絶版文庫書誌集成

春陽文庫 【つ】

角田 喜久雄 (つのだきくお)
「海風山風」〈上下〉
 (うみかぜやまかぜ)


*カバー装画・東啓三郎
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*上巻353頁・下巻344頁 / 上下二段組頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
上巻
 時代小説界の巨匠角田喜久雄が新分野をひらく異色編! 海と戦国の男たちをえがいて息もつかせぬおもしろさに満ちた長編大作! 山田長政が活躍するシャムロ(タイ国)から物語は始まる! シャムロではビルマ軍との壮絶な戦いがくりひろげらていた!
 山田長政の日本義勇隊員の中に、へのへの茂平次と名のる快男児がいた。前髪の美貌の若者山柿甚吾もいた。茂平次は甚吾と親しんでいたが、長政は「甚吾は危険人物」という注意を茂平次に与えていた!? 甚吾が乗船した竜神丸と、茂平次の図南丸はあいついで日本への帰国の航海についたが!? 一方、長門国毛利秀元の長府城内、小松の館には也々さまとよばれる姫と、侍女早苗が茂平次を待っていた! ― 物語は波乱万丈の興趣をもって核心へ!
下巻
 時代小説文壇の雄角田喜久雄えがく戦国海のロマン! 前編の興趣いよいよ盛りあがって後編の物語へと展開! 読者待望の一大伝奇時代長編の会心作!
 傷ついた美女知香を救いだした茂平次は、懸命に意識を失った知香を看護しながら、六右衛門爺の黒潮丸を待っていた! 強敵山柿甚吾一味の岩倉重四郎が、そんな茂平次と知香をひそかにねらっていた! 恐るべき重四郎のふるう投石器に相対した茂平次は、負傷しながらも重四郎と組み打ちのまま怒涛逆巻く海中へ! 茂平次と知香の運命は!? 一方、京の大仏殿に姿を現した長府の去庵和尚は、友の浄海と出会った。浄海こそ元宇喜多家の船手奉行梅本三郎太夫であり、也々さまの父であった!  ― 愛憎うずまく戦国絵巻の物語!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「お小夜悲願」
(おさよひがん)


*カバー・東啓三郎
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*261頁 / 発行 1989年(改版)

*カバー文
 銀座(銀貨鋳造)年寄役清川弥兵衛には美しい姉妹、お美津・お小夜があった! 姉のお美津と新六のめでたい祝言の日、年寄筆頭五十嵐重蔵の屋敷に呼び出された弥兵衛は、勘定奉行荻原近江守と結託する重蔵の公金横領の事実を知る者として、五十嵐軍次郎の凶刃に斃される非運に遭った! さらに軍次郎の凶刃は、お美津・新六の上に迫る!
 父・姉・義兄、それに家まで失い、一転して不幸のどん底に陥された薄幸の美女お小夜の多難な運命は!? 勘定吟味役城山右門と軍次郎の奸策にあやつられたお小夜は、本所の旗本屋敷、人呼んで奇病屋敷へ妾奉公に出されることになった! そこの不気味な主横井雪之介とは!? 正徳二年(一七一二)の江戸に発生した怪事件の謎は深まる! 伝奇長編の秀作!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「怪塔伝」(上下)
 (かいとうでん)




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*上319頁・下303頁(上下二段組頁)
*発行 1989年(改装)
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文

 浅草馬道で店を張る“姉弟うどん”が江戸っ子の人気をよんでいた。姉をお美也、弟を伊之助という。ある夜、店に寄った若い浪人菅野新四郎からお美也は一枚の紅絵を預かった。寛保三年(一七四三)十一月末のことであったが、そのことから奇々怪々な事件が始まった!
 ときに姉弟の店をのぞく怪しい三ツ目の老婆があったが、「十二月五日を忘れるな」という奇怪なことばをお美也にのこしていった。お美也の身辺に迫る“白塔一族”とは……!?
 お美也姉弟と同じ裏長屋に住む浮世絵師の横川鉄斎は、五重の塔を背景に、なぶり殺しの女を描くぶきみな“一貫斎の地獄絵”についてお美也に語って聞かせた! 地獄絵の謎とは!?
 ―白塔一族をめぐって展開する波瀾万丈の物語! 巨匠が描く伝奇ロマンの一大巨編!

