放と無限 / 解説 山崎安雄


吉田 豪 (よしだごう)
「元アイドル!」
(もとあいどる)


*カバー装画・サイトウユウスケ
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*305頁 / 発行 2008年

*カバー文
アイドル ── 。男は熱い視線と声援を送り、女はその華やかさに憧れる。しかし、その実態は非常に過酷な職業なのだった。わずかな睡眠時間、わりに合わぬ賃金。一線を飛びこえてしまうファン、金が飛び交う新人賞レース。当代きってのインタヴュアーである吉田豪が、激動の少女時代を生き抜き、現在も輝きを失わない十六人に鋭く迫った。今だから話せる、驚きのエピソードが満載。

*目次
杉浦幸 / 矢部美穂 / いとうまい子 / 安原麗子 / 吉井怜 / 新田恵利 / 岩井小百合 / 中村由真 / 大西結花 / 我妻佳代 / 胡桃沢ひろこ / 宍戸留美 / 藤岡麻美 / 八木小緒里 / 緒方かな子 / 花島優子 / あとがき / 文庫版あとがき


吉田 精一 (よしだせいいち)
「芥川龍之介」
(あくたがわりゅうのすけ)

  
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*319頁 / 発行 1958年

*「新潮文庫の復刊」版カバー文
昭和二年七月二十四日、文壇をはじめ知識階級を震撼させて逝った芥川龍之介 ── その出生から悲劇的自殺に至るまで、作家芥川の全貌を、燦然たる芸術と激しい生涯の両面をからみ合わせて立体的に解明した。日本の文学史に大きな足跡を遺した作家の生と文学の歩みをたどる力作評伝。

*目次
一 出生 / 二 芥川家 / 三 本所小泉町 / 四 中学時代 / 五 高校生活 / 六 第三次新思潮 / 七 初恋 / 八 羅生門 / 九 夏目漱石 / 一〇 第四次新思潮 / 一一 初舞台 / 一二 海軍機関学校 / 一三 第一創作集 / 一四 結婚 / 一五 傀儡師 / 一六 我鬼窟 / 一七 影燈籠 / 一八 人工の翼 / 一九 夜来の花 / 二〇 中国旅行 / 二一 春服 / 二二 歴史小説 / 二三 階級文芸 / 二四 大震災 / 二五 黄雀風 / 二六 芭蕉雑記 / 二七 澄江堂句集 / 1二八 文芸読本 / 二九 越し人 / 三〇 湖南の扇 / 三一 鵠沼 / 三二 蜃気楼 / 三三 玄鶴山房 / 三四 河童 / 三五 文芸的な、余りに文芸的な / 三六 三つの窓 / 三七 西方の人 / 三八 歯車 / 三九 七月二十四日 / 四〇 葬儀 / 芥川龍之介の生涯と芸術 / 芥川龍之介年譜 / 芥川龍之介評論文献 / あとがき / 再びあとがき


吉田 精一 (よしだせいいち)
「随筆入門」
 (ずいひつにゅうもん)


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*発行 昭和40年

*カバー文
直観的、芸術的な性格や嗜好をもち、一滴の水の中に宇宙を感じるという日本人独特の感受性が生み出した随筆文学の伝統は、西欧のエッセイを吸収してさらに豊かさを加えた。本書は、古今東西の著名な文学者・思想家の名随筆、日記、書簡を豊富に引用し、そのおもしろ味を解明し、その可能性を見つめる。随筆の味わい方から書き方までを周到綿密に語る好著である。

*目次
第一部 随筆の読み方
 一 随筆とは何か / 二 エッセイ / 三 茶話 / 四 写生文 / 五 アフォリズム / 六 日記 / 七 書簡 / 八 王朝の随筆 / 九 中世の随筆 / 一〇 近世の随筆 / 一一 明治の随筆 / 一二 大正の随筆 / 一三 昭和の随筆(一) / 一四 昭和の随筆(二) / 一五 昭和の随筆(三) / 一六 昭和の随筆(四)

