絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【ほ】

保阪 正康 (ほさかまさやす)
「数学に魅せられた明治人の生涯」
(すうがくにみせられためいじにんのしょうがい)


*カバーデザイン・間村俊一
 カバー写真・林朋彦
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*318頁 / 発行 2012年

*カバー文
ある新聞の片隅に、「ナゾの『フェルマー定理』を解く」という記事が掲載された。百一歳の老人が三十六年を費やして、その謎に挑んだというのである。記事によれば、彼は日清・日露を召集兵として戦い、その後は中学教師になり、1930年には村長も務めた。彼は晩年を、なぜ一見奇矯な試みに捧げたのか。数学の才能に恵まれた一庶民が明治・大正・昭和を懸命に生き抜く姿を通して、近代日本の哀歓と功罪を描くノンフィクション・ノベル。

*目次
T 出会いのとき
U 清国との戦闘で……
V 庶民の小節
W 数学狂の村長
X 冷めた観察者
Y 孤影の営み
 あとがき / 文庫版あとがきに代えて / 主な参考文献


保阪 正康 (ほさかまさやす)
「孫文の辛亥革命を助けた日本人」
(そんぶんのしんがいかくめいをたすけたにほんじん)


*カバーデザイン・間村俊一
 写真提供 山田順造
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*397頁 / 発行 2009年

*カバー文
清朝末期の混乱の極みにあった1911年、中国初の近代革命となる辛亥革命が起こる。その義挙成功の陰には、アジア解放の夢のもとに、革命の指導者・孫文を助けようと一身を賭した多くの日本人がいた。義によって時代を駆け抜けた孫文と宮崎滔天、山田良政・純三郎兄弟の活躍を軸に、日中にまたがる人間交流を緻密に描いたノンフィクションの傑作。

*目次
プロローグ
第T部
第1章 幻の革命家 / 第2章 孫文と滔天 / 第3章 志士・山田良政 / 第4章 恵州起義
第U部
第5章 蜂起計画 / 第6章 後方基地・東京 / 第7章 辛亥の年 / 第8章 志士の群像
第V部
第9章 滔天の広東行 / 第10章 純三郎との友誼 / 第11章 国共合作 / 第12章 遺言
エピローグ
あとがき / 文庫版あとがき / 解説 語り伝えられた日中共通の夢 清水美和 / 辛亥革命関連地図 / 年譜


星 亮一 (ほしりょういち)
「明治を生きた会津人 山川健次郎の生涯 ― 白虎隊士から帝大総長へ」
(やまかわけんじろうのしょうがい)


*カバーデザイン・神田昇和
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*340頁 / 発行 2007年

*カバー文
戊辰戦争で敗れた会津藩は、明治維新後、朝敵と呼ばれ悲惨な運命をたどる。15歳で白虎隊士となった山川健次郎は、その中にあって名門エール大学に学び、物理学者として東京帝国大学に奉職する。薩長藩閥政府の中で二度も帝大総長を務めるに至った健次郎は、しかし、会津時代の苦難を決して忘れることはなかった。「星座の人」と呼ばれた気骨の人生を描く力作。

*目次
 はじめに
第一章 遠雷
第二章 会津城下の戦い
第三章 降参の白旗
第四章 奥平謙輔の手紙
第五章 お家再興、斗南藩誕生
第六章 エール大学に入学
第七章 帰国後の日々
第八章 清貧の暮らし
第九章 東京帝国大学
第十章 会津人の悲しみ
第十一章 徳目と千里眼事件
第十二章 巨星の生涯
 あとがき
 解説 山川健次郎先生の思い出 有馬朗人
 山川健次郎略年譜
 おもな参考文献


細川 涼一 (ほそかわりょういち)
「漂泊の日本中世」
(ひょうはくのにほんちゅうせい)
ちくま学芸文庫


*カバー写真・デザイン 工藤強勝
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*269頁 / 発行 2002年

*カバー文
女性と芸能・宗教、信仰のかたちと揺らぎといった、歴史の正面からずらした視線が掘り起こす、知られざる中世史。小野小町伝説はどのように形成され、流転をとげていったのか、男装の白拍子や巫女はどんな力をもつと考えられたのか。奇祭の記録から見えてくる女性の日常と地位とは。蒙古襲来が信仰に与えた影響とは。天竺への渡航を試みた日本人と、渡来した天竺人の、それぞれの旅から見えてくることは。……当時の人々の身体と親交の漂泊から、もうひとつの中世史の断面に迫る。本文庫オリジナル。

*目次
T 女性の旅・旅する女性
 第一章 時代に漂う女性たち
 第二章 美人落魄 ── 小野小町の流転
 第三章 巫女の神語り ── 「巻絹」と白拍子の性別越境
 第四章 土器造りの女性 ── 近江鍋と河内鍋
 第五章 旅をする女性 ── 宗教・芸能・交易
U 漂泊する精神・信仰のかたち
 第六章 中世の遊び ── 王権と芸能
 第七章 蒙古襲来と神々の戦い ── 叡尊の神国思想
 第八章 唐招提寺の釈迦念仏 ── 貞慶・空如・覚盛・證玄の戒律復興運動
 第九章 壬生寺と壬生狂言
 第十章 天竺への旅・天竺からの旅
あとがき / 初出一覧