 菅野新四郎とお美也の運命は!? 謎をよんで、波瀾万丈の物語はいよいよ核心へ!
 江戸町奉行から寺社奉行へと幕府きっての名奉行と評判の高い大岡越前守忠相は、あのうどん屋の腕白小僧から一変した少年武士伊之助を同道して外出した芝神明の境内で、己が意のままにまむしを使う怪しのへび男、髯の一平の挙動にその目を光らせた!
 三ツ目の老婆の娘に捕らえられ、女装させられて三田尼谷の紅蓮寺へ潜入、燭台の爆発で失神した伊之助を救けたのは、髯の一平とお小夜の父娘であった! 一方、新四郎は尾張屋に捕らえられ、上役殺害の罪で拷問地獄に落とされていた! 尾張家秘蔵の黒城文書とは!?
 ―白塔一族をめぐって展開する興趣満点の伝奇時代ロマン一大傑作完結編!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「影丸極道帖」〈上下〉 (かげまるごくどうちょう)


*カバー装画・東啓三郎
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*上巻349頁・下巻319頁 上下二段組頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
上巻
 八丁堀の銭湯へ朝風呂に現れた町方同心志賀三平は、与力職をせがれ源太郎に譲って隠居した松平白亭老人と顔を合わせた。白亭の養女小夜は三平にとって妹同然の娘であった。
 若き敏腕の同心三平とかつての名与力白亭の間に交わされた話は、怪盗影の影丸のことであった。江戸中にうわさも高い怪盗影丸は、不敵にも牢内から脱走した!?
 旗本内藤主膳の屋敷に奉公していた小夜は、所用で鳥越に出向いたもどり道に、忠臣蔵五段目で有名な斧定九郎とうり二つの定九郎を名のる怪人に誘拐された!?
 悪岡っ引き傘屋の伝六と定九郎との間には、小夜誘拐にかかわる密計が交わされていた!? 可憐な美女小夜の運命は!? 物語は尽きぬ興味を盛りあげて展開! 角田時代長編の傑作編!
下巻
 名与力松並白亭と町方同心志賀三平をまきこんだ怪事件! 白亭の名推理は事件の核心へさっそうと切りこんでゆく! 白亭を助ける志賀三平のはたらきは!?
 時代小説の雄、巨匠角田喜久雄がえがく波瀾万丈の物語はいよいよ後編へ展開!
 旗本安藤格之進の娘と奥医師小栗玄庵の息子との婚礼の日、銀十という怪しの男によびだされた格之進が、橋の欄干から首をくくられ殺害されるという不審な事件が起こった。
 格之進・玄庵と一味の酒田左門がめぐらす陰謀とは!? 酒田家へ婿養子にはいりめざましい立身を計る左門の経歴と、白亭の愛娘小夜の誘拐事件と、そして不敵な怪盗影丸の跳梁の三つの怪事が結びつく地点ははたして何であったか!? 白亭と志賀三平の胸のすく活躍は!?


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「霧丸霧がくれ」 (きりまるきりがくれ)


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*511頁(上下二段組頁)
*発行 昭和52年
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文
 元和三年(一六一七)のころ、日本水軍発祥の地塩飽(しあく)七島の牛島にある極楽寺の鐘楼に若い男女の姿があった。撞をついて音が出ると無間地獄におちるといわれた魔性の鐘!
 かつてその鐘をついた三人の男の名がそこに記されていた。そんな不吉な鐘を霧丸と浪江の二人はともについた。海の男霧丸と可憐な娘浪江のあとをつける怪しの武士は!?
 島のお目付高柳九十郎はかねてより浪江の美貌に目をつけ、あわや蹂躙せんとしたとき、浪江の懐からこぼれた梨花の手鏡に九十郎は驚愕した。霧丸が浪江に与えた鏡のナゾとは!?
 高柳九十郎のために御用船伊豆丸に監禁された浪江と母桐乃は霧丸に救われ海中へと跳んだが、浪江は海賊黒いおおかみ一味に捕らえられた!  ― 海を背景の一大時代ロマン!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「黒潮鬼」 (くろしおき)


