絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【み】

三岸 節子 (みぎしせつこ)
「黄色い手帖」
 (きいろいてちょう)


*カバー装画・三岸節子「花」
(画像はクリックで拡大します)

*304頁 / 発行 1992年

*カバー文
自らのたどった道を真摯に綴った、第一エッセイ集『花より花らしく』に続く、第二エッセイ集。
日本の油彩画黎明期より、一筋に困難な“女流画家”として生きてきた著者。 ― 画家として、妻として、嫁として、寡婦として、母親として、何役をも背負いながら、やはり画家こそが天職と信じた著者による感動の書。

*目次
第一章 若き世代に
第二章 美の秘訣
第三章 自伝千字文
あとがき
解説 画家三岸節子の誕生 三岸黄太郎


水上 勉 (みずかみつとむ)
「一休・正三・白隠 ― 高僧私記」 (いっきゅう・しょうさん・はくいん)


*カバー装画・白隠「ままの継橋」
(画像はクリックで拡大します)

*245頁 / 発行 1987年

*カバー文
一休宗純。女犯、淫酒、風狂三昧の生を赤裸々に詩にのこした伝説の禅僧。乱世に五山の権力仏教に反旗を翻し、東北から九州まで一所不在、苦難困窮の庶民と同じ地平を歩んだ。鈴木正三。武人の経験を出家生活に生かした異色の生涯。大坂夏の陣ののち感ずるところあり出家したが、武士を捨てても世は捨てず、庶民教化につくした。白隠。自在奔放な禅画で知られる臨済禅中興の祖。堕地獄から逃れるために出家、貧困と飢饉の巷でひたすらな坐禅と説法行脚に明け暮れた。 ― 矛盾と罪苦に悩み、庶民のなかで禅を極めた異端の高僧三人。その思想と生涯を共感をこめて描いた本格評伝。

*目次
一休のこと
再び一休のこと
鈴木正三
白隠
 文庫版あとがき
 解説 巷の高僧の体臭を読みとる 柳田聖山


南 伸坊 (みなみしんぼう)
「笑う科学」 (わらうかがく)


*カバーデザイン・南伸坊
(画像はクリックで拡大します)

*252頁 / 発行 1991年

*カバー文
ロケットはなぜ飛ぶのだろうと少年の心をわくわくさせてくれた「科学」も、学校で教わるとむずかしくて退屈なガクモンに変わってしまった。でも、もういちどコドモの心に戻って色々な不思議を考えてみると、世の中やっぱり面白いことばかり。ロボット、ホログラフィ、超能力、死後の世界など、謎の真実を求めて笑う科学者シンボー・ミナミは今日もゆく。

*目次
まえがき / 超能力入門 / ロボット入門 / タイムマシン入門 / 死体入門 / スケール入門 / 死後入門 / さとり入門 / ホログラフィ入門 / 錯視入門 / ゲンゴ入門 / トリック入門 / オナニー入門 / 3D入門 / 脳ミソ入門 / フロイト入門 / 時間入門 / 妖怪入門 / 色入門 / 渦巻入門 / 歴史入門 / ご臨終入門 / ハゲ入門 / 仙薬入門 / 錬金術入門 / 人間入門 / 解説 伸坊アインシュタイン仮説 藤森照信


南 伸坊 (みなみしんぼう)
「笑う写真」 (わらうしゃしん)


*カバーデザイン・南伸坊
(画像はクリックで拡大します)

*343頁 / 発行 1993年

*カバー文
「写真とは真実を写すものである。」私たちはいつのまにかそう信じ込んでいる。だが、そこに写っているものは本当に真実なのだろうか。報道写真、心霊写真、ヌード写真、アイドル写真など、さまざまな写真のありかたをパロディでなぞり笑ってみることによって、写真というメディアの読み方、そのカラクリと可能性をさぐる。きわめてマジメで、とにかく笑える写真論。

*目次
A 笑う写真 / B 似てる似てる / C へ〜んな顔〜!! / D 髪型写真 / E 美人とブス / F 写真うつりの写真術 / G 時間術 / H 尻考 / I 超常現象は存在する / J FF考 / K 写真の術 / L 写真語の読解法 / N 写真の算数 / M 新・東京観光名所写真 / O AIDS / P 映像と言語 / Q 風景写真考 / R わかりやすい写真 / S 何がサービスか / T 謎と写真 / U 別人時代 / V 今日の真由美 / W おタク何人? / X ズサンな写真 / Y アイドル写真の撮り方 / Z 似せ顔写真

SHOW TIME
@ 時代劇ヒーロー名鑑 / A 世界は一家、人類はみな兄弟 / B 名前の写真

あとがき / 解説 複眼のちから 篠山紀信


南 伸坊 (みなみしんぼう)
「笑う茶碗」
(わらうちゃわん)


