絶版文庫書誌集成

春陽文庫 【み】

水谷 準 (みずたにじゅん)
「殺人狂想曲」 名作再刊シリーズ
 (さつじんきょうそうきょく)


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*301頁 / 発行 1995年
*挿画・堅田信

*カバー文
日本に探偵文壇が成立した大正末期、江戸川乱歩に続いて多くの作家が次々と登場した。そうした一人に、『新青年』の探偵小説募集に「好敵手」で応じ入選した水谷準〈みずたにじゅん〉(一九〇四年)がいる。それは大正十一年十二月のことで、乱歩に先駆けること五ヶ月、まだ十八歳という早熟さであった(本人は二作目の「孤児」をデビュー作としている)。準は早大仏文科に入学したが昼は野球に興じ、夜は娯楽雑誌を読みふけるといった生活を過して右の投稿で知己を得、長らく編集者として活躍する傍ら創作に励み、昭和二十七年には探偵作家クラブ賞を受け、三十一年の長編『夜獣』の書下ろしまで乱歩と並走した。 ― 本書は「ファントマ」翻案作の他、「闇を呼ぶ声」「瀕死の白鳥」の大衆向きの三編!

*前説・解説山前譲


三橋 一夫 (みつはしかずお)
「無敵ぼっちゃん」 
(むてきぼっちゃん)


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*169頁
*発行 昭和46年
*カバー装画・木村卓

*カバー文
「おじいさんは柔剣道、槍、手裏剣、十手術、捕縄術、馬術、水泳、みな免許皆伝の腕まえだった……」と、口ぐせのように語ってきかせる父・頑蔵は、ある小さな会社の神戸支店長で、剣道二段の腕のもち主。……先祖代々、幕府講武所の武術指南役の家がらである満星家に生まれた勇之介は、武芸自慢の父・頑蔵に命じられ、幼いときから柔道を習った。
 東京の中学に通うことになった勇之介少年は、神戸から上京し、深川で暮らした。中学三年の秋、勇之介は待望の初段にになった。やがて東京本社へ転勤で父・頑蔵も、豪傑師範権田熊田郎四段も上京。勇之介の柔道修業はますますみがきがかかってきた……。
 そして、大学生となった勇之介は、初恋の美女森ルイ子嬢に再会することになった!


宮本 幹也 (みやもとみきや)
「すばらしい女」 
(すばらしいおんな)


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*329頁・上下二段組頁 / 発行 昭和42年

*春陽堂書店ホームページ「春陽文庫の作家たち」より
 本当の意味での大衆の喜ぶ純娯楽作品、広範囲の大衆読者が心から喜んで読んでくれる作品を書けるのは誰か? となると、これは仲々に容易ならぬ業であって、そうそうに沢山の作家がいるものではない。

 そうしたなかで、すぐ目につく老練な大衆作家のひとりに宮本幹也がある。戦前の新人登竜門であったサンデー毎日新人賞から出てずっと第一線で活躍しているベテランだ。「魚河岸の石松」「好色党奮迅録」などの快作ではその破天荒な面白さで一世を風靡した観があった。時代もの、現代ものを問わず、宮本幹也の作品は面白く読める。そうした確定した人気を永く保持しているところにベテラン大衆作家としての宮本幹也の新面目がある。

 養老院を舞台に、元野球選手の好青年を中心に、うずまく恋と人情の現代世相を描く長編「すばらしい女」でも、その巧みな大衆小説のツボを心得たベテランぶりが充分にうかがえる。
(1972年 武蔵野次郎 「春陽文庫の作家たち」新訂版2刷より)

*目次(長編小説)
花と石 / そよ風 / 青い果実 / 遁走譜 / 巷の顔 / 旅愁 / 暗鬼 / 白い筋肉 / 激怒 / 燃える / 海の歌