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*343頁・上下二段組頁
*発行 1988年
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文
 そのおもしろさ100パーセント! 尽きぬ興味で展開する伝奇時代長編の雄編! 金銀島のヒミツをめぐって波瀾万丈の物語は佳境へ! えがくは時代小説の巨匠角田喜久雄の才筆!
 海賊大将軍村上水軍として世に聞こえた村上家の家来滝川源兵衛を父にもつ小百合は、鳶沢町の古着市で、「丸に八幡」の二文字の羽織をあがなうことを若侍から頼まれた。
 その若侍こそ、浅草石浜の牢屋敷に世を忍ぶ村上家の嫡流村上左近であった! 父源兵衛が秘蔵していた大切な包みを小百合は左近に手渡すことができたが、北町奉行所の悪同心赤屋孫六に執拗に追われた! スペイン人ヴィスカイノを初め人々が捜し求める「ポルトガルの聖母(マリア)」のナゾとは!? 金銀島を発見すべく左近らの乗船した伊豆丸は黒潮躍る大海原へ! 


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「将棋大名」 (しょうぎだいみょう)


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*416頁
*発行 1992年

*カバー文
安永八年一月半ば、江戸は湯島台の神田明神境内で、『蘭学博士平賀源内先生大講義』なる看板の下、見物人を煙にまいていたのは奇人先生こと平賀源内、供の門弟高島春作であった。エレキテルなる奇怪な西欧魔術を行うこの先生を知らぬ者は江戸にない。その源内と春作を、寄寓する幕府将棋所の司で将棋三家の伊藤宗印の娘お千代が迎えにきた。源内はお千代にも見物人同様に遠眼鏡をのぞかせたのだが、お千代が見た怪奇は。お千代の視線の先には、湯島町の質屋『伊勢屋』の庭に“死人詰め”なる紙を紙房の上に止めた裸女が松の下に下がっていた。詰め将棋“死人詰め”の謎とは何か…?―妖怪若衆下村松之丞、そして怪人将棋大名の出現。かくて源内と春作の活躍は。


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「高木家の惨劇」 (たかぎけのさんげき)


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*182頁 / 発行 昭和45年
*装画・高塚省吾


*カバー文
 日比谷の喫茶店でひとりの青年が奇妙な行動をおこしていた。コップにクモを入れ狂気じみた声で女給にくってかかり、「三時だって?」となぜかその時刻を強調していた!
 その正三時に、いまわしい血に呪われた資産家高木家では、当主の孝平がベッドの中で射殺されていた! 考平のむすこ吾郎、いとこの大沢為三、甥の丹羽登、そしてぶきみな女、出もどりの妹青島勝枝と、高木家の人々はすべて狂人的人物孝平を憎み、その遺産をねらう!
 深まるナゾに挑戦するは、警視庁捜査一課長・加賀美敬介の勇姿であった!
 終戦直後にいち早く発表され、本格探偵小説復活の口火をきった記念すべき角田喜久雄の代表的推理巨編! いま装を新たに推理小説ファンの要望に応えここに登場!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「盗っ人奉行」(上下) (ぬすっとぶぎょう)




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*上310頁・下299頁・上下二段組頁
*発行 1990年
*カバー装画・東啓三郎


*カバー文
上巻
 芝宇田川町の寂しい裏通りで十八、九の美しい町娘志麻から質商『山城屋』の場所を問われた八丁堀町方同心水木半九郎が、その山城屋で月と芒を金蒔絵で描き、杵を持った兎を銀色に浮き上がらせた「卯月の印籠」を見せられたことから怪事件の幕は切って落とされた!
 その印籠の底ぶたの内側に描かれた裸女の絵そのままに、夜鷹のお君・女郎ぐものお吉・湯島天神境内の料亭『藤屋』の女中お銀と、三人の女がつぎつぎに殺されていった!
 南町奉行大岡越前守忠相配下中でも屈指の腕利き水木半九郎と、宗匠頭巾の花心亭玄斎の活躍が始まった! 問題の「卯月の印籠」が奥州は仙台藩六十二万石の大名伊達家の依頼によって作られたことを探知した半九郎と玄斎の二人は、その印籠の秘められた謎を追う!
下巻
  ― 内側に妖しい裸女の絵を持つ「卯月の印籠」が秘めた謎とは……!? ますます深まる怪事件の真相を追う南町奉行所町方同心水木半九郎の活躍! 興趣をもり上げ物語は後編へ!
 南町奉行として世に名高い大岡越前守忠相の一族に、ご近習役を勤める大岡忠光がいた! 忠光が徒目付熊沢十内と組み、何事かをたくらんでいることを察知した大岡忠相は……!?
 たびたび行われている西ノ丸家重の鷹狩りが、雑司ガ谷のお狩り場を最後に中止になった秘密を探るべく本陣の光林寺に出向いた水木半九郎は、茶屋のあるじ六助から重大な鍵となる話を耳にしたが、六助は何者かの手で無惨にも斬殺された! 船宿『万字屋』のおれんが全裸で木に吊るされて殺された!  ― 事件の黒幕がねらうものははたして何であろうか!?


