絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【ふ】

深町 眞理子 (ふかまちまりこ)
「翻訳者の仕事部屋」
(ほんやくしゃのしごとば)


*カバーデザイン・神田昇和
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*363頁 / 発行 2001年

*カバー文
作品ごとに異なる人生を生きる。原作の息吹を自分の言葉を使って伝える。訳者は「役者」なのだ。
手がけた翻訳は200冊以上。とにかく本が好き、人前に出るのは嫌い。考古学者のようにあれこれ調べて推理して、答えを掘りあてたときは、こたえられない。そんな翻訳稼業のあれこれを語る、待望のエッセイ。

*目次
T 私の翻訳作法
U 仕事机から離れて
V こんな本を訳したり読んだり
 解題を兼ねたあとがき、ならびに謝辞
 初出一覧
 深町眞理子・訳書目録 一九六三〜二〇〇一
 ●フカマチ式翻訳実践講座


福田 和也 (ふくだかずや)
「甘美な人生」
(かんびなじんせい)
ちくま学芸文庫


*カバーデザイン・神田昇和
 カバー写真・梅原渉
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*230頁 / 発行 2000年

*カバー文
この世の如何なる酸鼻であろうと許容し、愚劣で、無意味な生存を肯定する。此岸を「彼方」として生きる明確な意志さえあれば、人生は「甘美」な奇跡で満ち溢れる。柄谷行人の「営みとしての批評」を炙り出し、破壊的な衝動と理不尽な力を村上春樹の小説に読みとる。芥川の「憎悪と笑い」、谷崎の「虚無的な決意」、日本の弱き神の脆き夢としての『万葉集』……、さまざまな文学を巡りながら、およそ倫理や社会道徳に迎合することなく、世俗の最も愛情こまやかな絆からさえ逃れ出る、耽美への意志が穿つ現世の真実。平林たい子賞受賞の挑戦的な評論集。

*目次
批評私観 ―― 石組みの下の哄笑
 T
柄谷行人氏と日本の批評
ソフトボールのような死の固まりをメスで切り開くこと ―― 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』第一部、第二部
放蕩小説試論
 U
芥川龍之介の「笑い」 ―― 憎悪の様式としてのディレッタンティスム
精神の散文 ―― 佐藤春夫論
水無瀬の宮から ―― 『蘆刈』を巡って・谷崎潤一郎論
 V
木蓮の白、山吹の黄
斑鳩への急使 ―― 万葉集論
ほむら、たわぶれ ―― 和泉式部論
さすらいたまふ神々 ―― 生きている折口信夫
 W
日本という問い
生活の露呈 ―― 河井寛次郎論
甘美な人生
 後記 / 引用・参考文献 / 初出一覧 / 解説 妖刀伝説 久世光彦


福田 和也 (ふくだかずや)
「贅沢な読書」
(ぜいたくなどくしょ)


*カバーデザイン・間村俊一
 撮影・林朋彦
 資料提供 『明暗』(大正9年刊)
  (林哲夫氏蔵)
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*253頁 / 発行 2006年

*カバー文
本を読むこと、書物を愉しむことにも、きちんとしたやり方がある。それを考えることが書物との関係を決定的なものにし、結果として、人は甘美で幸福な時間を手に入れることができるようになるのだ。では、人生に不可欠な部分としての読書とは、どのようなものなのだろうか。『作家の値うち』や『悪の読書術』などで話題を呼んだ著者が、最高の文章だと考えるものを厳選し、その味わい方を丁寧に紹介する。

*目次
 はじめに
T 幸福な時間 ── ヘミングウェイ『移動祝祭日』
 「サン・ミシェル広場の良いカフェ」 / 「飢えは良い修業だった」 / 「セーヌの人びと」 / 「エズラ・パウンドとそのベル・エスプリ」 / 「ミス・スタインの教示」
U 近代小説の空間 ── 夏目漱石『明暗』
 夏目漱石『明暗』 / 正岡子規『仰臥漫録』 / 中江兆民『一年有半』 / 夏目漱石『思い出す事など』
V 旅行のための本選び ── ゲーテ『イタリア紀行』
 ゲーテ『イタリア紀行』 / ダンテ『神曲』
W 読みたくなる古典 ── 咲き合う美の連鎖
 『古事記』 / 『万葉集』 / 『伊勢物語』 / 松尾芭蕉『笈の小文』
X 甘美な場所で ── ほろ酔い本
 イーヴリン・ウォー『ブライヅヘッドふたたび』 / 西村康彦『龍あらわる 中華怪有篇』 / 森銃三『傳記文學 初雁』 / ルイ・ジュヴァリエ『歓楽と犯罪のモンマルトル』 / 樋口修吉『銀座ラブソディ』
むすびに
文庫版あとがき / この本の作品リスト / この本の人名リスト


藤井 宗哲 (ふじいそうてつ)
「禅寺の精進料理十二ヶ月」
(ぜんでらのしょうじんりょうりじゅうにかげつ)


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*286頁 / 発行 2004年
*カバー写真・森幸一 / カバーデザイン・倉地亜紀子

*カバー文
淡味。滋味。武蔵野の平林寺、鎌倉の建長寺で典座(てんぞ・禅寺で食事をつかさどる役僧)を務め、鎌倉・稲村ヶ崎の庵で精進料理を教え続ける著者が、旬の野菜と素材を活用して作り上げる、季節季節、日々の食卓の精進料理。肉を使わない工夫、意外な素材の組み合わせ、料理にこもる思い出……。食べることとは生きること、精進にはその知恵がつまっている。

*目次
一月 不識庵のおせち料理 / 二月 鬼も内 / 三月 丼飯の元祖 / 四月 春風吹いて / 五月 好き嫌いなく / 六月 降りみ降らずみ / 七月 夏は酢のもの / 八月 うりやなすびの花盛り / 九月 暑さ寒さも / 十月 円、丸はおふくろの味 / 十一月 天地いっぱいをいただく / 十二月 臘月を尽す / あとがき / 解説 松林孝至


舟越 保武 (ふなこしやすたけ)
「巨岩と花びら ― 舟越保武画文集」
(きょがんとはなびら)


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*261頁
*発行 1998年
*カバー 舟越保武作 R嬢(1956年) / 撮影 高瀬良夫 / カバーデザイン 渡辺千尋

*カバー文
「長崎26殉教者記念像」「病醜のダミアン」「聖クララ」などの端正で崇高なまでに美しい石像彫刻とデッサンで知られる彫刻家の初めての滋味あふれるエッセイ集。彫琢された詩的な筆致で、芸術と人生をめぐる思索を描いた本書により、日本エッセイストクラブ賞を受賞。彫刻・デッサンを10点収録。また、外国絵画・彫刻などの鑑賞も収める。
解説 木崎さと子