絶版文庫書誌集成

春陽文庫 【は】

土師 清二 (はじせいじ)
「大久保彦左衛門」
 (おおくぼひこざえもん)


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*471頁・上下二段組頁
*発行 昭和48年
*カバー装画・中込漢

*カバー文
 ご存じ天下の御意見番・大久保彦左衛門がさかな屋の太助をしたがえていどむ難事件! 時代小説界の第一人者・土師清二の代表作長編大作! 痛快しごくのおもしろさ!
 数寄屋橋見附御番を命ぜられた弟の彦兵衛に代わって、大久保彦左衛門は立った! 東照権現・家康公お手ずからにたまわった葵の紋服の羽織を着した彦左衛門は、まずは榊原遠江守康勝の屋敷へと向かった! 伊達政宗からは御見附御番出役のご助力として二千両をせしめた! 
 数寄屋橋御門を守る彦左衛門は、夜中登場の春日局の行列をガンとして通さなかった!
 三代将軍家光の乳母であり、女丈夫といわれた傑物の春日局と大久保彦左衛門の対決は!?
 彦左衛門の屋敷に出入りする威勢のいい江戸っ子さかな屋太助の大活躍はいかに!?


土師 清二 (はじせいじ)
「濡れ髪権八」 
(ぬれがみごんぱち)

*444頁・上下二段組頁 / 発行 1977年
*カバー装画・中込漢

*カバー文
 因州鳥取藩士白井頼母(たのも)の一子権八は若髪立ちの水もしたたる美男士であった。権八の剣の師桑田玄白斎の道場で試し切りの催しが行なわれることにになったが、父頼母が江戸で求めていた名刀千手院村正を権八はひそかに持ち出していた!
 二つ胴の試し切りもみごとにやってのけた権八だったが、本庄助左衛門の侮りを受けたため、一刀のもとに助左衛門の生き胴を切ってしまった! 助左衛門の二人の子息助七と助八は父の仇白井権八を追った! 権八を愛する津下友右衛門、お富津に助けられて国元を逃れた権八は大阪へ! 権八のあとを追って可憐な美女お富津も大阪へと旅立った!
 数奇の運命のもと、鈴ガ森で処刑されるまでの美剣士白井権八をえがく時代長編大作!


土師 清二 (はじせいじ)
「旗本伝法」
 (はたもとでんぽう)


*初版カバー 装画・岩田吉夫
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*新装版カバー 装画・成瀬数富

*444頁・上下二段組頁
*発行 昭和47年 / 新装版1991年

*初版カバー文
 旗本小晋請組・祖父江棟介と妹加津代は、母とも思う乳母おひろとその娘お美音の苦境を救わんと、家宝の名品「千駒の小柄」をお城坊主・曾根養春を介して売却せんとした。
 しかし、家宝をも手放さんとする主人兄妹の厚情におひろは自害して果てた。不幸は重り、棟介の留守中に屋敷は火事にあい、妹加津代は何者かに誘拐され行くえ不明になった!
 老中稲葉越中守の御側用人・牧宮内の手で京人形に装わせられ、ひそかに田沼家へ献上されんとするお美音を救出せんと浜町河岸で宮内一行を襲った棟介は、宮内の銃弾に倒れた!
 傷ついた棟介を助けたのは平戸屋お勢以であった。絢爛たる田沼意次時代を背景に正義の士祖父江棟介の活躍! 時代小説界の大御所・土師清二の伝奇時代小説名作巨編!


土師 清二 (はじせいじ)
「無頼三十万石 ― 若き日の水戸黄門」
 (ぶらいさんじゅうまんごく)


*カバー装画(新装版)・小宮山逢邦
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*カバー装画(旧版)・中込漢

*314頁・上下二段組頁
*発行 旧版昭和50年 / 新装版1992年

*カバー文(新装版)
 徳川御三家の一つ,水戸家初代藩主は大御所家康公の第十一男に生まれた頼房であった!
 その水戸家の奥女中に上がった谷左馬介の娘が頼房の寵愛を受けて、五年前に京都の公卿滋野井中納言の下で男子を産んだ! それが頼房の第一子竹丸(後の讃州高松藩主松平頼重)であったが、いまふたたび懐妊して家臣三木仁兵衛之次の屋敷で、仁兵衛や妻牟佐の手厚い看護を受けて第二子千代松を産んだ! そして、従三位右近衛中将光圀とその名も代わった十三歳の千代松は、将軍家光の命を受けた中山備前守信吉と、向島水戸家下屋敷で会見した! 信吉の目に、千代松の英資は水戸家の世子にふさわしいものに映った!
  ―― ご存じ、“天下の副将軍”水戸黄門! その若き日日の行状を描く雄編!


濱尾 四郎 (はまおしろう)
「博士邸の怪事件」
(はくしていのかいじけん)


*カバー装画・堅田信
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*264頁 / 発行 1996年

*カバー文
 現在もなお探偵小説界で一般的に用いられている“本格”という用語は甲賀三郎が提唱したと言われるが、当の三郎には本格長編はほとんどなく、そうした戦前の斯界にあって、謎解きの興趣横溢する作品を発表した貴重な作家が浜尾四郎(一八九六〜一九三五)である。
 三十九歳で急逝した四郎の実質的な創作活動は弁護士の傍らの五年ほどであったが、自身の経歴や容貌の投影された検事出身の藤枝真太郎を探偵役に、データを基にしてあくまでも論理的に進められていく推理は醍醐味に満ちている(第二長編「殺人鬼」)。江戸川乱歩は、この作品を“これこそ本格探偵小説の本道に相違ない”と絶賛している。
 ―― 本書は最初の長編に、短編「不幸な人達」を併収して、浜尾四郎の作風が味わえる。

*前説・講説 山前譲
*挿絵・堅田信