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「花太郎呪文」 (はなたろうじゅもん)


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*596頁・上下二段組頁
*発行 昭和51年
*カバー装画・木村卓

*カバー文
 江戸の花太郎さま 願かけた 花さま花太郎さま 願かけた
 こんな童歌がいつごろからか江戸の町に流れていた。花太郎さまとは日暮里の諏訪明神に隣りあった子育て地蔵尊のことであった。御用聞き花屋勘兵衛の評判娘お美年は、地蔵尊の地下道で、土壁に五寸くぎでぶちこまれた瀕死の老婆から「花太郎さまに……」という最後の言葉とともに銀の鈴をあずかった。俄然、奇怪な事件に巻きこまれたお美年の行く手には!?
 黒装束の怪しい一味に捕えられ危ないお美年を救った浪人は加賀美三四郎であった。次々に大江戸の町を荒らして回る江戸の花太郎と名のる怪人の正体は!? 美濃郡上二万八千石金森家にまつわる謎とは!? ― 伝奇長編の真価を満喫させる巨匠角田喜久雄の代表的巨編!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「兵之介闇問答」〈上下〉
 (ひょうのすけやみもんどう)


*カバー装画・東啓三郎
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*上巻312頁・下巻287頁・上下二段組頁 / 発行 新装版・1989 年

*カバー文
上巻
隅田川につり糸をたれていた二人は、平賀源内と桜兵之介であった。川岸へ視線を向けた源内と兵之介が見たものは、無頼の男どもに追われているひとりの娘であった。兵之介は娘を救ってやった。その可憐な娘は、烏山の浪士泉川作太郎の娘多喜であった。多喜は芝愛宕山寂光院門前の茶屋の主忠兵衛を訪ねたが、まもなく、上州館林六万一千石松平藩の重職菅沼右兵衛の命をうけた紋次の手で、いずことなもなく連れ去られた。菅沼右兵衛と老女蔦枝に無理に薬をのまされた多喜は、そのまま麻布清徳寺墓地に埋葬された。奇怪なことに墓に記された名は楓であった。楓というナゾの女の身代わりに葬られた多喜の運命とは? 兵之介・源内の活躍は。興趣満点、角田喜久雄時代長編大作。
下巻
時代小説界の巨匠角田喜久雄の代表作巨編、上巻の興趣を盛り上げて物語はいよいよ下巻の最高潮場面へと展開してゆく。危うし!桜兵之介と美女楓・多喜の運命は? 大目付丹波小太夫の下屋敷の土蔵牢の中では、捕らわれの身である兵之介と楓の二人が、小太夫の家臣嵐丈助によって、苛烈、死ぬような拷問を受けていた。悲境に陥った兵之介と楓を丹波屋敷から救い出してくれたのは、意外、権蔵とよばれる中間であった。その権蔵の正体は、松平家の侍長谷川権蔵であった。松平家のねらうものは? 浅草橋場河岸の行徳寺を一時のかくれ家ときめた兵之介は、平賀源内と再介した。真相を握る隻眼の男早瀬権三郎を追う兵之介!そして“金糸の竜”のナゾとは?