堀田 善衛 (ほったよしえ)
「日々の過ぎ方 ― ヨーロッパさまざま」
 (ひびのすぎかた)


*カバーオブジェ・柄澤齋
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*287頁 / 発行 1991年

*カバー文
スペインに長期滞在するなかで、ヨーロッパの骨格を大づかみにとらえ、かつ、細々とした部分に固有の文化を発見する日々の記録。窓についての考察、広場での思いが、やがてヨーロッパ文化論となりひいては日本論となる。円熟した筆法と若々しい思考にみちた本。

*目次
不思議な訪問客 / 不思議な旅行者たち / 続 不思議な旅行者たち / 衝突と気兼ね、あるいは弁証法といわれるコンセンサスについて
キャンプか、生活か / 窓について / 時計のない空間 / 続 窓について / ヨーロッパのワン公たち / YAMAHA / 言葉について / 広場にて / 続 広場にて / もう一つ、広場にて / 続けてもう一つ、広場にて / 続々もう一つ、広場にて / 霧のリンボン / 南仏昨今 / 続 南仏昨今 / もう一つ、南仏昨今 / ナポレオンの証文とジブラルタル / 法王庁対イスラエル国の和解不可能性について / 季節・芸のない山 / 季節・春から夏へ / 農民戦争 / イタリア病・フランス病・スペイン下苔・酸性雨 / スイスという国 / 警察と安全について / 広場と明治憲法(上) / 広場と明治憲法(下) / 日本おみやげ駆動記 / オペラ周辺 / トルコについて / マドリード所在私蔵ゴヤ展 / ダリと子供たち / サハラ砂漠直行便 / U・S・A / はじめに森が… / 世の中に米ソ日本なかりせば / ヴェルサイユ宮殿よもやま / 無国籍証明書 / しゃがみ族・立ちん坊族 / 神は存在するか / どうしてこう華奢か / 夢の根強さについて / エビ風呂と舌平目とスープ風呂 / 国際義勇旅団、四十五年後 / カルチュア・ショック / 堀田善衛氏に聞く スペイン往還


堀越 孝一 (ほりこしこういち)
「パンとぶどう酒の中世 十五世紀パリの生活」
(ぱんとぶどうしゅのちゅうせい)
ちくま学芸文庫


*カバーデザイン・富岡洋子
 カバー画・「小麦の脱穀」(部分)
  ベトルス・クレセンティウス
  「田舎の収益の書」より
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*302頁 / 発行 2007年

*カバー文
時は15世紀前半、党派対立とイギリス王家の支配にゆれるフランス、パリの町の様子をひとりの男が伝え残した。多くの人の手を経て、現在ヴァチカン法王庁図書館に収まる『パリ一市民の日記』は、中世パリの日常生活をつぶさに今に伝えてくれる。さあ、この日記を片手に中世パリを歩いてみよう。小麦の不足で混ぜものをしたパン、セーヌ川の氾濫、例年以上に冷え込む冬、高騰する薪の値、「むすめ」と呼ばれるジャンヌ・ダルクの噂……、現場を見た克明な記載から大文字の歴史が記しえない庶民の歴史を読み取る。

*目次
はじめに
一冊の本
その後、十日か十二日ほどして
雪と氷、そうして薪
かねがないなら、くるみパンを喰えばよいのよ
いちじくもなつめ椰子の実も喰わぬ
だいたいが、一個二ドニエもしないパンなんて
雨のサンマルタン門外
むかつく麦酒は新酒のぶどう酒
まっとうの飲料
日記の筆者を狩り出す
あとがき
文庫版あとがき


ポール ゴーギャン (Paul Gauguin) 岩切 正一郎訳 (いわきりしょういちろう)
「ノア ノア」
(NoaNoa)
ちくま学芸文庫


*装画・ゴーギャン『タヒチの牧歌』
 カバーデザイン・神田昇和
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*218頁 / 発行 1999年

*カバー文
ノアノア、それはかぐわしき匂い。「幸福は太陽とともに、太陽のように照り渡りながら、起き上がった。テウラのかんばせの金色が、住まいの内と、まわりの風景とを喜びと輝きで満たしていた。……楽園で最初の男と女もおそらくこんな風だったろう(本文より)」。「原始」「野蛮」ということばのなかに夢想と思念と自由な感受性のすべてを畳み込み、そこから革命的な創造を実現しようとした画家ゴーギャン。現地での妻テウラとの愛の日々、漁、儀式、神と自然とじかに触れる感動をおりまぜつつ綴られるタヒチ滞在記。

*目次
ポール ゴーギャン
ノア ノア ―― タヒチ滞在記
『ノア ノア』草稿(ピエール・プチ校訂テクスト)
 解説 岩切正一郎


*類書(サイト内リンク)
 ポール・ゴーガン著 前川堅市訳 「ノア・ノア ― タヒチ紀行」 岩波文庫
 長谷川公之 「ゴーギャンのノア・ノア タヒチ紀行」 京都書院アーツコレクション