第二部 随筆の書き方
 一 書き出しについて(一) / 二 書き出しについて(二) / 三 内容について / 四 構成について / 五 主題について / 六 結び方について / 七 随筆の名作

第三部 近代の書簡文学
 一 明治時代 / 二 明治・大正時代 / 三 大正時代 / 四 大正・昭和時代 / 五 昭和時代(一) / 六 昭和時代(二)
  あとがき


吉田 精一 (よしだせいいち)
「日本近代詩鑑賞 明治篇」
 (にほんきんだいしかんしょうめいじへん)


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*272頁 / 旧仮名旧字体 / 発行 昭和28年

*帯文
 島崎藤村にはじまり、北原白秋、三木露風に至る明治近代詩の代表的名作をとりあげ、その鑑賞と評釈を行い、詩人の個性をさぐる。

*目次
 序文
島崎藤村
 秋風の歌 千曲川旅情の歌 椰子の實
土井晩翠
 夕の星
與謝野鐵幹
 春思
薄田泣菫
 ああ大和にしあらましかば 望郷の歌
上田敏
 落葉
蒲原有明
 智慧の相者は我を見て 癡夢 茉莉花
石川啄木
 飛行機
北原白秋
 邪宗門祕曲 絲車 片戀 落葉松
三木露風
 雪の上の鐘 現身


吉田 精一 (よしだせいいち)
「日本近代詩鑑賞 大正篇」
 (にほんきんだいしかんしょうたいしょうへん)


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*249頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和28年

*カバー文
近代詩の成熟する大正期の代表的名詩の本質とその詩人像を解明する大正の詩人論。本編では、木下杢太郎(『該里酒』、他1編)高村光太郎(『根付の国』、他3編)室生犀星(『ふるさと』、他3編)萩原朔太郎(『猫』、他2編)日夏耿之介(『道士月夜の旅』)西條八十(『七人』)芥川龍之介(『相聞』)佐藤春夫(『秋刀魚の歌』、他2編)佐藤惣之助(『宵夏』)などの名作を鑑賞している。


吉田 知子 (よしだともこ)
「無明長夜」
 (むみょうちょうや)


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*278頁
*発行 昭和50年
*カバー・宮下勝行

*カバー文
“御本山”の黒い森をみつめて、白い闇の道を歩いた女の20年……一種底の知れない暗く混沌とした世界の中で病める魂の咆哮を聞く芥川賞受賞作『無明長夜』。〈捨てる〉ことを根源に自らの道を開こうとした著者の戦後の出発を語る『豊原』。ほかに『寓話』『終わりのない夜』など、新しい世代の世界とイメージを持った多様な才能を遺憾なく発揮した作品群7編を収録する。

*目次
寓話 / 豊原 / 静かな夏 / 生きものたち / わたしの恋の物語 / 無明長夜 / 解説 白川正芳


四方田 犬彦 (よもたいぬひこ)
「先生とわたし」
(せんせいとわたし)


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*318頁 / 発行 2010年
*カバー装画 William Blake;Beatrice on the Car,Dante and Matilda,Blake's Danteより。「第5章 ウェルギリウス」参照

*カバー文
幸福だった師弟関係は、なぜ悲劇に終ったのか? 伝説の知性・由良君美が東大駒場で開いたゼミに参加した著者は、その学問への情熱に魅了される。そして厚い信任を得、やがて連載の代筆をするまでになる。至福の師弟関係はしかし、やがて悲劇の色彩を帯び始める……。「教育」という営み、そして「師弟」という人間関係の根源を十数年の時を経て検証する、恩師への思い溢れる評論。

*目次
 プロローグ / 第1章 メフィストフェレス / 第2章 ファウスト / 第3章 出自と残滓 / 第4章 ヨブ 間奏曲 / 第5章 ウェルギリウス / エピローグ / 解説 稲賀繁美