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「変化如来」
(へんげにょらい)


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*380頁 / 発行 1988年(改装版)
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文
 天保十四年(一八四三)十一月 ―― 、木枯らしに乗って雪の便りが江戸の空へ吹き渡ってくるころ、何者かに殺害された父の仇を求めて江戸へ出ていた相州小田原在の旧家の出で、高島流洋式新砲術教授の江川太郎左衛門英龍のもとに学ぶ峠魚太郎は、雪汞(ドンドロス)の材料となる土を入手すべく向島須崎村の仏千寺に来ていたが、怪僧慈元から阿弥陀如来像の寄進を命じられた!? 代わりに、たとえオランダ錬金術者の“賢者の石”と呼ぶ秘宝、あるいは清国神仙術者の“神丹”の秘薬であろうと、いかなる願望も叶えさせるという……!?
 魚太郎は五体が凍りついたようにそこに突ったっていた! 如来像に秘めた謎とは!? 水戸家が放った謎の男!? “将棋図巧”をめぐる怪異とは!?  ―― 伝奇時代ロマンの会心作!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「振袖地獄」
 (ふりそでじごく)


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*275頁
*発行 昭和52年
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文
 嘉永五年(一八五二)の春 ― 八丁堀同心吾妻一兵の娘おみやは十七歳の美しい娘に成長していた。浅草観世音に詣でたおみやは、町家の番頭が持っている唐草模様のふろしきをねらうならずものと、怪しげな娘の姿を目撃した! そのふろしきに包まれていたものは折り鶴散らしの振袖であった! ふろしきを奪った怪しの娘がならずものの鍾馗の三次に襲われた危ないところを救ったのは、おみやの小坂流吹き針の妙技であった!
 時の南町奉行は遠山左衛門尉景元であった。大江戸を騒がす振袖娘の誘拐事件の捜査に当たる稚児同心佐川左内は、女のような美男子であった! 紫のお高祖頭巾の美女振袖お柳の出現によってナゾはさらに深まっていく!?  ― 巨匠角田喜久雄会心の時代大作!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「まぼろし若衆」 (まぼろしわかしゅう)


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*500頁・上下二段組頁
*発行 昭和52年
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文
 ときは幕末の弘化三年(一八四六)のころ、江戸へもどった天野富次郎は弟子の太郎松をつれて、浅草今戸の料亭「さざなみ」の二階で催された将棋会へ顔を出したのであった。
 富次郎こそのちに天野宗歩として世に名高い棋聖になった将棋名人である。将棋会でひとりの娘を見かけたが、その娘おふさが下谷摩利支天横町の住まいへ帰る富次郎と太郎松によびかけてきた。叔父辰蔵の言いつけでおふさは富次郎に古金襴の守り袋に入っていた一枚の将棋の駒を見せたが、それこそ「藤壺」とよばれる駒であった! ナゾを秘めた「藤壺」の駒をめぐって、濃紫の頭巾の若衆、桔梗さま、傀儡師仙太、さらに怪人高砂蔵人の出現と物語は核心へ! ― 明朝の秘宝にまつわる一大時代伝奇長編ロマンは絢爛と花ひらく!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「耳姫三十五夜」 (みみひめさんじゅうごや)


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*377頁・上下二段組 / 発行 1978年
*カバー装画・東啓三郎

*カバー文
 慶応四年(一六五一)は異常な年であった。相次ぐ天災に加えて、若い娘の眉を盗んで回る“眉盗人”の一団が跳梁していた! 楠流軍学者由井正雪と丸橋忠弥が訪れたさきの浪人柳川城太郎は、眉盗人一味に追われる美しい娘麻也から、葵の御紋がほどこされた金蒔絵のみごとな櫛を預けられた! また、侍たちの襲撃をうけた瀕死の老人関十郎兵衛から、天狗屋敷への手紙を依頼されたのであった! 怪奇な事件が柳川関十郎の身辺に渦まく!?
 城太郎と三味線師匠の粋な女お俊の二人は、武州高尾山にあるという天狗杉をめざして江戸を出立した! 高尾山の天狗杉から美女谷へ! 可憐な山の美女お美根と少年周平に出会った城太郎とお俊は!? ―― スケールも大に展開する巨匠角田喜久雄の一大伝奇時代長編!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「闇太郎変化」 (やみたろうへんげ)