(画像はクリックで拡大します)

*285頁
*発行 2007年
*カバーデザイン・南文子

*カバー文
日常生活には、いろんな事がある。耳を澄ませばウグイスが鳴いているし、草笛をねっしんに吹く人もいる。カラスがマヨネーズのふたを開けられないし、鈴虫がケンカの仲裁をする。たまには梅の花や蓮の花の香りを聞いて、蛍や流れ星を見た夜もある。なんでもない、そんじょそこらの日常茶飯事が、しみじみ笑えるから面白い。

*解説頁・夏石鈴子



宮迫 千鶴 (みやさこちづる)
「少女物語 性について話しましょうか」
(しょうじょものがたり)


*カバー装画・阿部真理子
 カバーデザイン・南伸坊
(画像はクリックで拡大します)

*228頁 / 発行 1996年

*カバー文
少女から大人の女へ。心と身体の変化を持てあまし、不安ととまどいと……。
そんな少女時代のことを抱腹絶倒のエピソードをおりまぜて語りながら、“本当に豊かな恋愛とは何か”“開かれた性とはどんなことか”を説いてゆく。性のことを知ることは豊かに生きることの第一歩。

*目次
はじめに / ロマンティストの少女へ  ── 「いまを生きる性」のために
1 避妊法だなんて!そんなこと学校で教えてくれるの?  ── 一九六四年以前の少女の性的無知
2 男のあれである。くわしいことはあとで  ── 授業中の紙きれメッセージではじまった性
3 あのひとは複雑な家庭で悩んでいるのよ  ── 「暗い私」と「明るい私」
4 あなたがもう少し大人になったらわかるわ  ── 性のひそひそ話とアイスクリーム
5 吐き気がするより、怒りがこみ上げてきた  ── 夕暮れのなかの変態オジサン
6 学校も家庭も面白くない時の「いたずら」  ── 若きハンサム教師のアンパン事件
7 やめなければいけない。神様に誓って  ── 一九六〇年代の「いけないこと」
8 修道女たちはどんな下着をつけているんだろう  ── 薙刀(なぎなた)を持って「死ね!」と叫んだ少女
9 あの先生、ちょっとエッチよ  ── 黒いゴムの月経帯の暗さ
10 修学旅行の夜にコウノトリ説は消えた  ── 「不純異性交遊」「桃色遊戯」という凄い言葉
11 男の子はそれをガマンできない?  ── 性教育のない男女交際マナー教育の逆効果
12 誰だってお嬢さんぶりっ子ばかりやってられない  ── 「女らしさ」を脱した時の自由
13 「性」のジグソーパズルの前で  ── ついに出会った医学用語
14 よせてはかえし、よせてはかえす、波の中で  ── 豊かな恋愛と「開かれた性」
あとがき / もう一つのあとがき
解説 「生命の火」の燃える思春期 コリーヌ・ブレ


宮田 登 (みやたのぼる)
「終末観の民俗学」
(しゅうまつかんのみんぞくがく)
ちくま学芸文庫



*カバーデザイン・中山銀山+野崎一人
(画像はクリックで拡大します)

*255頁 / 発行 1998年

*カバー文
日本人にとって「終末」はその一歩手前で必ずその地の主から遣わされた特別な力により回避されるべきものとして語られてきた。その一方、自然災害や社会不安など非日常的な状況において、「世の終わり」は「世直し」すなわち災害ユートピアをも生む。津波を告げる魚、浅間山大噴火のおり「みろくの御世」を想定した富士講、大地震の死傷者を救出するために活躍する鯰男……。さらに都市においては橋や坂や盛り場などの「境界」が不思議伝承を紡ぎ世の中を変えるきっかけとなった。災害、境界、信仰、伝説などの多岐におよぶフォークロアを自在に織りながら、世紀末のいま、姿を現しつつある「終末観」の源泉をたどる。

*目次
第一章 災害のフォークロア
  一 村の大事件 / 二 予知と前兆 / 三 地震鯰 / 四 災害ユートピア
第二章 「世の終わり」の伝統
  一 終末と世直し / 二 メシアの意識 / 三 入定行者の思想
第三章 終末の都市
  一 都市の心意 / 二 盛り場の怪異 / 三 境と「ハシバ」 / 四 坂と市 / 五 闇のトポス / 六 ケガレとハラエ
第四章 現代世相のフォークロア
  一 人が居なくなる都市 / 二 占いと祟り / 三 都市のよみがえり
補篇
  「移風の兆」と弥勒の世 / 天地異変考 / 民間信仰に見る終末観と世直し思想

参考文献 / あとがき / 文庫版あとがき / 解説 吉見俊哉