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*265頁
*発行 昭和51年
*カバー装画・木村卓

*カバー文
 伝奇時代小説の魅力とおもしろさを満喫させる巨匠角田喜久雄会心の傑作長編大作!
 奥州八戸よりの旅を急いぐのは、妻お霜と愛児おみやを同行する吾妻一平であった。
 北町奉行となった遠山左衛門尉景元の秘命を受けた一兵! それは八戸に闇太郎様にまつわる奇怪なナゾについてであった。江戸に近づいた一兵は、ふと目にした闇太郎様と書かれた紙に誘導されて踏み込んだ荒れ寺で、深い穴の中へと落としこまれてしまった!?
 日本に亡命したイエス・キリストは八戸太郎と改名、その子孫は生きつづけているという。それが妖しの闇太郎様か!? 黒頭巾に面を包んだ遠山景元はひそかに常磐津文字千賀を訪ね、千賀に元大目付松本左膳の屋敷への潜入を命じた! 遠山金さん奉行の活躍は!?


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「酔いどれ牡丹」
(よいどれぼたん)


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*571頁・上下二段組
*発行 昭和60年
*装画・東啓三郎

*カバー文
 慶安五年(一六五二)の四月末、江戸の薬商人義介と弟分の紋太の二人連れが上州沼田近くの山中へさしかかったとき、白髯の老人を首領株とする侍の一団に捕まった旅の女の姿を目撃した。その女は江戸の浄瑠璃の師匠お津賀といった。お津賀を助けた義介と紋太は!?
 沼田の山中にひそと静まりかえった秘境、お黒の森を襲撃した侍の一団は!?
 ナゾはナゾをよんで、物語の舞台は江戸へ! お黒の森に十八歳になるまで隠れ住んでいた姫とよばれる可憐な娘お雪は駕籠にのせられ江戸へと運ばれてきた。そして、ひとりさまようお雪を助け、神田多町の三軒長屋へつれてきたのは義侠の人、薬屋の義介であった。義介がまきこまれた怪事件とは!? さらに姫とよばれるお雪の正体は!? 興趣満点の時代巨編!


角田 喜久雄 (つのだきくお)
「恋慕奉行」〈上下〉 (れんぼぶぎょう)


*カバー装画・東啓三郎
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*上巻383頁・下巻324頁・上下二段組頁 / 発行・1990年(新装版)

*カバー文

 紀州吉宗が八代将軍職を継いで間もない享保二年(一七一七)のころ、向島・飛鳥山という桜の名所を近くにもつ千住宿の女郎屋『上州屋』から、女郎のお柳が逃げた!
 お柳は信州馬篭の在で母と住んでいたが、その母が何者かに殺され、彼女の手元には波に千鳥を金蒔絵した見事な珊瑚の根付けをほどこした由緒ありげな印篭が残された! 江戸へ向かったお柳は板橋宿で大事な印篭を盗まれたうえ、騙されて女郎屋に売られたのだった!
 川へ飛び込んで水死寸前のお柳を引き揚げ、幽霊屋敷へと担ぎ込んだ奇っ怪な侍の一味があった! そしてまた、その跡をつけるのは八丁堀町同心水木半九郎であった!
― 「大岡政談」に新機軸を拓いた魅力たっぷり、迫力満点の物語!

  ― 名奉行の名も高い南町奉行大岡越前守忠相、そして腕利き八丁堀町方向同心水木半九郎をまき込んだ紀州家をめぐる破乱万丈の物語! 興趣いよいよもり上がって後編へ……!
 芝愛宕の山福寺奥にある薮稲荷の隣、かつての商家『大和屋』の寮の地下道へともぐり込んだ水木半九郎の探策の手はさらに怪しの慈元寺へとのび、地下道から土蔵の中へと進んだ彼はそこに鉄鎖につながれた白髪ぼうぼうたる異様な老爺を見た! 復讐の鬼と化している慈元寺の僧浄念の正体は紀州家のご落胤だという! 浄念のねらう復讐とははたして何か!?
 元紀州家軍学者の悪浪人阪田権太夫は不敵にも大岡忠相とお秋の方を呼び出し、『熊野党調書』と入牢中の源太郎の釈放を要求してきた! 深まる謎に敢然と挑む水木半九郎の活躍!